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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第四章 空白期編
  第八十七話    『夜の一族の告白、すずかの決意』

 
前書き
今回は空白期にやっておかないといけないだろう夜の一族の告白です。
それと注意です。
百合成分が高めですのでお気を付けください。 

 





…ライダーは落ち着きの日々を続けていきかつての衛宮家でもした事のないメイド服を着て月村家のメイドをしていた。

「ファリン、これでよろしいでしょうか…?」
「はい。これでライダーさんも立派なメイドさんです!」

ファリンが教育係りに付きライダーに一からメイドというものを教えている。
しかしさすがライダーというべきかライダーはすぐにメイドの作法を飲み込んで自分の物にしていく。
かつて二人の姉、ステンノ、エウリュアレに躾と称していびられ、こき使われていた過去が生きてきている。
こんなことに発動しなくてもいいのに…とライダーは思っているがそれがすずかの為になるならいいかと自己完結している。
当然すずかも夢の中でライダーが誰からも愛されず最後には怪物ゴルゴンとなり姉二人を飲み込んでしまった過去を知っている。
だからすずかは私だけでもライダーの味方でいようという決意を固めている。


閑話休題


「スズカ、似合っているでしょうか…?」
「うん! とっても似合ってるよライダー!」
「それならばよかったです。私のような大きな女性では似合っていないものかと…」
「ライダー…?」
「は、はい! なんでしょうか、スズカ!?」

ライダーはすずかの少し低い声に怯えた。
それはかつてのマスターだった桜とかぶる言い方だったのだ。

「ライダーは自分を卑下しすぎです。ライダーはとってもキレイなんだからもっと誇っていいと思うよ?」
「は、はい。スズカ…」

すずかに逆らえないのはやはり桜に似ているからだろうか…?
それともただ怖いだけなのだろうか…?
ライダーの疑問は尽きない。

「それとメイド服を着てメイドさんをしているけどライダーは自然体でいてね?」
「はい、わかりました。スズカ」

それでライダーは笑みを浮かべる。

「でも、やっぱり眼鏡がない方がキレイなのに…もったいないなぁ」

すずかは心底残念がっている。しかしそれだとせっかくの魔眼殺しが意味を無くしてしまうので、

「申し訳ありません、スズカ。これを外したら…」
「…うん、わかってる」

すずかはライダーに抱きつきながら、

「でもライダーはそれでも私の大事なパートナーだからね…? これからもよろしくね。ライダー…」
「…はい、スズカ」

二人が仲睦ましく抱き合っているところに忍が姿を現した。

「あ、すずかにライダー。こんなところにいたのね」
「どうしたの? お姉ちゃん…?」
「どうしましたか? シノブ?」
「うん。…今日はなのはちゃん達がうちに来るでしょ? それでとうとうすずかもシホちゃん以外に夜の一族のことを打ち明けるっていうじゃない?」
「うん、お姉ちゃん。私、シホちゃんやライダーに勇気をもらったの。だからちゃんと話そうと思うの!」
「…そ。まぁ頑張りなさい。私と恭也は応援してるから」
「うん。ありがとう、お姉ちゃん!」
「話はそれだけ。それじゃ頑張ってね」

忍はそう言って部屋を出ていった。

「ついにナノハ達に話すのですね、スズカ」
「うん、ライダー。シホちゃんも協力してくれるって言ってくれてるから私、頑張るね!」
「シホが協力してくれるなら心強いですね」
「うん!」

それですずかはライダーの手を握って、

「でも、やっぱり不安なの。なのはちゃんやアリサちゃん、フェイトちゃんにアリシアちゃん、はやてちゃんにユーノ君、フィアットちゃん…私の大事なお友達にもしかしたら拒絶されたらどうしようと…思うことがある」
「………」

ライダーは無言ですずかの言い分を聞く。

「でも、恐れていちゃダメなんだ。一歩を踏み出す勇気を出さなきゃいけないんだ! だから…見守っていてね? ライダー…」
「はい。見守っています、スズカ。頑張ってください」
「うん!」

すずかは笑みを浮かべてこれから来るであろう大事なお友達を想う。
きっと、大丈夫だって…。


◆◇―――――――――◇◆


…そして月村邸の門の前にシホを筆頭になのは、アリサ、フェイト、アリシア、はやて、ユーノ、フィアットの八人がやってきた。
この中で男の子はユーノだけだから少しいずらそうにしているがなんとか耐えている。
シホが呼び鈴を鳴らす。

『どちら様でしょうか…?』

毎度お馴染み電子音の声が聞こえてくる。

「すずかの友達のシホ・E・S・高町です。そして他七名もすずかの友達です」
『声紋分析………確認がとれました。どうぞお入りください』

そして門が開き全員は中へと通された。

「…いつも思うけどすずかの家ってかなりの豪邸だよね。サーヴァント達が戦えるくらいの敷地はあるし」
「そうね、ユーノ。でもいいじゃない? そんな事は関係なくすずかは私達の大事な友達よ」
「うん!」
「そうね」
「そうだね」
「うんうん」
「そやね」
「そうですね」
「まぁね…」

上からなのは、アリサ、フェイト、アリシア、はやて、フィアット、ユーノの順に答える。

「それとみんな、一つ聞いて…」

シホが真剣な表情になりみんなに声をかける。
シホが真剣に声をかけるということはそれだけ大事な話なのだろうと今までの経験で全員は身構える。

「そんなにきっちりと身構えなくてもいいんだけど…」
「あはは…どうしてもシホちゃんの言葉は身構えちゃうよ」
『うんうん』
「…まぁ、いいわ。それでだけどこれからすずかはみんなにとっても大事な話があるから。だから話を聞いても今までと態度は変えないでありのままにすずかの話すことを受け入れてあげてね?」
「なんだ。そんな事か。あったりまえじゃないの。あたしとなのははシホ以上にすずかとは付き合いが長いのよ? いまさらすずかがなにか秘密を隠していようと受け入れるわよ」
「そうだよ、シホちゃん!」
「………そうね。無駄な問答だったわね。それじゃ私からは以上よ」

それでシホは笑みを浮かべながら、心の中で、

(すずか、心配はいらないわ。私達はどこまでいってもあなたの親友よ)

と、思っていた。

「でも、それやとシホちゃんはすずかちゃんの秘密を知っているんやろ?」
「えぇ。私は知っているわ」
「なら、シホちゃんが受け入れているんなら私達もきっとちゃんとすずかちゃんを受け入れるよ。な、みんな!」
「はやての言うとおりだよ」
「そうだね、フェイト。それをいったら私は元・死人だしね~」

アリシアは普通に話すがさすがに人前では話せない内容だからシホ達に「言い触らさないように」と釘を刺されていた。
アリシアはそれで猫のように「にゃはは~」と笑みを浮かべて苦笑いをするばかりだった。
そんな話を交わしながら玄関口までやってくるとノエルさんがいて、

「ようこそおいで下さいました、お嬢様方。それにユーノ様」

ユーノはもしかしたらお嬢様と一緒くたにされるのではないかと少し不安がっていたがちゃんと区別されたので安堵していた。
それはともかく、

「すずかお嬢様がお待ちになっておいでです。案内いたしますね」
『わかりました』

それで全員はお茶会ができる場所まで通された。
そこではメイド服のライダー、ファリン、そして覚悟の表情をしたすずかの姿があった。
みんなが来たことを確認したライダーとファリンはノエルとともにその場を離れていく。

「みんな、よく来てくれたね…嬉しいよ」
「なによ急に改まって…すずからしくないわよ?」
「うん。それは私も自分で感じてるよ。でも私もついこういう感じになっちゃうのはしょうがないの」
「それだけ、すずかちゃんは大事な話があるんだね…?」

なのはがそうすずかに問う。

「うん、なのはちゃん…とっても大事な話なの。その前に…シホちゃん、伝えたとおりに進めてもらって大丈夫…?」
「平気よ。いままで私とすずかは何度もしてきたじゃない? いまさら遠慮することはないわ」

シホがすずかに近寄りおもむろに上着を脱ぎだす。
それにユーノは「うわわっ!」と慌ててその目をふさぐ。

「大丈夫よ、ユーノ。上着だけだから」
「で、でもなんで下着姿になるの? シホ…」
「そうです、お姉様」
「それは私が代わりに説明するね。まずはみんなに見てもらいたいの。私の本当の姿を…」

それですずかは顔を赤く染めながらもシホに近づき口を開いてその歯を突き立ててシホの首筋に噛み付いた。
その光景はなのは達にどう映ったのだろうか?

「んっ…」
「うっ…」
「んっ…はっ…」
「んっ…」

シホの首筋から血が滴れてくる。
それもすずかは名残惜しそうに吸いそれを咀嚼していく。
シホもそれで少し身体が敏感になっているのか何度かうめき声をその口から漏らす。
そして…少し時間が経ち、やっとすずかはシホの首筋から口を離す。

「…ふぅ。おいしかったよ、シホちゃん…」
「はぁ、はぁ………それはよかったわ、すずか」

シホとすずかは二人とも顔を上気させて赤くしている。
それを見ていたなのは達は思わずの光景に絶句していた。なにを話しだせばいいのか分からずただあたふたするだけだった。
それでティッシュで口元を拭ってシホの首筋の血も拭いて上着を着させた後、先に話をしだす。

「私ね…みんなが思っているとおり吸血鬼なんだ」
「吸血鬼…?」
「うん…私の家はね。代々が『夜の一族』っていう種族なの」
「夜の一族…?」
「うん。夜の一族は人間の突然変異から生まれた一族で普通の吸血鬼のように日の光が弱点じゃないの。
そしてそれぞれに特殊な能力を持っているの。私の能力は『氷の魔眼』。見たものを凍り付けにする能力を持っているの。
だけどその力を出すためには血を接種しなければいけないし通常生活でも血は必要不可欠なの」
『………』

なのは達は黙ってすずかの話を聞いている。
これがすずかの大事な話だというのだろう。区切りがいい時まで口は出さないでいる。

「私は…いままで怖かった。この能力が…吸血鬼としての私がばれるのが。
初めてアリサちゃんやなのはちゃんと会ったときもとても臆病で自分から話しだせる勇気がなかった」

それを聞いてアリサは少し後悔する。
あたしはそんな事も全然知らずにただ臆病な子だと思ってすずかをいじめちゃったんだって…。

「この事がばれるきっかけは今までもあったんだ。
なのはちゃんのお兄さん…恭也さんもお姉ちゃんの事を知ってもそれを全部ひっくるめて受け入れて恋人になった」
「お兄ちゃん…」

なのはは兄・恭也が立派な事をしたんだと感動していた。

「そして私のことがばれたのはある時、シホちゃんと帰り途中に夜の一族の事がばれて怖い人達に狙われた時だった。
それでシホちゃんは偶然私の真実を知っちゃって、でも私の事を嫌わずに受け入れてくれた」
「ちなみにすずかを狙った組織は士郎お父さんと恭也兄さん、美由希姉さん、私の四人で壊滅させたわ」

そこで今まで黙っていたシホがその事を伝える。
それになのは達は驚愕の顔をする。

「それでシホちゃんにばれちゃって私はシホちゃんに会わす顔がなくて部屋に閉じこもっちゃった。
でもシホちゃんはそれでも私の部屋に入ってきて私を励ましてくれたんだ。
私の事を血を吸う化け物なんかじゃないって言ってくれた。
優しい子だって言ってくれた。
化け物だっていう奴がいたら代わりに痛みつけてあげるって言ってくれた。
そして、信じてくれた。人を襲うことなんてしないって…」

すずかは当時の事を思い出しているのか胸に手を当てて思う。
やっぱりこの私のシホちゃんを想う気持ちは間違いなんかじゃないんだと。
私はシホちゃんが大好きなんだと…。

「だから、私はシホちゃんのおかげで前向きにこの力と向き合っていこうっていう気持ちになったの。
そして、そんな私だからこそサーヴァントにはライダーが召喚された。
ライダーにも何度も慰められた。助けてもらった。勇気をもらった…だから!」

すずかはひときわ大きな声をあげて、

「今日みんなにこの事を告白する勇気が持てたの。恐がってもいい…だけど私はこれからもなのはちゃん達と友達でいたい…!
私の身勝手だけどこれが本当の想いなの…。だから私の想い、受け取ってくれますか?」

すずかはもうそれは必死に目をつぶってただ手を差し出す。
それをまずアリサが、

「…ばっかじゃないの?」

アリサの物言いにビクッとすずかは震える。
そんなすずかにアリサは抱きつき手を握りながら、

「あたしとすずかはもう親友よ。それはもう変わらないわ。すずかはバカよ。そんなこと程度で嫌うなんてあるわけないじゃない…」
「アリサ、ちゃん…」
「あたしはすずかがなんであろうと受け入れるわよ。それが友達っていうものよ。さすがにシホの血を吸い出した時は驚いたけど、ただそれだけよ」
「うん…うん…!」

それですずかは涙を流す。
なのはがアリサに続くように、

「すずかちゃん、私達は気にしないよ? すずかちゃんは私達の大事なお友達…それだけでいいと思うんだ」
「うん。なのはの言うとおりだよ、すずか。私もすずかは大事な友達だよ」
「私はまだそんなに付き合いは少ないけど、そんな事は気にしないでいいと思うんだ」

フェイトとアリシアも続いてすずかの存在を肯定する。

「その通りや。生まれが少し特殊な程度くらいやんか。気にしたらアカンよ? すずかちゃん…」
「はやての言う通りだね。すずかは気のし過ぎだと思う。だから気にしたらダメだよ?」
「はい、兄さんの言う通りです。すずかはすずかです。私のライバルには変わりありません。だから元気を出してください」

全員に自分の存在を肯定してもらえてすずかは涙を流しながらも笑顔を浮かべる。

「…よかったわね、すずか。心配することなんてなかったのよ。みんなはすずかの大事な友達なんだから…」
「うん、シホちゃん。私、頑張れたかな…?」
「えぇ、頑張ったわ。誇っていいわ」
「うん! どれもこれもシホちゃんのおかげなんだよ。シホちゃん、私…シホちゃんの事、大好きだよ!」
「えっ…!?」

すずかの真っ正面からの直球な告白にシホは思わず顔を赤くしてうろたえだす。

「えっと、すずか。それってlikeの好き…?」
「ううん…loveの方の好きだよ。シホちゃん、私…シホちゃんの事が…」
「す、すずか…」

いい雰囲気になりそうだったがそこは問屋が卸さないと言わんばかりに、

「すずか! この雰囲気で告白はずるいです! 卑怯です! 反則です!!」
「だって負けたくないもん…!」
「開き直られた!?」

フィアットは思わず絶句する。まさかここまですずかが大胆になるなんて、と。
とうのシホもすずかの気持ちにどう答えていいのか分からず顔を赤くして口籠もってしまっていた。
外野と化していたなのは達はシホの反応を見て、これですずかちゃんにも脈ありか?と色々な期待の眼差しを送っていた。

話が済んだと判断したライダー達もお菓子や飲み物を運んできてライダーはすずかに、

「やりましたね、スズカ。シホの心が揺れ動きましたよ」
「うん! 私やったよ、ライダー!」
「すずかお嬢様、成長なされましたねぇ…」

ファリンはすずかの成長に涙を流していた。
それからお茶会が開かれて終始すずかはすっきりした顔つきだった。
それとは逆にシホは顔を赤くして無言だった。
なのは達はシホの反応を見て初々しいなぁ…と何度も思っていた。
それでフィアットは嫉妬をしまくっていた。

それから全員はすずかと盟友となる事を誓い、誰にも夜の一族の事は公言しない事を約束した。






そしてすずかは今回の話とは別で決断したらしく時空管理局に所属する決意を固めたという。
目指すはシホの補佐役だという事である。


 
 

 
後書き
すずかの告白でしめました。このくだりはまだ一話続きます。 
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