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その答えを探すため(リリなの×デビサバ2)

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第36話 誰が為に戦う(2)

 
前書き
一カ月も更新をせずに、申し訳ございませんでした。少し短いですが、キリが良いので投稿します。 

 
 地上で、ビルの隙間をぬって、戦いは続く。



「ちょこまかとぉっ!」

 狼の姿となったアルフが苛立ちをそのままに純吾達に光弾を次々と放った。数十の光弾が純吾の目の前を塞ぐように降り注ぐが、純吾はそれをスキルの一振りで薙ぎ払う。
 処々で光が弾け、一瞬だけ両者の姿を互いから隠した。

「ヒーッ、ホー!」

 その隙をついて、フロストエースが種族スキルである【夢幻の具足】を使い跳躍。唐突にアルフの横っ腹に現れた。
 知覚すらできていないアルフに向かって腕を突き出す。瞬間そこに魔法陣が展開、雹よりも二周り以上大きい氷の礫がそこから躍り出た。
 しかしそれを視認するよりも早く、野性の勘がアルフをそこから跳び下がらせた。飛行魔法の応用で瞬時に空に足場を作り氷塊を回避。
 そのまま空中にとどまるアルフは、フロストエースと純吾が合流するのを忌々しげに見下ろす。

「くそっ、一体坊やはどれだけレアスキル持ちの使い魔がいるっていうんだい」

 純吾の連れてきた新しい使い魔を見て吐き捨てるように言った。
 アルフがフロストエースの事をそう言うのも仕方がない。彼女からしたら、純吾の連れてくる仲魔は毎回理解の及ばない力で以て彼女を阻むのだから。

 だからと言って、相手を理解しようであるだとか、一体純吾達はどんな存在なのかを考えるであるだとか、そういう事を考えるという方へは行かない。
 戦いの最中は目の前の事についていくのに全神経を尖らせ、そうでない時間はフェイトに尽くし、その求めるものを邪魔する純吾達に怒りを燃やす。温泉街から帰ってからのアルフは、ずっとそんな調子だったのだから。
 ゆえに、そこに相手を慮る感情など生まれるはずもなく、目の前の純吾達に対する敵意だけが彼女の中に激しく渦巻いてゆく。身体を喰い破らんとするほどの荒々しいそれに身を任せ、アルフは再度、空中から純吾達に向かって強襲を仕掛けた。

 本来奪い取るはずの、ジュエルシードから段々と遠ざかっている事も考えずに。
 封印したはずのそれから、鈍く、荒々しい光が、断続的に漏れ始めている事に気が付きもせずに。




 一方、純吾達の上空。

『Thundr Smasher』

 金髪の少女――フェイトの杖から雷光が発せられる。直線的ではあるが、まさしく雷の速さでそれは彼女の敵対する2人へと迫って行く。

「効っかないわ、よっ!」

 普通なら認識すらできないそれを、黒髪の女性――リリーが手を横に薙いで弾く。その勢いのままもう片方の手で【ジオ】をフェイトに向けて放とうとするが、フェイトの姿は既に見えない。

「リリーさんっ!」

 リリーの後ろで待機していた少女――高町なのはの焦った声が響く。それとほぼ同時に、固い金属同士がぶつかった音と火花、そして魔力の余波がリリーの全身を叩いた。フェイトは自身の魔法をリリーが薙ぐ瞬間に移動。その後ろにいる、ジュエルシードを持つなのはへ斬撃による奇襲を敢行したのだ。

「くっ…」

 しかし、その奇襲はなのは自身の手で防がれてしまった。予想外の防御に、フェイトの秀麗な眉が少しだけ歪む。
 平和ボケした彼女になら十分に通じると踏んでいた。しかし、「本気でぶつかる」とぬかした少女はどうやら、そうぬかすだけの実力を備えつつあったらしい。前回ぶつかった時よりも、巧みになった防御魔法と、まっすぐな意志の感じられる青い瞳で今この瞬間もフェイトを見返していた。

「なのちゃん、離れなさいっ」

 なのはの後ろからリリーが指示を出す。なのはは魔法に触れてまだ一月足らずの素人であり、並みではないほどの訓練を課されたであろうフェイトに太刀打ちできるはずもない。
安全な距離を保ち、近づけさせる隙を与えないようにして戦うのが無難であり、リリーは自身が杖同士のつばぜり合いに介入する事で仕切り直しを図ろうとした。
だかそれを拒むように、背中越しになのはは叫んだ。

「お願いリリーさん、このまま私に任せてくださいっ!」

「んなっ、なに馬鹿なこと言ってるの!?」

「馬鹿って言われても…。私一人で戦わなきゃ本気だって、信じてもらえないのっ!」

 なのはは言葉と一緒に『Flash Move』を起動。くるぶしに生じさせた羽をはばたかせ、フェイトを押し上げる様にその場から移動した。



「…私を馬鹿にしているの?」

 ビルの隙間を飛び出し、更に上空へと押し上げられながらフェイトはなのはを睨みつける。
 自身がどれだけ辛酸を舐めて今の力を手に入れたか、その努力を侮辱されたような気持ちになるのだ。目の前の少女は素人にも関わらず、圧倒的有利だった環境をかなぐり捨て、自分との一対一の形を望んだのだから。

 自分達の事が知りたいというのなら、自分達に勝てばよいのだ。勝てば自分の持つジュエルシードを奪取できるうえに、お望み通り自分達を調べる事ができるのだ。
 もっとも、フェイトも、ここにいないアルフも勿論、そうさせる気は微塵もない。むしろ、この状況を利用して、少女の封印したジュエルシードを奪う事を狙うべきだろう。

 だから、適当な高さにまで来た事を確認すると、フェイトは膠着したつばぜり合いを無理やりにとく。そして、鎌状に形成した杖を振り上げ構える。

「馬鹿にしてなんかない。私はフェイトちゃんの事が知りたくて、でも、それは無理矢理でも、フェイトちゃんを傷つけてでもって訳じゃないの。
 だって、フェイトちゃんの寂しそうな目、それを私は知ってるから」

 真っ直ぐにレイジングハートをフェイトに向け、なのはは答える。なのはは知りたいだけなのだ。どうして、フェイトがジュエルシードを集めるのか、その回収で無茶とも言える行動をとるのか。そして、今もそんなに悲しそうな目をするのか……

「そう…」

 ぎり、と、フェイトの杖を握る手に力が入る。
 一体なんだというのだ、目の前の少女は。どうして私の事を知りたいと言い続けるのか。どうしてそこまで対峙する相手に気遣えるのか。

 そしてどうして、私の事を「知ってる」なんて言うのだろうか。

「あなたと、一緒にしないで――!」

 抑えようのない激情と共に、フェイトはなのはへと襲いかかった。



「うっは~、何よあれ。下手な映画より迫力あるじゃない」

 なのはとフェイトが上空で激しくぶつかり合っている一方で、置き去りにされたリリーは下からそれを眺めていた。見上げる空には二筋の流星。桜色と金色のそれは時に交わり、離れ、小さな弾を生みだしてぶつけあう。
 封時結界を舞台に縦横に乱舞するそれを間近で見せられたら、あんな呆けたような感想しかでないというものだ。

「ていうかなのちゃん。任せてって言ったの、そういう事だったのね。いつの間にこんな技量を。…いえ、戦いの中で、成長してる、っていうのが正しいのかしら」

 形のよいあごに手をあててリリーは考える。自分がなのはの面倒を見たのは、まだ空中での体の動かし方や、全方向を認識する方法など、基本的な事ばかり。確かにそこでもずば抜けた速度で技術をモノにしているのは知っていたが、フェイトと渡りあえるほどか、と言われれば否定せざるをえない程度の練度だったはずだ。

「ほんっと、嫌になっちゃうわよねぇ…。このままじゃ、すぐに私なんて追い抜かれちゃうわよ」

 そう言って空中でぶーたれるリリー。どっちにしろもうあの場に介入できるとは思えない、このまま最悪の事態に備えてここで待機しようと考え始めたその時

「これは?」

 リリーの黒髪に隠れた長い耳がピクリと動く。上空での、フェイトとなのはの魔力同士の衝突と共に、下の方で何かが少しずつ大きくなっていくのを感じたからだ。
 嫌な予感を振り払えないままリリーは自分の足下を見渡す。まず、純吾達を見つける。違う、そこではない。次に、フェイトの使い魔の狼の戦いを見つける。しかし、彼女もフェイトと連動して魔力が膨れ上がるなんてことはしない。

「――っ、まずい!」

 焦りを振り払うようにリリーは視線を上空へと向けた。そこには、膨大な魔力を集めつつあるフェイトとなのはの姿があり、集った魔力は、今にも解き放たれんと解放の瞬間を待ちわびる様に激しく明滅する。

「いけない! それ以上、魔力をぶつけたら――――」

 翼をはばたかせ、必死に上空の二人に向かってリリーは手を伸ばした。
 しかし、その警告は届くはずもなく。フェイトとなのはは互いの最大の魔法をぶつけあい、そして



 種が、弾けた。
 
 

 
後書き
拙作を更新しなかった間、デビルサバイバー2のアニメ、随分進行してしまいましたね。
そして11話……。う、うわぁ、ジュンゴ君が、ジュンゴ君がーーーくぁwせdrftgyふじこlp 
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