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魔笛

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第二幕その四


第二幕その四

「昼も知ってこそだ」
「昼の世界には何もないのです」
「夜の世界にこそ全てがあるのですよ」
 しかし侍女達はこう言うのだった。
「ですからここは」
「私達の世界に戻るのです」
「どうします?」
「だから黙っているんだ」
 パパゲーノはふらついているがタミーノは違っていた。
「いいね、何があっても」
「しかしですね」
「夜と昼を知ってこそ」
 また言うタミーノだった。
「それこそだからね」
「けれどですね」
「さあ、どうするのです?」
「何故何も言わないのです?」
 侍女達は苛立ちを感じながらまた二人に問うてきた。
「沈黙を守って」
「どういうつもりですか?」
「お話したいのはやまやまですが」
「だからパパゲーノ」
「弱ったな」
 パパゲーノとしてはであった。
「どうすればいいんだ」
「そうですか。昼に入って」
「死んでしまいたいというのですね」
「残念です」
 侍女達も遂に諦めた。
「では私達はこれで」
「もう」
「夜の世界だけでは駄目なんだ」
 また一人呟くタミーノだった。
「昼も知らなくては」
「どうなるんだろうな」
 しかしパパゲーノはぼやくばかりだ。
「おいら達、これから」
 彼は試練よりも大事なものが欲しかった。そしてタミーノは叡智を知ろうとしていた。しかし二人は今は共にいるのだった。
 そしてモノスタトスは。鞭打ちを受けた後一人外を歩いていた。
「やれやれだよ」
 踵を庇いながらぼやくのだった。
「酷い目に遭ったよ」
 自分のせいだとは思っていない。
「全く。しかし」
 ここで、であった。パミーナを見たのだった。
「よし、また声をかけてみるか」
 懲りずに向かいであった。楽しく歌う。
「誰だって恋の喜びを感じるんだ、俺が恋をしたらいけないっていうのかい?そんな理屈はない筈だ。女の子なしの人生なんて何もない」
 これが彼の主張だった。
「優しいお月様、いいですよね」
 夜空を見上げて月に問う。その優しい光を見上げながら。
「白い娘を手に入れても。ですから」
 こんなことを言いながらパミーナに近付く。しかしだった。
 そこに夜の女王が来た。彼はそれを見てだった。
「おっと、これは」
 ピラミッドの陰に隠れた。そうして隠れ見るのだった。
 女王は宙に浮かび下にいるパミーナを怖い目で見据えていた。そのうえでだった。
「御前は何故ここに留まっているのです」
「お母様、それは」
「私が御前を助け出す為に向かわせたあの若者は?」
「試練に」
「ザラストロの試練に!?」
「はい」
 まさにその通りだというのだ。
「その試練に」
「昼の世界の試練にと」
「それが駄目なのですか?」
「世界は夜によってのみ成り立つもの」
 その夜の支配者の言葉だ。
「あの男は昼によってのみと言いました」
「ですがお父様は今は」
「あの男のことは言ってはなりません」
 女王はザラストロのことは決して聞こうとはしなかった。頑なに拒む。
 
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