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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter4「烈火の剣」

 
前書き
この作品初の戦闘シーンです。

初投稿時は意外と高評価だったので驚きでした。 

 
「ふぅ……」

厨房で朝食の後片付けを終えたルドガーはエプロンを外し自分の部屋に戻り現在六課の玄関前にいる。

「…遅い」

何故こんな場所にいるかと言うと人を待っているのだ。その相手が誰かと言うと……

「おーい、ルドガー!」

「……やっと来たか」

はぁとため息を吐き、腰に右腕をやり呑気にこちらに走ってくる六課の部隊長八神はやてへ呆れた視線を送る。

「ごめん、待っとたよな?」

「………」

ここでああそうだと言いはやてに罪悪感を更に覚えさせるのもいいが、生憎自分はそこまで鬼ではない。
それに……

「……別に。今来たばかりだ」

「本当か!?そんならよかったわぁ」

こんな邪心の一欠片も見えない無邪気な笑顔を見せられれば起こる気持ちもなくなってしまう。

「じゃあさっさと行こう。今日は俺の実力を見る為の実技試験をやるんだろ?」

あのフォワード達との初対面の後ルドガーははやてから翌日の午前中、つまり今日で今だが、実技試験をする事を告げられていたのだった。

「そうや。こっちとしてはやっぱりルドガーの腕前を把握せなアカン立場やろ?まぁだから出来れば惜しみなく力を出してもらいたいんよ」

「それは試験の内容によるな。だが油断するつもりは一切ない」

ルドガーとしても今回の試験は意外と燃えていたりする。あのクランスピア社に入る為に自分は試験を受けたが見事不合格。
ユリウスの妨害工作があったようだが、それでもあの時の自分はやはり甘かったと今になって思ってしまう。

「それは楽しみやなぁ♪せやけど今回の試験は中々上手くいかへんと私は思うで?」

「なんだよ、そりゃ?」

「なんやろうなぁ?まぁ楽しみにしとって?」

今度はさっきまでと違いイタズラ心満載の笑顔をルドガーに見せる。

もうこれはあれだ……不幸だ。

そう思いながらルドガーははやてと試験が行われる訓練場へ足を動かす。
その途中で何もなかった場所に突如ビルが出現し驚くが、はやてからあれが今回自分の試験が行われる訓練場で、魔法の技術で出来た実体を持った立体シュミレータと説明を受けこのミッドチルダの技術力が高度である事を改めて思い知らされた。

「あっルドガー君、はやてちゃん!」

訓練場に着くとなのはが此方に手を振っている。なのはの周りには昨日食堂で紹介を受けたシャマル以外のメンバーがそろっていた。どうやら隊長陣だけではなく、新人達にもこの試験は見られるようだ。

「ルドガーさん今日の朝ご飯美味しかったです!」

「ありがとうなスバル。もし不味くなった時は遠慮なく言ってくれよ」

「いえ、そんな事…」

開口一番朝飯が旨かったとまさか言われると思ってもみなかったが、やはり作った立場からすればスバルの純粋な感想は嬉しい。

「ルドガーさん、頑張ってください!僕応援してますから!」

「私も応援しますね!ねっ?フリード?」

「キュクル~!」

「ああ」

子供2人と竜一匹のエールを受け、その2人と一匹の頭を軽く撫でてなのはの元へ歩く。

「ルドガーさん!」

後ろから声を掛けられ歩みを止め、振り替える。そこにはフォワード隊のリーダーであるティアナが何故か顔を赤くしながらこちらを見ている。

「ほらっ、ティアも!」

「うっさいわね、少し黙ってなさいよ!」

ツンパワー全開。思わずこの光景をティアナは自分に見せたかったのかと思ってしまった。
流石にそんな訳ではないだろうが・・・・

「どうしたんだティアナ?」

「い、いえ!ただその……」

「?????」

端切れの悪すぎる答えにティアナが何をしたいのかもはや見当もつかない。
だがその煽りとも言えるような長い沈黙が終わってティアナから出た物は案外あっさりした物だった。

「し…試験、頑張ってください!」

「へ?」

それだけを言うと恥ずかしそうにしながらティアナはスバルの後ろへと回る。まさか他のフォワードメンバーがルドガーに話し掛けたのに自分だけ何も話さなかったから遅れて話し掛けたなどとは流石のルドガーでもわかりはしない。

「はいはーい、ラブコメ禁止ー!」

「ら、ラブコメって…!八神部隊長!?」

はやてがつまらなさそうな口調で手を叩きながら場の空気を変える。
ティアナはティアナでさき以上に顔を赤くしはやてに何か言いたそうであり、ある意味では本当にラブコメってるとも言えなくはないだろうか?

「ほらルドガーもいつまで惚けてるん?こっちや」

「イ、イテテテっ!?」

耳を引っ張られ180度方向転換させられた上、そのままなのはとフェイトがいる所まで連行される。

「にゃはは・・・大丈夫、ルドガー君?」

「はぁはぁ…ちぎれるかと思った……」

正直ビズリーのあの腹パン…いや絶拳以上に痛かった気がするが、素直にそう思うとビズリーが哀れに思えてくるので忘れる事にする。

「なぁ、コイツ本当に強いのか?」

そんな中ルドガーの耳に新たな声が耳に入る。声がする方を見るとフェイトの隣に陸士隊の制服を着たもうエルと同じ年頃の赤髪の女の子が目に止まる。

「………子供?」

「ふんっ!」

「っぐぅ!!?」

足を思いっきり目の前の赤毛の少女に踏まれ疼くまるルドガー。
昨日からダメージを受けすぎではないか?

「なぁはやて、コイツ、アイゼンでぶっ飛ばしていいか?」

「ちょまぁ落ち着きヴィータ」

踏まれた足を擦りながら自分が足を踏まれた理由を考えるが何も思い浮かばない。
いや、子供と言った事が原因なのはわかってはいる。

「あんなルドガー。ヴィータはこう見えてもスターズの副隊長でルドガーよりもずっと年上なんよ?」

「いっ!?」

ルドガーの目が驚きで開かれる。これまで普通なら一生経験する事がないような事に関わったルドガーでもこのヴィータの事には驚きを隠せないようだ。

「何だよ、その反応?アタシが大人に見えないのかよ?」

「…………」

いやどう考えても見えないでしょとすぐ傍まで出かけていた言葉を何とか抑えこむ。
これから試験だと言うのにこれ以上肉体的にダメージをおいたくはない。

「と…とりあえずルドガー君に試験の内容説明していいかな?」

なのははこの空気を払う為、今回の目的である試験の説明を始める事を告げる。
だがそこではやてが割って入る。

「というか試験の内容話す意味あるんか?するにしても勝利条件と敗北条件しかないやん」

「うーん……それもそうだよねぇ。試験と言っても試験官の人一人と戦うだけだし」

「試験官?」

「まぁ私はここで見物させてもらうから頑張りや!」

話しを聞く限りではどうやら今回の試験はターゲット破壊形式の物ではなく単純に戦闘技術を見る事を目的とした試験のようだ。てっきり思いっきりこの広いシュミレーターを使った内容とばかり思っていたルドガーからすれば拍子抜けだ。だが一つ気になる事がある。ここに向かう間にはやてと話した試験に関する情報だ。

(あの反応からすると試験官はかなりの強者かなにかか?)

なのはに試験指定ポイントに向かうよう言われ移動をしながらも自分の対戦相手を考える。
今ありえる限りでは、あの中の隊長格が自分の対戦相手だろう。
はやての口調で一瞬はやてがそうなのではないかと思ったが、彼女は別れ際に見物すると言っていた。なら残りの3人?いや、なのはも違う。自分が試験官ならあんな回りくどい言い方はしない。

(という事は…フェイトとあのヴィータとか言う子供か?)

もしこの心の声がヴィータの耳に入っていたならルドガーは今度こそ彼女にアイゼンでぶっ飛ばされていただろう。そんな事に気付かないルドガーは指定ポイントに着くと共に双剣カストールを握り身体がいつでも動けるよう整える。

「…ふぅ……」

目を閉じて自分の装備を思い出す。ルドガーの世界で戦う者であれば大抵持っているアローサルオーブだが、マナがないこの世界では使えないのではないかと思ったが、どうやら一応は使える。
しかしエレメンタルコアが無いのでこれ以上自分の能力を開花させる事はできないが今は全く問題ない。問題は武器と特に銃だ。試験ではデバイスマイスターであるシャーリーから渡されたペイント弾を使用する為間違っても相手に致命傷を負わす事はないし、他の武器もどのような裏技を使ったかは分からないが非殺傷性機能とやらが施されこれで人を殺したりする事はないらしい。

…だが本当に銃が問題だ。

黒匣であるはずのこの銃はマナを使用しなければ使えないはずだ。そんな物が何故だか使える。

無論術技も。

自分に取って有利なのは良いが、これだけ良い事尽くしだと後々何かありそうで素直に喜べない。

(……そして)

もうわかりきった事だが、骸殻は使えない。
一応持ってはいるがルドガー自身の時計はビズリーに破壊されてしまい使用不可能。
その直後にエルの元に現れた彼女の父親のヴィクトルの時計と直接契約し一時的に使ったが、
自分が消滅する前にエルに返してしまった。

(あれ?そう言えば……)

昨日自分の持ち物を確認した際幾つかのアイテムとGHSはあったのだが、兄の懐中時計だけが見つからなかった。たしかにビズリーとの戦いの最中拾ったはずなのだが何処にも見当たらなかった。
これでルドガーはある意味てクルスニク一族の宿命から切り離された訳だが、同時に兄との絆がりの一つを失ってしまった。
それを考えるとやり場のない喪失感に見舞われ、あの時の事がフラッシュバックしルドガーは身体を震わせてしまう。

「…っ!!」

今はこんな事を考えている場合ではない。カストールの柄を強く握り締め頭からそのイメージを消すよう自分に命じ、完全に戦う態勢を整える事でようやくルドガーは落ち着く事ができた。そしてそうこうしている間に自分の目の前に気配が現れそちらを見る。

「アンタが俺の対戦相手か?」

「いかにも…私の名はシグナム。機動六課フォワード部隊ライトニング分隊副隊長だ」

そう名乗る目の前のシグナムと言う女性からは、その誰もが目を惹く美貌以上に彼女から溢れ出す闘志にルドガーは相手がかなりの手練だと判断する。

「まずは初めまして。俺はルドガー・ウィル・クルスニクだ」

「主はやてから聞いている。確かに中々やりそうな奴だな」

(…主はやて?)

シグナムのはやての呼称に疑問を持ったが今はその事を聞く時ではない。
シグナムは愛機である『レヴァンティン』を起動させ、騎士甲冑を身に纏う。本当に絵に書いたような騎士らしい姿である。

「私は主はやてからお前の力を見定めるよう命じられているのでな、今の私が出せる限りの力で相手をさせてもらうぞ」

「当たり前だろそんなの?八百長なんてゴメンこうむるよ」

「ふっ‥そうか…クルスニク、私は思っていた以上にお前に好感を持てそうだ」

「俺も‥かな…」

お世辞なしでルドガーはシグナムという女性に好感を持った。
理由は単純にシグナムが自分の仲間だったミラとガイアスと性格と雰囲気的な意味で似ているからだろうか?

鞘から愛剣を引き抜き構えるシグナムに対しルドガーは構える事はしない代わりに腰を軽く落とす。
その一連の動作を始めると共に2人は無言。暫し沈黙の時が訪れる。

そして……

「…はぁっ!!」

先に動いたのはシグナムだった。
地を蹴り一気にルドガーと距離を詰めレヴァンティンをルドガーに振り下ろし、ルドガーはそれを右腕の剣で受け止め空いた左腕の剣で斬りつけようとしたが、その前にシグナムが後ろに飛びそれを躱す。しかしルドガーは自分の一撃でシグナムが後ろに飛ぶ事を予測していたので彼女が着地するであろう場所まで駆け、降り立った彼女もルドガーが追ってくるのも分かっていた為動揺せず二振りの剣をレヴァンティンで捌きながらも、ルドガーの剣撃が止むのを見計らうとレヴァンティンで押し返し双剣と剣が何度もぶつかり合う。

「いい太刀筋と動きだ…良い師に教わったようだな」

つばぜり合いの中声をかけてきたシグナムに対しルドガーはそれに応える。

「そっちもな…!俺が戦った剣が主流の人間の中でも強い方だ……けどな!」

突如ルドガーが双剣に送る力を緩めた事でルドガーは後方にバランスを崩す。

「なにっ!?」

「っと!!」

だがバランスを崩したのはルドガーだけではない。
シグナムも急に力のバランスが瓦解した事レヴァンティンに掛けた力を殺せず、ルドガーとは逆に前へバランスを崩してしまう。ルドガーは重力に従い背中を地に着けると共に手を肩より上の地面に付け力を入れ、両足を揃えてそのままシグナムを蹴り飛ばす。

「ぐあっ!」

予想もしてもみなかったルドガーの一撃を食らったシグナムだが空中で姿勢を整え地面に降りる。
しかし地面に降りるが蹴りの衝撃は殺しきれず、後方押されてしまう。

「ちぃ!」

レヴァンティンを地に刺し衝撃を緩和。ようやく止まり片膝をつきルドガーを見るが、既にシグナムの視界から消えていた。

「そこか!!」

気配がした方向はシグナムの頭上だった。だがシグナムは再びルドガーの行動に驚く事になる。
二重の意味で。

「太陽を背に目眩ましなど…!!」

古典的な策だが実際に上手く行けば予想以上に対象の視力を奪い動きを制限できる。
現にシグナムは満足に目を開けられず左腕で太陽の光から目を庇っている。

そして・・・

「この期に乗じて双銃で撃ってきたか…!」

普段なら剣で弾くか避けるかの方法で対処するが、今は目が使えない上、フィールドが市街地であり壁に誘導されれば蜂の巣だ。ならここはシールドで凌ぐ以外他ない。空中からの銃撃でシールドに次々に弾丸がヒットしシグナムの回りには無数の弾丸が転がっており、シグナムには一射も当たってはいない。これ以上の銃撃は無意味だと判断し、クラウンズオートを捨て クラウンズウェイトに切り替える。

「ソート・ラルデ!!」

シールドに重い一撃が与えられ火花が散る。

(私がこうも一方的に押されるとはな…!)

内心でルドガーの武器の使い分けに舌を巻く。
はやてから3種の武器を使う事を聞かされていたが、ここまで見事に使いこなしているとは思っていなかった。リミッターを掛けられ本来の力が出せないとはいえここまで自分が追い込まれるとは想像すらできなかった。それも相手は魔法が使えない。目の前の男の戦闘センスは間違いなく自分の上を行っている。そしてそれは強敵だと言う事…騎士であり戦闘狂であるシグナムはもはやルドガーの強さに興味以上の感情が生まれる。故にこの戦闘で使はないと決めていた得物を使う事にした。

「レヴァンティン!!」

《Schlangeform!》

クラウンズウェイトによる打撃をシールドで防ぎながらレヴァンティンに形態変化を命じ、変化を終えたレヴァンティンはいくつもの節に分かれた蛇腹剣へと変貌。その変化に気付き驚くルドガーは、この距離では確実に横から捕縛されると考え、シグナムから距離を置こうとするが…

「遅い!!」

「っ!!」

片足で後ろに引いた瞬間に蛇腹剣は既に正面へと迫って来ており、宙にいる為回避は不可能……いやまだ手はある。

「そらぁ!」

クラウンズウェイトの鎚の部分を地面に叩きつけめり込ませ固定し、柄の部分を力一杯握り柄を握り腕にも力を加え、そのままクラウンズウェイトの上へと飛ぶ事で蛇腹剣から逃れる事に成功する。

「やるな…だがまだ甘い!!」

振り切られた蛇腹剣は空中で身動きが取れないルドガーを再び狙う。下方から迫る蛇剣に対しクラウンズオートで迎撃しその軌道と速度をルドガー自身の足場を確保の為に徹底的に撃ち、着地すると同時にクイックフリッカーをシグナムに放つが蛇腹剣が彼女を螺旋状に囲むように守りあっさりと防がれる。

「狙いは良い…しかし!その程度ではベルカの騎士である私には通じはしない!!」

シグナムを守っていたレヴァンティンは螺旋体形を時、不規則な動きでルドガーに再度攻撃を仕掛ける。

「ゼロディバイド!ラピッドレンジ!」

通常の銃撃ではこの蛇腹剣の軌道疎かスピードすら落とせないのはさっきの空中での迎撃で分かっている。実際さっきは完全にどちらの目的も果たせず左腕をかすめた。なら威力もスピードが通常弾よりある武身技なら完全に相殺できなくてもさっきよりマシに動きを遅らせる事ができるはず。

しかし……

「くっ!」

二つのクラウンズオートはルドガーの手から弾かれる。

(油断した…!先端ばかりに注意が行って余りの部分を見落としていた)

捕縛しようと迫る蛇腹剣を側転、バク宙、バク転と繰り返し、まるでダンスでもしているかのように紙一重で躱し続けながらも自分のミスを痛感する。
ルドガーの狙い通り自分を狙う蛇腹剣の軌道とスピードは確かに外す事に成功した。
だが何も蛇腹剣の攻撃は先端だけではない。これだけ長いなら先端以外の部分でも十分攻撃ができるプラス捕縛も可能。実際シグナムはルドガーを捕縛しようとしていた。
だが辛うじてそれを回避できた。もしあそこで捕まっていれば確実にルドガーはやられていた。
命が懸かっていないとはいえヒヤヒヤものである。

「良く躱し続ける。是非私にもどうやったらそこまで綺麗に避けきれるのか教えてほしいな」

「ははっ!っと、なぁーに、うぉ、適当に動いて、よっと‥るだけっ!」

本人はそうは言うがルドガーのやっている事は並大抵の事ではない。卓越した運動能力と高い空間把握力……それについていけるルドガーの強固な身体がが無ければこんな神業に近い動きは出来はしない。今ルドガーがやっている事は目隠しして銃弾の雨を避けている事と似たような物だ。

「だがいつまで避けきれるか!」

蛇腹剣の速度が更に速まる。反応に遅れルドガーの右頬を蛇腹剣が擦り、血が右頬に流れる。

「早いっ!」

流石にこれ以上はルドガーでも保たない。避ける事に重さで支障が出ると思い武器を持たずに手ぶらで動いていたが、ここはもう『避ける』から『捌く』に変えなければやられる。腰に手をやり両手に双剣カストールを握り蛇腹剣を弾く。ハンマーを出した時に見ているとはいえ突如何もないところからカストールを出した事でシグナムが多少動揺する。そのおかげで蛇腹剣を蒼破刃で弾き簡単に蛇腹剣の包囲網から抜け出す事ができた。

「一度抜け出せても…またっ!」

蛇剣は地に沿いながら背を向けるルドガーの足を捕らえようとする。その姿はまさに“蛇”と表現できる。

「今だ!」

双剣を上に投げ、クラウンズオートを出す。後ろ目で蛇剣が足を捕らえようとした瞬間バク宙で躱し、空中で双方のクラウンズオートをクロスさせ技を放つ。

「タイドバレット!」

瞬間、十字形の光が地面をへこませ、その中に蛇剣も巻き込む。

「なっ!……馬鹿な!?」

ルドガーの奇策に目を奪われていたシグナムは空中にいるルドガーの行動に目が移り驚く。
なんとルドガーはクラウンズウェイトを出現させ片腕で持ち上げると、投擲の構えをとる。
ハンマーを投擲するような暴挙をシグナムは見た事も聞いた事もない。
同じ守護騎士でハンマーを使うヴィータでもそんな事はしない。

そして……

「サキオン・アクセ!!」

燃え盛る回転が加わったハンマーがシグナムに向け放たれる。
だがその投擲速度ではシグナムに当てる事は不可能。

簡単に彼女はハンマーを避ける。

目標に当たらなかったクラウンズウェイトはその斜線上にあった建物に命中。
見事な迄に建物を倒壊さする。

「面白いなクルスニク!だがそれでは私に勝つ事など…!」

言い掛けた言葉をシグナムは止める。

何故なら…見えないのだ。
ルドガーを見失ったのではない。
辺り一面が倒壊した建物による砂塵で覆われルドガーの姿を捉えるおろか自分が何処にいるか把握すらできない。

「しまった!奴の狙いは私を仕留めるのではなく武器封じ…!これではクルスニクの…!」

直後、左側から圧迫感。
目だけでそちらを見る。

「うおぉぉぉぉ!!」

雄叫びを上げたルドガーがカストールをシグナムに向け斬りつけようと直ぐ傍まで迫っていた。

「ちぃ!」

レヴァンティンを戻す時間はない。
左手にレヴァンティンの鞘を出現させ盾代わりにし防ごうとする。

しかし……

「鳴時雨!!」

目にも止まらぬ双剣の連撃を浴びせられ、鞘は呆気なく崩れ落ちる。

「まだっ!!」

鞘は破壊されたが決してその犠牲は無駄ではない。
鞘で防御したおかげで時間稼ぎは十分にでき、レヴァンティンをシュランゲフォルムからシュベルトフォルムへと戻し、カートリッジをロード。ガシュという効果音が鳴り薬蕎が飛びレヴァンティンの剣身が炎に包まれる。
不意を突いた鳴時雨を鞘で防がれたルドガーは一時距離を取り、レヴァンティンの変化と燃え盛る炎を見て今までの比ではない一撃が来る事を肌で感じ、ルドガーも迎え撃つ為腰を落とし二ふりのカストールを前に構える。

「行くぞ、クルスニク!」

地面を蹴り駆けるシグナム。
勇ましい彼女の宣言が互いの放とうしている技を放つ合図となる。

「紫電…一閃っ!!」

炎を纏った長剣が振り降ろされる。
火山の火口に近くいるとも思わせる凄まじいプレッシャーを感じながらもルドガーも自身の技を放つ。

「うおおおおおっ!一迅!!」

シグナムの正面に高速で出て炎剣に二刀のカストールをぶつける。
振り抜かれるレヴァンティンとカストール。剣と双剣が激しくぶつかり合い火花が散り、余波で二人の立つ地面が割れ、砕け飛び散る。

どちらも申し分ない一撃。

しかし、技のパワーでは一迅より紫電一閃の方が勝るようで徐々にルドガーが押されはじめ……

「おおぉぉぉぉ!!」

「ぐっ!?」

一迅は完全に紫電一閃に押し切られた上、有り余ったパワーに吹き飛ばされ地面を数回バウンド、壁を粉砕してルドガーは半壊した建物の中に消える。

「あのクルスニクの技…一迅と言ったか?技のキレとスピードは大した物だったが…」

そう、確かに一迅のキレとスピードはかなりのもの。だが紫電一閃とぶつけるには圧倒的にパワーが足りなかったのだ。

頬についた煤を手で拭い、ルドガーが突っ込んだ建物を見る。
半壊した建物の中からルドガーが出てくる様子はない。
恐らく壁に激突した衝撃で気を失ったのだろう。

「ここまでできる奴だったとはな…主はやてが感じたと言っていたクルスニクの力は確かだったようだ」

『ちょ、シグナム!やりすぎたんとちゃうか!?』

はやてから映像付き通信が届き、シグナムはやや申し訳なさそうな口調で自らの主君と話す。

「…申し訳ありません。少々調子に乗りすぎたようです」

『はぁ…まぁ何となくこうなる気はしてたんやけどなぁ』

「クルスニクの実力が私の予想を上回るのものだったのでつい…」

『はぁ…』

そのため息は今のシグナムにはとても耳が痛い。そして隣でヴィータがまたシグナムの悪癖が出ちまったなどと呟いているのが目に浮かんでくる。

『…わかった。念のためシャマルを呼んだるからシグナムは…』

「心得ております。クルスニクは私が……!?」

クルスニクは自分が連れてくると話そとしたが、上空から無数の水色の光弾がシグナムに振り注ぐ。
突然の奇襲に対応できず光弾はシグナムの騎士甲冑に数発命中し表情に苦悶が走る。

「ぐっ!!」

上に向けシールドを展開し光弾を凌ぐ。一向に光弾が止む気配はない。この攻撃は間違いなくルドガーの物。あの一撃をバリアジャケットなしで受けて戦闘を継続できる事も凄いが、それを利用し空からの奇襲にはシグナムですら完全に不意を突かれた。

「面白い、来い!今度こそ蹴りを着けてやる!」

光弾が降り注ぐ空へ叫ぶ。この銃撃が止めば恐らくルドガーが降下して来て近接戦闘を仕掛けてくる。なら降りてくるそこを叩けばいい。これがこの戦いの決めてになる。相手であるルドガーに敬意を表す意味でも次の一撃はさっき以上の力を込めようと思い、レヴァンティンにカートリッジのロードを命じようと心に決める。

しかし…シグナムのその詠みは外れていた。

「ヴォルテックチェイサー!!」

そんな声が粉塵が舞っている半壊した建物から聞こえた。

「ぐわぁぁっ!!」

中から雷撃が---武身技ヴォルテックチェイサーがシグナムに命中した。
今の攻撃で完全に態勢を崩し、後退りながら片膝をついてしまう。
その瞬間中からルドガーが現れ、怯んだシグナムに距離を詰める。

「セイっ!」

片膝をついたシグナムにルドガーはクラウンズオートを向ける。
それでも尚シグナムはレヴァンティンに力を入れようとするが、もはや自分に逆転する事が出来ない事を悟ると大人しくレヴァンティンを地面に置く。

「……参った。私の負けだ」

最後にそう言い残し、両手を上げて降参の意をルドガーに伝える。

こうして実技試験は終わり、見事試験官であるシグナムに負けを認めさせ、ルドガーは勝利を収めたのであった。


 
 

 
後書き
・カナンの地
全時空で唯一オリジンが魂の循環を行う場所。
死した人や精霊の魂はここに集められ、オリジンがこれを浄化する。 
空に存在し、普段はオリジンの無の力で隠されており、その姿を目にすることはできない。
なお、カナンの地に渡るにはクルスニク一族の命を使った〝魂の橋″をかける必要がある。

・カナンの道標
カナンの地を出現させるために必要な物。
マクスウェルの次元刀、海瀑幻魔の目、ロンダウの虚塵、箱舟守護者の心臓、最強の骸殻能力者の5つを集め、五芒星形に並べると「真なるカナンの道標」が完成し、カナンの地を出現させる。
既にその多くが正史世界で失われており、分史世界で入手するしかない。

 
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