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三つのオレンジの恋

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第三幕その六


第三幕その六

「それでは王よ」
「うむ」
「どうされますか?」
 パンタローネが彼に対して問うた。
「ここは」
「縛り首だ」
 そうするというのである。
「三人共だ。いいな」
「わかりました。それでは」
「縛り首なんて」
「何という屈辱」
 それを告げられたクラリーチェもレアンドルもまずは苦い言葉を出した。
「よし、ではすぐに処刑をせよ」
「あっ、それはお待ち下さい」
「ここはどうか」
 しかしここでパンタローネと道化師がこう言ってきたのであった。
「今は婚礼の場ですし」
「それに悪巧みは阻止されましたし」
「許せというのか」
「はい。どうか御慈悲を」
「私からも御願いします」
「ふうむ」
 王はそれを聞いても即断しなかった。王子に顔を向けて問うのだった。
「そなたはどう思うか」
「私ですか」
「そうだ。どうすればいいか」
 あえて被害者でもある彼に対して問うたのである。
「この件は」
「確かに彼等は罪を犯しました」
 王子もそれはわかっていた。
「しかしです。私は殺されてはいません」
「それは確かだな」
「では死刑にするまでもないでしょう」
 これが彼の考えであった。
「そうですね。追放で宜しいかと」
「よし、わかった」
 王は彼の言葉を受けてそのうえで頷くのだった。
「それではだ」
「はい。判決は」
「如何に」
「追放とする」
 パンタローネと道化師に応える形で述べるのだった。
「この三人は追放とする。それでよいな」
「はい、それではそれで」
「そうしましょう」
 二人はその判決を聞いて満足した面持ちで応えた。それは家臣達も貴族達も同じであった。
「そうだな。これでいいな」
「ああ。確かに罪を犯したとはいえ」
「殺すことはない」
 判決は妥当だと。誰もが考えているのだった。
「さて、それではだ」
「祝いだが」
「まさかここでそうしてくるなんて」
 しかしであった。ここでまた一人出て来たのである。今度は銀髪の魔女であった。
「チェリー、よくも」
「私の勝ちだ」
 チェリーはそのファタ=モルガーナを見据えて言葉を返した。
「そうだな。それを認めるな」
「ええ、仕方ないわ」
 忌々しいがその通りだった。それは彼女も認めるしかなかった。
「私の負けよ」
「見たか。ではすぐに立ち去るがいい」
「そうしてやるわ。けれど」
 負けは認めた。しかしそれでも彼女は毅然としてこう彼に返すのだった。
「今度はそうはいかないわよ」
「今度はか」
「今夜も」
 夜の話もするのだった。
「覚えていることね」
「忘れるものか、今夜もだ」
 チェリーも受けて立つのだった。
 
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