アメリカンサラダ

「これを新メニューにするぞ」
「サラダはうちの人気メニューだしね」
　新鮮な野菜と見事な味のドレッシング、この二つからそうなっている。
「いいわね」
「そうだな、じゃあ店に出すぞ」
「待って、いきなり出すの？」
　リンダは誇らしげな笑みの父にクールに突っ込みを入れた。
「まさかと思うけれど」
「ああ、試食か」
「そう、いきなり出すなんて無謀な真似はしないわよね」
「勿論だ、とりあえず弊店してから作ってみるな」
「たべてみるから、それじゃあね」
「明日から作ってみるな」
　こう話してそしてだった。
　バーグマンはその次の日から早速そのサラダを作ってみた、巨大なボウルの中にスライスされたレタスやトマト、海草等がありフルーツも入っている。
　フレンチやイタリアンのドレッシング、中華風のドレッシングがかけられバンバンジーやソーセージも入っている、ポテトサラダも多くある。
　娘にそのサラダを出してからだ。バーグマンは問うた。
「これでどうだ」
「何か凄いボリュームね」
「全部入れてみたからな」
「それでなのね」
「じゃあ食ってみてくれ」
　早速、だというのだ。
「いいな」
「ええ、じゃあね」
　リンダはフォークを使ってサラダを食べだした、そして数口食べてから自信満々の顔の父にこう言ったのだった。
「駄目よ」
「何っ！？」
「まずいっていうの」
　フォークを置いて言う。
「このサラダはね」
「おい、どうしてだ？」
「ドレッシングが混ざってるじゃない」
　フレンチとイタリアンがだ、中華もまた。
「これで駄目、ドレッシングが混ざってもう酷いことになってるわ」
「ドレッシングか」
「サラダはドレッシングも命でしょ」
　シビアな声だった、実に。
「それが混ざってね」
「酷い味になっているか」
「フレンチとイタリアンが一緒になったのよ、中華の」
「今言われるとな」
「そうでしょ、食べられたものじゃないわよ」
「それもそうだな」
「わかったわね、これは駄目よ」
　クールなままの突っ込みだった。
「失敗よ」
「じゃあまただな」
「ええ、またね」　
　最初のサラダはドレッシングで失敗した、そして次はドレッシングを完全に分けた、それぞれのエリアにおいて。　
　バーグマンはそうしたサラダを入れて娘に問うた。
「今度はどうだ」
「ええ、食べてみるわね」
　リンダも父に応えて食べる、そして今度もだった。
「まだ駄目よ」
「今度はどうしてなんだ？」
「林檎に和風ドレッシングはないでしょ」
　ドレッシングを増やしてみた、これの他にオニオンもある。
「それはね」
「駄目か、それが」
「ええ、合わないわ」
「そうか、それもか」
「あとポテトサラダに中華ドレッシングがかかっていて」
「中華のエリアに置いたのはまずかったか」
「それとね」
　娘はさらに言う。
「フルーツ、キーウィとソーセージを一緒に食べると」
「駄目か」
「あまり合わないわ」
　こう父に言うのだ、まずいものを食べた顔で。