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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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第三十三話

 
前書き
ミュアハ、女で身を滅ぼす?

総合評価1000ポイント越えに感謝して、34話投下後以降に何か特別企画を行うかもです。
全体への評価、毎回の話ごとの評価、お気に入り登録をいただいてるそしてご覧いただいてる全ての皆さまありがとうございます。 

 
 シルヴィアの所属していた旅芸人一座に金を渡す前、一掴みぶんくらい金貨を抜き取っておいたのでそれを彼女に渡し、治安の良さそうな通りの宿に連れていった。
そうして、しばらくここに逗留するよう伝えた。

「俺は門限あるんですまないな!、明日講義が終わったら会いに来るから待っててくれよ。
出かけるなら宿の人に言伝頼む」
俺はシルヴィアの頭を撫でるとそう告げてまたもや走り出した。

今度も死ぬほど走った。
さっきの往復と違って身は軽いものだからなんとかギリギリ門限に間に合い、滑り込むようにして敷地の中に入り込めた。
守衛に苦笑されながらも挨拶と敬礼を返し、ようやく俺は安堵した。

入浴可能な時間はとっくに過ぎていたので、洗面所で濡らしたタオルを絞り、体を拭いて人心地ついた。
アゼルには帰りが遅かったのとさっきの大慌ての様子を詮索されたので、今日の出来事をかいつまんで話したら、驚かせまくったものの詳しい話はまた今度と切り上げた。
今日は疲れ切ったので消灯時間の前だというのに俺は寝台に潜り込み、あっという間に眠りについた。

翌朝それでもいつも通り起きだして朝練を行うことにした。
さすがに今朝は休もうかとも思ったが、あれから1日置きくらいで朝練に顔を出すようになったレックスをがっかりさせたくはなかったからだ。
ストレッチや柔軟を済ませてから素振りを始め、しばらく時間が経過しても来ないものだから飽きちまったかな?なんて思っていたら息を切らせてやってきた。

「お前に言われた通りやるのは気に食わないが、強い奴がそうやって強くなったって言ってたからな」

「走り込みお疲れ様です。では息を整えたらかかってきてください」

「お、おう…」
がんばれよ!と思う自分がそこにいた。
一生懸命な奴はキライじゃないさね、レイミアにそう言われたこともあったかな。




 放課後まっさきにシルヴィアを預けた宿を訪れた。
フロントで彼女を呼びだすようお願いすると、彼女の気配が後ろからしたので敢えてやりたいようにさせてやった。

「だーれだっ!」
後ろからすらっとしたその両手で俺の目を塞ぎながらくすくす笑うので

「う~~ん、これは難しいなぁ。でもその声は……シルヴィだな?」

「あったりぃー!」
俺たちのこんなアホなやりとりを見ていて微笑んでるフロントの方に会釈すると、この宿のロビー的な共有スペースにある腰かけへと移動した。
シルヴィアを座らせると俺もその隣に腰かけ、鞄から筆記具を取り出しながら話しかけた。

「おとなしくここで待っててくれてよかったよ。でも、退屈だったろ?ごめんな」

「そーよ、もう暇で暇で!あっ、でもねー、お部屋のベッドがすっごい綺麗だし布団はふかふかだし、天国ってやつみたいだよ!」

「それは良かった。もうしばらくこういう暮らしをさせちゃうけど我慢できそう?」

「んーーー。毎日こうやって来てくれるなら我慢できちゃうかも!」

「毎日はなぁ…顔だけ見せてそれで終わりの日が週に2,3日はあるけどそれじゃだめ?」

「う~~~ん、いいよー我慢するっ! ところで何してるの?」
俺が話ながら手紙を書いていると彼女がそう問いかけてきたので

「んー?手紙書いてるんだ~、そうだ、お前、字は読み書きできる?」
唇に指を当ててふるふると首を左右に振る仕草が愛らしい。

「じゃ、これ書きあげたら少し手ほどきしてあげるよ」

「えー、めんどいし、難しい事はミュアハがやってよ~」

「ダーメっ! それにそれはヴィアの為でもあるんだよ?、例えばここの宿、俺が見つけたけど字が読め無かったら何の店かとか看板に書いててもわからないし、食べ物屋でメニュー見てもなんにも頼めないぞ?他にも…」

「わかったわよー。そうだよね、ミュアハの言う事なら聞いてあげる!」

「ありがとね。いい子だよ」
頭を撫でて髪をくしゃくしゃ~ってしてやると彼女はすこしむすっとして

「コドモ扱いはやめてよー!」

「…それは失礼しました、お嬢様」
席から立ち上がって少しおどけた態度でお辞儀をすると彼女は笑いだした。
そのあと文字をいろいろと教えてやり、書き写したものを受け取ってもらった。
計算のし方も教えてやったが、俺も数字はあまり強くないので最低限と言ったところか。

楽しい時間はあっというまに過ぎ去り、俺が帰ると言うと引きとめる彼女に後ろ髪引かれる思いをしたが、まずは今日教えたぶんの読んだり書いたりをできるようにと宿題を出してシルヴィアの元を離れた。




 そうして俺はバイロン卿の屋敷までやってきた。
というのも先程したためた手紙を渡したかったからだ。
俺が守衛に名乗ると向こうは俺の事を知っていてくれたようで便宜を計ってくれ、屋敷の管理人経由でバイロン卿の文箱に入れてくれるということになった。
…本来ならレンスターの領事館に頼むべきかも知れなかったのだが、内容が内容だけに悩んだ末バイロン卿とシグルドさんを頼ることにしようと思った。
その内容とはシルヴィアの今後の身の振り方に関することで、厳格なレンスターよりはおおらかなシアルフィのほうが彼女への負担も少ないし、なによりここから近い。
シグルドの人柄なら困った人を見過ごせないだろうという自分の計算にも、彼の元に所属するのが数年早まるだけだと自己正当化するのにも自己嫌悪してしまったが…。

翌日シルヴィアの元を訪ねて、明日から3日ほど顔出しだけになることを告げると表情を曇らせたけれど、友達を(アゼルとレックスだが)連れてきてもいいかと聞くと喜んでくれた。
翌日、それぞれに簡潔にシルヴィアと知り合った経緯や会わせたい事を頼むとアゼルは喜んで、レックスはしぶしぶと付き合ってくれた。
二人を連れてシルヴィアに会うとすぐに互いに打ち解けてくれたので安心して副業(バイト)に向かった
俺は荷運びの副業を終えた帰り際にもう一度シルヴィアに顔だけ見せに行った。
二人と引き合わせた時で今日会えるのは終わりと思ってたようで、また会えて嬉しいって言われて、俺も嬉しくて、そのあとでアゼルとレックスには冷やかされたけれどシルヴィアを抱きしめた。


「心の広い俺様だから許すが、あんなかわいい恋人うらやましいぜ。あーあ、ちぇっ」

「恋人っていうのは少し違いますよ、わたしは彼女の保護者とか後見人とかのようなものと思っておりますから」

「レックスぅ、でもこれでやっとボクらもみゅあは君の弱みを握れるよ~シルヴィアさんからみゅあは君の秘密を聞き出せるもの!」

「あっ、アゼル君、それは酷いです!わたしたちは親友だと思っていたのに!」

「でもなぁ、ミュアハよ、あの子と居る時と俺らで居る時とで話し方違うしー」

「そうだよねぇー、心の壁を感じるよねー」


「…そうだな。これからは他の人の目が無い時くらいは…お前達とだけは俺お前で話すよ」

「ふふぅ。約束だよ」

「あぁ、約束だ。そしてありがとう」

「よし!門限破りにならないよう走るぞ!」




…兄上とシグルドさんやエルトシャンにもこんな時があったのかも知れないな。 
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