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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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無印編 破壊者、魔法と出会う
  6話:その出会いは偶然か、必然か

 



どうも、通りすがりの仮面ライダーこと、門寺 士だ。
話が始まっていきなりなんだが。

「…………」
「…………」

林で出会った少女に、武器(デバイス)向けられてます。

















時間を巻き戻し、ジュエルシードに関わって数週間。この週末は連休ということで、高町家は一家そろって温泉旅行。高町家は連休などになると、こうやって家族旅行に出ることがある。俺もその一員として、旅行に同行させてもらっている。

今回は全国的な連休なので、俺達の友人であるアリサとすずか、それとすずかの姉、忍さんとすずかの家のメイドであるノエルさんにファリンさんが同行している。
同じ車に乗っているなのはとアリサとすずかは楽しく談笑、美由希さんは車の窓から外を見ている。俺はというと、いつものように持ってきているカメラで外を撮っている。

「ん~、いい絵だな」

そう呟きながら、再びレンズを覗きシャッターを押す。




その後目的地、海鳴温泉へと到着する。その敷地内には、小さな滝や池、ちょっとした林もあった。今回は撮りがいのある場所がたくさんありそうだ。

部屋もとり、荷物を置いた後、俺達はすぐに温泉へ入ることになった。当然、俺や士郎さん、恭也さんの男性陣は男湯へ。なのは達女性陣は女湯へ行くのだが………

「キュ~!キュッ、キュッ、キュ~~!!」

男湯の入り口で、俺の足下で何かを訴えるかのように爪をたて引っ掻いてくるユーノ。ユーノは先程アリサ達に連れられ女湯の方へ持っていかれた筈だが。
そう思うと、隣の女湯からなのは達三人がやってきた。

「あ~!ここにいた~!」
「ユーノ君、一緒に行こ」

アリサが指差しながらそう言い、なのはが両手を差し出しながら促す。するとユーノは、今にも泣き出しそうな顔で俺を見上げてきた。
俺はそれを見て、ユーノに笑顔を向ける。

(諦めな)

俺の心の内が読めたのか、ユーノは慌てて俺のズボンの裾を掴もうとした。が、それは俺が足をどけたことで空を切り、再び掴もうと腕をのばしたが、それはアリサがユーノを抱きかかえることで阻止されてしまった。

「さ、行こうかユーノ!」
「キュ~~!?」

ユーノの悲鳴を背に受けながら、俺は男湯へと入っていく。
入った先には、既に服を脱ぎ始めている士郎さん達がいた。

「いいのか、あれは」
「はい。俺にはどうすることもできませんから」

士郎さん達の近くの開いているロッカーにくると、恭也さんから声をかけられた。俺は少し呆れを含みながら答える。

服を脱ぎ、体を洗う為のタオルを一枚とりながら温泉への扉を開ける。
桶を取り、お風呂から一杯すくい、体を濡らす。そして桶と共にいすを取り、体を洗う。

「それにしても、こんな大所帯で出かけるのは珍しいな」
「そう言えば、そうですね」
「はは、店の方が若い人達に任せられるようになったからな」

僕達三人以外にいない浴槽に響く会話。そう考えれば、あんまりないよな、こんな大人数は。

「それに、なのはも楽しそうだったし」
「恭也さんは忍さんがいればいつも楽しくなりますしね」
「なっ!いきなり何を!」
「そういえば恭也、彼女とは最近どうなんだ?」
「父さん、いきなりそんなこと言われても……」

体を洗いながら顔を赤くする恭也さん。僕と士郎さんはそれを見て少しニヤッと口角をあげる。







温泉を出て後、俺はカメラを持って林を歩いた。風が爽やかに林を駆け抜け、俺の髪を巻き上げる。林の中で休んでいた小鳥達が、俺の歩いてくる気配を感じてか、焦るように飛び立つ。

「ん~、和む…」

その様子をそっと見届け、カメラのシャッターを押す。これで本日撮ったのは…大体十枚目、だったか。林の中では多分三枚目だ。

「…………」

そこで俺はカメラのレンズから目を外し、顔を上げる。

「…トリス」
〈はい〉

そして鼻で一息吐くと、トリスへ指示を出しジュエルシードを手に取る。そして腰を下ろし、ジュエルシードを空に透かすように見る。

(にしても、この石には何が…どんな力が秘められているのだろうか…)

なのはが出会った、ジュエルシードを探すフェレット。そして同じくジュエルシードを追い求める金髪の少女。どうして小動物やあんな少女がこんな石を追い求めるかは定かではないが、これに関わった奴は少なくとも碌なことになっていない。
変なネズミもどきに、明らかに凶暴化した犬、そして体をそのまま巨大化させた猫。普通でないことは明らかだ。

それにあの『大ショッカー』と名乗った連中も、このジュエルシードを求めている。奴らがやろうとしていることは、世界の支配。そんなことさせるつもりはさらさらないが、奴らがその目的の為にこれを探しているんだから、その力は俺の思っているよりも遥かに上なのだろう。

「まぁ、一人で考えても埒があかないか…」

と、小さくつぶやきジュエルシードを仕舞おうとする。が、その瞬間何とも言えない視線を背後から感じた。それを感じた俺の背中には冷たい汗が流れる。ゆっくりと顔を後ろに向け、視線の元を探る。

「…………」
「…………」

その視線の主はすぐに発見できた。それは俺の真後ろにあった木の上、その木の大きな枝の上に座っている少女だ。しかもその少女が、先程思考の内に出てきた金髪の少女だった。

「…………(チャキッ)」

少女は何の前ぶりもなく立ち上がり、持っていたデバイスを向けてきた。
















んで、冒頭に戻る訳だが………

「…先程見ていた石を、渡してくれませんか?」
「……いやだ、と言ったら?」

その声と共に少女の姿が揺れる。咄嗟に俺は後ろに飛ぶ。刹那、先程まで俺がいた場所を何かが空を裂く。
着地し、空を切り裂いた張本人である少女を見る。その手に握られたデバイスは横に振り切られており、どうやって攻撃してきたか一目でわかった。

「…それにしても何でこんな石ころを欲しがるのか、俺にはわからないんだが」
「私にはそれが必要なの。どうしても…その、ジュエルシードが…」

どうする?このまま渡すのもいいが、それじゃ俺が一方的に不利益だ。それに保険として持っておきたいし。
考えた末、導きだした答えは………

「…ジュエルシード?なんだそれ?」
「……その石のことなんですが」
「知らないな。俺はこれを、宝石の一つだと言われてプレゼントされただけだが」

知らないふり。ばっくれることにした。卑怯とかいうなよ?今の俺にはこうするのが精一杯だ。

「…ではそれがジュエルシードかどうか、見せていただけますか?」
「それは嫌だな。大事な家族からもらった、大事なもんだ。他人に触れるのは、好ましくない」

少女の要求に、肩をすくめながら返す。まぁ嘘なんだが。

「それにこれが君の言うジュエルシードだとしても、それが店前で売られているとは限らないだろ?」
「…………」
「君の見間違え、という可能性もあるしね」

どうだ?これで通って欲しいんだが………

「……でもやはり見せてもらうぐらいは(ぐぅ~)っ!?」
「…ん?」

少女がまた何か言おうとしたのだろうが、それは何処からかなった奇妙な音で遮られてしまった。少女はその音が聞こえた瞬間に、顔を少し赤らめて自分の腹に片手を添えていた。

「…もしかして、お前の…」
(ギロッ!)
「っ、す、すまない…」

俺がもしかしての疑問を聞こうとした瞬間、少女が怒りと恥ずかしさの混じった目でこちらを睨みつけてきたので、俺は言葉を中断する。

「…………」
「…………」

そして再び沈黙が流れる。少女の手には未だデバイスがあり、その矛先は俺へと向けられている。

「……お腹空いてんだろ?」
「………////」

俺の質問に、返事はしないものの、顔を俯かせる少女。俺はそれで確信がつき、背負っていたショルダーバックのチャックを開け、中から一個のパンを出す。

「いるか?」
「…………」
「心配すんな。これは俺がこっちに来るときに、旅館に一緒に来ている人からもらったおやつみたいなもんだから。遠慮なく食え」

俺はそう言って取り出したパンを少女に放る。放物線を描いて少女の手元へと収まった。

「……でも(ぐぅ~)っ!?///」
「ほら、また鳴った」

少女が再び何か言おうとしたが、良すぎるぐらいのタイミングで少女から奇妙な音が鳴った。少女は顔をさらに赤くしながら、渋々パンが入った袋からパンを出し、パンを頬張る。

「……おいしい…」
「だろ?俺の友人の料理長の一品らしいぞ」

一口食べて正直な感想を言う。そしてさらに少女はパンを頬張る。よほどおいしかったのか、それともよほど腹が減っていたのかはわからないが、少女の食べるペースが少しずつだが速くなっていた。

「……あの、その…」
「ん?」
「あ、ありがとう…ございます…」

パンを食べ終えた少女は、顔を赤くしたまま俺に向けて礼をいう。

「別にいいさ。それで、どうする?まだ俺の持つ石を探りたいか?」
「…いえ、止しておきます。そんなことしたら、お礼をした意味がないですから」
「そう、か…」

そこで会話が止まってしまう。さすがに気まずいので口を開こうとしたそのとき、草葉からリスが飛び出してくる。

「お、かわいいじゃん」(カシャッ)
「それは?」
「カメラ。ちょっと変わった形してるけど、ちゃんと撮れるぜ」
「へ〜」

飛び出してきたリスにすぐピントを合わせシャッターをきる。少女は俺が持つカメラの形に疑問を持ったようで、簡単に答える。ちょっと物珍しそうな顔をしている。

「…………」(カシャッ)
「えっ…」
「あ、悪い。ちょっと良い表情してたからさ、つい」
「…………」

不意をつかれたのがちょっと癇に障ったのか、怒ったような顔になる。だが、すぐにそこへリスがやってきて、少女の腕へと飛び込む。

「きゃっ!ちょ、くすっがたいよ…!」
(カシャッ)
「良い笑顔だ」
「あ…」

飛び込んできたリスはそのまま少女の顔をなめる。その時の少女とリスがあまりに良い絵になっていたので、俺は迷わずシャッターをきり、つぶやく。
満足のいく写真も撮れたので、そのまま旅館の方へと戻ろうと足を動かそうとする。

「あの…」
「…何か?」
「あなたの名前…聞いても?」

だが、完全に体を反転させる前に少女から声をかけられる。ふむ、確かにここまで話して、お互いの名前の一つも聞かないのもなにか。

「俺は門寺 士。君は?」
「私は……フェイト。フェイト・テスタロッサ」
「フェイト、か…」

俺が名乗り、逆に聞き返すと、少女は少し悩んで自分の名前を言った。

「…かわいい名前だな。似合ってるよ、テスタロッサさん」
「かっ、かわ……!//」

いきなりかわいいなんて言われて恥ずかしかったのか、顔全体を赤くしてしまうテスタロッサ。さすがにいきなり過ぎたか。

「あぁ、悪いないきなり変なこと言って」
「い、いえ…」
「それじゃあな、テスタロッサ」
「あ…」

踵を返し、手をひらひらと振り別れの言葉を残し歩き出したが、テスタロッサがいきなり間の抜けた声を上げたので、不思議に思いながら顔だけ向ける。

「…何かあったか?」
「…いえ……」
「…?それじゃ、またな」
「はい、また…」

少し不満そうな顔をしているが、問題なさそうだったので、俺はそのまま旅館の方へと足を進める。



  
 

 
後書き
 
(7/3 修正)
  
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