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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-1 First story~Various encounter~
  number-7 The past The present The future

 
前書き



過去と現在と未来と。



この場合は、高町恭也。三桜燐夜。高町なのは。アリサ・バニングス。月村すずか。

 

 


「一緒に温泉に行かない?」


燐夜はこのなのはの提案をどう受け取るか悩んでいた。
いや、正確にはどう断るかだ。


燐夜は遅刻した今日の朝、フェイトに同じように温泉に行かないかと誘われたのだ。
フェイトからの誘いを燐夜は断るつもりでいたのだ。だが、目を涙で潤ませて上目づかいでお願いされて、それで断ったら罪悪感に際悩まれると思ったから仕方がなしに了承したのだ。勿論その時は、なのはからも温泉に行こうと誘われるとは思っていなかった。


なのはが珍しく真面目な顔をしてどことなく緊張しているなぁと思ったら、そう言うことだったのかと燐夜は納得できた。しかし、それでは目の前の問題は解決できない。
問題、それはいかにしてフェイトの存在を悟られることなくなのはの誘いを断るかである。
中途半端な回答ではなのはは満足しない。それどころか、逆に察知されるかもしれないのだ。なのはの直感を甘く見てはいけない。


曖昧に答えれば、怪しまれ、逆にフェイトの存在がなのはたちにばれてしまうかしれない。
別にアリサやすずかに見つかることはそんなに警戒していない。だが、なのはだけはダメなのだ。
フェイトはなのはと同じように ジュエルシードを狙っているのだ。今の状態は恐らく敵同士といったところだと予想出来る。
フェイトにはフェイトなりの目的があるし。なのはにはなのはなりの目的だってある。


時々、なのはが上の空なのはフェイトの事に違いないと燐夜は思っている。
そんな中、燐夜とフェイトが温泉にいく話だがなのはに伝わったら……
なのはは燐夜に依存しているのだ。手加減なしでなぎ倒そうとするだろう。


「燐夜君、嫌かな? 私たち高町家だけじゃなくてアリサちゃんと鮫島さん、それにすずかちゃんと忍さん、ノエルさんとファリンさんも来るんだけど……ダメかな」


燐夜が世話しなく動かしていた思考回路を一瞬にして引き留めた。そして過去に起こったあの出来事がフラッシュバックしてくる。
三桜燐夜と高町恭也、高町美由希との間に起こった……正確には、美由希との和解が成立しているため今となっては、高町恭也との確執になり果ててしまっている。


なのはは、自分の発言に後悔していた。
どうして燐夜の目の前で、恭也に関することを話してしまったのか。年月が過ぎて当事者ではないなのはには薄れてきてはいるのだが、当事者である燐夜は表情に出すことはないが、ずっと心に抱えていたくらい出来事なのだ。
悩んでいる燐夜を後押しするために良かれと思ってやったことが、逆に断る原因を作ってしまった。


「……悪い、俺は行かない」
「――――ッ、どうしてよっ!」


燐夜がなのはの誘いを断った。すると、燐夜と高町家との間――――実際は美由希と恭也との間に起こった出来事なのだが――――にあった出来事を知らないアリサは、当然の如く燐夜に食って掛かる。
すずかはそんなアリサを見て慌てている。
なのはは――――俯いて手を強く握って何かに堪えているような、そんな感じがする。


燐夜は、襟首を掴んで揺するアリサを手荒く引き離した。
いきなり力を加えられたアリサは、尻餅をつく。燐夜はアリサに謝る素振りも見せずになのはの横を通り過ぎて、放課後の校舎を後にした。


      ◯


「なのはちゃん、燐夜君は一体如何したの?」


昔にあった出来事を知らないすずかは、いまだに俯いているなのはに問いかけた。
尻餅をついていたアリサは、服についた砂を払って汚れがないことを確認してから話に混ざる。
だが、なのはは全く口を開こうとしない。躊躇っているのとは違う。話したくないとのも違う。何か考え事をしているときのような、周りのことが一切聞こえていない状態になのははなっている。


このままではなのはは、後悔の念で押し潰されそうになっていた。
ただ、それは友達がいなくてたった一人だった時の場合だ。今のなのはには信頼できる親友がいるのだから。


「なのはっ!」
「――――! な、何かな?」
「どうしたのよ、急に黙っちゃって。まあ、いいけどね。それよりも燐夜はどうしたのか分かる?」


なのははまた押し黙る。
迂闊に口にしてはいいことではないのだ。燐夜にとってはかなりデリケートな問題であるとなのはは思っている。


「ご――――」


しかし、なのはは口を開いて断ろうとしたが、また閉じて黙ってしまった。
なのはは、一番に燐夜のことを考えている。
このまますずかとアリサに言わないでおくのも一つの手だ。
だが、言わないでおいてもし、すずかやアリサが燐夜の前で自分の兄である恭也のことを口にしてしまったら……考えるだけで今の関係が瞬く間に崩れることになるような気がする。
なのはは意を決してアリサとすずかに打ち明ける。


「実はね……」


なのはは、一部省略しながらも過去に――――燐夜が幼いころにあったあの事を話した。
当然、アリサは恭也に対して憤りを覚えたし、すずかは珍しく怒りを露わにした。
そして、その勢いで恭也に怒鳴り込もうとしたアリサをなのははすずかと協力して必死に止めた。


「どっ、どうして止めるのよっ!?」
「今更遅いの! もう何年も前のことなんだよ? 今更ぶり返すわけにいかないの。それに――――」
「それに?」


なのはとすずかは落ち着いたアリサを離して、荒々しくなってしまった呼吸を整える。
ようやく一息ついたところでなのはが、先ほど言いかけた続きを口にする。


「私のお兄ちゃん、あの時のことを反省してないし、後悔もしてないの。自分のやったことは正しい。家から疫病神を追い出そうとして何が悪いんだって。
それに、燐夜君も今のままでいいって思ってる。もう二度とあいつと会うことはないって。だからね、燐夜君は昔にあったことがトラウマになってるんじゃなくて、お兄ちゃんとトコトン粗利が合わないの。
…………すずかちゃん、アリサちゃん」


なのはは、ずっと誰にも言わなかったことを親友である二人に初めて吐露した。このことは士郎も桃子も知らない。当事者である二人から直接聞いた事実。
それらを告げた後、なのははすずかの名を呼んだ。


すずかは返事をすることはなく、なのはの顔を見ていた。
アリサは慎重な面持ちでなのはを見ている。
なのはは、頬を掻いて若干気まずそうにしながらも、二人を見て自分の兄である恭也の弁解をする。


「お兄ちゃんのことを悪く思わないで上げて。あの人は、自分のやったことを今更謝れるかとか、不器用な人なの。反省も後悔もしてないって口では言ってたけどそんなことはないって思うから。だから、だから」


なのはは、感情を抑えきれずに涙を零した。俯いて手を握りしめて、嗚咽を漏らし、何も話さなくなってしまった。
アリサは何も言わずになのはの背中をさすって慰めている。
すずかも自分の姉である忍に恭也について何か言おうと思っていたが、なのはの言葉にそんな気持ちが無くなってしまった。もし自分がそんなことをやってしまえば、なのはたちとの関係が悪くなるし、なによりも今のこの環境が一番居心地がいいのだ。


すずかはそんな悪いことを考えてしまった自分に後悔する。
そして今の悪い空気を取り払うため、笑顔を取り繕って話し出す。


「もうおしまい。こんな悲しい話は。明日は温泉旅行なんだよ? 早く帰って明日の準備しよ?」
「そ、そうね。そうしましょ」


すずかは自分の言葉にアリサが便乗してくれたことに安堵しながら二人に帰るように促す。
アリサも俯いているなのはの背中を優しく叩いて、促す。
俯いていたなのはは、泣き顔を見られたくないのか、腕で目を擦ってから顔をあげて笑って見せた。


三人は並んで帰る。


「…………まったく無茶しやがって……」


校門の石柱の陰に隠れるようにして、なのはたちの話を聞いていた燐夜は呆れたように言っているが、嬉しそうでもあった。
身を預けていた石柱から離れて、自分の家に向かう。
だが、燐夜は忘れることが出来ないだろう。


――――あのなのはの、泣いて赤く腫らした目元を。


「…………はあ、歩み寄ってみるかぁ。あいつと」


今、高町家と燐夜との関係は、まだ冷たい氷のようなもので覆われている。
それが溶け出しているような感じがする。
年月を重ねて、再びもとの関係に戻るかもしれない。――――この一言で。


燐夜は、過去にあったことを忘れたわけではない。忘れるわけがない。けれども、それは所詮過去の出来事にしか過ぎないのだ。
過去は過去。現在は現在。未来は未来。


過去には、もう戻れない。取り返しのつかない出来事。
現在は、今自分たちが切り開いていく先の見えない長い長い道。
未来は、誰にもわからない不確定なこと。しかし、それは裏を返せば――――


――――方法次第でどうにでもなるのだ。未来は、自分たちの手で変えられる。


 
 

 
後書き

主人公が可笑しくなったような気がする。
特に、最後辺り。


……ダークヒーロー的な立ち位置にしたい燐夜を。
どうかなぁ。

未来は、自分たちの手で変えられる〔キリッ    …………こんなことを言ってみたい。


また、更新が遅くなる……本当にすいません。 
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