| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ナブッコ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

11部分:第三幕その一


第三幕その一

                   第三幕 予言
 バビロニアの女王となったアビガイッレはすぐに玉座についた。そして王の間に主だった高官や司祭、将軍達を集めてこれからのことについて話をはじめた。
 あの紅の衣もマントも彼女のものとなっていた。彼女はそれを着て今玉座において全てを見下ろしていたのである。
「では話を聞こう」
 彼女は下に控える全ての者達に対して言った。
「今どうするべきかを」
「はっ」
 それに応えてイシュタルの巫女長が進み出て述べてきた。
「まずは今のバビロニアですが」
「うむ」
 彼女は巫女長の言葉に鷹揚に応えた。
「繁栄を極めております。兵は強く富が集まっております」
「そうだな」
 まずはその言葉に頷いた。
「ですが」
「ですが何だ?」
 そのうえで巫女長の言葉に問う。
「申してみよ」
「はい。その中で不穏な者達がおります」
 彼女はそう語った。
「言うまでもなくヘブライの者達です」
「そうだな」
 アビガイッレはそれに頷いた。
「特にあのザッカーリアめは今でも我々への攻撃を止めません。このまま置いていれば」
「危険だというのだな」
「はい」
 巫女長はそれに答えた。
「その通りです」
「そうだな。確かに」
 国の中に不穏分子を置いておくわけにはいかない。そういうことであった。
「置いてはおけぬか」
「そうです。それに」
「フェネーナのことか」
 アビガイッレはそれに問うた。
「そうなのか?」
「フェネーナ様にも困ったものです」
 巫女長は顔を顰めてそう述べた。
「そのヘブライの者達を庇い立てするとは。どうしたものでしょうか」
「ふむ」
 アビガイッレはそれを受けて考える顔を見せてきた。
「放ってはおけぬか」
「そうです。そしてそれを解決する方法は」
 巫女長はここでアビガイッレを見てきた。目と目でも話をしていた。
「女王の御心にこそあります」
「私にか」
「左様です」
 アビガイッレには巫女長が何を言いたいのかわかっていた。そのうえで話をしているのである。
「どうされますか」
「そうだな・・・・・・むっ」
 だがここで誰かが王の間に入って来たのに気付いた。
「誰だ、呼んだ覚えはないぞ」
「ここに私が来るのに呼ばれる必要があるのか」
 威厳はない、いや消えてしまっていたが確かな声であった。今王の間にナブッコが姿を現わしたのだ。
 あの紅の衣もマントもなくみすぼらしい服である。だが彼はそれでも王の間にやって来たのであった。
「王よ」
「どうしてここに」
「言った筈だ」
 ナブッコは驚く貴族達に対して言った。
「ここは私の場所だ。来る為に理由はいらぬと」
「しかし今は」
「それは」
 皆口ごもってしまっていた。やはり王であった者だ。それをむげにはできなかったのである。
 彼等が戸惑っているところにアビガイッレが言った。有無を言わせぬ声であった。
「よい」
「女王よ」
「今何と」
「聞こえなかったのか。よいと言ったのだ」
 アビガイッレはそう述べた。
「そしてだ」
「はい」
「下がれ」
 全ての者達に対して言った。
「よいな、下がれ」
「は、はい」
「それでは」
 王の命令は絶対である。聞かぬわけにはいかなかった。それを受けてナブッコ以外の全ての者が立ち去った。後にはアビガイッレとナブッコだけが残った。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧