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転生者とマテ娘と日常?

作者:マテ茶
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俺とマテ娘と過去話と

キッチンに立ちジャガイモ、ニンジン、タマネギの皮を剥き、一口大より少し大きめに野菜を切る。切った野菜を鍋に入れて水を入れ火にかけると、次は牛肉の塊を手に取り大きめの角切りにする。


「よし、今日はビーフシチューにしよう。」
『相変わらず下拵えをしながら考えるんですね…』


バルディオンが呆れたように一人言に応えるが気にしない。
だって下拵えし始めたらメニューが浮かぶんだから仕方ないじゃん。
他愛ない話をしながら煮込み用と仕上の用の肉を訳、煮込み用の肉を鍋に入れて一緒に煮る。この時香草を入れるのがポイントだ。
後は丁寧に灰汁を掬いながらブイヨンを作る。
大方灰汁を取り除きルーを入れ手持ちぶさたになったので携帯を弄っていると、ディアーチェ達が帰ってきた。


「ただいま帰りました。」
「今夜はカレーか?」
「おかえり、皆。今夜はビーフシチューさ。」
「やったー!アキラのビーフシチューは美味しいんだよね!あ、靴は玄関に置いておいたよ?」
「サンキュー。」


頼んでおいた靴の事を聞き、礼を言う。
煮込んでいるビーフシチューの火を一度止め、クッキーを取り出すと皆の前に出す。
このクッキーは三日に一度作っている物で、俺の得意な菓子なのだ。
最初は皆が頑張ったご褒美に作っていたが、今では毎日のおやつになりつつある。


「しっかし、毎日このクッキーで飽きないか?」
「何を言うのだ!」
「飽きることなんてありません!」
「こんなに美味しいクッキー、絶対一人で食べたいくらいだよ!」
「そ、そうか?」


三人の必死さに若干引く俺。後レヴィ、それは止めておけ。確実に太る。
三人の紅茶を出してやると、インターフォンが鳴った。
誰だろうと思いカメラを覗くと、そこには我がクラスの管理局の魔導師三人組が居た。
本当にプライバシーもへったくれも無いなと嘲りながらドアに近付くと、鍵を開けた。


「用が有るんだろ?入ってこいよ。」
「ほんなら、遠慮無く上がらせてもらうで?」


先陣を切って入ってきたのは八神だ。それに続いてハラオウン、高町と入ってくる。
ハッキリ言って俺は不機嫌だった。


「災難やったなー?入学早々男子に追い掛けられて。」


にまにま笑いながら近寄る八神を半歩下がって見詰める。コイツ…楽しんでやがる。絶対。


「はやてちゃん、目的が違うんじゃ…」
「おお、せやったせやった。あんな、暁君。やっぱりディアーチェちゃん達の事なんやけど…昔の事件の時の子にあんまりにも似すぎとるんよ。」
「その事件がどんな事件話か解らねぇけど、キチンと話したら俺も話してやる。」


もう此処まで来られると隠し通せる気がしないと判断した俺は、条件付きで話すことを了承する。
俺の条件を聞いた八神達は目配せして頷くと、俺に向かっても強く頷いた。


「ええよ。キッチリ話したる。」
「わかった。まあ、此処で話すのも何だ、上がれよ。」
「「「じゃあ…お邪魔します。」」」


全員靴を脱ぎ、俺に着いて歩く。


「八神、俺が見てないからって部屋を覗こうとすんなよ。」
「何でわかったん!?」


驚く八神を無視して皆が居るリビングに行く。
すると、ディアーチェが直ぐに反応してくれた。


「おお、アキラ。客人か?」
「まあな。取り敢えずお前らも聞いてくれ。管理局の魔導師がお前らの出生について知りたいってよ。」
「…もう話すのか?」
「ここまで来てんだ。隠しきれねぇだろ?」
「…仕方ないな…」
「ホンマごめんなぁ…」


八神が両手を合わせて頭を下げる。


「…小鴉風情が…」
「止めろディアーチェ。」
「しかし、本当に迷惑な話ですね。」
「にゃ!?ひどくない!?」
「酷くは無いと思います。」
「シュテルも…怒ってるのは分かったから、今は抑えろ。」
「あ…美味しいね、このクッキー。」
「でしょでしょ!アキラのクッキーは最高なんだよ!」
「お前ら何馴染んでんの!?」


マイペース加減がそっくりな二人にチョップを喰らわせる。涙目で睨んできたが知らん。
俺は三人分の紅茶を出すとシュテルの隣に腰を下ろした。


「んじゃ、話して貰いましょうかね?」
「先ずわたし等からやな?」


それから八神は、闇の欠片事件についての出来事を話してくれた。
まあコイツらを助けたのは俺だし、ゲームの内容と同じだったから別に聞くまでも無かったがな。


「話はだいたい理解した。つまりその夜天の書の防衛プログラムの残骸が、コイツらそっくりなマテリアルになってお前らを襲ったと…」
「そや。理解が速うて助かるわぁ。そんで、その闇の欠片事件は一人の知らん魔導師が事件を終わらせた。」
「なるほどね…んじゃ、次は俺達の話だ。」
「…私達は、貴女達の言う通り元マテリアルです。」
「もっとも、我等は既に人間になっておるがな。」
「だから成長もするし、血も流れるんだよ?」
「それと…俺は魔導師だ。闇の欠片事件にも、コイツらを助ける為に関わった。」


俺の発言に固まる三人組。そう…コイツらを助けるためだけに、今まで原作介入を拒否していたのを止めて闇の欠片事件を終わらせた。
俺は紅茶を少し飲み口を湿らせると、口を開いた。


「色々驚くことはあるけど、暁君も魔導師だったなんて…」
「レヴィがポニーテールの剣士に落とされた時助けたのは俺だ。」
「…とにかく詳しく話してくれへん?」
「ああ。あれは闇の欠片事件が始まったばかりの時だったな……」





……闇の欠片事件中


何か上空で凄いことが起こってる気がする。だって現在進行形で空から凄い音がしてるんだもん。
ドガドガと何かを打ち付けるような音が聞こえる。
俺は様子を見る為に近くのマンションを登り始めた。セットアップしないのは、管理局に目を付けられないようにだ。


「これで終わりだ、駆けよ隼!」
「うわぁぁぁ!」


何かの激突音と悲鳴が聞こえた。
俺は急いで外を見る。空を見上げると水色の髪の女の子が落ちてきていた。
俺は通路の手摺に乗ると、タイミングを見計らって飛んだ。


「届けぇぇぇぇぇ!」


手を伸ばし、彼女の腕を掴むとお姫様抱っこの形になりながらも着地する。
正直に言おう。かなり足が痺れている。
俺は足の痺れを無視して女の子を見る。ちょうど気が付いたのか、彼女は目を開け始めていた。


「っ…いたた…」
「大丈夫か?」
「うん…何とか…って!?何この状況!?」


自分の状況に驚く少女。まあ気が付いたらお姫様抱っこなんて、誰でも驚くわな。因みにこの時、俺はフードを被っていた。少女からは丸見えだが。
俺は直ぐに下ろしてやり、少女が落ちてきた空を見上げる。
そこには、ピンクのポニーテール剣士が俺をにらむ姿があった。


「…お前の目的が何かは知らんが、このマテリアルは壊さなければならない。」
「嫌だっつったら?」
「手荒な真似はしたくは無いのだが…邪魔をするのであれば切り捨てる。」


ピンクのポニーテール剣士こと、シグナムは剣を構える。


「随分と手荒なんだな?まあ、もう遅いけどな。」


俺はニヤリと笑みを浮かべると、片手間で構成していた転移魔法を発動させる。驚くシグナムを置いてきぼりにし、少女を連れて転移した。








「此処まで来れば大丈夫だろ。」
「あ、さっきはありがとう!」
「どういたしまして。」


かなり長距離まで転移した場所で腰を下ろす。
俺は少女を見詰め、気にしていたことを口にする。


「なあ、お前らの目的は何だ?」
「うーんとね…僕らの目的は…」
「待て、雷刃。我がその下朗に話す。」
「王様!」


いつの間にか少女の後ろに、二人の少女が立っていた。
まあこの事件の後の事までわかってるから、名前もわかるんだけど…。


「先ずは礼を言うぞ。よくぞ我が家臣を助けてくれた。」
「別に。俺は俺の為に動いただけだ。」
「王の賞賛は受け取っておけ!それで、我等が目的だったな。」


それから王は闇の欠片を利用し、闇の書の闇として再生する事を目的としている旨を聞いた。
…やっぱり、止めた方が良いよなぁ。


「…なあ、その目的は止められないか?」
「…何だと?」


王の眉根に皺が寄る。そりゃ、存在全否定されたようなもんだもんな…。


「…私達が生まれた理由を否定しないでください。」
「悪いな。存在は否定しないけど、目的は否定させてくれ。じゃないと俺が平穏な暮らしが出来ないんだよ。」
「随分と勝手ですね?」
「お互い様だろ?」
「星光、下朗の申す通りだ。」


王が星光をたしなめる。
俺はち上がり三人を見詰めると、首飾りのデバイスを手に取る。


「んじゃ、勝負だ。俺が負けたらお前らの目的達成の手助けをする。お前らが負けたら、目的は諦める。」
「…良いだろう。その勝負、受けてたとうぞ!」
「ま、お前らが負けても生きる意味は見つけてやるよ。ちゃんと面倒は見てやる…」


俺と王はニヤリと笑うと、デバイスをセットアップした。そして雷刃と星光が見守る中…全力全開でぶつかり合った。





……回想終了


「んで、その勝負が俺の勝ちで終わったからコイツらの目的…闇の書の闇を再生させる事は諦めさせた。」
「その折、新しい名前を頂きました。」
「カッコいいでしょ?」
「我等も今の暮らしが楽しい。アキラには本当に感謝している。」


マテリアル達が人間になった理由ははぐらかしながら、大方の事実を説明する。
神様の奇跡なんて言っても絶対に信じねぇし、管理局のモルモットにされるのも御免だ。


「そんな事があったんだ…」
「まだまだ知らないことが多すぎだね、なのは。」


噛み締めるように頷く高町とハラオウン。


「八神、この事は管理局に言うのか?」
「…正直、悩んどる。」
「はやてちゃん!?」
「もう闇の欠片事件は、一人の魔導師によって終わったことになっとる。その魔導師がマテリアルを消滅させる場面も記録に残っとるしな。」
「…私ははやてに任せるよ。」
「フェイトちゃん~…わたしに押し付けるん?」
「違うよはやて。私は…はやての決めた事に責任を持つ。」
「……わかった。」


八神は小さく、しかし力強く頷くと此方を向き、強い意思を持った目で喋りだした。


「…ここに居るのは、クラスメイトの家族や。先の事件とはなんの関係もあらへん。」
「…おう。サンキュー。」


只一言、小さく礼を言うとクッキーかじる。クッキーを食べる音が響くと、重くなっていた空気が晴れていくような気がした。
…この後高町の言葉があの言葉を言わなければ、大団円で終わったのによ。


「ねぇ、暁君は管理局に入らないの?」
「絶対に入らねぇ。」


即答。それこそ脊椎反射の如くの即答で言葉を切り捨てる。
高町は一瞬反応出来ないでいたが、諦めること無く食い下がる。


「で、でもほら、魔法の力を何かに役立てれば…」
「管理局の為に役立てるような力は持ってない。」
「こ、高ランクの魔導師はミッドに住まなきゃいけない法律が…」
「んなの管理局が勝手に作った法律だ。地球に住んでる俺達にゃ関係ねぇよ。」
「…誰かを助けれるのに?」


段々と高町の声が冷めていく。悪魔と関わりたく無かったが、こうもしつこいと頭に来る。俺には俺の生き方があるんだ…ほっとけよ。


「世界の何処の誰がのたれ死のうが、危機に立たされようが俺には関係ねぇ。」
「…助けられる力があって、手を伸ばさないんだ?」
「悪いが、俺は正義のヒーローなんかじゃないんだ。俺が守んのは、手の届く範囲でだけだ。無理に手を伸ばして自分が落ちるなんて馬鹿な真似はしたくは無いからな。」


当て付けのように呟くと、歪な魔力弾が俺の顔の横を通り過ぎる。
高町を見ると、明らかな無理をしている顔で魔法を行使する姿が見えた。


「なのは!駄目!」
「なのはちゃん!なにやってん!?」


八神とハラオウンが急いで高町を押さえる。


「離して!こんな人許せない!!」
「お前の価値観を俺に押し付けんな。事実、お前は落ちただろうが?」
「…愚かですね、ナノハ。」


今まで黙っていたシュテルが、遂に口を開いた。


「貴女が何を言おうと構いません。困っている人を助けるのは大いに結構です。但し…やるなら自分一人で、誰も悲しませること無くしてみなさい。」
「…俺には出来ねぇよ。誰彼構わず手を伸ばして助けるなんてな。だから無理だって言ったんだ。それに…落ちたら悲しむ奴が居ない訳じゃねぇだろ?先ずは自分の身を考えるこった。」
「…ありがとう暁君、心ぱ「思い上がらないでください。アキラは貴女の心配なんかしてません。」はにゃ!?」


シュテルが高町の言葉を遮る。
あのーシュテルさん?暗いオーラが見えますよ?そんで白い悪魔が泣いてますよ?


「まぁ、そういう訳だ。俺は俺の手の届く範囲で守る。だから管理局には入らねぇ。無論、ディアーチェ達もな?」
「わかったよ…。今日はごめんね…。」
「良いさ。言葉を選ばなかった俺も悪かったよ。詫びと言っちゃ何だが、夕飯食っていくか?」


俺の提案に頷く三人。ディアーチェは些か不機嫌だが問題無いだろう。


「あれ?静かだけどレヴィは…」
「すぴー…」


鼻提灯を出して寝てやがった。こいつは…。
ハラオウンと同時に苦笑いを浮かべる。どうやら同じ外見だからか複雑なようだ。ハラオウンにレヴィの相手をさせながら、俺は夕飯の仕上げに向かった。





フライパンを熱して油を軽くひき、肉を焼いていく。中はレアがお薦めだ。棚から赤ワインを取り出すと、栓を開けて肉に振りかけフランベをする。
すると高町と八神とディアーチェがキッチンに入ってきた。


「アキラ、手伝えることは無いか?」
「じゃあ、サラダとパンの皿を出してくれるか?パンはもうすぐ焼けるはずだから。」
「うむ、わかった。」
「…男がこんなに料理するなんて…」
「しかもビーフシチュー…」


高町と八神は驚きを隠せないでいる。世界のシェフの大半は男だと心の中で突っ込みながら、焼いた肉を鍋に入れる。
しばらくして夕飯が全て出来上がると、リビングのテーブルに並べていった。
そして全員が席につく。


「「「「「「「頂きます。」」」」」」」


全員手を合わせて合掌。日本の食事の基本だ。
皆一斉にビーフシチューを一口食べる。マテリアル三人娘は何時もの味に笑みさえ浮かんでいるが、魔導師組は固まっていた。


「どうした?不味かったか?」
「ち、違うよ!」
「寧ろ美味しすぎて…」
「女としてのプライドがズタズタに裂かれたんや…」


料理上手な八神までダメージを受けている。
料理には自信があるが、そこまでの事か?


「我も頑張ってはいるが、やはり敵わぬな…」
「んな事ねぇよ。ディアーチェの飯も美味いさ。」


少し落ち込むディアーチェの頭を軽く撫でてやる。ディアーチェは何時もこれで元気になるのだ。
周りの視線が痛いけど……


「ねぇ、暁。」
「何だ?」
「私と…模擬戦してくれない?」



……はぁぁぁ!?


「来月くらいに…駄目…かな?」


小首を傾げ上目遣いで懇願するハラオウン。…断れるわけがありません。




その後食べ終え八神達が帰った後、俺はディアーチェ達に二時間に渡る説教を受けた。何でさ。 
 

 
後書き
作者のマテ茶です!
今回は過去話となのは達に正体を明かす回ですね。
特に書くことはありませんが、暁君はGODの内容となのはの怪我を知っている設定です。
あ、誤字脱字の指摘などは随時受けておりますので、どんどん指摘してください!

それでは次回!遂に戦闘パートです!マテ茶でした。 
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