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ジークフリート

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第一幕その十三


第一幕その十三

「それもまた保障しよう」
「そうか」
「御前は三回質問し私は三度答えた」
 先程のことを言ってきたのである。
「つまらない関係のないようなことだったが」
「ふん、そう思いたいのなら思うがいい」
「御前の一番身近にあること、役に立つことはだ」
「それをか」
「そうだ、それを聞かなかった」
 こう彼に告げるのだった。
「だが私がそれを言い当てればだ」
「どうだというのだ?」
「御前は気が触れるであろう」
 笑いもせずに彼に告げてきた。
「必ずな」
「そう言うのか」
「言えると答えよう」
 そうだというのである。
「少なくとも私はこの頭を勝ち取り」
「元々興味もなかったがな」
「そして御前も少なくとも今は生き延びた」
「このまま永遠に生き延びてみせるさ」
「その知恵に敬意を表してだ」
 彼は言うのだった。
「竜を倒す勇敢な人間は誰か」
「人間なのだな」
「そうだ、今は生き延びている小人よ、よく聞くのだ」
 言葉は予言めいたものになっていた。
「恐れを知らぬ者だけがそれをできるのだ」
「竜を倒すことをか」
「そしてノートゥングを鍛えることができるのだ」
 彼は告げた。
「そしてその人間に御前の頭を委ねよう」
「わしは助かった筈だぞ」
「今はな」
 妙に思わせぶりな言葉であった。
「今は確かにそうだ」
「何度も言うがこれからもだ」
「ではそうなるように気を保っておけ」
 既に何もかもを見透かしたが如き言葉を彼に告げた。
「それを伝えておこう」
 ここまで言うと立ち上がりその場を去った。ミーメだけが残っていた。彼はまだ忌々しげに思っていた。しかしここでジークフリートが戻って来たのであった。
「御前か」
「おい怠け者」
 いきなりこう言って彼を罵ってきた。
「剣はできたのか?」
「まだだでは何をしていたんだ?」
「客が来た」
 こう彼に答えるのだった。
「その相手をしていた」
「客!?熊か狼かい?」
「どちらでもない。人間だと思っておけ」
「僕と同じなのか」
「そうだな。同じだな」
 ジークフリートを見ながら忌々しげに答えるミーメであった。
「残念なことじゃがな」
「僕にとっては御前と一緒にいる方がずっと残念だ」
 ジークフリートの態度は相変わらずであった。
「それで剣はまだなのか」
「恐れを知らない者だけができるのだ」
 先程のさすらい人とのやり取りでの言葉であった。
「そいつだけがだ」
「恐れを知らない者か」
「ついでにそいつはわしの首も手に入れている」
「じゃあさっさと首をくくるのだな」
「そこまで言うのか」
「少なくとも僕は御前の首なんかに何の興味もないんだ」
 ジークフリートの返答も忌々しげなものだった。
「全くな」
「では何なのじゃ」
「それで何なんだ」
 お互いに言い返す状況になった。
「わかりやすいように説明してくれ」
「待てよ」
 ここでミーメは思った。
 
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