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ジークフリート

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第二幕その十二


第二幕その十二

「兜も指輪も」
「全てはジークフリートのものね」
 ここでまた小鳥の声が聞こえてきた。
「また小鳥の声が?」
「指輪も兜も。ただ」
「ただ?」
「ミーメには注意しないと」
「ミーメに」
 それを聞いてファフナーの今際の言葉を思い出さずにはいられなかった。
「やっぱりあいつは僕を」
「彼は不実な男」
 これもファフナーの言葉と同じだった。
「彼の企みをジークフリートが見抜いてくれらいいけれど」
「そうか、それなら」
 それを聞いてある程度意を決したジークフリートだった。
「若しそんな素振りを見せたら僕はあいつを」
「さて、それではじゃ」
 ミーメはミーメで考えていた。
「ここは殊更上手くやってじゃ」
「おうい、ジークフリート」
 恭しくを装ってジークフリートの前に出たのだった。
「恐れを学ぶことはできたか?」
「いいや」
 ここでは忌々しげに返したのだった。
「全く」
「全くなのか」
「そうだ。結局な」
 そしてこうも彼に告げた。
「何もわからなかった」
「そうか。わからなかったか」
「ああ、全くな」
「しかし竜は倒したんだな」
「その通りだ」
 それは事実だというのだった。
「この手で倒した」
「ならいいじゃないか」
「残酷な奴だったが死んでしまって悲しい」
「悲しい!?」
「そうだ、悲しい」
 こう言うジークフリートだった。
「あいつが死んで悲しい」
「何でそんなことを言うんだ?」
「もっと嫌なやつが生きているからだ」
 忌々しげにミーメを見てきての言葉である。
「今僕の前でな」
「またそんなことを言うのか」
「あの竜を僕に倒させたそいつがまだ生きている」
 ミーメを忌々しげに見てであった。
「僕はそれが一番腹が立つ」
「まあそう言うな」
 またこんなことを言うミーメであった。
「そんなことを言ってもだ」
「そんなことを言っても?」
「詮無いことだ。何故ならな」
 何故かだった。ここでこんなことを言ってしまったミーメだった。
「御前を永遠の眠りにつかせてやるからな」
「何っ!?」
 そしてジークフリートはそれを聞き逃さなかった。
「今何て言った!?」
「御前にやってもらいたいことはちゃんとやってくれた」
 ミーメの迂闊な言葉は続く。
「あろは獲物を頂くだけだ」
「獲物をだと」
「そうさ。これは上手くいきそうだ」
 ジークフリートを見ながら楽しく話していくのだった。
「御前は騙し易いからな」
「僕を殺そうというのか」
「そんなことを言ったかな」
 とぼけるがまた言ってしまったミーメだった。
「いいか、ジークフリート」
「今度は何を言うんだ」
「御前も御前の種族も大嫌いだった」 
 言葉は続く。
「心のそこから憎んでいた」
「そうだったのか」
「愛情から育てたわけじゃない、ファフナーの宝の為にだ」
 このことを白状してしまった。本人の前で。
 
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