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神々の黄昏

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第一幕その十


第一幕その十

「それには及ばない」
「いいというのか?」
「我々はだ」
「君と取引をするつもりはない」
 グンターはハーゲンと目配せをしたうえでジークフリートに話した。
「そのつもりはない」
「いいというのか」
「そうだ、例え我が家の全ての宝を出しても」
 こうジークフリートに話し続ける。
「それには及ばないのだから」
「では私は」
「報酬なぞ望まない」
 彼はまたジークフリートに言った。
「それはいい」
「いいのか」
「そうだ。それではだ」
 ここでハーゲンが杯を出してきた。
「飲まれるか?」
「それは」
「葡萄の酒だ」
 微笑みを作ってジークフリートに話す。
「嫌いか?なら麦か蜂蜜の酒を出すが」
「いや、有り難う」
 ジークフリートはその申し出を断らなかった。
「喜んで頂こう」
「そうか。それならだ」
 その酒を出す。見ればそれは見事な紅の色である。しかしそこには何か微妙な黒いものも混ざっているように見えた。そうした酒であった。
 だがジークフリートはその酒を受け取りだ。こう呟いてから飲んだ。
「ブリュンヒルテよ」
 この言葉はグンター達には聞こえなかった。
「私は何処にいても貴方とその教えを忘れない」
 こう言ってから飲む。そのうえで杯を置く。するとそこに出て来たグートルーネを見てだ。
「彼女は」
「妹だが」
 グンターがジークフリートに答えた。
「それが何か」
「何と美しい」
 彼女を見詰めたままの言葉である。
「貴女の御名前は」
「グートルーネといいます」
 彼女からおずおずと名乗ってきた。
「どうぞ宜しく御願いします」
「そうか、グートルーネというのか」
 ジークフリートはその名前を心の中に刻み込んだ。
「貴女の目の中にあるのはよき文字か。私は」
「貴方は?」
「私は今貴方の兄上に家臣になることは断られた」
 その無報酬という言葉がそれである。
「ですが」
「ですが?」
「貴女に夫婦の契りを申し出てもそれは許されないのでしょうか」
「いや、喜んで」
 グンターがこう彼に言ってきた。
「そうさせてもらおう」
「いいというのか」
「そうだ。是非君を妹の夫にだ」
「有り難う、それでは」
 そしてだった。ジークフリートは今度はそのグンターに対して問うのだった。
「グンター、貴方に妻は」
「まだいない」
 こう答える彼だった。
「残念なことにな」
「そうなのか。それではだ」
「それでは?」
「私が貴方にその妻を見つけ出してあげよう」
 こう彼に言ってきたのである。
「それでいいか」
「その妻をか」
「そうだ。その女は高い岩の上にあり」
「そこにいるのか」
 グンターはここで先のハーゲンの言葉を思い出した。そのうえで彼の話を聞いていく。
「それでその名前は」
「ブリュンヒルテという」
「ブリュンヒルテ」
 ここでまたグンターは心の中で頷いた。そうしてであった。
 
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