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三つのオレンジの恋

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第三幕その二


第三幕その二

「しかしだ」
「そうですよ」
 道化師も言う。
「僕が約束したのはニネッタ王女で」
「貴女ではありませんが」
「いえ、ニネッタ王女は私です」
 しかしスメラルディーナはあくまでこう主張するのだった。
「それは間違いありません」
「間違いだよ」
「どうしてこの人が?」
「どういうことなんだ?」
「さて」
 家臣達も貴族達もこの流れには訳がわからない。
「どういうことなんだろう」
「黒人の国があるのは知っているが」
 それはよく知られていることだった。彼等もそうした国と交流があるからだ。
「それでも。王子は嘘を言っていないようだし」
「道化師もだ」
「トゥルファルディーノよ」
 ここでパンタローネが道化師に対して尋ねてきた。
「その言葉に偽りはないな」
「私は冗談や戯れは言いますが嘘は言いません」
 化粧の下に真面目そのものの顔を浮かべての言葉だった。
「それは大臣もよく御存知だと思いますが」
「その通りだ。では」
「君からも何とか言ってくれ」
 王子はそのパンタローネに対して話した。
「何でこんなことになったんだ」
「そうだな。全く以って奇妙な」
 家臣達と貴族達の話も続く。
「誰なんだ?あの黒人は」
「王子が連れて来られたという本当の王女は何処に?」
「それだな。だとしたら何処なんだ?」
「どうなっているやら」
 彼等も首を傾げるばかりであった。しかしここで王が言った。
「王子よ」
「はい」
「約束したのだな」
 このことを我が子に対して問うのだった。
「その通りだな」
「はい、それは間違いありません」
 胸を張って父王に対して述べる。
「私は王女と結婚の約束をしました」
「ならばだ」
 そのことを確認した王はあらためて息子に対して告げた。
「王女と結婚するがいい」
「王女とですか」
「その女が自分を王女と言うならばだ」
 スメラルディーナを見ての言葉である。
「その女と結婚するのだ」
「ですが父上」
「王になる者は嘘をついてはならない」
 だが王の言葉は厳しいものだった。
「だからだ。いいな」
「それはその通りです」
「ならばだ。話はこれで終わりとする」
 王はその絶対そのものの言葉で告げた。
「よいな」
「わかりました。それでは」
「婚礼の準備を整えよ」
 王はさらに一同に告げた。
「よいな」
「はっ、では」
「すぐに」
「何がどうなっているのだ?」
「私にもわかりません」
 すぐに婚礼の場が整えられようとしていた。その中でパンタローネと道化師は困惑しきった顔で言い合う。王子も何がどうなったのか把握しきれず呆然となっている。
「ニネッタ王女は一体何処に」
「わかりません。それは」
「そしてこの黒人の女は」
 王子も道化師も訳がわからないという顔になっている。しかしそれをクラリーチェとレアンドルは見ながら。二人でほくそ笑んでいるのだった。
 
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