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東方リリカル戦記

作者:雪風冬人
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第一話「旅立ち」

多次元世界に於いて第97管理外世界地球と呼称される惑星。其の星の遥か東方の地に於いて、嘗て『幻想郷』と呼ばれた隠れ里が在った。
ある時、創始者『八雲紫』に提案が為された。世界から忘れ去られし者達を保護するだけでなく、その伝統を学べる場にしてみてはどうか、と。
かくして、その提案は受け入れられ、『幻想郷』は『学園都市』へと在り様を変えたのだった。

稗田阿求『幻想学園都市史』











「そういえば悠さん、聞いてます?」

そこは図書室、いや図書館と言ったほうが正しいのでは、と思える程大きい『本棚』が所狭しと並んでいる部屋に二つ人影があった。
一つは、先程声を出した、『会計』と書かれた机に座る、飴色の髪を鈴がついた髪留めでツインテールにしている、着物は紅色と薄紅色のチェック柄でスカートは若草色で、クリーム色のフリルエプロンをその上から身につけて店番をしていると分かる少女、『本居小鈴』だ。
 近眼なのか丸眼鏡を掛けて目の前に広げた本を読んでいる。

「聞いてるって、何をだ?」

 小鈴の問いに答えるのは、『万年一般会員』とプリントされたシャツの上に黒いパーカーを羽織り、ジーパンをはいている若干天然パーマが交じった黒髪の青年、『鹿狩悠』である。

「理事会が、『異変』を認定したことですよ」

 シュバッ!!

電光石火。正に、その字体が表すが如く悠の体は弾かれたように飛び出した。
が、予想していたのか、小鈴が巨大なマジックハンドで悠の体を拘束した。

「全く、何で逃げようとするんですか?」
「だったら、何で捕まえるんだ?」

 悠は素早くマジックハンドを破壊して、油断なく構える。

「むー。これも壊されますか」
「当たり前だ。俺を誰だと思っている」

 小鈴はプクッと頬を膨らませて、拗ねていることを主張するが、悠はバッサリと切り捨てる。

「駄菓子菓子、甘いですね。いつから」
「いつから、相手は一人だけだと勘違いしていた?」

 突然、背後から聴こえた声にギョッとしながら振り向くと同時に、悠の体に地面から伸びた鎖が巻き付いた。
 そのまま、床に頬ずりをしてしまう。

「その声、ユーリか!?」
「如何にも!いつもニコニコあなたの隣に這い寄るエターナルロリータ、略してエタロリ、ユーリ・エーヴェルバインDEATH!!」

 悠の背後にいたのは、ウェーブがかった金髪で瞳の色は金色、服装は白系統で上はへそ出しルックスで袖の長い上着を着ており、下は炎の模様の入った紫色の袴のようなズボンを着ている、『ユーリ・エーベルヴァイン』は何事もなかったかのように答える。

「ユーリさんや、この拘束魔法解いてくんない?」
「ダメです。県外どころか国外に逃げるでしょう?」
「そこまでしねぇよ!?いや、どうだろう?」
「そこは全否定してください。余計縛らなきゃいけないでしょう」
「ヤメテ!出ちゃう!中身出ちゃう!」
「丁度良かったですね。アリスさんとパチェさんが貴方のサンプルが欲しがってましたよ」
「この外道共め!で、何がどうしてこうなった?」

抵抗するのを諦めたのか、悠の体から力が抜ける。

「転校、いや、職場異動です」
「は?今度はアレ?竹林の姫様の思いつきか?」
「残念。理事会の総意っぽいです」

 ユーリのバッサリと切り捨てるような言葉に多少の抵抗を試みた悠は固まった。
 小鈴は半目、いわゆるジト目な視線を読みかけの本から外し青年に向けた。

「貴方だけじゃ無いですよ。他にもここから何名か出す予定だそうです」
「……紅白や黒白も?」
「まだはっきりと決まってないそうです。それで先ず貴方から送り出そうって訳ですよ」
「何でまた俺が……。理事会の認定する『異変』は、だから嫌なんだよ。いっつもいっつも、俺にお鉢を回しやがって」
「向こうに警戒されないためですよ。『私達』はあまりにも個性的ですから。そこで、何の変哲もない極々普通の容姿の貴方の出番です。見た目はですが」
「そりゃどうも」

 ぶっきらぼうな青年の態度を見て、ユーリと小鈴はため息をついた。
と、その時、店の戸が開いて一般的な日本人の黒い髪に花を模ったヘアバンドをつけた少女『稗田阿求』が一人入ってきた。

「ヤッホー!やはr」

「やあ、悠。中々、面白いことをしてるじゃないか」

 店の暖簾を掻き分けて来店した人物が何か話そうのした瞬間、店の中に別の声が響いて中断される。
それは、赤い双眼に黒い翼、そして水色の髪にピンク色の服装。500年生きた吸血鬼、『レミリア・スカーレット』だった。

「そおい!!」

 阿求が手に持っていた分厚い本を投げると、それは見事にレミリアの眉間にクリーンヒットした。

「ひでぶっ!?」

 阿求は、落下したレミリアに駆け寄ると、両手に先程投擲した物と同じ分厚さの本を握った。

「お前が、灰になるまで、打つのを、止めない!!」
「ちょ!それ、聖書でしょ!?鈍器じゃないから!読む物だから!!」

 しかし、レミリアの悲痛な叫びは阿求の耳には届かず、馬乗りになって幾度も聖書を振りかざす。

「もうやめて!レミリアのライフはゼロだから!」
「阿求!落ち着きなさい!」

 小鈴とユーリが慌てて阿求をレミリアから引きはがすが、すでに遅く、レミリアは隅っこで体操座りをして真っ白になってしまった。

「で、いい加減説明してくんない?」

 未だ縛れたままの悠の言葉に、阿求は正気を取り戻したのか、姿勢を正した。
 ソレに釣られ、小鈴とユーリも懐から資料らしき書類を取り出した。

「さて、ある程度話は聞いたと思いますが、貴方に異世界に行ってもらいます」
「だが断る!」
「アアン!!」
「ハイ!すみません!話を続けてください!!」

 ネタに走った悠に、阿求が眼力で黙らせる。

「……あのですね、私や慧音殿、あげくは、魔界神、紫天の盟主、etc,etcな方々だって反対はしたんですよ?」
「でも、却下できてないなら意味ないじゃないか、あっきゅん」
「皆、心配してるんですよ。あっきゅん言うな」
「……俺に何させるんだ?皆が心配するなんて相当ヤヴァいだろ、AQN」
「魔法、多次元世界、超古代の遺産、それらを管理する組織。この四つのキーワードがヒントです。AQNじゃねぇ」

 阿求からその単語を聞いた瞬間、悠の目が鋭くなった。

「何?この世界でも滅ぶの?」
「こちらは一切関係無くて、ただ向こうでちょっとした騒ぎが起きるみたいですね。理事会が認定した、という貴方の察した通りの『遊戯』関係です」
「吸血鬼の姫はどう『詠んだ』?」
「『大丈夫だ、問題ない。(キリッ!こっちに比べたら、全然刺激が足りないぐらい』だ、そうです」
「ウチのと比べんなよ。……てか、そのぐらいだったら俺、行かなくても良くね?」
「それは私達もそう言いました。ですが、八雲の賢者は貴方が適任だと」

 悠は『面倒』を顔に書いたような表情になった。

「……やっぱ紅白送れよ。偶にはあいつでいいじゃん」
「今は別件で、外の神社に行ってるみたいです」

「んじゃ黒白」
「魔理沙さんも別件。イギリスへ魅魔さんが送り出しました」

「銀髪メイド」
「イースター島」
「何してんの!?」

「緑フルーツ」
「里帰り」
「一家そろってきたんじゃなかったの!?」

「DQNは?」
「虚弱薄幸少女に何やらせる気じゃ!?あと、DQNじゃねぇ!稗田ナメんな!!」
「……………………」

 目の前の大和撫子を体現した少女の豹変に、無言の間が続く。

「コホン。八雲の賢者は貴方を指名したんですよ。いい加減観念したらどうです?」

 とどめを刺すような阿求の言葉に、悠は深く頭を垂れる。

「わあったよ。行けば良いんだろ行けば」
「宜しいです。ではこれが、貴方の履歴書、身分証明書です。小遣いは、現地で調達とのことです」
「なるべく早く行けと?」

 ユーリが拘束魔法を解き、悠が立ち上がって阿求らから書類を受け取った瞬間、足元に『隙間』が生じた。
 『隙間』楕円のような形で両端にはリボンが結ばれ、中には無数の目玉がこちらを見つめ、標識やら古い道具が浮いているのが見える。

「今から行ってもらいますわ」

 にょきっと、空中にできたスキマから上半身だけ逆様に出した、『八雲紫』が口元を扇子で隠しながら現れた。

「ぶるううああああぁぁぁぁあああああ!!」

 落ちるかと思われた悠だが、両足に限界まで力を込めてスキマの端に固定させて落ちるのを防いだ。

「ふん」
「おのれ、あっきゅうううううううううううん!それにメガネええええええええええええ!!」

 しかし、必死の抵抗も空しく、小鈴と阿求の無慈悲な足を蹴るという行為によってスキマに落とされたのだった。

「すでに、向こうに派遣した人から、詳しい事は色々聞いてねー!!」
「紫ィイイイ!お前らは、絶対に、ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 地獄の底から響くような恐ろしい叫びに、名指しされた人物は若干冷や汗を流すものの、見なかったことにした。

「さてはて、此度の『遊戯』はどうなるのかやら。願わくば……」
「スペルカァードォ!!」

―Spell Card! Stand By!―

 紫が何か呟いた声は、突如響いた雄叫びにかき消される。

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」

 轟と唸りを立てながら、深紅の槍が紅い輝きを纏いながら紫に襲い掛かる。

「チィ!スペルカード!」

―Spell Card! Stand By!―

「境符『四重結界』!」

 紫はその槍を結界を張ることで防いだ。

「何のつもりかしら?学園都市理事会の一席にして、クラス『紅魔』のトップさん?」

 紫の視線の先、そこには瞳を妖しく魅入るほど純粋な紅に光らせたレミリアがいた。

「どうしたもこうもないわ!私の出番を盗りやがって!だから、カリスマブレイクやおぜうとか呼ばれちゃうのよ!!学園都市統括理事っていう偉そうな肩書きで踏ん反り返っている、このスキマBBA!!」
「あらあら、事実ですので仕方のないことではなくて?このお子ちゃまお嬢ちゃん?」

 ジリ、と互いが足を擦る音と共に、二人は動き出す。

―Spell Card! Stand By!―

 二人がトレーディングカードほどの大きさのスペルカードを掲げると、そこから電子音が響く。

「悠の正妻は、私よ!!魔符『全世界ナイトメア』」
「悠の正妻の座はわたしませんわ!廃線『ぶらり廃駅下車の旅』」

 色とりどりの弾幕、そして電車が店の中を飛び交う。

「イ―――ヤ―――!!私の店がぁぁああああ!!」

 その日の学園都市の一画で、少女の耳をつんざく叫びが聞こえた瞬間、爆発が起きたそうな。

『○月×日
 ―――学園都市にある貸本屋「鈴奈庵」が突如爆発した。記者が取材すると、店の経営者であるKさんは、「オデノミセハボドボドダア!ウェェェエエエエイ!!」と、錯乱状態であったため取材にはならなかった。
 目撃者は二名おり、「私に質問をするな!」と、Aさんは理不尽に失踪し、「ユーリ・エーヴェルバインはCOOLに去るぜ」と、Yさんは行方を晦ましてしまった。
 加害者であるRさんとYさんは、従者からO☆HA☆NA☆SHIをされたらしく、講堂できみょんなポーズのまま固まっていた―――

文々。新聞 第△□号』
 
 

 
後書き
悠「かくして、俺、鹿狩悠の奇妙な冒険が始まらなかったりする」

阿求「フフフ。悠は私だけのものDEATH。浮気は許さないDEATH」

悠「いや、俺は誰のものでもないから!次回もお楽しみに!!って、阿求さんヤメテ!ア、ア、ア――――――!!」 
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