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インフィニット・ストラトス ~天才は天災を呼ぶ~

作者:nyonnyon
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第13話

「一夏のクラス代表就任歓迎会?」

 私、『文部 紀亜良』は借りたISを返すついでに、みんなからお願いされていた伝言をクラスメイトの『友永 風音』さんに伝えている。
 クラスの中心的位置に早くもついている友永さんであったが、今回のサプライズ企画には、サプライズ対象(織斑君)と距離が近すぎるため、知らされていなかった。 ついうっかりで洩らされてしまえばここ数日の計画がパァになってしまうからだ。
 その裏事情を敏感に感じとったのか、苦笑しつつも怒ったりはしない友永さん。 しかも、料理のお手伝いまで申し出てくれた。
 できるだけ自分たちの力でパーティの準備を進める方向であったので、友永さんの提案は快く受け入れられた。 しかし、料理作る→不味いでは意味がないので、友永さんを呼んだ張本人である私と、パーティを企画したクラスメイト達で、友永さんの料理の腕前を見ることになった。
 自分から手伝いを申し出てくれるぐらいなので、確かな腕を持っているのだろうとは思うが、万が一ということもある。





 ちょっと厨房を借りて友永さんの料理をふるまってもらう。 「ちょっと待ってて」料理に取り掛かる友永さん。 てきぱきと材料を用意し、調理を進めていく姿は、一流料理店のシェフといった風情である。 まぁ、一流料理店なんていったことがないので、そこのシェフといわれてもどれだけすごいかがわからないんだけど……。

 友永さんが作ってくれたのは、ハンバーグである。 デミグラスソース(じっくり煮込む時間はなかったので、簡易ではあるが)のかかったそれは、私たちから見ても、料理部の子(今回料理を担当してくれる予定)から見ても、まったく普通の手順で作られていた。
 食材は厨房にあるものを使っていたので、特殊なものを入れたということはないだろう。 ひき肉も普通にあったものを使っていたので、別段変わりないはずである。

 『まぁ、こんなもんかなぁ』っと友永さんの実力確認に来たクラスメイト達は思った。 かくいう私も、手際はどうであれ、同じものを作れる自信があった。






 ――食べるまでは……。





「お、おいふぃ……」
「はふぅ……」
「むみゃぁ……」
「ふにゃ……」

 とてつもなくおいしい料理が出てきたことに驚いてしまう。 というより、とろけてしまっている。 普通のハンバーグといった風体なのに、これは予想外すぎた。 本気でおいしい。 普通にお金を払って食べさせてくださいって懇願できるレベルだ……。 いや、お金を払うべきだろう!!

「ごちそう様でしふぁ……おいしかったれす」

 おいしい料理に満足していた私だが、一つ思ったことがある。

 こういうときって料理下手なのが普通じゃないの!?

 いや、別に下手なことを期待してた訳じゃないけど、こういうヒロインぽい人って料理下手だったりするじゃない? こう、漫画的には……。 やっぱり漫画は空想世界の産物だから、あんな容姿は整ってるけど料理ダメみたいな人ができるんだろうか? そっちのほうがギャップ萌えとやらになるから……。

「お粗末様だよ。 みんなも料理してみたら? 意外に簡単だし、食費も浮いたりするしね」

 どこの主婦発想ですか!? と言いたくなるような発言が、友永さんから飛び出す。 確かに料理ぐらいはできた方がいいよね。

「でも、上手くいかないんだ……、何回もやってるんだけど、いつも微妙で……」

 そう、私は毎回料理を失敗してしまう。

「う~ん、料理なんて、料理本に書いてあることを実践すればだれでも一定のものは作れるようになってるはずだよ? 料理本見ても失敗する人はほとんどが、『これは別に抜いてもいいよね』とか、『隠し味にこれを入れてみよう』とか、勝手なことをやって失敗するんだし」

 うっ! 痛いところを突かれてしまった。 私が料理に失敗したときのセリフそのままだ……。

「え、でも料理本見ただけだと、このハンバーグはできないでしょ!?」

 私が、自分の失敗を思い返し、微妙に落ち込み始めたとき、パーティを企画したクラスメイトの一人、『持筧 フラン』さんが置いてあった料理本を手に取り、ぺらぺらとめくりながら友永さんに確認する。

「ないよ。 オリジナルだからね」

 言ってることが違うじゃない!! 料理本から派生してるし!!

「私の場合は、最初は料理本で基本を身に着けたって感じかな? 調味料の入れる順番とか、火を通す順番とか、基本的なことは大体覚えられるよん。 それと、調味料の組み合わせによる味の変化なんかも確認できるから、料理本は最初必須だね。 私は一応基本は覚えたから、今はそれを応用していってる感じだね」

 こともなげに言う友永さん。 もう私たちは顔を見合わせて苦笑いするしかなかった。

「そ・れ・にぃ、おいしいものを食べたいじゃない? おいしいものを食べるのが私の一番の楽しみなのよねぇ」

 ちょっとみんなが友永さんのハイスペックさに距離を置きそうになったタイミングで、友永さんからこの発言。 普段なら、「はん、そんな慰めいらねーよ。 出来るやつの自慢かコラ!!」と言ってしまいたくなるような発言だが、あんなにキラキラした目をして言われたら、何も言い返せない。 ウソをついてるんじゃないっていうのは、ちょっとふやけた笑顔ですぐにわかる。 あぁ、すごく可愛い。

「よ~し、OKOK!! 友永さんの戦闘能力も確認できたし、これで料理のほうは解決だね。 当日もおいしい料理をよろしくね♪ あ、厨房とかの話は取り付けてあるから気にしなくていいよ。 じゃあ、当日まで一夏君には内緒でおねがいね」
「任せてよ!! 当日はすんごいの(・・・・・)を用意しちゃうからね!!!!」
「期待してるよ!! じゃ、解散!!」

 持筧さんの号令により、この『友永風音の腕前確かめましょう会』はお開きとなった。










 夕方、そろそろ日も落ちようかという時間に、廊下をさまよう私は怒っていた。

「もう!! 本校舎一階受付なんてどこにあんのよ!!! 案内板ぐらい置いときなさい!!!!」

 着替えなどを詰め込んだボストンバックはそれなりに重く、小柄な私が持って歩くにはちょっと不便なのである。 まぁ、最低限の荷物は入れてあるので、二日は野宿可能であるが、やっぱりその分重いのだ。

「えぇっと? 本校舎一階受付に向かうべし……、何度読んでも一文も変化しないわよ!!!」

 あまりにも彷徨い過ぎて、何度も確認した案内の紙を読み返し、一向に変化の兆しを見せない案内に突っ込みを入れてしまう。





 私がこんなにイライラしているのは理由がある。

 一つは、校門付近でうざいやつに絡まれたから。
 学校についたばかりで、施設のあまりの広さにびっくりしていた私に、優しげな顔をしてそいつは近づいてきた。 最初は、困っている私を見かねて声をかけてくれたのかと思ったけど、初対面の癖になれなれしく絡んできたり、意味不明にニヤニヤしたり、なんか触ってきたり……。 あまりにうざいので、そいつを無視していこうと思ったが、「まぁ、待てよ。 そんなに恥ずかしがらなくても、俺がお前の行きたいところにつれてってやるからさ」とか、あまりにもしつこかったので思いっきり上段回し蹴りで顎を打ち抜いてやった。 首が半回転して、口から「けぺッ」って言う奇妙な言語を発し、膝から糸の切れた操り人形のように崩れ落ちたけど問題ないでしょ。 あ、銀髪の『オッドアイ(?)』とかいう容姿の奴だった。 この学園で友達ができたら、注意するように呼びかけておこう。 「校門付近には『変質者』がでるよ」と……。

 もう一つは、受付を探しているときに幼馴染を見つけたんだけど、そいつの隣には知らない女が侍っていた。 しかも二人だ。 一人は黒髪をリボンでポニーテールにした女で、つんけんした態度を取りながら幼馴染に接していた。
 もう一人は、金髪でいかにもお嬢様といった外見だったが、こっちもいかがわしい空気をさせながら幼馴染とべたべたしていた。

 一夏のやつぅ!! この幼馴染、『(ファン) 鈴音(リンイン)』というものがありながら、ほかの女子に鼻の下を伸ばすなんて……!!!!! 許せないわ!!!!!

 ってことで、いろいろ嫌なことが重なったため、とても機嫌が悪いのである。

 あまりの怒りに適当に進み過ぎて本当にここがどこかわからなくなり始めた時にその子は現れた。

「あれ? こんなとこで何してるの? その荷物……、不審者? ヤバ、警備員呼んだほうが……」

 いきなりこっちを見ながら物騒なことを言い始めたその子。 待った待った、私は怪しいもんじゃないわ!!!

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!! 私は明日転入する予定の『(ファン) 鈴音(リンイン)』よ。 今日は入寮の手続きとか諸々の手続きに来たのよ!! ほら、入学受付の案内状よ」
「え? どれどれぇ。 偽造……じゃないようね。 ふ、IS学園はあなたを歓迎するわ」
「ちょ、なんであんたが学園最高責任者みたいなこと言ってんのよ!?」

 いきなり案内状にどこから取り出したのか、ブラックライトを当て始める彼女。 案内状の表面にはIS学園の透かしが無数に浮かび上がっている。 驚愕の面持ちで私が案内状を眺めていると、透かしを確認したのか満足そうな様子でブラックライトを消し、案内状をこちらに引き渡す彼女。 案内状を確認すると、なぜか偉い人口調で話しだす。 思わず突っ込んでしまったけど、もしかして実は偉い人とか? 案内状の真贋を見分ける方法を知っているぐらいだし、私と同い年ぐらいなのにすごい権力とか持ってるってこと?

「えっと、本校舎一階の受付ってところに行きたいんですが……、どこかわかりますでしょうか」

 ただ権力を振りかざしてくるだけのおっさん連中なら、ガンガン攻めていける私でも、流石に同い年ぐらいの権力者にはなかなか突っ込んでいけない。 ついつい敬語になってしまう。

「ええ、知っているわ。 中国代表候補生『(ファン) 鈴音(リンイン)』さん」
「え!? 知って……」

 知っていたてこと? って、学園でも偉い人なら知ってて当然か……。

「それで、本校舎一階の受付でしたね……。 それでは鈴ちゃん行きましょうか」
「鈴ちゃん!?」
「あら? 嫌でした? 私と同い年ぐらいだと思いましたので、失礼ながらあだ名というものをつけさせていただきましたのですが」
「いえいえ、全然大丈夫です!! はい、まったく、問題なく!!」

 ふふふっと上品に笑う目の前の彼女。 きっと上流階級出身の方なんだろう。  会ってすぐの時はなんだかあか抜けていたように感じたけど、こっちが本性か。 口元に手を当てる仕草も洗練されていて非常に優雅である。

 ヤバ、私別に同性好きとかじゃないけど、この子は素直に可愛いと思っちゃうじゃない。 ちょっとまって、私には一夏が……、って一夏は別にただの幼馴染よ幼馴染!! あ、名前を聞いておかないと……。

「あの、そういえば聞いてなかったと思うんですが、お名前は///」

 恥ずかし!!! なんで名前聞くだけでこんなに恥ずかしいのよ!!

「あ、これは失礼いたしました。 (わたくし)、友永 風音と申します。 このIS学園、一年一組に在籍させていただいております。 代表候補生である 鈴ちゃんにお名前を憶えていただけるならありがたいですわ。 風音でも何とでもご自由にお呼びください」
「あ、これはご丁寧にどうも。 風音さんって呼ばせていただいても?」
「何とでも構いませんよ。 何ならふーちゃんでもいいんですよ?」
「いや、流石にそれは……」

 いくら私でも初対面の人をいきなり呼び捨てにしたりはできない。 ましてや、相手がこんなお嬢様っぽいならなおさらである。

「そういえば迷ってらした様子ですけれど、案内板はご覧にならなかったのかしら?」

 友永さんからの疑問の声。

 え!? 案内板なんてあった!!?

「え!? 案内板ですか? どこにあったんでしょう? 私、校門の方から来たのですが、そんなものなかったと思いますけど……」
「はい? えっと……、案内板は校門を入ってすぐのところにあるのですが……、気が付きませんでしたか?」

 はぁ!? あんなところにあったの!? あ、そうか、あのウザキャラをあしらってたから気が付かなかったのかも……。

「あ、ははは、急いでいたもので……」

 乾いた笑いを返すことで精いっぱいだった。





 その後も受付に案内されながらいろいろと話をした。 校門付近で人をブッ飛ばしたって言ったときはすごく驚いてたみたいだけど、相手の特徴を聞くと、何やら納得したような顔をして、ケータイを取り出し、「車車さん? 私です……。 ええ……、ええ……、それでは校門付近らしいので回収をお願いいたします」と、どこかの誰かとやり取りをしていた。

 もしかして執事? 学園内に執事を潜ませてるってこと? どんだけお嬢様なのよ……。





 無駄に広い施設のうち、校舎を二つほど越え(私はどれだけ迷っていたんだろうか?)、私もだいぶ風音と打ち解け、敬語が取れ始めたとき、風音は突然こういった。

「鈴ちゃん。 私たちはもう友達と言っていいですよね?」

 ちょっとうるんだ瞳で、泣きそうな声で聞いてくる風音。

 当たり前じゃない!!! だからそんな泣きそうな顔しないで……。

「当然よ!! もう風音とは親友と言ってもいいわ」

 私のこの発言を聞いて風音の顔がぱっと輝く笑顔に変わる。

「そう? じゃあ、もう堅苦しいしゃべり方なんてしなくていいよね。 いや~、堅いしゃべり方なんかしてると肩がこっちゃうね。 ほんと、どこかマッサージでもうまい人いないかしら? セシリンとこの執事さんとかそういうのうまそうだよね。 それよりも、全自動こりほぐしマシーンでも作ったほうが現実的? ねぇ、鈴ちゃんはどう思う? それよりもさぁ、鈴ちゃんほんとなんでこんなに迷ってるの? まぁ、あのバカに絡まれたんだし仕方ないかなぁ、案内板見ないと、本校舎と第一校舎、第二校舎、第三校舎、整備課棟、訓練棟の違いとかはっきり言ってわからないしね。 仕方ないよ。 あ、それとあのバカのことは気にしなくていいからね。 きっちり車車さんに回収をお願いしたから。 多分電話をかけているときには近くにいたんじゃないかな? どこかへ移動中だったみたいだし。 そういえば鈴ちゃんは代表候補生だよね? ってことは専用機もち? すごいねぇ。 中国だから龍とか彫られてそうなイメージだね。 こう、『ドラゴン砲』って感じの武器がありそうだね。 それよりも青竜刀とかの武装の方がしっくりくる感じ?」

 ……え!? あれ!? ついさっきまでのお嬢様がいなくなったよ!? どこに行ったの? イリュージョン?

「……が……でぇ、……が……だから、……だよねぇ。ねぇねぇ、鈴ちゃんはどう思うかな?」

 この目の前の風音と同じ顔、同じ声で話す別人はいったい誰? え!!!? 風音本人!? 嘘だ!!!

 この後、風音と別れ、受付を経て、寮でベッドに入っても、風音と風音さんが同一人物にはつながらなかった。 うん、きっと双子の姉妹とかだろう。 一卵性双生児に違いない。 うん、きっとそうだ、絶対。 
 

 
後書き
実際の時系列では、

一夏大穴事件、鈴クル、パーチーは同日中に起こっているぽいです。

が、ここはパラレルワールドですんで……。

ネタ解説

嘘だ!!:ネタらしいのですが、よくわかりません。 なんか蝉が鳴くらしいです。

~だ、絶対:ネタなのかな? よくわかりません。 
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