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その答えを探すため(リリなの×デビサバ2)

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第37話 誰が為に戦う(3)

 
前書き
とりあえず書けれたとこまで。その内、今後書いたものとひっつける予定です。 

 

 二人の魔法少女が己の最大魔法を放った瞬間、安定しているように見えたジュエルシードの封印が破れる。封印の決壊と共に、突如として吹き荒れる暴風と光の洪水。
 それは、地上はもとより、遥か上空にまで影響を及ぼした。

「きゃああぁぁあ!」

 まだ魔法に慣れ切っていないなのはは足下からの暴風に体のバランスを容易に崩す。
 そのまま体勢を立て直せないまま空中で前後不覚となり、墜落をするが

「なのちゃんっ!」

 この事を予見していたリリーがなのはの手を掴み、墜落する体を自身に引き寄せた。「わぷっ」と情けない声を漏らした後、なのはは自分がリリーに助けられたことを、自分を包む暖かさから知った。

「落ち着いたかしら?」

「え、えぇ。…っと、フェイトちゃんは!?」

 抱き寄せられたリリーの胸元から顔をあげ、きょろきょろとなのはは当たりを見回す。
 そして、かなり離れた所に見える光の柱と、その根元へと凄まじい勢いで向かうフェイトを見つけた。

「フェイトちゃん!!」

 とても小さくなったその姿へ手を伸ばし、リリーから離れようともがくなのは。しかし、リリーは一層強く抱きとめ、なのはがフェイトの元へ向かうのを止める。

「リリーさん、離してくださいっ! 行かなくちゃ、ジュエルシードをどうにかしなきゃいけないんですっ!?」

「そんな事分かってるわよ、けどもう少し状況を考えなさい!」

「でもっ!」

 あくまでも抵抗をやめないなのはに、「落ち着きなさいっ!」と一喝するリリー。抱きとめる形から両肩を持つ体勢に変え、なのはの目を覗き込むように見つめる。

「今行って、なのちゃんに何ができるの! 魔法だってレイジングハートに頼らないと使えないあなたに、何が起こるか分からないあの暴走を止める事ができるの!?」

「それは、やってみないと分からないじゃないですかっ!」

「分からないじゃダメなの! 自分でも分からない事に、この街の人の命を賭けるっていうの!?」

 訳も分からずむきになって答えるなのはに一切の容赦なくリリーは言い返す。その言葉は冷や水を浴びせられたように、暴走したなのはの思考を冷ました。
 悔しそうに俯くなのはの様子に、リリーはなのはが話を聞ける状態になったと判断。彼女の体を離し、次の一手を伝えた。

「だから、より確実に対処するためにユーノの力を借りるわよ。なのちゃん、すぐに念話? それでユーノにどうすればいいか聞いてちょうだい。合流してすぐに動ける様にするわよ」

「あっ! は、はいっ」

 リリーがなのはの手を引いて移動を開始する。手をひかれながら、念話という簡単な手段すら失念していたことになのはは赤面するが、すぐにユーノの元へ念話を飛ばした。





「ぅん、うん……。そう、この暴走はさっきの封印魔法同士が干渉しあったからだと思う。封印魔法は重ねがけすれば良いものじゃない。それで封印が甘くなっていて、魔法で使われた魔力の波と、内側からの魔力の圧に耐えられなかったんだと思う」

 空中に顔を向け、ユーノが念話を使いなのはと連絡を取る。純吾はその隣でただ立ち尽くす。その手は、白くなるまで握りしめられていた。
 視線はジュエルシードの生みだす光の柱、ただその一点に向けられていた。自分には何かできないのか、ユーノの話もそぞろに聞きながら、ただそのことだけを考え続けていた。

 すでに事態が動いてから数分立っている。
 先ほどまで相対していた狼のアルフはもういない。きっと、主人の元へと向かったのだろう。そして、その主人はアルフと共に光の下で必死に封印作業を施しているのだろう。なのはが直接見た情報だ、間違いない。

 あの少女――フェイトの孤独な目を思い出すと、純吾の胸が酷く痛んだ。仲間がいてもなおぬぐいきれない孤独、それを純吾はよく知っているから。
 そんなフェイトがこの状況を何とかしようとしているのに、自分は何もできない。ついに、人外の力で握りしめた手の皮が裂け血が出るが、今の純吾は気が付きもしなかった。

「だからっ! 苦しいのも、辛いのも分かるけどっ。僕たちが封印魔法に介入したらまた封印が上手くいかなくなる、それだけは絶対に避けないといけないんだっ! ただでさえあの衝撃波だ、封印魔法と一緒に防御魔法を使わないといけない。
……こんなことしか考えつかなくて、本当にごめん。ぼく達ができるのはせめて、街に損害がでないように結界を強化する事だけ「――ユーノ」どうしたの、純吾?」

 ふと、気になる事ができ、純吾が念話を遮ってユーノに話しかけた。
 不審に思ったユーノが念話を中断し、彼の方を向く。普段通り冷静そうな細目をした純吾がそこにいたが、どこかぬぐいきれない違和感をユーノは覚えた。

「フェイト、負担が減ったらすぐ封印ができるようになる?」

「うん…。今までの事を見た感じ、彼女は優秀な魔導師だから何かしら負担が減ったらあの状態でも確実に封印できると思うけど……」

 光の柱を見上げつつユーノは答える。
 フェイトはあれほどの圧倒的な力を封印する作業を、自身を守りながら行わなければならない。しかも、どれだけ防御しても傷は負ってしまうだろう状態で。
それは身を焼かれながら精密作業をするようなものであり、防御なり封印なり、彼女が行っているどちらかを肩代わりできれば、すぐにでも封印作業は完了するだろうと順を追って説明をした。

「けれども、そのどちらもぼく達が変わる事なんてできない。封印はさっきも言ったとおりどちらかの封印術式で統一しないと意味がない。防御魔法はなのははまだ使えないし、僕は情けない話だけど…あの衝撃に耐えきれない。術を展開する前に気絶してしまうのがオチだ。
 だから、僕たちは少しでも街の被害を――」

 そこでユーノは、純吾がどうして、そんな事を確認するのかはたと気が付く。
 彼が自分の話の中でどこに反応していたか。彼の光柱へ向ける視線が変わったのはどうしてなのか。彼が今、何を目論んでいるのか。

「純吾、まさか――」

「…フロストエース」

 少しだけ困った顔でユーノの制止を振り切り、純吾はその場から消えた。





「えぇっ、純吾君が移動したって?」

(うん、フェイトさんの所に行くつもりだと思う。けど、フェイトさんへの協力の難しさは話したばかりだからどうも心配で……
 だからなのは。リリーさんに、純吾に何かこんな時に有効な手段があるかどうか聴いてみてくれないかな? それがあれば不安も少しは無くなるけど、僕じゃもう追いついて確認することもできないし)

「う、うん。分かった。じゃあ、ユーノ君も気をつけてね」

 念話を切り、なのははレイジングハートを握りしめた。
 今彼女とリリーは光柱から少し離れて滞空している。封時結界を強化するしか今のなのは達にとれる手段はなく、まず強化すべきは光柱がぶつかっている場所だと考えたからだ。

 純吾がユーノの制止も聞かずに移動を始めた事に、例えようもない気持ちををなのはは覚えた。
 彼なら奇想天外な方法で何とかしてくれるんじゃないかという願望。自分としっかり約束したのだから、無理はしないだろうという淡い期待。そして、どうしてもぬぐい去る事ができない、彼がまた無茶をするのではないかという不安。様々な感情が煮えたぎるスープの様になのはの中で暴れまわっていた。

「なのちゃん。ジュンゴが移動し始めたって、どういう事?」

 と、念話の事を聞こうとなのはが行動に移す前に、リリーがなのはの顔を覗き込むように聞いてくた。
 なのはが覗き返したリリーの黒い瞳は不安に揺れているのが見える。なのはは、自分の心臓が不安で鼓動を速めたのを感じた。

「はい…。その、ユーノ君から聞いたんですが――」

 胸に手を置いて、必死に鼓動を押さえながらなのははユーノから聞いたことを説明する。
 そして、段々と説明を聞くリリーの顔に怒り、悲しみ、そして焦りが表れてくるのを見た。

「何しようってのよ、ジュンゴ――」

 ギリ、と奥歯を噛みしめるとリリーは翼を広げ、身を翻す。

「リリーさんっ!」

「付いて来ないでっ! あなたは、あなたがする事をしなさい!!」

 リリーについていこうとするなのはを、有無を言わさず押しとどめる。そしてなのはがそれに答える前に、光柱の元へと向かって飛び去って行った。
 
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