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インフィニット・ストラトス ~天才は天災を呼ぶ~

作者:nyonnyon
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第8話

 風音を普通のやつだと思っていた自分を殴ってやりたい。

 風音は天才だ……。


 なぜそんな結論になったかと言うと、ちょっと時間を遡って話さないといけない。





 箒と剣道で打ち合った翌日の放課後、風音が申請しておいてくれたアリーナへとやってきた。 別に俺一人というわけでもなく、風音、箒、鷹月さん、清川さん、のほほんさんが一緒である。 さらに、アリーナ内にはチラホラと数名の生徒が練習しているのを見ることができた。
 今日からISを用いた練習をするとのことで、ワクワクしながらアリーナに来たんだが……。

「おい……」
「ん?」
「打鉄かラファール・リバイヴはどうした?」
「? ないよ?」
「ないよじゃ、無いだろ!! どうやってISの訓練をするんだ!! 昨日ISの使用許可を取ったっと行っていただろう!!?」

 そう、ISがないのである。 風音が一切ISを用意せずに来たので、箒が怒っている。
 その箒の怒鳴りを聞いても風音はきょとんとした顔をしていた。

「訓練機はどうしたんだ!!!」
「え? 専用機は? みんな持ってないの? 訓練機がないなら専用機を使えばいいじゃない。 そのためにIS使用許可を取ったんだよ? 訓練機の使用許可なんてそんなにすぐにおりるわけないじゃない」
「専用機なんぞ持っとるか!!!! それこそ、セシリア・オルコットレベルじゃないともっとらんわ!!!」
「あ、そーかそーか、……そういえばコアって未だ解析されていないことになってるんだっけ? ボソッ ……じゃ、私が貸してあげる」

 声を荒げる箒だったが、どこ吹く風と言った様子で風音は飄々としている。

 いや、貸してあげるって……。

 みんなの心の声は同時に同じことを考えたであろう。 当然俺も同じことを考えた。 しかし、そんな考えは風音が制服のポケットから取り出したものを見て霧散した。

 ちゃりッ っと軽い音がして、二つのペンダントのようなものが風音の手の中にあった。 そのうち一つを俺に差し出してくる風音。 「一夏はこれを使ってね」って簡単に言って俺の手に置いていく。
 それが何かは置かれた瞬間にわかった。 今俺の手の中にあるそれはISなのだと。

 俺が驚愕の面持ちでそのISを眺めていると、周りのみんなが何やら期待を込めた目で見ていることに気がついた。
 『本当に本物?』といった懐疑的な目を向けている人もいるにはいるが、風音の持つそれを本物と信用したのか、『早く展開しろ!!!!!!!!!!』という視線がほとんどであった。

「あ、それは【神代】ってゆう名前だから。 展開するときは呼んだらいいよ」

 風音のアドバイス。
 俺は、手に持つISに意識を集中し、「来い、【神代】!!!!」っと叫んだ。

 カッ!!!!

 強烈な光が瞬く。 目をあけていられず、瞼を閉じる俺。 周りからも、女子の悲鳴というか驚いた声が聞こえる。 え!? 本物なの!? といった声もちらほら聞こえたが……。 そんな声を聞きながら、俺はとてつもない全能感に襲われていた。
 なんでもできそうな力が湧き上がる。 決してそんなことはないはずであるが、自分が神様にでもなったようである。 まさに【神代】。 前に一度だけ着たことのあるあのISとは、比べ物にならないほどのパワーを感じるのだった。





「綺麗……」

 そう呟いたのは誰の言葉だったであろうか?

 光が収まると同時に、周りの状況把握に努めた俺は、周囲で見守る女生徒たちが皆一様に呆けた表情でこちらを見ていることに気がついた。 しかし、皆ポカ~ンと静止しているので一体どうなったのかがわからない。
 なんとか箒たちを再起動させ、現状を説明してもらう。

 のほほんさんなどが「おりむ~すっごくきれぃ。 女神様みたいだね~」なんて言っていたが、あながち嘘でもないようだ。 現在身につけているISのハイパーセンサーの能力なのか、自分の全身立体映像を目の前に表示して、唖然としてしまった。
 そこにいたのは一柱の女神。 最初それが現状の俺であるとは自分でも信じられなかった。

 ヴァルキリーと呼ばれる女神がいる。 戦場を駆け巡り、英雄の魂を集め、神界の戦力として確保していく。 しばし死神と間違われることもある女神である。
 数々のイラストにより、その女神像が描かれてきたヴァルキリーだが、どうも今俺がなっているのは、ヴァルキリーがプロファイルする某人気ゲームの主人公の様だ。
 俺は男であるから、当然あのヴァルキリーと同じとまでは言わないが、身につける鎧や兜、手に持つ武器等があのヴァルキリーそのままなのである。 あ、俺自身はあのゲームはやってない。 弾が面白いゲームがあるとか言って買ってたのを見ただけだ。 『最後は只のガッツゲーだったな』は未だに耳に残る名台詞だろう。

 それにしてもすごい。 少し目線を下げればそこには女性体になった自分の体が見える。 いや、感覚的にはちゃんとついているのだ。 何がとは言わない。 むしろナニだが……。 おっと、余計なことを考えてしまった。 つまり、感覚的には俺は男のままなのである。 しかし、視覚的には下げた目線の先に盛り上がる双子山や、自分の頭部から流れるように生えている長い銀髪等が目に入ってしまう。 自分の動きに合わせて揺れるそれを眺めると、嫌でも女性になったのだと認識させられてしまうのだ。 いや、嫌というわけではないが……。 それに、すごいのが、髪の毛などにはちゃんと感触もある。 立体ホログラフ映像というわけではなさそうである。
 自分の姿だとわかっていてもまじまじと見てしまう。 軽く腰巻から除く太ももが眩しかった。 自分の姿のはずなのに……。 俺は変態になってしまったのか?

 未だに興奮冷めやらぬと言ったアリーナ内。
 そこでなにごともなかったかのようにISを展開し始める風音。 ちょっとまて、確認しておかなければならないことがたくさんあるぞ。

「おい、なんで二つもISを持ってるんだ?」
「ん? へん?」

 そりゃあそうだろう。 昨日も参考書とにらめっこして得た知識ではあるが、現在ISは束さんがコアを作って無いから、世界に400機ちょっとぐらいしか(正確な数字は忘れた。 ヤベー覚えとかないと千冬姉にどやされる!)存在しなかったはず。 だから、国とか企業とかに特定数しかコアが配られてなくて、だからこそ専用機持ちが持て囃される。
 国家代表にでもなれば将来安泰と言えるほど待遇がよくなるみたいだし……。 それを考えれば代表候補生で専用機持ちのオルコットってスゲェ奴だったんだなぁ。 今度ちゃんと話ししてみないといけないな。 ……で、この学園はISの操縦者育成を目指す機関でもあるからちょっと特殊で、少し多めにISが配備されている。
 何が言いたいのかと言うと、どんなに大きな国であっても、企業であっても、個人で複数コアを所有している人なんているはずがない。 ましてや、日本の代表候補生ってわけでもない風音が専用機を持っているはずもない。
 なのに二つもISを所持しているのはおかしい。

「って訳で、二つも所有してるのはおかしいだろ!?」
「ほ~う、ちゃんと勉強してるじゃない。 で・も♪ 一つ肝心なことを忘れてるよ。
 確かに私は()()の国家代表候補とかじゃない。
 だから、改めて自己紹介をさせてもらうよ。


 "リトアニア共和国国家代表"にして"シリア・アラブ共和国国家代表"の『友永 風音』だよ。 よろしく♪」

「え……?」
「ふふ~ん。 すごいでしょ」

「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」

 アリーナに大絶叫が響き渡った。








「ま、嘘だけどね」



「「「「「「「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」



 もう一回大絶叫が響いた。









 またもや、いかにも信憑性のある嘘で騙された俺たち。 風音は本当に油断がならないやつだと再認識した。 そのあと、なんで個人で二つも所有しているのかを聞いたが、最終的には『今は語ることができない、時が来れば何れ分ることじゃて、ひょッひょ』とどこかの漫画にでも出てきそうなお馴染みのセリフとじじい口調ではぐらかされ、『こうしてるうちにも一夏の練習時間が減っちゃうよ』とのことで説き伏せられ、渋々ながらも練習に励んだ。

 風音は終始楽しそうにビームライフルを俺に向かって打ってくるわ、空間に爆弾を仕掛けてくるわで、てんやわんやだった。 異常に丁度いい場所に設置型の爆弾『地雷君』とやらを設置してくるもんだから、避けたと思った先に地雷君があったり、突っ込もうと思ったところに地雷君があったりと、まるで近づくことができなかった。
 あ、言ってなかったが、風音の身にまとうISは【くまたん一号】。 その名のとおり、くまのぬいぐるみのような外見である。 正直、見た目かわいいくまのぬいぐるみが高速で飛翔し、ビームライフルを撃ちまくる姿は、小さい子の教育に悪いんじゃないのか? とさえ思ったほどだ。

 だが、あえて言おう。

 可愛いは正義だと!!!!!! ドドンッ

 背中に荒波の背景を背負ってしまったが仕方ない。 皆も気がついていると思うが、くまの着ぐるみではなくぬいぐるみなのだ。 つぶらな瞳がキュートなあのぬいぐるみなのだ!! のほほんさんなんて、展開した瞬間に飛びついてたぐらいだからな。 あの瞬間、のほほんさんは音速を超えていたと思う。
 そのぬいぐるみっぽい外見の【くまたん一号】。 短い手足を懸命に振り回している姿が可愛すぎて可愛すぎて。 周りで一応ISの訓練をしていた面々もついつい訓練をやめて見に来る可愛さだ。
 やってることは極悪以外の何者でもないけどな。
 こちらの装備はヴァルキリーなのに手に持つ槍ぐらいしか武器がない。 一応、風音から、「第三世代っぽく作ってあるから、イメージインターフェイスによる武装が使えるはずだけど?」って言われてるけど、俺にイメージインターフェイスなんて近代的なものが使えるはずも無いだろう?
 仕方なく手に持つ槍で近接戦闘を行うしかなかったというわけだ。

 一通り訓練が終わった時に展開を解除した風音はさらに驚くことを言い出した。

「私とだけじゃあらゆる状況に対処できないかもしれないでしょ?」

 ってことで、箒が次に【くまたん一号】を展開させた。 おい、箒、口では「私なんかが……」とか言ってたけど、展開する瞬間滅茶苦茶嬉しそうにしてただろ!!!
 そうやって、今日一緒にアリーナに来ていた全員で、それぞれかわりばんこに【くまたん一号】を展開。 俺もちょっと着てみたいと思ったけど、くまたんが避けている姿は、いじめているようにしか見えないから却下だと言われた。 俺が避け役なの決定かよ!!!!
 箒は当然のことながらベアーハンドというくまたんの手を剣状にした(ぶっちゃけ、くまたんの手を棒の先につけたようにしか見えない)武器で近接戦闘。 短い手足で、完全に箒の動きをトレースしてくるくまたんは凛々し可愛いって感じだった。 周りのみんなもきゃあきゃあ言ってた。
 のほほんさん、清川さん、鷹月さん達は、乗りなれないISに戸惑っている感じで、飛んだ時なんか、あわあわしていた。
 ぶんぶん手足を振って体勢を整えようとしているくまたんは物凄く可愛かったとだけ言っておこう。 見物人は何人か「はぁはぁ、くまたぁん」とかいって幸せそうに失神していた。 くまたんおそるべしと言ったところか。

 そうやって、ISの訓練を積んで迎えたオルコットとの一戦。 正直に言うと俺は負けた。 まさかあんなところでエネルギー切れになるとは思わなかった。
 ピットに戻り、千冬姉からお叱りを受ける。 箒も「不甲斐ないぞ」と怒っている。 すみません。 あれから毎日特訓に付き合って頂いたのに。
 そうこうしている内にオルコットの準備が整ったのか、再度オルコットがアリーナに現れた。 それを確認すると、「じゃ、ちょっくら行ってきまっす♪」って軽い口調で風音が出て行ったのである。 ISも展開せずに。

「ふん、織斑。 よく見ておけ。 あれがISを本当に理解している者の戦い方だ」

 千冬姉の一言。 そこには風音に対する信頼さえ伺えた。

 そういえば千冬姉は教師っていう関係上、風音についてもよく知っているはずだ。 ちょっと聞いてみるか。

「織斑先生。 風音のこと知ってるんですか? それにあいつISを所持しているみたいなんです。 しかも複数」
「ふん、まぁ国家機密というわけではないから教えてもいいだろう。
 あいつを知っているのかと、問われれば……知っているさ。 かなり古くからの付き合いだからな。
 ISを所有している……当たり前だろ。 あいつはISを作った一人だからな」

 ……。

 ……。

 ……は?

「……いま、なんて?」

 聞き間違いだろうか? 箒も山田先生でさえもポカンとした表情を浮かべている。

「ん? あいつはISを束と一緒に作った人物だぞ。 知らなかったのか? ついでにいえば【暮桜】を作った人物でもあるな」

「なにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
「うるさいぞ馬鹿者」

 スパァァァァァァン!!!!

 グフッ……。
 いやいやいやいや、静かにしろって方が無理だろ!! そんなすごいやつだったのか!! いや、天才じゃないか? とは確かに思っていたが……。

「おいおい、騒がしいなぁ一夏。 負けたからって叫んでちゃダメだろ」

 詳しい話を聞こうと千冬姉に詰め寄ろうとした矢先、そんな言葉とともにあいつがやってきた……。

 はぁ、懲りないやつだなぁ。 
 

 
後書き
ネタ解説

訓練機がないなら専用機を使えば:パンがケーキなマリーでアントワなネットさんのお言葉。

ヴァルキリーがプロファイルする某人気ゲーム:某人気ゲームです。

最後は只のガッツゲー:やった人にはわかります。

くまたん:全て鉄で混乱なアニメに出てくるキャラクターをイメージ。 
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