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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第三十三話 物好きな連中っていいもんだな

「この後、どうすればいいんだ?」

 クィルとミラニの元へ帰って来た闘悟は一番にそう言った。
 だけど、クィルは顔を俯かせて震えていた。


「あ、あれ? ク、クィルさん?」


 クィルの様子が明らかにおかしかったので、ついついさん付けになってしまった。


「トーゴ様っ!!!」
「は、はいっ!」


 綺麗に気をつけの姿勢になる。


「あまり心配かけないで下さいです!」


 ああ、そうか、クィルはオレのために怒ってくれてんだな。


「そうだ、貴様ならもっと早くに終わらせることができたはずだ。……全く愚かしい」


 悪態(あくたい)をついてはいるが、ミラニも闘悟の心配をしてくれていた。
 そのことが闘悟にとっては何よりも勝利に対する褒美(ほうび)だった。
 だから、無意識に笑ってしまった。


「な、何がおかしいのですか!」


 怒られてしまった。
 まあ、叱られてる最中に笑ったらそうなる。


「頭のネジでも取れたのか?」


 酷い言われようだ。
 闘悟は軽く息を吐くと、ニカッともう一度笑う。


「ありがとな! お前らの応援のお蔭だ」


 クィルは頬を染めて顔を伏せる。
 ミラニもクィル程ではないが、そっぽを向く。


「な、何を言っているのだ! 私はおお応援などしてはいない!」
「へいへい、それでもありがとな」


 ホントに、コイツらは良い奴らだよ。
 それに、アイツらもな。
 闘悟の視線の先には、闘悟の勝利を喜んでいるカイバ達がいた。
 怖がられると思ったけど、アイツらもずいぶん物好きみてえだな。
 そんなことを思ってしまうが、闘悟の内心は嬉しさで一杯だった。
 しかし、不安も残っていた。
 この後、カイバ達には質問責めに会うのが目に見えていたからだ。
 隠す必要も無いことだし、今の闘悟を見て、まだ友達を続けたいって言う奴になら、少しは歩み寄ってもいいかなと闘悟は感じた。
 こうして闘悟の初の決闘は、予想を大きく裏切る大盛況に終わった。


 そしてその後、カイバ達に捕まった闘悟は、心配していた通り、マシンガンの如く質問をぶつけられた。
 特に闘悟がリューイの魔法をどのようにして防いだのかを詳しく説明させられた。
 そして、闘悟の異常な魔力量のことや、改変(かいへん)魔法のことも話した。


「な? 言った通りビックリしただろ?」


 闘悟の言葉にカイバ達は呆れてものが言えなくなる。
 そして、ここでミラニにも勝ったことを話した。
 もう驚きの連続だった。


「今日は……驚く日だと……決めたんだ……よ」


 ヒナは物分かりが良いようで助かる。
 うるさいのはカイバとメイムだ。
 メイムはミラニに詰め寄り、どうして話してくれなかったのと責めている。
 ミラニもたじたじの様子だ。
 カイバはカイバで、改変魔法のことを詳しく聞いてきた。
 そういえば、改変魔法はまだ見せてはいなかった。
 ちょうどいいから、持っていたペンを改変して金にしてみた。
 すると、カイバは目の色を変えて、ゴミを集め金変化を要求してきた。
 だから一発殴っておいた。


「ぐほへっ!」


 という気持ちの悪い声を出し沈黙した。
 驚く日だと決めていたヒナも、改変魔法を見てポカンとしていた。
 メイムはメイムで、その改変魔法で、剣を強化してもらった経験のあるミラニに事情を聞いている。
 ミラニは闘悟に、とばっちりだぞと言わんばかりの視線をぶつけてきた。
 しかし、軽く視線を逸らしスルーした。
 日が落ち始めたので、闘悟達は解散することにした。
 決闘よりも、カイバ達への説明の方が疲れた。





 宮殿に帰って来た闘悟は部屋に戻り、いつもの日課である魔法の訓練をした。
 すると、クィルがやって来た。
 何の用かと思って尋ねると、どうやら、ギルバニア王が、闘悟に王の間に来てほしいと言っているとのことだった。
 そこで、闘悟はピンとくる。
 どうやら、今日の決闘を耳に挟んだらしい。

 
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