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管理局の問題児

作者:くま吉
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第2話 死神との出会い。



 その日、機動六課部隊長の八神はやては、膨大なデスクワークをこなしながらも、充実な日々を送っていた。
 機動六課が設立されてから今日で丁度一週間。
 自身が描いていた身軽な部隊を設立する事が出来た。勿論それに至るまで様々な困難があったが、様々な人に支えられて、今この機動六課がある。

 と、度々そんな感慨気持ちになりながら、せっせと仕事をこなす。
 その辺りの集中力は流石としかいいようがない。

「ふう~、リイン、悪いけどお茶お願いできひん?」

 はやては、自分の家族であり、ユニゾンデバイスでもあるリインフォースⅡ。手のひらサイズの可愛らしい八神家の末っ子だ。

「はいですぅ」

 と、元気な声で返事をしながら、お茶を入れるリイン。
 
―――平和やな~。

 リインのせっせとお茶を入れる可愛らしい姿を見ながら、内心でそう呟いたと瞬間。

 ―――ヴィーヴィー!!

 六課隊舎内にアラームが響き渡る。

「なっ―――!?」

 余りにも予想外な時期による緊急事態の知らせに、はやては驚愕する。
 リインもかなり驚いたようで、淹れていたお茶を零し、「熱いですぅ~!!」と叫ぶ。そんなリインに構っている時間すらないはやては、即座に空中にディスプレイを映し出す。
 そこには、先程を超える驚愕は映し出されていた。

「な、なんや…こいつら…」

 画面に映っているのは、見た事も無いほどの大きさを誇る不気味な化物。
 真っ黒い布みたいなものを頭から被り、顔の部分には鼻が尖がった白いお面のようなものを付けている。
 決して短くない魔導師人生の中でも、こんな悪寒のする外見の生き物を、はやては見た事無かった。

『はやてちゃんっ!!』

『はやて!!』

 既に映しているディスプレイの隣に、二つのディスプレイが映し出される。
 そこには、はやての大親友である、高町なのは、そしてフェイト=T=ハラオウンの姿が映し出されていた。

「なのはちゃん!フェイトちゃん!」

 頼れる二人からの通信に、幾らかの喜びをみせるはやて。
 そして即座に指揮官の顔になる。

「悪いんやけど三つの無人区画にドデカい化けモンが突如現れた。これを可及的速やかに排除してもらってええか?」

『えっと、排除って、殺しちゃうってこと?』

『はやて、出来るだけ捕まえて元の世界に返した方が…』

 と、心優しい二人は、殺害という方法に苦言を呈す。
 それははやて自身も同じだったが、映像として映し出されているこの化物の姿をみると、そんな事も言っていられない。
 それに、はやてにはある確信があった。

「なのはちゃん、フェイトちゃん、まずはこれ見てくれへんか」

 そう言って、現れた化物を姿を二人に見せる。

『な、なにこれ…』

『こんなの見た事ない…』

 その余りの異形さに、二人も、はやて同様驚愕を顔に浮かべる。

「そんでここからが重要なんやけど、恐らくこの三体は意図的に送り込まれたもんやないかと私は思てる」

 そもそも、同じ姿をした三体の化物が同時に、それも都合よく現れるなんてありえない。しかも今まで見た事もない生き物なのだ。
 どこからどう見ても誰かが意図的に送り込んだのはバカでも分かる。

「せやから機動六課部隊長としての命令や。あの三体の駆除を、高町なのは一等空尉、フェイト=T=ハラオウン執務官両名に命ずる」

 と、言った直後、心配そうな顔をして。

「くれぐれも気を付けてな」

 そう言った。
 そんなはやてを内心でちょっとだけおかしく思いながら、なのはとフェイトは「了解」と言って通信を切った。
 だが、あの化物になのはとフェイトだけを送り込むのは些か心配ではある。かといって新人はまだ実戦で使えるだけの成長はしていない。

「シグナム、ヴィータ」

 故にはやては、最愛の家族であり、自らを守護する騎士二人に通信を繋いだ。







 場所は変わって機動六課にある訓練場。
 陸戦用空間シュミレータを搭載しており、かなり凄い環境下での訓練が可能となっている。
 そして、そこには、四人の新人がいた。
 スバル=ナカジマ、ティアナ=ランスター、エリオ=モンディアル、キャロ=ル=ルシエである。
 彼らは、朝からなのはの厳しい訓練にゼーハー言いながら頑張っていたのだが、突如アラームが鳴り響き、なのはもなにやら深刻そうな顔で通信してる姿を、真剣な面持ちで見ている。

「ティア、何があったのかな?」

「あたしが知る訳ないでしょ」

 と、陸士訓練校時代からの同期であるスバルのティアナはいつも通りの感じである。

「エリオ君…」

「何があったんだろうね」

 年齢が幼いキャロとエリオは、少しだけ心配気な表情をしている。
 すると、通信を終えたのか、なのはが四人の元へとやってくる。

「緊急事態につき今日の訓練はここで終了。各自今日は身体を休めて明日に備えてね」

「えっと、あたし達は出動しなでいいんですか?」

 なのはの言葉に、ティアナがそう言う。

「うん。今回は少し今のフォワード四人には厳しいからね」

 遠まわしに「足手まとい」だと言われた四人の表情は少しだけ沈む。それを見たなのはは慌ててフォローする。

「今はってだけで、いつかは実戦に出るんだからそんな落ち来なくていいよ。四人とも一週間前とは比較にならない程強くなってるんだから」

 それだけ言って、なのはは飛んで行った。
 なのはを見送った四人は、静かに思った。

 ―――もっと強くなろう、と。







 なのは、フェイト、そして後に合流したシグナムとヴィータは、映像でみる以上にとんでもない大きさをもつ化物の姿に圧倒されていた。
 確かに今までも巨大な生き物は数多く見てきたが、そんな大きいという概念を破壊されるかのような巨大さに、流石のなのは達も言葉が見つからない。
 が、いつまでも呆けてはいられず、出来るだけ速やかなる駆除が必要だ。

「わたしとヴィータちゃん、シグナムさんはそれぞれ三体の相手を。フェイトちゃんはわたしと一緒に来て最速で倒した後残りの二人の援護に回ろう!」

「うん。わかった」

「了解した」

「任せろ!」

 なのはの指示に、フェイト、シグナム、ヴィータは三様の返事を返し、それぞれの場所に散っていく。
 そして、二人で事に対処するなのは、フェイト。なのはは即座にレイジングハートをバスターモードに変化する。

「いくよフェイトちゃん!」

「うん!なのは!」

 息の合う二人は、魔法を発動しようとする。が。

「おっと先客がいたのか」

 漆黒の着物のような服を纏い、背中には身の丈程もある巨大な剣を背負った青年が、二人の前に現れた。

「「え…?」」

 突然に出来事、それに一切の気配を感じさせずに現れた青年を前に二人は困惑の表情を浮かべる。
 一瞬応援か?とも思ったが、今の時空管理局がここまで迅速に動ける筈も無く、その考えは即座に排除した。
 青年は、なのはとフェイトの方を向いた。

「どうも。無剣リク二等陸士です。高町なのは一等空尉に、フェイト=T=ハラオウン執務官ですよね?勝手ながら戦闘に参加させて頂きます」

 と、ある程度の礼儀を以って無剣リクという少年は二人にそう告げる。

「う、うん分かりました。ご助力感謝します」

「そうだね。一緒に頑張ろう」

 なのはとフェイトは未だに困惑しているものの、リクの言葉を受け入れた。しかし、リクはその言葉にクビを横に振った。

「違うます。一緒に戦うんじゃなくてそこで見ていて下さいって言ってるんです」

 そう言い放ち、リクは背中にある巨大な刀の柄を持ち、背中から外し、刀身を露わにする。それはまさに地球、それも日本の伝統的な武器である刀そのものであり、なのはは興味を惹かれたが、それ以上に、リクの発言が気になった。

「見ていてって…一人でアレと戦うのは無理だよ!」

 そんななのはに対して、少しだけ微笑み返した。
 そして、眼前の化物に突っ込む。

「なっ―――!?危な―――」

 なのはの半ば叫ぶような言葉が言い終わらない内に、リクの巨大な刀に膨大な魔力が集まっていく。

「―――いくぞ斬月(ざんげつ)

 斬月と呼ばれたその刀は、まるでリクの言葉に答えるかのように、更に凄まじい魔力が刀に帯び始める。
 そんな魔力を感じたのか、目の前の化物はリクの方を向き、化物も口であろう部分に膨大な魔力を集束していく。

「あれは!?」

「集束砲撃っ!?そんな!ただの生き物にそんな事出来る訳が!?」

 フェイトと、なのはが驚愕と困惑を浮かべる中、リクは余裕の表情を崩さない。いや、余裕どころか、楽しんでいる節さえ見受けられる。

「―――攻撃までおせえよデカブツ。いくぞ―――」

 言うと同時に、斬月に帯びる魔力がもう一段階跳ね上がる。そして。

「月牙…ッ!!」

 リクは斬月を―――。

「天 衝ッッ!!」

 ―――振り下ろす。

 凄まじい威力を持った巨大な魔力刃が、化物を呑み込み、その巨体を、不気味な仮面を真っ二つに切り裂く。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

 と、聞き取る事の出来ない、壮絶な声で叫びを挙げる化物は、その身体が徐々に粒子のようなものに変わりながら消えていった。

「す、すごい…」

 リクの攻撃―――月牙天衝を見たフェイトは、思わず賞賛の声をあげる。なのはは何も言わないが、恐らくフェイトと同じ位驚いているだろう。
 が、それと同時に、いやそれ以上に目の前の青年に対する疑惑が出てくる。

 ―――これだけの力を持っていて、更に管理局にまで属しているのに名前を一度も聞いた事がない。

 という事にだ。
 執務官であるフェイトが職業柄反射的に身元を尋ねようとした時、なのはが叫ぶ。

「ッ―――!!そうだ!他の二人の応援に行かな―――」

「その必要はないですよ」

 なのはが言い終わる前に、リクがそう告げる。

「え?」

「どういう事?」

 驚くなのはに、疑問をぶつけるフェイト。
 そんな二人に―――というか美人な二人に、笑いながら。

「俺のともだ―――知人がいますから」

 そう言った。

 
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