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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-2 第6話

Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-2
勇者としての始動
第6話

戦士の指輪は勇者ロトが仲間が居た証拠としてとっておくことにした。それが今のハルカに必要かと言うかと、そうではない。ただ、なんとなく持っておきたかったのだ。
さて、次の目的地はマイラである。
マイラは温泉が湧き出る町で、魔物が特に凶暴化した今でも、命がけ(!)で観光に来る旅人も多い。
名物は温泉卵とぱふぱふ娘、らしい。
前者はともかく、後者は酒場の酔いどれ親父達から聞いた情報なので、ハルカは無視するつもりでいる。
(ぱふぱふって、ねえ。戦士団の人からも聞いたけど、……エッチな物、なんだろう?僕はパスだ)
興味がないわけではない。ただ、任務上、不必要な物だと思った。

ハルカは図書室での話の後、イアンの家にお世話になり、マイラに行く準備をした。
夕飯の後、ハルカは荷物の確認を行っていた。と、イアンが入ってきた。
「ハルカ、お前はマイラに行くんだろ?お土産は俺はいらねえぜ。まあ、エリカは欲しがるだろうな」
たいした用事ではない。ただ、イアンと雑談するのは好きである。
「あ、それなら温泉の蒸気で作られたお菓子でも買ってきましょうか」
「おお、それはエリカだけでなくサユリも喜びそうだ。頼んだぞ」
イアンは陽気に笑いながらハルカの方を叩く。ハルカも笑顔で肯く。
「ま、任務は忘れるんじゃないぜ?」
からかうようににやけながら突くイアンにハルカは冷静に(?)笑いながら返した。
「解ってますよ。ローラ姫や竜王に関する情報も聞いてくるつもりですから」
「そうだな。さて、ここからマイラだと徒歩で一週間強はかかるぜ。サユリは張り切って保存食作ってるからな。気をつけていけよ」
「解ってますって」
ペリドットの月も終盤だが、未だに夜も蒸し暑い。からくり扇風機はここでも動いている。
「明日も暑いだろうから、魔法の青瓶に水入れていけよ。塩飴も」
「ええ、バッチリ。必要なものも多いですから、魔法袋に必要なものは入ってます」
長旅には準備は必要。ハルカのように魔法の道具袋を持つものもいるが、運悪く入手できなかったときには普通の荷物袋で旅をしなければならない(ハルカは戦士団から支給されている魔法袋を使っている)。そんな旅人は魔法の袋を扱う旅人より体力を使う。最も、旅人らしく見せる為にわざと普通の荷物袋を使用する人もいる。
「さて、僕はもう寝ますね」
「ああ、おやすみ」
ハルカはいつもの鎧と服を脱ぎ、イアンから借りた布の服を着て、眠りについた。

翌日、ハルカは出発した。
魔物を何体も倒しながら進み続ける。力も付き、お金も貯まった。そしてラリホーを習得することに成功した。
もちろん、何日も魔物に気をつけつつ、野宿をした。
途中は竜王軍に滅ぼされた小さな村でも野宿をした。
滅ぼされたといっても人は1人だけいた。その老人は何も言わず、ハルカの侵入を許した。
そこでは、特におかしなことは起こらなかった。
それが逆に妙な感じもする、とハルカは笑った。
(それにしても面倒くさいな。帰りはキメラの翼でいいか)
体力は使うといっても、体力自体もついてきた。行きは徒歩でいけるにしても、帰りは面倒になると感じた。
頻繁には使わないにしても、幾らか使いたいとハルカは思っていた。
何も無い小さな村を後にし、さらに数日歩いた。

マイラの近くに来た。ハルカはふと、北西に人影を見つけた。
そちらはまた、“雨の祠”といわれる場所へ通じる道である。
(何してるんだろう?)
ハルカはその人影に近づいた。その人影は形を成した。小太りの中年男で、どこか胡散臭い雰囲気であった。
「おお、そこの若いの、世界樹の葉は要らんかね?」
男は一枚の葉を取り出す。それはどう見てもどこかで適当に取ってきたようなよく見る葉っぱだった。
当然、ハルカはそれを偽物と見抜いていた。
「それ、偽物ですよね?僕は本物を見たことがあります。世界樹の葉はアレフガルドの外のどこかにある島で取れる貴重な葉です。ここアレフガルドにも幾つか入ってきますが、それは皆ラダトーム国家が管理している。そして持つことが許されるのは城にいる高等な僧侶のみ。そんなものがこんなところにあるはずはないですから」
ハルカがそう言い放つと、男は大声で、カッカッカと笑った。最初から見抜かれることを前提としているような様子だった。
「お見事。お前はただの人間ではないな。ただの人間なら最初はコロッと騙されるんだよ。金額を言うと皆買うのをやめるんだがな。ちなみに薬草と同じ値段だ」
ハルカはキョトンとした顔で男を見つめた。僕を試していたのか?だとしたら何故?というかこの人、何者?
「どういうことです?僕を試していたのですか?」
「まあな。お前が“雨の祠”にいける資格があるかどうかを試していたんだ。とりあえずは合格だ。今は通せないぜ。まだ未熟って感じだからな」
「……はあ」
ますますこの男の正体がわからない。敵ではなさそうではあるが。
「まあ、僕は今からマイラのほうへ行くのでいいんですがね」
「そうか。気をつけていけよ」
ハルカは男に会釈をすると、この場を立ち去った。
(この人は魔物に襲われないのだろうか?まあ、ただの人じゃなさそうだけど)

その日の夕方、ようやくマイラへついた。
マイラは多くの人で賑わっていた。
夜店や屋台も多く並んでいた。まるで何かのお祭りのようで。
「今日は何か特別なものでも?」ハルカは砕いた氷に甘いシロップをかけて売っている男に話しかけた(所謂かき氷屋)。
「うーん、以前はもう少し静かなんだがな。“ぱふぱふ”というものが出てきたもんで、男共がどっと押しかけてくるんだ。そんなのに興味は無い俺としては迷惑なんだが」
「そうなんですか…僕もパスしたいですね」
「そうしたほうがいいぜ。お前はラダトーム戦士団なんだろう?もしかして任務か終わった途中かできたんだろ?支障をきたさない為にもな」
「ええ、正解ですね。あ、このオレンジ味ください」
「まいど!」
ハルカは歩きつかれた体をオレンジ味の砕き氷(かき氷)で少し癒しながら町を歩いていた。
するとドン!と何かにぶつかった。ハルカはよろけ、少し氷をこぼしてしまった。幸い、何者かは歩いてきたらしくそんなに衝撃はなかったため持ち直した。
「すいません!」
女の人の声がした。ぶつかってきた人だろう。その若い女はどこか元気のない表情だった。
「いえ、僕は大丈夫です。どうなされました?」
「あ…なんでもないです。気にしないでください。後でお詫びはしますので、私はこれで…」
「クレア、まだ回復してないんだね?無理するんじゃないよ」
別の方向から中年女性が現れた。クレアという若い女の友人らしい。
「すいません…」
「若いお兄さん、クレアって子はね、2週間前に夫を亡くしたばかりなんだ。よほどショックだったんだろうね。クレアの為にプレゼントを買いにリムルダールへ買い物に行ったものの、魔物に襲われてね…。あ、いや、遺体はここへ運ばれていないし、旅人の若い男から口で伝えられたから本当かどうかはわからない。けれどこのご時世、本当だと信じる人も多くてね、クレアも信じてショックを受けたんだ。おっとすまないね、あたしは邪魔だったかい?」
「いえ。情報をありがとうございます。クレアさん、あまり無理はしないでくださいね」
「ありがとうございます。私は失礼します。セリアさん、行きましょう」
「そうだね。若いお兄さん、あんたは強そうだけど、魔物には気をつけなよ。ここら辺より強いらしいから」
セリアと呼ばれる中年女性とクレアはハルカに頭を下げ、住宅街のある方向へと去っていった。
(僕も油断ならないな…。リムルダールは次行く予定だからな。あ、氷少し溶けてる。まあいいか)

温泉施設と宿屋のある方向へ歩いていくと、甲高い声が響き渡る。そしてその方向には男達が押し寄せていた。
「さあさ!見てらっしゃい寄ってらっしゃい!この娘が“ぱふぱふ娘”だよ!大きいだろこの胸!背は小さいのに凄いだろ!1回20Gだ!さあ、早く早く!」
これが“ぱふぱふ”か。意味は戦士団の仲間から聞いたことがある。ハルカは無視して立ち去ろうとした。
「何言う!お前はいい金になるんだ!もっと働くんだ!」
「いや!あたしは嫌!」
そんな会話がハルカには聞こえてきた。集まる男達には聞こえていないらしい。声の主は見えない。テントの頭は見えた。
(……無理やり?)
ハルカはこれには無視できなかった。見つからないようにテントの裏手に回りこんだ。そして見張りらしき男をラリホーで眠らせた後、入り込む。

ハルカは言葉を失う。そこは鞭や危ない衣装――危ない水着、魔法のビキニ(今は魔力を失いただのビキニ)、ぼろぼろに破けた水の羽衣、神秘のビキニの偽物、など――が散らばっていた。これでぱふぱふ娘を奴隷のようにして働かせていたらしい。
「何てことだよ……!」
「おい!貴様!何不法侵入してやがる!……もしかしてこの女を助けに来たのか?ダメだ!この女は俺の奴隷で金儲けの道具なんだ!」
男が気付いたらしく、押し入ってきた。ハルカは全く怯む様子はない。
「ああ。人を道具みたいに扱うお前が許せないんだよ!あの女の子だって嫌だっていただろう!」
「フン!ガキのくせに生意気な!」
男は腰に下げている剣を抜いた。ハルカも応戦する。
「やはりガキだな。銅の剣かよ」
「ガキ?僕は16だぜ。それに、武器はどうでもいい。……火の玉よ、男を懲らしめよ、ギラ!!」
ハルカはフェイントとして剣を抜いた。本当は呪文で攻撃したのだ。
「なっ……うわああ!!熱い熱いなんだ?貴様、卑怯だぞ!」
「お前に言われたくない……大丈夫、その炎はお前を殺しはしない。ただ、痛い目に遭わせる為さ!」
男は余りの熱さに気絶した。
ハルカはテントの外を見た。小柄な女が立ち上がっていた。
「今日はもう終わりよ!出て行って!……ラリホー!」
しかし、効果は1人を眠らせただけだった。それどころか男たちは押しかけてくる。
「何言うんだよ!なあ……」いやらしい顔の男共が近づいてくる。
「い、嫌ああああ!!」女の悲鳴が響く。
ハルカは走り出した。
「黙れお前たち!……眠りの精よ、この男共を黙らせろ!!ラリホー!!」
すると、大人数の男たちはばたばたと倒れていく。成功したのだ。
「まあ……!」
「大丈夫ですか?あなたが苦しんでるのを見て助けに来ました」
小柄な女は涙目でハルカを見つめる。
「あなた強いのね……ありがとう。あたし、セアラ。元々はメルキドで花屋として働いていたの。でも、気付いたらここにいて…」
「僕はハルカ。ラダトームから来ました。戦士団の任務の途中で立ち寄ったのですが……。こんなことがあったとは。これは国の法律に違反している。何とかして報告しないと」
「あの、」
テントの向こうで声がした。なんと、先ほど帰ったはずのクレアとセリアが立っていた。
「クレアさん!セリアさん!何故……」
「騒がしいと思ってきたら…。私達にも何か出来ないかと思って」
「あたしがマイラの警備団に報告してくるよ!待ってな!」
「ありがとうございます!」

こうして主にハルカの活躍によって、女を“ぱふぱふ”屋として働かせていた男は逮捕され、ラダトームの地下牢に送られることとなった。
ハルカは褒美として、マイラの町長から温泉のタダ券と300Gをもらった。
「少ないが、受け取ってくれ」
「いえ。僕は十分満足です。ところで、ローラ姫か竜王について何か知っていることはありませんか?些細なことでもいいんです」
「うーむ、ああ。わしが聞いた噂だと、ここから南にある沼地の洞窟に美しい女が閉じ込められているらしい、とのことだ。……本当かどうかはわからないが、ローラ姫がさらわれたという情報もあって信じているものも多い、これで良いかね?」
「ありがとうございます。調査させていただきます」
「気をつけていけよ。竜王軍がかかわっているだろうからな」
「解ってます」

ハルカはこの一件でマイラの人々に歓迎され、宿屋でも今夜だけだがタダで泊まることが出来た。
もちろん、温泉にも入った。
「この温泉にはリュウマチなど様々な効能もあるんじゃよ。若いお前さんは疲労回復だろうな」
ハルカは一緒に入っている老人と話を幾らか交わした。
「ええ。そうです。それにしても、気持ちいいですね。温泉、僕は好きです」
「そうか。それはいいな」
温泉はハルカの疲労を回復していった。そして、宿屋で一晩を過ごした。 
 

 
後書き

今回は何故か長いです。まあ、話によってまちまちなんですが。
ゲームにもモブとして出てくるクレアっていう人、ゲームでは夫は魔法の鍵を求めて…ということになってますが、この小説では魔法の鍵の概念を無くしているので、設定が変わってます。
あと、ぱふぱふ娘に関しての設定、思いっきり捏造してます。ゲームではお色気イベントですが、この小説では訳ありな感じになってます。 
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