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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第二十八話 俺の体力は反則だな

 午後からは『魔法学』だ。
 今日は属性魔法についての勉強らしい。
 ざらっとは宮殿で教えてもらったが、ここではもっと詳しく教えてもらえる。
 もちろん実技もある。
 一番大切なのは、自分の扱える属性魔法を認識することだ。
 この授業で面白いことも分かった。


 それは属性魔法を調べる方法だ。
 この学園には『感応樹(かんのうじゅ)』と呼ばれる木が植えられている。
 その木に触れ、魔力を流すことで、自身の最も得意な属性魔法が分かる。
 たとえば、火の属性が得意な魔法士が魔力を流せば、赤い葉が茂る。
 もともと枯れ木で葉などつけていない木なので、茂る葉の量で、魔力量の多寡(たか)もある程度計れる。
 この学園に入学して、初めての授業には必ずこの『感応樹』に魔力を流して魔法選別を行う。
 闘悟の場合は、途中から編入してきたので、調べるのはまた今度だということだ。


 最後の授業は『武学(ぶがく)』だ。
 これは実戦を学ぶための授業だ。
 二人一組になって組手や試合を行う。
 剣士なら剣士と、魔法士なら魔法士と、互いに切磋琢磨(せっさたくま)していく。
 学年が上がれば、複数相手や、剣士と魔法士を含めた混合試合なども行う。


 このルームではどうやら剣士は少ないらしい。
 ミラニのような魔法騎士で、両方とも得意な者も中にはいる。
 無論その実力には大きな差はあるが。
 カイバは剣士らしい。
 もちろん魔力を持っているので、魔法も使えるが、剣で戦うことが得意らしい。
 メイムとヒナは純粋な魔法士だ。
 接近戦は苦手な部類だ。
 同じようにクィルもそうだ。
 さて、闘悟はどこに属すのかというと、基本的には魔法士になる。
 だが、本人曰く接近戦の方が得意なので、魔法士というよりは、魔法拳士(けんし)といった方がしっくりくる。


 今日の『武学』は体力作りのため走り込みだった。
 クィルは苦手みたいで、少し走っただけで顔を青くしていた。
 最後まで走っていたのは闘悟、ミラニ、カイバだけだった。


「はあはあはあ……てか……お前……何で……何で……」
「あ?」
「何でそんな涼しい顔してんだよ!」


 カイバが激しく息を乱しながら声を出す。


「まあ、これくらいなら準備運動にもなんないな」


 闘悟は平然と立っている。
 汗も全くかいてはいない。
 魔力って体力と比例するのかもしれない。
 体力がありそうなカイバが、滝のように汗を流すほどの距離を走ったはずなのに、汗をかくどころか体に熱も籠(こも)ってはいない。
 この十倍ぐらい走って、ようやく温まったかなと疑問を浮かべるくらいかもしれない。
 ん~反則的だなオレの体力。
 もちろん、日本にいた頃はこんな化け物じみた体力は有してはいなかった。
 人より少し体力はあるかなと思うくらいだった。
 この世界に来て、自分の異常さをまた一つ知って満足気に頷いた。
 どんなことも、知りたがりの闘悟にとっては、情報は好物だった。
 ミラニはもう慣れたというように呆れた表情で闘悟を見つめていた。
 彼女もカイバほどではないが息を乱している。





 放課後になると、初めて見る男が闘悟のもとにやって来た。
 その男は、一枚の手紙らしきものを持っていた。
 彼が言うには、リューイの使いとのことだ。
 そういえば、後で使いをやるとか言っていたことを思い出した。
 男から手紙を受け取ると、さっさと男はその場から消えた。
 闘悟は手紙を広げた。
 闘悟の周りにはルームメイト達が集まる。
 皆が皆興味があるのだろう。
 なんせ、喧嘩を売った相手が、あの三賢人(さんけんじん)の子息なのだから。


 手紙には決闘の場所と日時が書かれていた。
 日時は二日後の放課後。場所は闘武場(とうぶじょう)と呼ばれる場所だった。
 そこは、実技でも使用される場所であり、そこで試合や決闘を行う。
 石で造られた大きな舞台の上で闘う。
 広さは正方形で、幅が三十メートルはある。


「二日後……ね」


 闘悟が呟くと、クィルがまた不安顔を作る。
 すると、闘悟はニカッと笑う。


「ま、見てろって」


 闘悟は他の者の気持ちをよそに、二日後の決闘を楽しみにしていた。

 
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