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IS クロス Zero ~赤き英雄の英雄伝~

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Mission 6  目標を撃破し、仲間を守れ

Side --- <ゼロ>

真横を赤い閃光が突き抜ける。
新たにロックを掛けられるがギリギリまで引きつけてから避ける。
サイドステップを駆使し、限りなく少ない動作で避け続ける。

「くっ!! リン、大丈夫か!」

「アンタが守ってくれてるからね!」

何なんだ、ここまで高出力のビームを放っているのにエネルギーが尽きる気配が無い。
それにリンを守りながらでは決定打を与えられない。
この、効率のみを考えた闘い方、こちらが会話をしていると急に止む攻撃。
まるで、学習型AIを搭載したロボットのような……
だが、それにしても……

「ハァ………ハァ……」

この回避行動は予想以上に体力を消耗するな。
いくらレプリロイドだった頃の俺に近いからと言っても体の基本構造は人間か。
あの頃のような動きを続けられるわけがないか。人間には無限のエネルギーがあるわけではないからな。
だがこの手法で無ければもしかするとリンに攻撃があたってしまうかもしれない。

「ホントに大丈夫なの!?」

「少しだけでも隙があれば……」

「どうするの!」

「もし、俺の推測が正しいのなら、一つだけ策がある」

やはり、こちらの会話中は攻撃が止むか……明らかに観察行動だろう。
一度、一度だけでいいから、接近する事が出来れば人か否かを判断することは可能なんだが。

「もしかすると奴は無人機かもしれない」

「はぁ!? 何言ってんの? ISは人が乗らないと動かない、そういう物なの!」

「だが、人が乗っているのであればこうやっている間にも攻撃を仕掛けてくるはずだろう?」

「でも…………」

「リン、一度だけでいい、無理を言うようだが奴に隙を作れるか?」

「一回だけなら…………多分」

「なら、俺が合図を出したら、それを実行してくれ」

「分かったわ」

会話が終わりを告げると、攻撃は始まりを告げた。
なぜ、奴は近づいてこない?
近づいてこないなら、近づけばいいだけだが、リスクが高い。
だが、そんな事を言ってられる状況でも無いか。
一瞬、ほんの数秒にも満たないが攻撃が止まった。

「今だ!!!」

奴に向かい、駆けだすと同時にリンへ声を張り上げる。
姿勢を低くする。人が乗っていようがいまいが足元に近づく物体を正確に狙い撃つのは不可能に近い。
歪な腕がこちらを向き、赤い光が手の甲の辺りに集まる。
放たれる一歩手前で奴の腕が大きくノックバックする。

「あと何発も無いわ! 早く!!」

あと数回しか援護は出来ない、そう言っているのだ。
だが、あと数回もいらない。
あと数メートルの距離だ。

「やはりか…………」

奴の真横につくと脇腹にゼットセイバーを突きさす。
この感覚、やはり人はいない。ここまでの深く突き刺しても肉を切る感覚は無かった。
それにこの所属不明機から発せられる気配は奴らに似ている。
レプリロイド、それもパンテオン等の意識を持たない類。
単なる勘違いという可能性も考慮したいところだが、間違える訳が無い。
今まで幾千、幾万もの『鉄の塊』を切り裂いてきたんだ。いまさらその感覚を間違える訳が無いだろう。

「リン!! やはりこいつはっ………!!!!」

奴の脇を走り抜けながら鈴に報告しようとすると、横から大きな衝撃が襲ってきた。
そのまま、慣性にしたがいアリーナの壁に衝突する。
油断したか……っ!ぐらりと、視界が揺らぐ。
これは……今、こん…な所で倒れる…訳……には…………



Side --- <鈴音>

「リン!! やはりこいつはっ………!!!!」

ゼロがそういいかけて吹き飛んだ。正確には吹き飛ばされた。
戦闘経験自体は少ない私でもアイツが色々な戦闘を経験してきていることぐらいは分かった。
そんな、アイツが一撃で吹き飛ばされた、気配も分からないままに。
それにあんな無茶な腕の動き人が乗ってたら出来る訳が無い。

「何してんのよぉぉぉおぉ!!!」

ありったけの力を込めて、龍咆をぶち込む。
見えないはずの弾丸が、風を纏い目視化する。
それが可能になるくらいにエネルギーを込めた。
もう、残量なんて関係無い。防御なんて知らない。今一撃でも受けたら確実に私は死ぬだろう。

「あぁぁぁぁああぁぁ!!!!!!」

狙いをろくに定めもせず、乱射する。
ほんの数分、一緒に戦った仲間が吹き飛ばされた。それだけでも、私の感情をかき乱すには十分で。
ただ、ただ、今は、どうなってもいいから、目の前の『アレ』を破壊したい。


赤い光がこちらへ向かってくる。
龍咆の反動で避けれやしない。
死んだかなアタシ。




「そのような狙いを定めていない射撃ではダメですわね」




そんな言葉と共に、私の横を蒼い閃光が突き抜けて行った。
正面の赤い光を打ち消し、そのまま、『アレ』を撃ち抜く。
スラスター音が聞こえたと思えば、前に蒼いISが着地した。

「早く、ゼロさんを助けに行ってください!!!」

「あ、あぁ、分かってるわよ!!!」

スラスターを吹かし、ゼロの所に飛ぶ。
大丈夫でしょうね!?やられっぱなし、守られっぱなし、貸しを作りっぱなしってのは性に合わないのよっ!
絶対に借りを返すまでは、くたばらせたりしない!!

「大丈夫!? ねぇ!! 聞こえてるの!?」



---真っ白な世界---

「ここは……?」

一面が白い。ただただ白く、なにも無い。
果ても、終わりも、始まりも、何も見えない。

「ゼロ……」

懐かしい、友の声が聞こえる。

「エックス…」

「フフッ……こうして君と話すのは久しぶりかな?」

「変わらないな」

「変わったよ。でもゼロ、話してる余裕はないんだ。君には、まだ守りたいものがあるんだろう?」

「あぁ……」

「なら、君が目覚めた時みたいに、また力を貸してあげるよ。ボクにはこれしかできないけどね」

「一つだけ聞いていいか?」

「なに?」

「お前はどこに居るんだ?」

「いつでも、君の傍に…………なんてね。ボクにもわからない。サイバーエルフの状態だったと思ったら今はこうして君と話してる。ほら、もう行きなよ。友達が呼んでるよ」

「助けを……ありがとう」

「バグを取り除いただけだから……効果はその内あると思うよ」

目を閉じると、微かに聞こえる。
俺を呼ぶ声が、リンの呼ぶ声が聞こえる。



Side --- <ゼロ>

「リ……ン……」

「生きてるのね!!」

死んでいるわけがないだろう。
いや、死んでもおかしくなかったのか。

「奴は……どうなっている」

「今セシリアがやり合ってるわ」

セシリアも来てくれたか。
シールドエネルギーは回復してるわけではないか。
相変わらず残量は多いとは言えないな。攻撃一回、防御一回が限界だろう。
エックスの助けは何だったんだ。

「行くぞ、リン」

「もう、大丈夫なの?」

「セシリアだけに任せる訳にはいかないからな」

だが、今武装は皆無だ。ゼットセイバーは奴に突き刺したまま。ISの武装切り替えのシステムもさっきの壁に衝突した衝撃からか起動できない。
どうする……何か、策は……
アリーナを見回し、あるものを見つける。

「リン。ここから動くな」

「なんで、アタシだけ!」

「ここはきっといい具合に隠れられる。もうエネルギーが無いんだろう?こうやってゼロナックルを使わずとも直に触れられるくらいには」

「でもっ! あんただって、そんなボロボロな状態で!」

「約束しただろう?絶対に守り抜くと。いいから従っておけ」

それでもなお抵抗するリンを壁が破壊されたおかげで出来た壁の裏側に座らせる。
もうすっかり、奴のロックオンからはリンは外されているみたいだからな。
こんな無いのと同然な壁でも爆風を防げるくらいには耐久力があるだろう。



「セシリア!! 奴の足を狙い撃ってくれ!!」

「ゼロさん!!! 了解ですわ!!」

セシリアが、奴の動きを止めてくれている間に目当ての物へと走る。
先ほど、リンとの戦闘の際に地面に放り投げた、リコイルロッド。
拾いさえすれば素手で殴り付けるより遥かに高いダメージを期待できる。


届いたっ!即座にチャージを開始!!
キィン!
速い!?エックスの助けはこれか、武器のチャージが速くなった。
だが、あいつはバグを取り除いたと言っていた。何かが違う気がするが良いだろう。

「隙は十分ですわ!ゼロさん!!」

キィン!!
溜まった!!あとは解き放つ!!

「うぉぉおぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!」

以前の俺が多用していたコンボ。
ダッシュ、回避、ダッシュからのフルチャージ解放。
抉るように、刈り取るように、リコイルロッドを打ち込む。
バゴンッ!!!
と、盛大に音を立てて奴、形容するなら鉄の巨人差し詰めゴーレムから炎が上がる。

「はぁぁぁぁぁ!!!!!」

追い打ちと言わんばかりに何も握っていない左手でゼットセイバーを抜き取り、再びさらに奥へ、中身を抉るように突き刺す。
もう、動かないだろう。


と、安心した矢先、ぶらんと垂れ下った右手が水平の高さまで上がる。
ビームの射出口らしき所にの赤いエネルギーが集まる。

奴の右手がさす方は俺がさっき壁に追突した方向。
つまり、リンが隠れている場所…………
血の上った思考、熱くなった精神が一気にクールダウンする。

「させるかぁ!!!!」

残りのエネルギーを瞬間加速(イグニッション・ブースト)に注ぐ。
なるべく小回りな加速を心掛け、射線上に割り込む。
間に合え、間に合え、間に合え…………

「間に合ったっ!!!」

目の前に赤い光が広がる。
微かに電子音が聞こえる


---

シール………ルギー、残…
急速…減……高熱源……
危険…

---




---場所移動---

「ん……」

「アンタ! 大丈夫なの!?」

リンの声が聞こえる。
ぼんやりと意識が覚醒してくる。

「ここは…?」

「医務室よ。保健室、治療室とも言うわ」

「あいつは、どうなった?」

一番気にかけていた事を口にする。逃げられたのか、撃破したのか。
まぁ、あそこまで破損した状態あの出力の物を放ったんだから無事では無いとは思うが。

「あの後セシリアが叫びながら全武装解放して破壊したわ。軽く地獄よ」

「守れたんだな……みんなと、お前を」

「まったく、あんな無茶するなんて信じられない!」

「何度も言うが約束したからな、守り抜くと」

「ここまでして守ってもらったら迷惑よ」

「そんな顔をするな。みんなを……お前を守れたんだからそれでいい」

俯き、思いつめたような表情を見せるリンにそう声をかける。
誰も犠牲は出なかったんだ。なら、俺はそれで満足だ。
何かを守れたという結果さえあればそれでいい。
痛いのはなるべくならば避けたいところだが。
そういえば……

「その手はどうしたんだ?」

「あぁ、一応アンタのおかげでビームは避けらたんだけど、瓦礫が飛んできてそれにあたっちゃってさ」

「利き手……か?」

「まぁ、一応」

「すまない……」

「アンタのせいじゃないわよ?」

無事な片手をブンブンと振りながら否定してくれる。
仮に俺のせいじゃないとしても『守る』と言ってしまったのだから、罪悪感を感じえない。
例えるなら、ミッション失敗だな。自己評価Eだ。

「何か俺に出来ることは?」

「そんな状態のあんたにはなにも出来ないわよ」

リンは何かを勘違いしているな。俺は別に怪我を負ったわけではない。
体に、疲労は感じるが痛みは感じない。大方、気を失っているから大事を取ってという事で養護教諭が寝かせたのだろう。

「リン、俺は別に怪我を負っている訳ではないぞ?」

「え? だ、だって直撃したんでしょ?」

「直撃と言ってもあれは威力を高めた拡散弾だ。シールドを突き破った集束弾とは違う。拡散弾とは大きな相手もしくは、集団には強力だが小さい相手には効果が薄い。それにあいつのアレはもう出力も落ちていたし集束機能もイカれて、目の前を覆い尽くすぐらいには拡散していたからな。そんなものに当たっても衝撃で気絶こそしても、体へのダメージ自体は俺のバスターショットより小さい。そして俺には防御一回分くらいにはシールドエネルギーが残っていたからな」

「え? え? 意味が分からないんだけど?」

「そういうわけで、何か俺に出来ることはあるか?希望が無いなら俺が決めるが」

「???」

頭に疑問符を浮かべ続けるリンとの話し合いは結局他の奴らが来るまで終わらなかった。





No Side  ---IS学園 地下室---

薄暗い部屋の中央には『鉄の巨人の残骸』が横たわっていた。
かろうじて人型を保ってはいるが、至る所が穴だらけで最早これだけ見ても元の形状は予測も出来ないだろう。

「やはり、無人機でした。コアも未登録のコアです」

真耶はそう、解体結果を千冬に告げた。
ゼロの全力の打撃、セシリアの乱舞を受けてまでコアが無事だったのは奇跡に等しいだろう。

「そうか……」

何かを思案しているかのような溜息をもらしつつ返答する千冬。
それを意に介さ無いように説明を続ける真耶。

「ISのコアは全部で467個しかないはずなんですけど。このコアはそのどれにも当てはまらないコアが使用されていました。一体……」

「…………」

黙り込む二人。未確認のコア、所属不明のIS。不可解な事が連なる。
これだけの情報で答えを出せる物はきっといないだろう。
答えは分からないまま、真相は遠い。 
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