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ブリティッシュ=バンド

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第五章

「俺の曲だからな」
「そうだな、それだったらな」
「それだったらか」
「いい歌詞があればいけるな」
 こう言うクラークだった。
「その曲でもな」
「いい歌詞か」
「ああ、いい歌詞ならな」
 話をあえて限定させての言葉だった。
「いけるな」
「そのいい歌詞は誰が書くんだ?」
「俺だ」
 クラークは冷蔵庫からオレンジジュースを出していた、そのジュースをコップに入れて一気に飲んでから答えた。
「俺の歌詞ならだ」
「いけるってのか」
「今丁度考えている歌詞がある。それを見せてやる」
「御前が作詞をするんだな」
「作曲もするがな、見るか?」
「見てやってもいい」
 マックローンはクラークを見ないままだがそれでもこう言った。いい歌詞ならと思ってだ。
「では持って来い」
「少し待ってろ」
 こうしてクラークは自分の作詞した歌詞を持って来た、それをマックローンに見せて彼の向かい側の席から尋ねた。
「どうだ」
「そうだな、これならこの曲にな」
「合うな」
「ああ、いける」
 実際にギターで曲を演奏し歌詞を口ずさみながら答える。
「売れるな」
「じゃあおっさんに持って行くな」
 社長をそう呼んでいるのだ、だからこう言ったのだ。
「そうするな」
「そうするか」
 マックローンはクラークににこりともせずに答えた。
「明日にもな」
「珍しい顔触れだな」
 今度はローズがリビングに来た、そしてだった。
 向かい合わせに座る二人を見てだ、こう言ったのだ。
「何で二人でいるんだ」
「俺の作曲を見せているんだよ」
「俺の作詞をな」
 マックローンもクラークもそのローズに顔を向けて答えた。
「それでなんだよ」
「いたくている訳じゃないからな」
「成程な。作詞と作曲か」
 ここでローズの目が光った、そして二人に自信に満ちた笑みで言った。
「曲なら俺も今作ってるぜ」
「御前だ」
「御前のそれなんか足元にも及ばない曲をな」
 作曲をしているというマックローンに顔を向けての言葉だ。
「作ってるぜ」
「俺以上にか」
「ああ、そうさ」
 ここでも自信に満ちた顔で言い切る。
「遥かにな」
「そうか、じゃあその曲を持って来られるんだな」
「少し待ってろ、それで盛大に驚け」
 冷蔵庫の中のグレープジュースを飲みながらの言葉だ、ジュースはもう一つあったがそちらはパイナップルジュースだった。
「わかったな」
「なら驚いてやる、持って来い」
 こうしてローズは彼の曲を持って来た、そこで今度はブライアンが来た。
 ブライアンはクラークの言葉を聞いてだ、そんなものかという顔で言い返した。
「御前の作詞なんかじゃ幾ら曲がよくても駄目だな」
「じゃあ御前の方がか」
「ああ、そうだよ」
 その通りだというのだ。
「御前の作詞した歌詞よりもずっといい歌詞を書いたさ」
「面白いジョークだな、おい」
 クラークはにこりともせず彼の傍に来て立っているブライアンに言い返した。
「笑えっていうのか?」
「笑わせるつもりは最初からないからな」
「じゃあ何のつもりだ」
「御前を驚かせるつもりだよ」
 そちらだというのだ。 
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