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自由気ままにリリカル記

作者:黒部愁矢
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二十話~交渉中~

「……だから、こうやってロストロギアと呼ばれるようになったの」
「なるほど。分かりやすい説明をありがとうございます」
簡単にまとめると、ロストロギアは失われた技術、つまり管理局が把握していない技術且つ、解明出来ないものであれば認定されるらしい。

……異世界産の魔法ってロストロギア認定されるのかな?

―――なるんじゃないの? だって私達の魔法と比べても大分違うし―――

そうかい。

別に、異世界産の魔法だからってこの世界の人が使えないというわけではなく、適合力に差こそあれど、まあ死ぬ覚悟さえあればなんとか扱うことは出来る。
そんなことをするより、普通にリンカーコアの魔力を使えばいいのだけれど。

いや、それ以前に俺の体を管理局に提出されれば、確実に解剖されると予想出来る。
都合の良い不老の肉体なんて喉から出るほど欲しがる奴もいるだろ。
なんたって全盛期の肉体にまで成長したら、後不老なんだからな。
まあ、別に解剖されても分からないものは分からないが、用心するには越したことはないだろう。

少なくとも今までは、人体実験をされても解明されなかった。

異世界でうっかり国絡みで捕まったことが何度かあったが、あれは地味にきつかったなあ。
その時に受けた拷問のお陰でちょっと殴られたくらいじゃ、自白するわけがないくらい拷問慣れしちゃったのは僥倖と呼べる、のか?

「他に聞きたいことはあるかしら?」
「えーと……あ、局員になるにはどうすればいいんでしょうか?」
「あら? 邦介君は管理局に入るつもりなの?」
「はい。まあ、すぐに入るつもりはありませんが、将来には……」
「そうなの。管理局はいつでも新しい人材を欲しているからいつでも歓迎するわ。……えっと、局員になる方法だったわね。私のオススメは一旦陸士訓練校で基本的な戦い方や、知識を身に着けてから陸戦魔導士になって、そこから自分に合った隊に入っていけばいいと思うわ」

陸士訓練校か……あっちの世界の図書館やら人を使って一般知識を身に着けるつもりだったけど、訓練校に通って、きちんと学ぶっていうのもありかな?

―――それでいこうよ―――

「管理局に入る時にはそうしようと思います。その……訓練校で学ぶ期間っていうのは全て同じなんですか? 出来るだけ早く卒業したいんですが」

出来るだけ自分で金を稼げるようにならないといつか大変なことになる気もするし、月十万の仕送りも便利だが、いつ無くなるとも限らないからなあ。

「それなら安心して。三か月で終えるコースのもあってね、こっちは少しハードかもしれないけれど、すぐに必要な物を学んで卒業することが出来るのよ」

「なるほど、ありがとうございます。機会があれば、それでいってみようと思います」
「そう。参考になったみたいでよかったわ。……それで、ロストロギアの話をしていたのだけれど、よく、三個もジュエルシードを見つけられたわね」
「いえ、外を散歩していたら少し気になる魔力反応があったので、デバイスに危険かどうか判断してもらって、危険だから封印してまわっていただけですよ」

実際の所、俺自身の力で封印してるけどな。まあ、ルナにも封印魔法は入っているから嘘ではない。

「優秀なデバイスでよかったわね。……だけど、少し不思議なところがあるのよね」
「……不思議なところ、ですか?」

ようやく、舌が適応してきた超甘いお茶を飲んで、一息を吐く。

うん。甘い。ここまで甘いならホットケーキとか、パンが合いそうだ。

別に、俺自身管理局に敵対しようという意思はないため、特に気張る必要も無いのだが、如何せんこの地球出身という肩書きと、この年齢不相応な考えに、相手が諸手をあげて歓迎。というわけにもいかないだろう。

目を開けると、リンディさんは笑みを崩さぬままこちらに顔を向けている。
……だが、さっきとは違ってその目には警戒の色が見て取れる。
やはり、ちっとも相手を出し抜くことも警戒を解くことも叶わなかったらしい。
まあ、特に俺の話術に罠が張られているわけでもなく、ただ疑問に思われない程度に俺の情報を開示しただけだから当たり前だとも思えるのだが……。

………魔眼を使う必要もないか。
魔眼を使えば、相手の意識を気づかれずに誘導出来るが、それはいざという時でいい。
なら、素直に嘘を吐くか。

「……どうぞ、話して下さい。僕の分かる範囲であれば、答えます」

無論、実験動物にしようという人が出てこない範囲までの情報、ではあるがな。
さすがに、モルモットを何回もしたくはない。

「ええ、それじゃ話すわね。まず、邦介君はこの星、第97管理外世界で生まれたのよね?」
「はい。ちゃんと地球で生まれましたよ?」

一回目と今回はね。

「あなたが来る前にここで話していた高町さんにも聞いたんだけど、この星には魔法文化は本当に無いのよね?」
「はい。普通に魔法なんて言葉は空想上の産物としてでしか存在してませんよ」
「そこで、気になったんだけど……。高町さんは魔法世界から来たユーノ君が持っていたデバイスをもらうことで魔法に目覚めたわ。だけど、邦介君の話を聞いた限りだと、どこにも魔法の接点は無い。……それで、邦介君はどこでその首に掛けてあるデバイスと魔法の知識を手に入れたのかしら? しかもさっきの神白君達も同じように魔法とは何も接点が無いのに魔法を手にしている……これはどういうことかしら?」

やっぱり来るよね。この質問。だけど、一応全く問題は無い。
ちゃんと、リニス、ルナと一緒にこの質問をされた時も含めて俺の設定は考えてある。
俺の行動に不自然な点があることなど既に把握しているさ。そもそも俺を観察して違和感を抱かない方が可笑しいだろう。
だから、俺はちょっとした対策はしている。まあ、そこまで凝ったことをするつもりはないけどな。
いざとなったら適当に誰もいないところで隠居する。
逃げるのは最高に得意だ。

「そのことを話すにはまず、僕の生い立ちから話さないといけないんですけど、少し長くなりますがいいですか?」
「ええ。いいわ」
「まず、僕は普通の家に生まれて、生活していたのですが、親は放任主義でよく出かけていてよく、一人で家にいました。そして、ある時も留守番をしていたんですが、何時もとは違い、いつまで待っても誰も来なかったんです。……交通事故でした。両親二人とも、外国を移動していた時に地雷を踏んでしまい、死んでしまったそうです。そこで僕は家の整理をしていて、見つけたのがこのインテリジェントデバイスです。綺麗だったから夢中で触って、色々と弄っていたら勝手に声が出て、その声の話を聞いて魔法の事を知りました。そして、やっぱり魔法文化が無い世界ではありますが、魔法に憧れる人は多い世界でもあるので、その一人の僕も魔法に夢中になって、デバイスの指示で魔法の知識と技術を手に入れていきました。……大体こんな感じですが、これでいいですか?」
「そう……大変だったのね。両親が死んだって言ったけど……あなたは今はどうしてるの? 親戚の所で過ごしているのかしら?」
「いえ、今は一人暮らしです。どうやら僕の血筋は死にやすいみたいで、親類は両親が死ぬ前に皆死んでいました」
「っ! ごめんなさい。軽率だったわ」
「全く構いませんよ。それより、これで納得しましたか?」
「え、ええ。確かに偶に別世界から魔導士であることを隠してそこで生涯を終える人もいるから多分あなたの祖先に魔導士がいたのかもしれないわね」
「もしかしたら、そうかもしれません。では、今日はもう遅いので帰らせてもらいますね。ジュエルシード集め頑張ってください。応援してます」
「あら? てっきりジュエルシードを集めてるから、手伝うかと思ったけど、違うのね」
「ちょっとさっきここにいた人達に僕が魔導士だということがばれたくはないので……もし、また見つけたら連絡したいんですけど……」
「それならうちの息子のクロノが現場で動いてるからクロノの番号を渡しておくわね」
「ありがとうございます。では……」
「あ、ちょっと待って」
「……なんですか?」
「魔法の練習をしたいなら、うちの局員と一緒にしてみない?」
「あー、はい。よかったら今度お願いします」
「それと……どうしてあの子達にばれたくないのかしら?」
「えっと……やっぱり恥ずかしいじゃありませんか。同級生にこういう姿を見られるのって」
「そ、そう……」
「それでは……」

こうして、俺はクロノの案内の下、転移魔法で元いた公園へと転移した。

まあ、上手くいけたかな? まあ、あの説明には結構穴はあるけど、実際に親戚は全員死んでいたから信じてもらえるとは思うんだけど……。

まあ、今度リニスにも口裏を合わせてもらうように言わないと。
いくつかパターンを考えていたからねえ。

まあ、クロノのとの連絡手段を手に入れられたのはよしとしよう。

結局俺は誰かの視線を公園に帰ってから常に感じつつも、見つけることが出来ずにそのまま家に帰っていった。
 
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