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真剣恋にチート転生者あらわる!?

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第12話

悠斗side



紅く燃える世界が映し出されている。周りには建物から火の手が上がり、煙が上がっている。
所々で散発的に銃声が聞こえる。此処は戦場だ。 俺が慣れ親しんだ戦場だ。俺の意思とは別に俺はひたすら敵を倒して行く。武装した敵兵は銃を構えて発射してくるが、俺に届く事はない。俺に当たる弾丸は俺が腕をひと振りするだけで全て弾き返される。俺に攻撃を仕掛けてきた敵兵から、赤い血が吹き出して2度と物言わぬ死体に変わっていく。俺は客観的に今の状況を見ていた。

(ああ。これは夢だ。この世界での俺が戦っていた事を表している夢だ。神様からの知識だ)

そう。夢だ。俺は夢を見ているのだ。懐かしい夢を。やがて反抗してくる敵兵はいなくなり、辺りを見渡すとそこには大量の死体だけが転がっていた。俺は歩みを進めて行く。録に整備されていない砂と土で出来た道を真っ直ぐに歩んで行く。
やがて、大きな建物(アジトか何か)に到着する。
扉を蹴破り中に入る。
そこには数人の敵兵がいた。タバコを吸って寛いでいた敵兵が、俺の侵入に気が付いた。慌てて武器を取ろうとするが、全員が武器を構える前に首が宙を待った。
全員の生首に張り付いた表情は驚愕に満ちていた。俺はそんな事を気にする素振りは無く、建物の中を地下に向かって歩いて行く。途中何回か敵兵と遭遇するが、全て一撃で殺害している。
やがて、最下層の大きな鋼で出来た扉にたどり着いた。重厚な扉ではあるが、俺は右拳を叩きつけてぶち破る。扉はそのまま内側に倒れた。俺は扉の上を歩いて部屋の中に入る。少し進むと悲鳴や叫び声が聞こえてきた。 俺は死角に隠れながら奥に進む。張り付いた柱か顔を出して部屋の奥を覗くとそこには数人の女性達が複数の男達に乱暴されていた。
俺は怒りに燃えた。女性達は何日間も乱暴されたのだろうか、瞳には生気が感じられない。
俺は壁から駆け出して、次々と乱暴している男達を殺害する。
やがて、一人の醜く太った豚以外の男達は死んだ。醜い豚が何か俺に言っている。たが、俺はその豚の顔面を右腕で掴んで持ち上げる。豚の顔面を持ち上げた。豚が何か喚いているが俺は気にせづに指先に力を入れる。やがて醜い豚の顔面を握り潰した。
豚の血が俺に飛んで来るが、空いている左手で全てガードして、左手以外血は付かなかった。俺は左手に着いた血をハンカチを取り出して、綺麗に拭き取る。
俺は振り返り強姦されていた人達を見る。すると、一人だけ強姦される寸前で助かった裸の少女がいた。俺は彼女に近付く。彼女は今までの俺の行動を見ていたのだろう、 「ヒッ!」と声をあげる。

(う~ん。傷つくな)

俺は彼女に近付いて、自分が着ていた軍服の上着を彼女に羽織らせる。
少女は驚きの表情をする。俺は少女に服を渡して、壁に向かう。壁を指で軽く叩いて反射する音を聞く。中に空洞があることを確認した俺は壁を手刀で切る。壁が崩れると奥には首輪や鎖で繋がれた女性や少女達がいた。 俺は彼女達の首輪や鎖を外して行く。
全ての女性を解放して、助けた少女がいる部屋に戻ると、軍服を着た赤い髪で眼帯を着けた女性とその部下と軍帽を被った上級将校がいた。

「・・・・?・・・様?・・客様?」

俺は体を揺すられて眼を開く。すると、そこには美人のキャビンアテンダント(以後CA)さんがいた。

「お客様?大丈夫ですか?何や、魘されておりましたが?」

「あ・・れ?ああ!そうか、俺は機内で眠っていたのか」

「はい。お客様は飛行機の中で眠っておられたのですよ。ファーストクラスは貸し切りでしたので、お客様がいませんでしたが」

俺は寝ぼけ眼を擦る。
改めて見ると飛行機の機内であった。
このCAさんはファーストクラス専属のCAさんだ。まあ、今は俺しかお客がいないため、俺専属みたいになっているが。

「お客様。お飲み物はいりますか?」

「すまない。水をいただけるかな?」

「はい。かしこまりました」

CAさんは移動販売に使う台車?から水をコップに注いで持ってきてくれた。CAさんからコップを受け取り水を飲む。
乾いた喉に水が通っていき、頭が覚めてくる。

(ああ。そうか。ドイツに行く途中だったな。時差の関係で向こうに着くのは朝になるんだっな)

それで寝ていた事を思い出した。俺はシートを起こす。

「お客様。朝食はいかがですか?」

「ああ。もらおう。洋食で頼むよ」

「はい。かしこまりました」

CAさんは台車を引いて奥に下がって行った。朝食の準備をするのだろう。俺は懐から一枚の紙を取り出す。九鬼帝様が直筆で書かれた命令書だ。

(しかし、帝様にも困ったものだ。普通、娘の夫候補にこんな無茶な事を厳命するか?帝様の考えはイマイチ理解が出来ない)

俺は改めて命令書に眼を通す。命令書にはこうかかれている。

1、不動悠斗は九鬼家に相応しい男と認める為の試練を与える。

1、まずはドイツに向かい、ドイツ軍と合流して紛争、内戦に介入して名を上げよ。

1、娘、九鬼揚羽に相応しい男として、上記の者以外に嫁を見つけて来ること。(複数可)

1、その者(複数)と九鬼揚羽を幸せにするように、努力を惜しまぬこと。
以上を達成すれば九鬼の名を継がす事を許す。

まあ、要約するとこんな感じだな。他にも色々書いてあるが、大事なのはこの四点くらいだな。

(しかし、意味が分からないな。何故に揚羽様以外に嫁を見つける必要があるのだろうか?)

実は腹違いの娘の紋白を幸せになってもらいたいと思う九鬼帝の親心で、日本の法律を改正させる等の工作を裏からしていたとは、悠斗が考えられる訳がなかった。
親バカで権力がある人物はやることのスケールがでかすぎるのだ。

俺は命令書を懐にしまう。すると、CAさんが朝食を持ってきてくれた。

「お待たせしました。朝食と新聞になります」

「ありがとう」

新聞と朝食を持ってきてくれたCAさんにニッコリと微笑む。CAさんは顔を紅くして奥に下がっていった。
目の前朝食は、クロワッサンが2つにスクランブルエッグと焼きハム。コーンポタージュだ。
俺はクロワッサンを食べながら、渡された新聞に眼を通す。今回の新聞は イギリスの新聞だ。
皇室の事や中東の民主化を求めるデモの弾圧に非難する内容が書かれている。

(うん。パンは美味いな。しかし、デモの弾圧に非難する声明をEUが出したか。軍の介入準備をしているから、中東に介入するのは間違いないな。 そうすると、NATO軍か多国籍軍で介入するだろうな。ISAF(国連治安支援部隊)はアフガニスタンに展開してる最中だしな。本当なら国連軍(UN)で介入してくれるとらくなんだがな)

まあ、この世界には国連軍が組織された事は1度も無いからまず、国連軍の設立はありえない話だな。BETA位危険な存在があれば組織されるだろうが。

(まあ、仮にBETAが来たら速攻で全滅させるよ。あんな危険な存在はいらないからな)

いちいち、人類の存亡を掛けた戦いはしたくはないな。そんなくだらない事を考えながら朝食を済ます。 CAさんに朝食の容器と新聞を片付けてもらい、コーヒーをもらう。
ドリップコーヒーを飲みながら、先程見た夢の事を考える。

(あれは、この世界の俺の過去か。神様が捏造した過去を夢として見せてくれるのはありがたいな。だが、事前に二人の名前が分かったのは助かるな)

赤い髪で眼帯を着けた女性はマルギッテ・エーベルバッハと言う女性だ。武器はトンファーを持っていた事から、それがメインなのだろう。
男の将校はフランク・フリードリヒと言う男性だ。おそらく、俺がいた部隊の司令官なのだろう。

(おそらく、あれは中東かそこらだろうな。人身売買をするシンジゲートを潰した時の話だろうな)

そんなことを考えていると、シートベルトのランプが光る。どうやらもうすぐ着陸するのだろう。 俺は思考を止めてシートベルトをする。
機長が機内挨拶を始める。

「おはようございます。機長のスティービーと申します。投機はまもなくベルリン・テーゲル国際空港に到着します。到着地の天候は晴れ。穏やかな風が吹いています。ベルリン観光を楽しむには最適な天気となっております」

機長の挨拶が終わり、飛行機が着陸体勢に入った。着陸時のGが俺を襲うが、MSに比べれば全く問題にならないので特に何も感じなかった。
飛行機から降りて、空港の中に入り入国管理のカウンターに向かい、入国管理官にパスポートと旅券を見せる。

「おはようございます。パスポートと旅券を確認させてもらいます」

「おはようございます。お願いします」

入国管理官はパスポートや旅券に不備が無いか確認する。

「お名前は不動悠斗さんですね」

「はい。間違いありません」

「うん?不動悠斗?少々お待ちください」

俺の名前を確認した入国管理官がなにやら確認をするために席を立って、奥に下がっていった。
少しして入国管理官が戻って来た。

「申し訳ございません。不動悠斗様。ドイツ軍よりお迎えが来ております。申し訳ありませんが、警備員に付いて行ってもらえませんか?」

「ドイツ軍?何故、俺にドイツ軍から向かえが来ているんだ?(確かに、帝様からの命令書にはドイツ軍と合流しろとは書かれていたが、迎えが来るなんて聞いてないぞ?)」

「申し訳ございません。私共、一般の職員には分かりませんがフランク・フリードリヒ中将閣下からのご要望ですので」

「(悩んでいても仕方ないか。まあ、向こうから迎えが来ているなら渡りに船だしな)分かりました。案内をお願いします」

「おお。良かった。では、パスポートと旅券はお返しします。警備員が案内します」

俺は近くに来ていた警備員二人に案内されて、空港のロビーに移動する。 ロビーに到着すると、赤い髪で眼帯を着用したマルギッテ・エーベルバッハと美しい髪を靡かせた美女がこちらにやって来た。お互いに向かい会う。警備員は二人が来たことを確認すると去って行った。

「久しぶりですね。悠斗」

「久しぶりだな。マルギッテ准尉。元気そうでなりよりだな」

「悠斗も変わりない・・いえ、かなり強くなったのですね」

「その様だな。昔は貧弱なガキだったお前がまさか、それほど強くなるとわな」

マルギッテ准尉は、かなりの実力者なのが分かる。立ち振る舞いに隙が少ないのだ。また、こちらの美女も立ち振る舞いに隙が少ない。たが、マルギッテ准尉程では無いが、充分な実力を持っている様だ。

「そちらの、綺麗な女性は誰でしょうか?」

「「え!?」」

二人が唖然とした表情をする。まさか、地雷を踏んだのかも知れない。

「悠斗。冗談はよしてくれないか?私は悪いが冗談があまり好きではないのだが?」

「いや、本当に思い出せないのだが」

少なくとも俺のログには何もないな。
だが、目の前の美女は額に青筋を立てている。
どうやら、真面目に地雷を踏んだ様だ。

「せ、セレン!落ち着きなさい。ドイツ軍人はうろたえないのですから」


「私は冷静だ!悠斗を殴るとしか考えていないからな!。悠斗。どうやら久しぶりにO・H・N・Sが必要な様だな」

(セレン、セレン、セレン・ヘイズ?何処かで聞いたことあるような名前だな?どこでだ?)

記憶を掘り起こして、どこで聞いたことがあるか考えていると、セレンをマルギッテ准尉が羽交い締めをして押さえていた。

「離せ!マルギッテ!悠斗に1発入れなければならないんだ!」

「止しなさい!此処は空港です!せめて、民間人がいない所でしてください!」

「(ふむ。そろそろヤバイな)冗談だよ、セレン。そう、睨むな。美人が台無しだぞ」

「う・・・つ!何時も、悠斗は唐突に何を言っているんだ!(く、美人だと!嬉しい事を言ってくれるな。恥ずかしいじゃないか。こいつは何時も真顔で言うからな)」

「そうです!何故、セレンだけが美人呼ばわりされるのですか!不公平です!」

まさかのマルギッテ准尉が抗議してくる。セレンとマルギッテ准尉がにらみ会う。互いの視線がぶつかり、火花を散らしているように見える。
俺はマルギッテ准尉に近付き頭を撫でる。

「マルギッテ准尉に最後に会ってから暫くたつが、マルギッテ准尉は見違える程綺麗になったからな」

「え!・・・・え!そ、そうですか(ゆ、悠斗に撫でてもらえるなんて!クリスお嬢様の特権だと思っていたのに。それに、悠斗の手はゴツゴツしていますが、暖かい手ですね)」

「マルギッテ。覚えていろよ!後悔させてやるからな!」

「ふん!出来るものならかかって来なさい」

マルギッテが俺の手から頭を外して、セレンと睨み会う。本気で互いに構えをとっている。
周囲の人達が此方に注目する。だが、二人はぶつかる事はなかった。

「二人とも。いい加減にしろよ?それとも、俺に潰されるか?」

「「く、う、動けないだと!?」」

俺も流石にこれ以上騒ぎになられても困るので、殺気を二人にぶつける。 二人は殺気の力で動けなくなった。
俺は殺気を出すのを止めて二人を解放する。

「悠斗。昔に比べて更に強くなったのですね。基地に着いたら、手合わせをお願いします」

「やるな。悠斗。前線を退いたとは言え、まさか私が気おくれするとはな」

「手合わせはしてやるさ。それよりも、早く空港から移動しよう。流石に何時までもロビーには居たくないしな」

「そうですね。行きましょう。付いてきてください」

マルギッテとセレンの後ろを付いて行き、空港から出ると正面入口にリムジンが横ずけされていた。リムジンの後部座席に乗り込む。すると中には上級将校の制服を着た男性がいた。全員が車に乗り込む。車は発進した。

「久しぶりだね悠斗君。また、君と共に戦える日が来るとわな。嬉しいよ」

「お久しぶりですね。フランク・フリードリヒ中将閣下。お元気そうで何よりです。また、中将達と共に戦える事は光栄ですよ」

「フフフ。相変わらず謙虚だな。流石侍だ。しかし、何故ゆえ執事服なのかね?もしや!クリスの執事をしてくれるのか!!」

「いえ。前の仕事の仕事着でしたので。基地に着いたら着替えますよ」

いや、流石に揚羽様以外に仕える気は無いよ。
フランク中将は、ガックリと肩を落とす。
そんなに残念なのか!? あ、席順は俺の隣にフランク中将、中将の向かい側にセレン、俺の向かい側にマルギッテとなっている。

「そうか。残念だ。なら、クリスを嫁にもらわないか?悠斗君。君ならばクリスを安心して任せられる!」

「「な!何を言ってるのるんだ(ですか)中将閣下!!」

女性陣が抗議の声を上げる。運転手は何事も無いように運転を続けている。

「ハハハ。娘の幸せを願うのが父親だよ。そうだ!悠斗君。この間、クリスが私の為に」

フランク中将の親バカが発動した。俺やセレンは苦笑いしながらフランク中将の娘の自慢話を聞くのであった。




悠斗sideout



マルギッテside



悠斗をベルリン・デーケル国際空港に迎えに行き、車でリューベックに向かいフリードリヒ城に到着した。リムジンから私と悠斗とフランク中将閣下が降りる。セレンはそのまま車に乗って基地に帰還した。
私達は城内を歩いてリビングに向かっている。

「ほぉ~。城事態は古い建物だが、警備は万全だな」

「当たり前ですよ悠斗。此処はフリードリヒ邸です。閣下と家族の方を守るために24時間体制で、警備にあっていますから。また、城事態も警備しやすい作りになっていますから」

悠斗は城のあちこちをま見渡す。おそらく、もしもの時の脱出路等を確認しているのだろう。

(実際には物珍しいから、あちこちを見ているだけ)

暫く廊下を歩いて行くと、大きな扉が正面に見えてきた。私達は扉までたどり着く。私は扉を開いて中に入る。
そこにはソファーでテレビを見ながら寛いでいるお嬢様がいた。

「うん?あ!マルさん!いらっしゃい!お父様もお帰りなさい」

「お邪魔しますお嬢様」

「ただいまクリス!今日はビックなゲストが来ているぞ!」

お嬢様がソファーから立ち上がり私とフランク中将閣下を出迎える。悠斗は私達の後ろにいるため、お嬢様には見えていない。

「お客さんが来ているのですか?」

「そうだよ。クリスにとって懐かしい人物だ。さあ、此方に来てくれ」

「よう。クリス。久しぶりだな。久しぶり会ったら、随分綺麗になったじゃないか」

「え!嘘!」

私の横から悠斗が前に出てくる。お嬢様は眼を何度も擦り、悠斗が偽者ではないか確認する。
悠斗が優しい笑みを浮かべて、そっとお嬢様の頭を撫でる。

「どうしたんだ、クリス?もしかして、俺のこと忘れたか?」

「この撫でかたに暖かい掌。間違いない!悠斗兄様だ!」

「おっと?クリスは相変わらずやんちゃだな」

「本物だ。本物の悠斗兄様だ!もう、会えないと思っていたのに!いつ、ドイツに来たのですか?」

お嬢様が悠斗に抱き付く。悠斗は抱き付いてきたお嬢様を優しく受け止めて、頭を撫でる。
お嬢様は眼をキラキラと光らせて悠斗との再開を楽しんでいる。

「うむ。やはり、悠斗君ならクリスを嫁にやれるな。なんなら、マルギッテ准尉も一緒に嫁にもらわないかね?」

「いきなり、何を言ってるんですか!フランク中将!マルギッテやクリスの意思を尊重してあげてください」

「え?私とマルさんを、悠斗兄様のお嫁さんにしてくれるのですか?」

「おいおい。クリスや。フランク中将の言うことを、何でも鵜呑みにしてはいけませんよ。もっと、自分を大切にしなさい」

悠斗がお嬢様を窘める。 お嬢様はしゅんとする。

(わ、私が悠斗のお嫁さんになるのですか!!
う、嬉しいですね。悠斗なら私は全然問題ありませんし)

かつて共に戦場を駆け抜けて来た悠斗は、男勝りの私を中将を除けば、唯一女性扱いしてくれた男性だ。どんなときも、私に対する気遣いをしてくれた。

(思えば、私が悠斗を好きになったのはかつて、敵に捕まった時に助け出してもらった時ですね)

私はあの時の事を思い出す。あれは、悠斗と戦場を共にしていた頃の話だ。南米でのある作戦において、私は部下を率いて斥候に出ていた。
その時、不意をつかれ敵の本隊と交戦状態に突入してしまったのだ。
4名の部下と共になんとか、逃げようとするが敵は100人を越えていたため、私達は逃げ切る事が出来ずに囲まれてしまったのだ。
私達全員は電流が流れるネットが投擲され、全員が触れてしまい気絶して捕虜になってしまったのだ。

(今思えば迂闊でしたね。電流が流れるネットをただの捕獲ネットと、勘違いしたのが最大のミスでしたから)

捕獲になった私が気が付いたのは薄暗い地下室の柱に手錠をされて動けない状態でした。部下も私と同じような状態で捕まっていました。
すると、数人の男達が私達に近寄って来て拷問をしてきました。
私は口を割らないようにひたすら拷問に耐えていると、一人の男がナイフで私の軍服の上着を正面から切り裂いたため、私の肌が露出させられました。


(生理的に受け付けないグズどもは、思い出すだけで虫酸が走ります)

まさかに男達が私に乱暴しようとしたときでした。私達が閉じ込められている地下室の壁をぶち破って、悠斗が助けに来てくれたのです。
悠斗は素早く敵兵を殺害すると、私達に付けられていた手錠を破壊して開放してくれました。
悠斗は軍服の上着を脱いで私に手渡してくれたのです。理由を尋ねると、「マルギッテは女性だからな。見せたくない相手に素肌を晒させる訳にはいかないからな」と、言っていました。

(あの時の悠斗の背中は、カッコ良かったですね。あの件以来、私の視線は悠斗を追うようになったのですから)

悠斗が傭兵を止める間での間は、私と悠斗は常にパートナーでした。
悠斗が傭兵を引退してからは、一人で戦い続けました。いつか、再び共に戦場に立てる事を信じて。そして、再び悠斗は帰って来ました。また、彼とパートナーを組んで戦場を駆け抜ける事が出来ます。

(悠斗。今度は逃がしません。貴方を私の夫にしてみせます。覚悟してくださいね)

私はニヤリと口許を動かす。私が考え事に耽っている内にどうやら、話が進んでいました。

「なら、今日は悠斗兄様の歓迎会をしましょう!どうですか父様?」

「うむ。クリスの言うことに反対する理由はない。盛大な歓迎会を開こう! 待っていてくれたまえ!今すぐ部隊を召集して、会場の設営を始めるからな!マルギッテ准尉!」

「は!」

「即座に部隊を召集して、悠斗君の歓迎会を開く会場の設営に当たりたまえ!」

「は!かしこまりました!悠斗、クリスお嬢様。失礼します」

「あはは。まあ、気をつけてな」

「マルさん。頑張ってください」

悠斗とお嬢様に見送られ、私はリビングを後にする。中将閣下の命令に従って部隊を召集して、会場の設営にあたるのであった。




マルギッテsideout 
 

 
後書き
ストックの最後です。これからは、週一更新になりますのでよろしくお願いします。 
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