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ロシアの展覧会

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第四章

「ついでに男もさ」
「そっちはついでなの」
「まあいいから撮ったんだけれどな」
 しかしプリマドンナと比べればというのだ。
「こんな感じでさ」
「そういうことね。じゃあ」
「ああ、ここから写真を厳選して」
 写真集に載せられる写真は限られている、それでだった。
「載せられない写真はな」
「どうするの?」
「サイトに掲載しないか?」
 彼と妻が二人で運営しているそのサイトにおいてだというのだ。
「そうしないか?」
「そうね、それがいいわね」
 妻も笑顔で同意した、そうして。
 二人はその写真集を発表した、タイトルは展覧会という。
 その写真集を見て誰もが言った。
「へえ、色々な写真があるな」
「どれもロシア人らしいけれどな」
「いや、色々あるんだな」
「プーチンだけじゃないんだな」
 その写真集を見た世界の人々の言葉だ。
「まあプーチンもいるけれどな」
「相変わらず怖いな」
「日本の少年漫画のラスボスみたいだな」
 これは世界共通の認識だった。
「軍隊も映ってるけれどな」
「それでも笑顔だな」
「これモスクワの衛兵じゃないか」
 写真集には彼等もいた、肩を組み笑顔になっている。
「へえ、あの厳しい感じじゃないんだな」
「こんな笑顔でもいられるんだな」
「というかソ連時代と違うな」
「むしろソ連時代も実際はこうだったのかね」
 こんな疑問の言葉も出された。
「世界が知らなかっただけでな」
「実際のロシアってこんなのかもな」
「この太ったおばさんといいな」
 お婆さん達に娘とツーショットでいる母親にだった。
「子供もいるしな」
「ロシアっていうのも色々なんだな」
「色々な顔があるんだな」
「ちゃんと酒飲んでるおっさんもいるしな」
 こうした人も健在だった、とにかく誰もが知っているロシアの顔と意外なロシアの顔が色々とあった、その写真集の評判は。
 かなりのものだった、サイトの方もだった。
「アクセスが凄いわ」
「そんなにか」
「ええ、一日平均にしてね」
 それで考えてだというのだ。
「大体十倍になってるわ」
「十倍、それは凄いな」
「私も見てびっくりしてるわ」
 そのアクセスカウンター、まるで水道のそれの様に上がるそれを見ての言葉だ。
「本当にね」
「そうか」
「十倍だからね」
 とにかくそれだけ増えたというのだ。
「ここまでなんて」
「凄い評価だね、ロシアも一面だけじゃないんだよ」
「プーチンとか軍隊だけじゃないわね」
「酒飲んでるおっさんや太ったおばさんだけじゃないんだよ」
 こうしたお決まりだけではないというのだ。
「色々な顔があるんだよ」
「ムソルングスキーが音楽にした様にね」
「そうだよ、それを写真にしたからな」
 皆目を瞠ったというのだ。
「そういうことだな」
「そうね、あんたにとってもよかったわね」
「俺にもかい」
「新しい仕事のオファーきてるわよ」
 夫ににこりとして話す。
「それも幾つもね」
「人の写真だよな」
「これまでアイドルとか女優の写真専門だったけれど」
 それがだというのだ。
「そうしたお仕事もどんどん来てるわよ」
「凄いな、じゃあな」
「ええ、どの仕事にするの?」
「具体的にどんな仕事か見せてくれるかい?」
 夫は楽しげな笑みで妻に言った。
「それから決めさせてもらうよ」
「それじゃあね」
 妻も笑顔で夫に応える、そうしてそのオファー達を見せてもらう。
 彼は妻と共にロシアの人々を撮り続けた、それはステレオタイプbなものだけではなく様々なものだった。まさにロシア人達の生の顔だった、世界の人々にそのロシア人達を見せたことで名前を知られたのである。


ロシアの展覧会   完


                          2013・3・21 
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