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IS<インフィニット・ストラトス> ‐Blessed Wings‐ 

作者:やつき
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序章 『交差』 ‐暴風の竜騎兵と紅の姫君‐
  第11話 『約束』 後編

――『祈り』というものは時に奇跡を起こす。信じる『可能性』や『希望』を『現実』として世界に映し出す。


――だが、『祈り』とは同時に災厄となる『呪い』でもある。なぜならば、『祈り』も『呪い』もまた人という存在の願望なのだから。


『運命は嗤う、まるで未来を求めた存在達を嘲笑うかのように。 今また、時計の針が動き出す』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『平和』というのはいいものだと俺は思う。
自身とアリアの企業所属に関しての手続きや書類、自分のIS『テンペスト』の調整にアリアの新しくなったIS『ブラッディア』の受け取りと、受け取った後日あった機体のテスト。

ここ暫くの間俺とアリアは自宅と『ネクスト・インダストリー本社』、そして『デュノア社』を毎日のように行き来するのを繰り返していた。

デュノア社の方にも直接足を運んでいるのには理由がある。その理由は――自分達のISについてのデータと稼動データに関係してくる。

ュノア社は『仏蘭西国企業連』の内の一社であり、また『ネクスト・インダストリー社』と技術提携と情報共有、そしてデュノア社自体が全面的に自分達に協力するという事で、『ネクスト・インダストリー社』と同様で自分達のデータを渡す事になっていた。

直接ではなくデータとして送信すればいいのかもしれないが、そうしないのにもちゃんと理由がある。その理由が『情報漏洩の防止』だった。
デュノア社・ネクストインダストリー社は共に大企業であり各社のセキュリティはかなり強固でもある。

だがセキュリティが絶対に突破されないなんて事はないし、データの内容が内容なのでデータとして自分達の稼動データを送ろうとした場合その道筋から漏洩を恐れたのだ。

なので、安全面を考慮してアリアの<ブラッディア>のテストデータや俺の『テンペスト』の調整案についての詳細や調整後のデータなどは直接持って行っていた。
それから安全面という理由以外でまだ理由がある。それは――『シャルロット』が関係してくる。

彼女には『デュノア社の一人娘であり、関係者。そしてデュノア社のテストパイロット』という事で『ジェームズ・デュノア』社長が俺とアリアに許可を取った上で彼女に俺が『男性操縦者』である事と、アリアがIS操縦者である事を話していた。

実際俺は、彼女にその事を教えることできっと避けられたり嫌われたりするのではと思っていたが――彼女は、それを聞いても『ユウさんはユウさんだし、アリアさんもアリアさん』と言い、そうだとしても関係は変わらないと言ってくれた。

さて、『シャルロット』が関係してくる理由なのだが――それは彼女自身が俺達に会いたがっているのと、シャルロットの現在開発が進められている『専用機』が関係してくる。
彼女の父親、デュノアさんから聞いた話だが…シャルロットは今まで自分と対等に話せるような関係の存在、つまり友人や親友などという心を開けるような存在が現在のように関係を改善する前は母親くらいしか居なかったらしい。

だからシャルロットにとって俺とアリアは初めて出来た本当の『友人』らしい。
そのこともあってか、デュノア社を訪れているときは必ず彼女も来ていて、楽しそうに話をしている。
俺とアリアも彼女の事は『友人』だと思っているし、彼女の笑顔はどことなく、相手を元気にするような力がある。だから俺やアリアもデュノア社に行く時は積極的に彼女に会うようにしていた。

それから『シャルロット』関係のもうひとつの理由――それは、彼女の『専用機』に関係していた。

元々、彼女は『専用機』を持っている。
『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』、『デュノア社』が量産している『ラファール・リヴァイヴ』をカスタムした機体、それが彼女の『専用機』だった。
一度デュノア社を訪れた際にスペックを見せてもらった事があるが、個人的には素晴らしいの一言だった。

カスタムする事で機動性と加速性を向上させ、更に射撃時の姿勢制御や補正、近接戦闘における操縦者のサポート、どれを取っても性能としてはかなりのもので、元々第三世代にも引けを取らなかった機体が更に強化される事で恐らく操者次第では『第三世代にも勝てる』のではないかと思ったくらいだ。
だがしかし、その機体は『彼女の専用機だった』のだ。今、彼女は『専用機』を保有していない。

『ネクスト・インダストリー社』と『デュノア社』の提携、そして俺とアリアの公開可能なISのスペックデータに稼動データ、それのお陰で2社のIS関連技術は飛躍的に変化した。

『デュノア社』は経営危機の根本的な問題となっていた『三世代以降のIS開発と技術』についての問題が提携により改善され始め、量産している『ラファール・リヴァイヴ』の見直しとその『後継機』の開発が始まった。

そして『ラファール・リヴァイヴの後継機の開発』が開始された事によりそのテストモデルとなる機体の製作が現在進められている、その機体が――シャルロットの『新たな専用機』である。
元々彼女が『デュノア社』のテストパイロットだったこともあり、また前々から取られていた彼女の稼動データのお陰で開発自体は順調らしいのだが、まだ時間がかかるらしい。なので今彼女は『専用機』を保有していない。

直接俺達が持って行っているデータもシャルロットが乗る事になる『専用機』の開発にも使用される事になっているため、かなり扱いには慎重だったのだ。

忙しさの嵐のような数日間がやっと終わり、当分は『男性操縦者』と同時に『仏蘭西国企業連』の発表の準備が整うまで特に何も無い限りは待機、つまりは休暇だ。
今日の予定だが――忙しさが明けた翌日、シャルロットからメールが来ていた。


"
件名:明日、お暇ですか?

本文:
ここ暫くはかなり忙しかったみたいだけど、大丈夫…?
明日なんだけど、もし暇だったら息抜きに3人でどこか行きたいと思うんだけどどうかな?
えっと、お仕事とかあれば僕のことはいいからそっちのほうを優先してね!

"

俺としては、丁度息抜きもしたかったし何より特に予定が無かったのでこの誘いは嬉しかった。暫く手続きや仕事続きだったため、本当にありがたい。
どうやらアリアのほうにも同じメールが行っていたらしく、彼女もこのお誘いには乗り気だった。

そしてその日が今日だった。約束していた時間を確認して企業などで着ているような制服や軍服ではなく私服に着替えるとアリアを呼びに行く。
ひとまず話し合いで車については俺が出す事になった為、シャルロットを自宅まで迎えに行って車で回収して、それからどうしようか――そう考えている俺は、きっと笑っていたと思う。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――本当、楽しそうに笑うよな。見てるこっちも元気を貰えるくらいに。

シャルロットを車で回収した後に俺がふと思ったのはそんな事だった。
別に彼女を『異性』として見ている訳じゃない、単純な話彼女の笑顔はとても純粋で、近くに居る人間にも元気をくれる、そう思っただけだ。それと同時に思ったのは『妹が居たらこんな感じなのかな』という思いだった。

初めて『シャルロット』に会ってから気がつけば結構な時期が経過していた。
俺は――あの時の彼女と今の彼女を比べると凄く変わったと思う。

最初出会った時は笑っていても『違和感』のある笑いだった。
だけど今は、本当に明るくて純粋に笑うようになっていると思う。
『デュノア社』と提携が決まってからは、よく行動を共にしていて俺とアリアの『二人』ではなく彼女を含めた『三人』で行動する事が多く、まるで妹のような存在となっていた。

けど、そうして『シャルロット』と親しくなるに連れて俺の心の中の迷いや恐れも大きくなっていっていた。


彼女は俺が『男性操縦者』である事を既に知っている。その上で、自分達と今のような関係を続けてくれているのだ。
彼女は『そんなの気にしない』と言った、そして俺も心のどこかで嬉しく思っているのは事実だ。
だけど――やはりいつか自分の存在が、彼女を傷つけるんじゃないかと
俺の求める『ISの可能性』を探していく内で、関わってしまった彼女を傷つけるんじゃないかという恐れだ。


――だがお前は逃げ続ける。『シャルロット』は傷つけたくなくて心のどこかで拒もうとしていて、『アリア』は隣に居る事を自分のどこかで望んでいる。 月代悠 それはどうしてだ?


自分自身の中の黒い自分の、俺に対する問いかけ。前に俺が答える事から逃げてしまった問いかけ。
俺には――答えを出す事は出来なかった。

アリアとシャルロットの違いは何か、二人とも俺の大切な『友人』だ。自分勝手だと思いつつもそんな二人を傷つけたくないという気持ちはある、巻き込んでしまってもこれ以上傷つけたくないという気持ちが。

だけど、同じ『友人』である筈の二人なのに、俺は別々の想いを持ってしまう。それは――どうしてだ? どうして、俺は…

そうしてまた俺は逃げた。それ以上考えるのが怖くなったから、『都合が悪い』という理由でその自身の問いかけから逃げた。


「それで、今日はどうするんだ? シャルロット――どこか行きたい所とか、買いたい物とかあれば付き合うぞ?」

「えっと……実は決めてないんだ、二人が最近忙かったってお父さんから聞いたから、それで二人の息抜きになればなと思って誘ったんだけど――迷惑だったかな?」

「そんなことないよ――シャルロット」

「アリアさん?」

後部座席で隣り合って座っていたアリアがシャルロットに対して口を開いた

「迷惑なんかじゃないよ、シャルロットは私達に気を使ってくれて、少なくとも私もユウもそうしてもらえて嬉しかったから――だから迷惑なんて事は無いから。 それに特に予定もなかったしね。ほら、シャルロットはどこか行きたい所とか無い?」

「えっと、でも……僕から誘っちゃったんだし、それに車まで出してもらってるから――」

「遠慮しない遠慮しない、今日はユウを足に使うくらいの気持ちでいいから」

「おい待てアリア、今何気に酷い事言われた気がするんだが? 誰が足だ、誰が」

「うん? 進んで車出してくれてしかも運転してくれるとまで言ってくれたのはユウだよね? それに――別にユウも、構わないよね?」

「――そうだな。 よしっ……シャルロット、アリアが言うように俺を足のように今日は使ってくれていいぞ、そのほうが――俺もアリアも息抜きになる」

「じゃあ――えっと、ちよっと遠いんだけど、僕実は前から言ってみたいお店があったんだ だけど色々あったせいで行けなくて」

「はいよ、任された――場所は分かるんだよな?」

そう言うと車のナビのリモコンを後部座席のアリアとシャルロットに対して投げると、シャルロットがそれをキャッチする。

「あ、うん――場所は分かるよ、今ナビの方に入れるね……あのね、ユウさん、アリアさん」

「ん?どうしたよ」

「何?シャルロット」

リモコンを操作しながら、シャルロットは暫く迷うと言った

「変な事、聞いてもいいかな?」

「どうかしたのか?」

「あのね――二人は、どこにも行かないよね?」

その問いかけに、俺もアリアも――直ぐに返す事はできなかった
なぜならば『どこにも行かないか』と聞かれてしまうと『答えられない』としか返しようが無かった。
今後の話だが、『男性操縦者』として公表してどうなるかわからない以上『どこにも行かない』とは返せなかった

「――シャルロット、あのね」

運転中の俺に気を遣ってか、アリアが答えようとするが――

「……あはは、何言ってるんだろうね僕は――うん、変な事口走っちゃったね 忘れて、二人とも」

運転していたのでバックミラー越しに少ししか見えなかったが、その時の彼女は――無理に笑顔を作っていたと思う。

きっと、この時の彼女の言葉は未来で起こる不安を感じて、シャルロットが言ったのだと思う。
俺もアリアも、結局はその言葉に対して何も返せずに――まるで逃げたみたいに、他愛の無い話をしていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「しかしまぁ……結構買ったな二人とも」

俺は持っていた二人の荷物を車に積み込むと苦笑いしながらそう言った。
あの後、シャルロットが行きたいと言っていたお店に行った後、丁度昼時だったので近場のレストランで昼食を取った。

昼食を食べながらこれからの予定を話し合った結果、二人は色々と買いたいものがあったらしく、アリアとシャルロットの買い物に付き合う事にすると決めて今に至る。

結論から言えば、俺は女性の買い物をナメていたと言わざるを得ない。
よくよく考えれば、俺自身今までは異性の知り合いなんて空軍士官学校の同期くらいのものだったしその辺りの知識に乏しいのは…まあ、自覚はしていたつもりだった。

どうやら、そんな俺の自覚なんてものは、まったくもって、全然これっぽっちも不足していたという事がよく理解できた。

ふと、仕官学校での友人から言われた言葉を思い出した。

ある男性友人曰く『女の買い物に対する甘い想像は捨てろ。そんな幻想を抱いてたら死ぬぞ。ウォーキングスタイルでモンブランに登山して死にたくはないだろう?』
ある女性友人曰く『私達女性は、男性と違って色々大変だったりこだわったりする――だから買い物とか1つにしても凄く大変なのよね』

とのことだった。
この言葉の意味を、俺は現在進行形で身をもって体感しているのである。

俺は二人が『買い物』といった時点で『なんだ、それくらいなら』という軽い気持ちだったが、実際に二人の買い物に付き合ってよく分かった。確かにこれは『ナメていると大変な事になる』
昼食後、アリアとシャルロットの希望で幾つかの店を周り買い物に付き合ったが荷物が多すぎる。

最初は袋が2つ3つくらいだったので『俺が持つ』と言って手伝っていたが、それがじきに増え、かなりの量の荷物――車のトランクが一杯になるくらいの量となった

量も量だが、最後のほうで二人の荷物を合計して袋が7つや8つくらいになってくるとその重さも尋常ではなかった。

俺自身、空軍の訓練に自身の自主トレ、エディさんからの教導などで鍛えていたので『多少の重さ』なら問題など一切無いと思っていたが――まるでそんな俺を嘲笑うかのように現実は非情だった。
本当にこの袋の中は服やアクセサリー、後雑貨くらいしか入っていないのか? と俺自身真っ先に疑うほど、重かったのだ。

なんとか車まで運んだが、俺自身二人に対して平静を装うので精一杯だった。そして同時に俺は心の中で思った『今度から二人の買い物に付き合う時はちゃんと覚悟して行く』と。


「えっと…ごめんねユウさん 車出して貰った所か荷物まで全部持って貰って」

「私もゴメン、ユウ――正直買い物に夢中になっててユウの負担考えてなかった」

申し訳なさそうに二人はそういった。だが、こうなることを事前に考えて無かった俺のミスでもある。そうだ――ちゃんとわかっていなかった俺が悪い。

「いいさ、俺がそうしたいって言ったんだし――さて、まだ行く場所あるか?あるんなら車出すけど」

「私は……もうないかな、これ以上言うとユウに悪いし」

「僕も無いよ――あ、えっとねユウさん」

「ん? どうかしたのか」

シャルロットが何か思い出したように俺を呼んだ。よし、まだ買い物があるなら既に覚悟は出来ているからドンと来い。

「あのね……提案なんだけど、これから集合墓地に行けないかなって」

「集合墓地? それってシャルロットのお母さんのお墓があるあの場所だよな? ――だけど、どうしてだ?」

「うん――ユウさん、僕と初めて会った時に献花を持ってきてなかった僕に花束を渡してくれたよね? あれって――本当ならユウさんの両親に対しての、だったんじゃないかなって」

確かにその通りだ。だけど――あの時の状況と俺自身の気持ちではシャルロットに対してちゃんと献花を捧げさせてやりたかったという想いがあった。だから俺はあの時ああしたんだ。

「だからね、あの時二人がああしてくれたように、僕も――ちゃんと返したいんだ、あの時の花束と想いを 僕にあの時のお返しを、させてくれないかなって」

素直に嬉しかった。ここ最近は忙しいという事もあって、あの時『ちゃんとまた来る』と墓石に言ったにも拘らず行けていなかったからだ。

だから――今シャルロットが提案してくれたのは非情にありがたいとも思った。

「……わかった、じゃあさ――お願いしようかな」

俺は笑顔にシャルロットに対しての感謝を込めてそう言った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シャルロットから改めて墓参りをしようという提案があって、まず俺達は墓に捧げる献花を探しに花屋に行った。
そこで用意したのは、前にも持っていっていた『白いアネモネ』と、もうひとつ――シャルロットが選んだ『ヒルガオ』があった。

用意した時にはただニコニコとしてるだけで俺とアリアがどうしてそれを選んだのか聞いても『まだ秘密』とだけ言われて教えてもらえなかったが、改めて聞いてみようと俺は墓地を歩きながら思った。

「なぁ、シャルロット」

「ん? 何? ユウさん」

「聞いてもいいかな――シャルロットがどうして『ヒルガオ』を選んだのか」

すると歩みを止めて、シャルロットは俺とアリアを見る

「うーん……デジャヴ?だよね、あの時僕もユウさんに同じ事聞いたから――えっとね、理由は『ヒルガオ』の花言葉に関係して来るんだ」

「『ヒルガオ』の花言葉?――アリア、分かるか?」

「……私もデジャヴだよそれ、前にも言ったと思うけど花言葉は全く知らないんだ、私」

このやり取りだけ見ているとまさにあの時の再現だった。

「花言葉の1つは――『絆』。 僕が込めたのは『絆がある限りずっと覚えていられる』って意味なんだ――僕個人の思ったこともあるんだけど、『大切な人との絆を忘れたくない、大切にしたい』っていうのも僕の気持ちかな」

「なるほどな――サンキュな、シャルロット。 ちゃんと『祈り』を込めてくれたものを捧げられるからさ、嬉しいよ」

「気にしないで、僕は『あの時』のお返しがちゃんとしたいっていうのもあったし――ユウさんのご両親にもちゃんとお礼が言いたいと思ったから」

俺は心の中でシャルロットに対してもう一度『ありがとう』と言うと、再び墓地の中へ歩き出した。
暫く歩くと、自身の両親の墓の前に着いた。そこで俺は2つの花束を置くと、その後暫くの黙祷を終える。

「父さん、母さん、また来たよ――色々話したいことがまたあるんだ。 色んな人と出会った事、自分のやりたい事がみつかった事、本当に目指したい事がみつかった事――それから、俺自身の覚悟ができたって事も」

前に来た時と違って、俺は自分を偽らず本心で墓石にそう言った。前に来た時は自分を偽って嘘ついて、アリアに怒られて指摘されたから。
だけど、今の俺には覚悟と信念がある。未来に対しての覚悟、見つけて見せると決めた『可能性』。今ここに居る俺の心は、自分の大好きな『青い空』のように澄んでいると思う。

「言いたい事は沢山あるんだ、だけど――きっとこの言葉に集約されると思うから、1つだけ――『父さん……母さん、俺は行くよ、『可能性』を求めて未来に。『それでも』って言い続けて、俺は進むよ 』」

心からの決意を、俺は笑顔で墓石に誓った。

そして墓参りを終えて、時計を見ると時刻は既に夕刻――そろそろシャルロットを送り届けて俺達も帰るか、それとも今からどこかに行こうかなどと、これからの予定を考えていた時
まるでその瞬間を待っていたみたいに――静かな集合墓地で俺の携帯が鳴った。

発信元を確認する――エディさんだ。エディさんには今日は出かけると言ってあったし、もしかして買出しとかそんな事についてだろうか。それとも何かあったのか?

「誰から?」

「エディさん。多分買出しとかそんな事じゃないかな」

「うーん……でもこの前、私が買出し行ったよ?」

アリアがそう言ったので ではどうしてだろうか と思いながら俺は携帯に出た

「エディさん?どうかしま――」

「ユウ、今どこに居る!」

電話の先でエディさんが大声を出して俺は驚く。随分慌てているようだが――やはり何かあったのだろうか?

「今朝出るときに話していたように、シャルロットを連れて外出中ですけど……何かあったんですか?慌てたように大声出して」

そう言うとエディさんが電話の先で一度深呼吸すると、その言葉を言い放った。

「すまない、慌てていたもので大声を出してしまった――だが、緊急事態なんだ できれば大至急『ネクスト・インダストリー本社』へと向かって欲しい 後、シャルロットさんも一緒に本社に連れて行ってくれないか。既にジェームズやアラン主任も本社に向かっている」

エディさんがここまで慌てて、そしてデュノアさんや主任が『ネクスト・インダストリー本社』へと緊急で向かっているとしたら、やはり何か大変な事態が発生したのだろう。
だが―― 一体何が?まさか、『デュノア社』以外に俺の存在を知られたのか?
俺は考えるが、一体何が起きたか見当がつかず、直接聞いてみることにした

「わかりました、シャルロットを連れてこの後本社へと向かいます――ですが一体何が?エディさんが慌てているなんて、それ程の事態ですか?」

そう言うと、その返答としてエディさんは俺も信じられないような言葉を言った


「――君以外の男性操縦者が日本で発見されたのだよ……つい先程こちらに情報が入ってきた所で、私達も混乱している――とにかく、できるだけ急いで本社へ向かってくれ」

「俺以外の、男性操縦者――?」


その言葉は俺にとっては衝撃的過ぎて、気の抜けた言葉でそのような返答しかできなかった。
そしてその瞬間、理解できた事がある。
今の『日常』が、全て壊れる。自分の恐れていた事態がとうとう来てしまったと。 
『世界』が『運命』が動く時が、やってきたのだと。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――笑う、哂う、嗤う。『運命』がただ わらう。

人の心なんて知らずに、ただ無慈悲に、ただ残酷に現実(イマ)を人に押し付ける。
その日、少年と少女の恐れていた瞬間が訪れる。覚悟を決めていたのに恐れていた、その瞬間が。
だが『それでも』二人は進む、未来へ『自分達の求める可能性』と未来へ。

『運命とは残酷であり、気まぐれである』

時に運命とは、希望を人に示すが――時に運命は人に絶望も示す。
そう、『運命』とは『気まぐれ』なのだ、どうしようもなく身勝手で自分勝手で、『残酷』であり『優しい』。

少年と少女、二人の歩き始める運命が――今動き出した。

 
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