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ナブッコ

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18部分:第四幕その五


第四幕その五

「そなた達は二人ではじめて完全となれる。よって」
「二人で王に」
「私達で」
「そうだ。わかったな」
「それがバビロニアの為なのでしょうか」
「その通りだ」
 アビガイッレに対して言う。
「それこそが最善の道なのだ。よいな」
「それがバビロニアの為ならば」
 アビガイッレには野心がある。しかしそれ以上にバビロニアを想う気持ちがある。今彼女は野心に燃える女ではなく王者としての心に至っていた。
「それに従いましょう」
「よし。それで」
「はい」
 アビガイッレはまた応える。
「妹と手を結ぶのだ。よいな」
「フェネーナと」
「そうだ、今こそ」
 それを言い伝える。
「その絆を結べ。確かにな」
「フェネーナ」
「姉上」
 二人はそれぞれ互いの顔を見やった。もうわだかまりは感じられなかった。
「ではここで」
「はい、ここで」
 二人は言い合う。
「バビロニアの為に」
「忌まわしい過去を忘れ」
「二人で」
「姉妹で」
 二人は言葉を続ける。同時にそれぞれの手を差し出してきた。
「バビロニアを」
「栄えさせていきましょう」
 二人が手を握り合った時歓声が起こった。今ナブッコの跡継ぎがここに決まったのであった。
「そしてヘブライの者達よ」
 ナブッコは次にヘブライの者達に顔を向けてきた。そして言う。
「そなた達は故郷へ帰れ」
「よいのですか」
「それが運命なのだ」
 彼は厳かに述べた。
「ならばその運命に従うのだ。よいな」
「わかりました。それでは」
「ここに」
「うむ。全ては決まった」
 再び厳かな言葉を発する。
「バビロニアもヘブライも」
 言葉を続ける。
「本来の場所で幸福となるのだ。よいな」
「バビロニア王よ」
「何という寛大な」
「それが本来の姿だったのだ」
 全てを達観したような言葉であった。
「それに戻すだけだ」
「そしてそれをもたした貴方は」
 ザッカーリアが彼に対して言う。
「王の中の王であります」
「いや、それは違う」
 しかし彼はその言葉に首をゆっくりと横に振った。
「私は神の僕に過ぎない」
「僕だと」
「それが王なのだ」
 彼はそれまでのことでそれを悟ったのだ。
「王とは神ではない。そして神を害してはならない」
 今彼は言った。
「だからこそだ」
「それでは我々もまた」
「他の神を害することのないようにな。かつての私のように」
「その時があれば将に破滅の時でありましょう」
 ザッカーリアもまた真の意味での賢者となっていた。その言葉にはあの刺々しさは消えていた。
「そうだ。だからこそ」
 ナブッコは彼等に対して告げる。
「他の者のことも忘れることはないようにな」
「はい」
 ザッカーリアは頭を垂れた。そして他のヘブライの者達もバビロニアの者達も。皆ナブッコの前に片膝をついていた。
「これが神の御心だ」
 ナブッコは最後にそう述べた。彼もまた今ようやく真の意味で王となったのであった。


ナブッコ   完


                  2006・12・10
 
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