| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Chapter-1 First story~Various encounter~
  number-8 take action

 
前書き



行動する。




この場合は、三桜燐夜。フェイト・テスタロッサ。アルフ。――――。


 

 


翌日。
燐夜は今、フェイトとアルフと一緒にバスに乗っていた。
フェイトは魔法少女なのだからてっきり転移魔法で行くものとばかり思っていたが、そういうわけではないらしい。
せっかくの温泉旅行なのだから普通にゆっくりしながらいってみたいというのがフェイトからの要望だったので、アルフはフェイトの願いを叶えるためにこの様にしたそうな。


燐夜は勝手な思い込みで決めつけていたことを心の中で恥に思いながら、隣の席で外の景色を眺めて行動にこそ出さないものの、表情はとても喜んでいた。
目を爛々と輝かせて、目的地に着くのを今か今かと待ちわびている少女ーーーーフェイト・テスタロッサを見た。
もとの性格からか大人しくしていたので、問題もないため燐夜は前を向いた。


「ごめんな、急に誘っちゃって。迷惑じゃなかったか?」
「いえ、全然大丈夫です。今週の休みはなにもすることがなかったので」
「そう言ってもらえると助かるよ、ありがとな」


燐夜たちはバスの一番後ろに乗っている。
進行方向に向かって右側の窓際にフェイト。そのとなりに燐夜。目の前に通路がある形となるのがアルフだ。
アルフは、フェイトの使い魔である。素体はどうやら犬であるようで、犬耳と尻尾が常に出ているのだが乗客や運転手が何も言ってこないのを見るとどうやら視覚阻害魔法を使っているようで、周りからは普通の人にしか見えないのだろう。


アルフは第一にフェイトのことを考えている。
それはもちろん自分の主だからという理由もあると思うが、アルフにとってフェイトは守るべき大切な人なのだ。
燐夜はそれに干渉することはない、たとえフェイト・テスタロッサという人物が「projectF.A.T.E」によって作られたアリシア・テスタロッサのクローンであったとしても、燐夜にとってはフェイトはただの一人の女の子。この世に生を受けた、たったひとりの「フェイト・テスタロッサ」という存在なのだ。故にクローンだからって差別したりしない。自分から告げることもしない。フェイトが自分からその事実を告げないかぎり燐夜もなにも言わない。いつも通りに一人の少女として接するだけだ。


…………話がそれた。
アルフはいきなり温泉旅行に誘ってしまったことを悪く思っているのだろう。
確かにいきなり誘われて頭が真っ白になってしまったが、断る理由なんてものは燐夜にはなかったのだ。強いて言うのであれば、その日の放課後になのはたち三人にフェイトと同じように温泉旅行に誘われたこと。
そのときにはもう、フェイトからの誘いを受けてしまっていたため断るしかなかったのだが、どうやって断ったらいいか言葉を選んでいたが、フェイトのことを話すわけにもいかず、困っていた。そんなところになのはが高町家が全員参加ということをいってくれた。…………なのはには悪いとは思っている。罪悪感にとらわれはしたが、この際仕方がないことだと割りきって断った。


思えば、なのはが誘っている時点で高町家はほとんど全員参加ということが分かっていた。
高町家は 、こういうイベントが好きなのでよっぽどな理由がないかぎり全員参加は絶対なのだ。燐夜もかつてそういう経験をしている。そのときも家族全員参加していた、もちろん恭也も。
……というよりそういうイベントが好きな家族なだけなのだが。


『次は――――』


バスのアナウンスが目的地にもうすぐ着くことを知らせる。
降車ボタンを燐夜が押そうとしたが、それはフェイトによって阻まれてそのままフェイトが押した。
大人びていて物静かな性格のフェイトにしては珍しい行動だった。それほどまでに興奮しているのだろう。その証拠に、少しして我に返ったときに、自分の行った行動を恥ずかしいと思って、顔を赤らめていたのだから。


      ◯


バスから降りて、少し歩いたところに目的の場所である温泉旅館はある。
天候が心配されたが、今日は快晴である。日差しを遮るものがなく、地面に照り付けている。


旅館は人里から若干離れた場所にあるので都会とは違った空気が味わえて、新鮮な感じがする。
都会とは違い空気が澄んでいるようだ。
普段味わうことのできないことに、燐夜も表面には出そうともしないが、テンションが上がって来ていた。


旅館の中へ三人並んではいる。
すると、若女将が出迎えてくれて荷物を持ってくれて、部屋に案内された。
とても丁寧に説明していて、清潔感溢れる綺麗な旅館であるというのが燐夜が抱いた印象であった。
部屋に通されるとそれなりに広く、大人が5人くらい寝っ転がってもまだ余裕がありそうだった。


燐夜は今の時間を確認する。
16時45分。夕食にはまだ速い時間帯。どうやって時間を潰すか。
燐夜は娯楽道具を全く持ってきていないのだ。


「んじゃ、アタシはお風呂にでも行ってくるかね。二人は部屋でゆっくりしていな」


アルフが着替えとタオルを持って温泉に行ってしまった。
燐夜とフェイトを残したのは、アルフなりの心遣いなのだろうけど、正直言って気まずかった。


顔も合わせることなく、ただゆっくりとすぎていく時間。
何度も話を切り出しては見るものの、すぐに話が途切れてしまい、またこの気まずい空間が形成される。
仕方がなく燐夜は、ここで思い切って話を切り出してみた。


「なあ、フェイト。魔法ってどんなのなんだ?」
「――――ッ!」


すると、先ほどまでもじもじしていたフェイトが、一気に緊張感を出して臨戦態勢に入る。
燐夜は唐突過ぎたかと反省して、何とか誤魔化す。
魔法という概念はないが、知識としてなら一応左手首につけているブレスレットに入っている。


「待て、俺も魔法については少し知っているんだ。父親がミッドチルダ人だったんだ」
「……本当に?」
「ああ」


早とちりしすぎたと分かったフェイトは、手に持っていた黄色の三角形のペンダントを仕舞って、周りに纏っていた金色のオーラを霧散させる。
フェイトから流れ出していた魔力は、燐夜が咄嗟に結界を張って探知できなくしたのでなのはたちには気づかれていない筈だ。


何故、燐夜が魔法を使えるのかは、ここでは詳しくは説明しない。
ただ、それには燐夜が今まで誰にも話したことの無い過去が関係してくる。ここでの付き合いが一番長いなのは餌柄にも話したことがない過去。
燐夜が心から打ち解けあえる人にはおそらく話してくれるのだろう。


「そうなんだ……ごめんね。それと、いいよ魔法について教えてあげる」


ここから2時間ぐらいのフェイトによる『ミッドチルダ式魔法講座』が始まった。


      ◯


「おいしかったね」
「ああ、そうだな」


夕食の時間になると、旅館の従業員が部屋まで夕食を持ってきてくれた。
いつも家庭で作るものよりも豪華で味も良かった、たまにはこういう食事も悪くなかった。
そして、食後の休憩を取っていると、いきなりフェイトが立ちあがって。


「出かけてくる」
「あたしも行ってくるよ」


と言い残して二人そろって慌てたように部屋から出て行ってしまった。
一人残された燐夜はどうしようかと窓へ近寄り、開けてサッシに足を外へ出すようにして座った。


〔汝の望みを言え。さすれば、その願いがかなえられるだろう〕


まただ。
またあの低い声が頭に響くように聞こえてくる。
あのフェイトたちが集めているジュエルシードに触ったときのように。
でもなぜだ。
今回はジュエルシードに触っていない。近くにもないし、あの青白い光さえも見えない。なのに、なぜ。


(お前に望みを言えば何でも叶えてくれるのか?)
〔……汝の場合は、何でもは無理だ。汝の体の中にすでに力が入っている。碧い力が。だが、ある程度の願いならば聞き届けられよう〕


燐夜は小考(しょうこう)する。
どう転んで願いがかなえられるかが分からない。だが、試してみる価値はありそうだった。


「俺は――――いや、お前の近くまで行かないと無理か」


燐夜は、部屋の電気を消して、鍵を閉めてから。
碧い力を使って自分を偽りの自分に、即ち三桜燐夜とは違う人物になった。
少しの攻撃ではこの力は消えない。
そして燐夜は窓から外へ降り、暗い森の闇の中へ消えていった。


      ◯


「ようやく行ったか……」
「あいつがいなくなればこの世界は俺のものなんだ」
「あいつがいなくなれば、なのはやフェイトは俺しか見なくなる」
「この俺が、魔法少女リリカルなのはの物語を作ってやる……!」


夜の帳に紛れて見えないが、声の質からして男。それも小学生ぐらいの少年だと思う。
その少年らしき影が、光を放って辺りの闇を光で覆い尽くした後、また光は闇に食われて消えていった。


少年も動く。
自らの欲望を糧にして。
己の野望を成就させるために……。


 
 

 
後書き
ダークヒーローってカッコいいと思わない?
私、主人公をそんな立ち位置にしたいと思ってるんです。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧