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ジークフリート

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第一幕その九


第一幕その九

「面白い余興をな」
「余興だと?」
「そうだ。余興だ」
 またミーメに告げた。
「わしの首を賭けよう」
「首を?」
「知恵比べにな」
「わしと知恵比べをするというのか」
「そうじゃ。御前に役立つことを御前がわしに質問してもわからなかったり」
 こう言うのだった。
「わしの知恵が足りなかったらわしの首は御前のものだ」
「そうするというのか」
「それでどうじゃ」
「何なのだこいつは」
 ミーメはいい加減そのさすらい人に恐怖を感じだしていた。
「不気味な奴だ。それではじゃ」
 彼は言うのだった。
「こいつがわからないような話を聞いてやったじゃ。よし」
「それでどうするのだ?」
「それに乗った」
「賭けるのだな」
「うむ、用心深く答えるのじゃな」
 さすらい人に顔を向けて指差したうえで念を押してみせた。
「質問を三回するからな」
「三回答えよというのだな」
「そうじゃ。どうやらあんたは」
 さすらい人を警戒する顔で彼に告げた。
「この地上を随分沢山歩き回ったのじゃな」
「その通りだ」
「この世の中を広く旅したのなら知っておるだろう」
「ではまずは何を聞くのだ?」
「地下に住んでいるのは何じゃ?」
 このことを彼に問うのだった。
「その種族は」
「地下の深い場所にいるのは」
 彼の問いにさすらい人はゆっくりと答えてきた。
「二ーベルハイムが彼等の国だ」
「その国がか」
「彼等は黒いアルプでかつてはアルベリヒがその王だった」
「アルベリヒ」
 その名前を聞いて暗い顔になったミーメだった。
「あいつの名前まで」
「あの男は魔法の指の力でニーベルングの者達を好き勝手に働らかせていた」
「そのことまで知っているのか」
「数え切れぬまでの光り輝く財宝を積み上げさせてこの世を支配しようとした」
「そこまで知っているのか」
「これでよいか」
 ここまで話したのだった。
「これで」
「いいだろう」
 ミーメも渋々ながらそれを認めた。
「わかった」
「では二番目の質問だな」
 さすらい人の方から言ってきた。
「それだな」
「それか」
「次は何を聞くのだ?」
「大地の背のことだ」
「地上か」
「まず人間達がいる」
 彼等のことをまず述べた。
「そしてその他には誰がいるのだ?」
「地上には人間達の他に巨人族がいる」
 彼等だと答えるのだ。
「彼等はリーゼンハイムという国にいる」
「その国にだな」
「そう、そして」
 彼はさらに話してきた。
「その国の主は二人いた」
「二人か」
「ファゾルトとファフナーの兄弟だ」
 彼等だというのである。
「彼等はニーベルングの宝を羨みその莫大な宝を手に入れた」
「うむ」
「その時に指輪も手に入れた」
「指輪のことも知っているのか」
「しかしだ」
 今のミーメの言葉には応えずにさらに言ってみせてきていた。
「その指輪を巡って彼らは争い」
「そして」
「ファゾルトは倒れファフナーは竜となりある洞窟で財宝を守っている」
 さすらい人は言いながら森の奥に顔を向けてみせた。ミーメはその仕草を見て内心ギクリともなった。
 
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