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ナブッコ

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17部分:第四幕その四


第四幕その四

「アビガイッレよ」
「何か」
「そなたは私の次の王だ」
「馬鹿な」
 しかし彼女はそれをすぐには信じようとはしなかった。
「貴方は私を認められなかった筈」
「それは違う」
 ナブッコはそうではないと言った。
「そなたは私の王となるに相応しい資質もある。しかし」
「しかし!?」
「不完全なのだ」
 そのうえでこう述べた。
「そなた達は」
「そなた達とは」
 アビガイッレはその言葉の意味がよくわからなかった。目を顰めさせる。
「どういうことなのでしょうか」
「言ったことのままだ」
 ナブッコはそう返した。
「そなたとフェネーナのことだ」
「馬鹿な、フェネーナは」 
 今も彼女がその首に剣をやっている。少し動かせば終わりである。
「今こうして」
「斬れるのか?」
 だがナブッコは彼女に問うた。
「そなたに妹が。どうだ」
「何を戯言を」
 アビガイッレはまずはその言葉を一笑に伏してきた。
「その様なことは」
「ではやってみよ」
 ナブッコはそれを受けて言う。
「自らの手で妹を」
「では」
 その言葉のままに斬ろうとする。だが手が動かないのだ。
「馬鹿な、何故」
「そういうことだ。よいか」
 手をどうしても動かせないアビガイッレに対して述べる。
「先にも言ったようにそなたに妹は殺せぬ」
「くっ・・・・・・」
「そしてわかっている筈だ。その若者もまたそなたのものにはならない」
「どうしてそれを」
「わしにはわかるのだ」
 ナブッコの目には深い知性があった。それで全てを見ていたのだ。
「何もかもな。だからこそだ」
「では私は・・・・・・」
「娘よ、案ずることはない」
 父としての言葉であった。
「王はもう一人いるのだ」
「もう一人!?」
「そうだ」
 今度はフェネーナに目を向けてきた。そして声をかけた。
「フェネーナよ」
「はい」
「まずは立つのだ」
 最初に立つように言った。
「王者は跪かぬ。よいな」
「はい」
 フェネーナはそれを受けて立ち上がった。ナブッコはそれを確かめてから言うのであった。
「もう一人の王はそなただ」
「私が」
「そうだ。そなたもまた王としての資質を備えている」
「私が。王として」
「左様。その優しい心と寛容さだ。しかしだ」
 ここで付け加えるのを忘れなかった。強い声になっている。
「そなたは優し過ぎる。それでは王として完全ではない」
「では」
「だからなのだ」
 そして今度は二人を見た。
「アビガイッレ」
「はい」
 まずはアビガイッレを。
「フェネーナ」
「はい」
 続いてフェネーナを。続けて見た。
 
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