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銀河英雄伝説~物騒な副官~

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02元帥府の女傑

フェルナーはテーブルの向かいに座っているB大尉を見ると溜め息をつきそうになった。彼は何故か恋の相談をされる事が多い。彼が元情報部で皆の事をよく知っている上に人を見る目も確かで、そういうことに首を突っ込みたがるせいだろう。
だが、彼も男である。美しい女性からの相談は嬉しい(?)が、むさ苦しい野郎共からの相談はウザいだけである。そんなこんなで今日もまた結婚相談所?まがいの事をしているのだった。
「フェルナー大佐!やっぱりトンクス大尉っていいですよね!!!!」
「……(コイツ、大丈夫か…?頭のネジがどうかなってるぞ!)…どこがだ。」
「えっ………書類持って走り回っている姿とか、食堂でいつもご飯を美味しそうに食べてる姿とか、…トイレに急いで駆け込んでくところとか?」

「「おいちょっと待て」」

いつもは何事にも動じないフェルナーもさすがに部下のこの言葉には焦る。
「(俺の部下は物好きの上にストーカーだったのか…?)考え直せ」
「えっ!!??な、何でですか?」
「あいつは女ではない。あれは化け物と言うんだ。あれの側にいたらいつか殺されるぞ。」
「そ、そんな事はありません!!!!!!!!」
………凄まじい奴…
そう思いながらフェルナーは今日何度目かの溜め息をつく。
「落ち着け、大尉。」
「すみません、大佐!」
「……確かにトンクス大尉は今現在恋人はいない。だが、彼女は男の気持ちをまるで理解出来ない。それでもいいのか?」
「平気です!」
「…じゃあ、神経がワイヤーロープ並に図太くて、あのオーベルシュタイン閣下ですら歯が立たないと知っていてもか?」
「…………………」
「(黙るな、そこで!)どうなんだ?」
「……そんな女性だったんですか…」
「司令部じゃ有名な話だ。(良かった…正気に戻った…ってか、大尉ごときの安月給で普通の野郎が女を捕まえられる訳ないだろ)」

一体、オーベルシュタインとドーラの間で何があったのだろうか?

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「トンクス。」
「はい、何でしょう。」
「この書類をオーベルシュタイン参謀長に届けてくれ。」
「承知しました。」

パタンとドアが閉まると、ワーレンの参謀長であるライブルはワーレンに問い掛けた。
「…大丈夫でしょうか…?」
「99.99%の確率で大丈夫だろう。ロイエンタールの毒舌をもってしても、微動だにしてなかったからな(気付いてなかったとも言う)問題あるまい。」
「……ロイエンタール提督とオーベルシュタイン参謀長では、レベルが違うかと思われますが…」
「こう言っていても仕方あるまい。彼女の健闘を祈ろう。」
「…………」

==========================

トントンとドアがノックされる。
「入れ」
とフェルナーが言うと、そこには唯一の女性士官がいた。
「ワーレン提督の副官のニンファドーラ・トンクス大尉であります。」
「用件は?」
と、フェルナー。
「閣下より、オーベルシュタイン参謀長閣下に直接お渡ししなければならない書類を預かって参りました。」
フェルナーは頷くと、書類を受けとり執務机に座っているオーベルシュタインに手渡した。オーベルシュタインは黙ってそれを読み始める。
そして、ふと視線をとめると顔をあげ、黙ってドーラを見つめた。フェルナー以下オーベルシュタインの部下達は「またか」と思い余り気にしていない。オーベルシュタインがこのようにする時は書類に不備があった時なのだ。
ただでさえ、書類を持って来た奴はオーベルシュタインの雰囲気にビビっている。自発的に不備を見つけさせ、なおかつ効率的に直させるには、オーベルシュタインの必殺?のドライアイスの眼差しはとても有効なのだった。そして、ドライアイスの眼差しという攻撃を受けた後の彼らの顔は、フェルナー以下オーベルシュタインの部下達にとっては良い話のネタとなるのである。


ところが。

「あの、どうか致しましたか?参謀長閣下。口でおっしゃって頂かないと分からないんですが…体調が優れないのですか?顔、真っ白ですし…保健室に行かれる事をオススメしますが。」


「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」←もはや言葉にならない

こんな事を真顔で言うドーラもドーラだが、オーベルシュタインの前で平然としていられる事に驚く彼らも相当毒されている。
だが、彼らにとっては、驚愕すべき異常事態(大袈裟)なのである。大してキレイでもない小娘(関係ない)がオーベルシュタイン閣下のドライアイスの眼差しを易々とカットしてしまったのである。彼らにとっては非常に問題?であった。

オーベルシュタインは暫し無言でドーラを見つめると言った。
「書式が提出用書類の物と違う箇所がある。早急に直すように。」
「はっ。」
ドーラはオーベルシュタインから書類を受け取ると鼻歌まじりに部屋を出ていった。

フェルナー達は開いた口が塞がらない。

オーベルシュタインは額に手をやると言った。
「私とした事が………」
そしてフッと笑うとまた書類の決済を始める。

(((((…ウソだろ……)))))

あのオーベルシュタインですら、倒す?事が出来なかった小娘にフェルナー以下オーベルシュタインの部下達は末恐ろしい物を感じたのだった。





 
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