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問題児が異世界から来るそうですよ?~あれ?なんか人数が多い?~

作者:ほにゃ~
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第一話 問題児が増えていますよ?

「お、黒点発見」

「やっぱり太陽が氷河期に入り始めてるってのは本当なのかしら?」

制服のまま川辺で初夏の気配を感じながら逆廻十六夜と久米栞は太陽を見上げる。

本来なら高校に行き出席をしなくてはいけないが通う義理もすでに無いので二人は川辺で黄昏る遊びを

考案したが、傍から見ると恥ずかしいだけの遊びである。

「何か面白いことねえかな…………」

十六夜はヘッドホンを外すと川辺の向うから背中に刺繍の入った長ランを着た不良集団に囲まれた少年を見つけた。

少年は泣きながら土下座をしている。

十六夜と栞はゆっくりと体を起こしその不良集団に話かける。

「……あ~暇。超暇。暇が売れたら人稼ぎできる自信があるね。」

「そうね。私も暇。超暇。なので、どうかしらそこの不良共。娯楽をくれたら暇という長期入院休暇をプレゼントするわよ?」

「両手両足骨折と精神崩壊のオプション付きだぜ?」

だが、誰一人として十六夜と栞の言葉に反応するものはいない。

なざなら、二人は叫んだわけではなく隣で話しかけるようにいったからだ。

十六夜と栞は立ち上がり手ごろな石を拾い上げると今度は盛大に叫び石を投げる。

「「俺(私)達も混ぜろやゴラァァァァァ!!」」

二人が投げた石は第3宇宙速度に匹敵する速度で飛び不良と苛められていた少年を巻き込み、吹っ飛んだ。


「ぎゃあああ!」

「逆廻十六夜と久米栞だ!!全員逃げろ!!」

「た、助け――――」

「オラオラ、ドンドン投げ込むぞ!」

「全力で走れや―――!」

豪快な笑い声と共に石は投げ込まれ巨大なクレーターを作り上げる。

不良と少年は恐怖しながら逃げ纏う。

十六夜と栞は少年を助けるために石を投げたのではない。

“強きを挫き、弱気も挫く”それが二人の座右の銘である。

「ハハ、だらしねだらしねえ!気合が入ってるのは服装だけかよ!」

「今度はモヒカンにでもしてきな!」

二人は腹を抱えて不良共と少年を見ながら笑う。

けたたましく笑い転げ、地団駄を踏み笑い続ける。

笑うのを止めると辺りは静かになる。

二人は立ち尽くし、溜息を尽きながら

「……つまんね」

「……退屈ね」

本音を吐露する。

不良共や少年の滑稽さを皮肉に思っても楽しくはなかった。

試しに声をだして笑ってみたが何も変わらなかった。暇つぶしにもならない。

教科書も入っていないペラペラな鞄を持ち、川辺に背を向ける。

その瞬間、横薙ぎの風が吹いた。

その瞬間、栞のスカートが捲れ中が見える瞬間を十六夜は見逃さなかった。

(ピンクか)

「十六夜、今見たでしょ?」

「ごちそうさん」

「言ったら見せてあげるのに」

「チラリズムにエロさを感じる年頃なんだよ」

「あっそ」

そう言う二人の手には封書が握られていた。

封書には達筆でこう書かれていた。

『逆廻十六夜殿へ』

『久米栞殿へ』






「鬱陶しいわ、『黙りなさい』」

久遠飛鳥が叫ぶと先ほどまで騒いでいたセミの鳴き声が止む。

それをとくに不思議にもおもわず飛鳥は自室のカギを開けてベットに倒れ込む。

「くだらない。あの大爺様ですらこれよ」

飛鳥の家、久遠家は日本で五指に入るほどの財閥だが、GHQの財閥解体命令により久遠家もそれの対象になった。

だが、飛鳥の大爺様の一派がそれを逃れようと裏でロビー活動を行っていたが、これ以上相手の反感を買うのは得策ではないので一族は飛鳥を呼んだ。

別に掟や決まりがあるわけではない。

ただ飛鳥の言ったことは全て言ったとおりになる。

そんな簡素で無味な人間関係に飛鳥は飽き飽きしていた。

その時、机の上に一枚の封書に気付いた。

『久遠飛鳥殿へ』

自分宛の手紙だった。

ドアと窓、緊急用の隠し扉を調べるがどれも使用した形跡はなかった。

その時、ドアがノックされメイドの声が聞えた。

「お嬢様、冷たいお飲み物を―――」

「貴女、つかぬ事を聞くけど、私がいない間に誰か部屋に入った?」

「?この部屋の鍵はお嬢様の持つ鍵しかありませんから、誰も出入りはできません」

「そう………そうよね。いいわ、皐を呼んで」

暫くすると扉がノックされた。

「入って」

「失礼します」

扉を開けて入って来たのは三上皐。歳は飛鳥と変わらないが、飛鳥の御世話係を務めている。

「早速だけと、この手紙が何かわかるかしら?」

「お嬢様にもきたのですか?」

「もしかして皐も?」

「はい」

そう言って懐に手をやり一枚の封書を取り出した。

『三上皐殿へ』

「てっきりお嬢様の悪戯かと思い気にも留めませんでしたがお嬢様でないのなら一体誰が?」

封書の差出人を気にする皐を余所に飛鳥は嬉しそうに頬を緩ませていた。

「ふふ、どなたが知りませんが、密室殺人なら密室投書とは気に入りました。

皐も手紙を開けなさい。そうすれば、差出人が分かるかもしれないわ」

「はい」

嬉々としながら封書を開ける飛鳥と不思議そうに封書を開ける皐だった。









季節は秋になり紅葉前線に差し掛かっている。

葉の色彩が褪せない間に見に行こうと春日部耀は着物を着こんでいた。

そして、縁側には耀の恋人の霧雨柊人と一匹の三毛猫がいた。

「気持ちいい日だな」

『せやなー、こんな日は穏やかに縁側で昼寝すんのが一番や』

始めに言うが決して三毛猫は化け猫ではない。

柊人自身が特別なのである。

「残念ながらこの後、耀と紅葉を見に行くんだ」

『そら、残念やわ。旦那との昼寝は楽しいのにな~』

「また今度な」

優しい手つきで隣に座る三毛猫を柊人は撫でる。

三毛猫も嬉しそうに目を細める。

「……ん?」

その時、空から何かが降ってくるのが見えてソレをキャッチすると二通の封書だった。

封書には『霧雨柊人殿へ』と書かれていた。

自分宛の手紙だった。

もう一通には『春日部耀殿へ』と書かれていた。

「空から…手紙?」

『不思議やな~』

自分と耀宛ての封書が空から降ってきたことを不思議に思っていると三毛猫が耀宛ての封書を咥えた。

「こら、三毛猫」

『お嬢に渡してくるで』

三毛猫は意気揚々に駆け出し、耀の下へ向かう。

柊人もそれを追いかけるとちょうど耀に手紙を渡しているところだった。

『お嬢、空からお嬢宛ての手紙が!』

「空から?」

着物を着ていた耀は不思議そうに三毛猫から封書を貰う。

『勘違いしないでくだせえお嬢!ワシは一言も嘘は言っとりません!』

「三毛猫の言ってることは本当だぞ。俺も見た」

「うん、わかってる。嘘じゃない」

幼くも端正な笑顔で返す。

落ち着きを取り戻した三毛猫は今度は手紙の中の内容が気になるらしく目を輝かせ始めた。

『お嬢、早く開けて下せえ。好奇心の余りストレスで禿げちまう』

「うん。帰って来てからね」

耀は肩に乗ってる三毛猫と封書を一度置き、着物を着る作業に戻る。

柊人も着替えを覗くなどという行為をする気は無いので縁側に戻る。

『おーじょーうー!だーんーなー!そんな連れんこと言わんといてー!早く読んでおくんなせー!着物なんて後にして――――』

ビリ。

嫌な音が聞こえた。

扉を出ようとした柊人はゆっくりと後ろを振り向き、耀も恐る恐る袖の下を見る。

そこには、着物の脇から足先までが醜く避けていた。

「「………………………………………………………………………………………」」

『お、お嬢……!』

耀は無言で打ちひしがれる。

その着物は耀のお気にりでもあり、柊人がほめてくれたものであって精神的にかなり来るものがあった。

裂け具合からみて一日二日で修繕可能とは思えない。

『お、お嬢……ワ、ワシ……』

「耀、その、何というか……」

「いいよ、別に。破れたものはしかたがない。柊人も気を使わなくていいから」

溜息を一度吐いてから、苦笑し、近くに置いてある私服に着替える。

柊人はその間目を塞ぎ、後ろを向いていた。

恋人同士と言えども礼儀はわきまえる。

着替えが終わると三毛猫が持ってきた封書の封を二人は切った。

『なんて書いてるです?』

「「………………」」

封書の中の手紙を好奇心旺盛な三毛猫は耀の肩に乗り、一緒にその文章を読む














『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの“箱庭”に来られたし』
















「わっ」

「きゃ!」

「おっと」

「これは……」

六人の視界は間を置かずに開けた。

彼らは上空4000ⅿほどの位置で投げ出されたのだ。

落下に伴う圧力に苦しみながらも六人は同様な感想を抱き、同様の言葉を口にした。

「ど………何処だここ!?」

見たことも無い風景が目の前に広がっていた。

世界の果てと思えるような断崖絶壁。

彼らの真下には縮尺を見間違うほどの巨大な天幕で覆われた巨大都市。

そこは―――――――――完全に異世界だった 
 

 
後書き
次回からオリ主4登場

ご期待下さい。 
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