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三つのオレンジの恋

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第三幕その五


第三幕その五

「そう思っていたがな」
「父上、それでは」
「わかっておられていたのですか」
「その女が王女ではないのはな」
 わかっていたというのである。こう二人に述べる。
「そなた達は嘘をつかん。それでは答えは一つしかない」
「左様でしたか」
「それで」
「しかしだ」
 王はさらに言うのだった。
「本物の王女がいるのはわかった」
「はい」
 王子はもう王女の手を取って二人寄り添っている。しかし話はこれで終わりではなかったのである。
「だがその黒人の女は何者だ?」
「さて、それは」
「それがさっぱり」
 王子も道化師もこう言って首を傾げるばかりであった。
「私にもわかりません」
「会ったこともない人です」
「それも当然のことだ」
 ここでチェリーがまた言った。
「会ったことがないのはな」
「当然なのですか、それは」
「といいますと」
「この女はだ」
 チェリーはスメラルディーナを見据えている。黒人女は腹を括った様に無言で彼を睨み返している。
「スメラルディーナというのだ」
「スメラルディーナ?」
「それは一体」
「魔女ファタ=モルガーナの召使いなのだ」
 それだというのである。
「我が仇敵のな」
「それでは」
 ここまで話を聞いた道化師は察したのだった。
「ファタ=モルガーナが以前庭にいたのは」
「そうだ。悪巧みをしてのことだ」
「やはり」
「元々王子に鬱の呪いをかけたのもあの女だ」
「そうだったのですか」
「そして」
 チェリーの告発は続く。
「これには関わっている者達がいる」
「まずいわね」
「これは」
 今の彼の言葉を聞いて顔を顰めさせたのはクラリーチェとレアンドルだった。
「というよりはその者達が魔女に頼んだことだった」
「それではだ」
 王は魔法使いの話を聞きながら述べてきた。
「一連のことはだ」
「左様、仕組んだ者達がいるのだ」
 こう王に対しても語るチェリーだった。
「王の姪のクラリーチェと大臣のレアンドルだ」
「何とっ」
「そうだったのかっ」
 家臣達と貴族達が一斉に彼等の方を向いて声をあげる。
「怪しいとは思っていたが」
「二人で共謀してか」
「まずいわよ、これは」
「いえ、まずいなんてものじゃありませんよ」
 二人は怒りに満ちた顔の一同に囲まれて進退窮まっていた。
「どうしようかしら」
「逃げられませんし」
「その二人と黒人の女を捉えよ」
 すぐにこう言う王だった。
「よいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
 悲劇役者達と悲劇役者達が二人に向かい呆けた者達とピエロ達が黒人女に向かう。こうして三人は捉えられ王の前に引き出されたのであった。
 
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