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自由気ままにリリカル記

作者:黒部愁矢
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十八話~職が・・欲しいです・・・!!~

さて、数日前は予想外なことに月村が何故か俺を拉致した日だった。
手袋を入念に触られて内側には何も無いというような違和感を感じられたらどうしようかと思った。

―――実際に左腕が少しだけずれたもんねー?―――

そう。実際にずれたというのもあるが、その際にアリシアが異様に興奮して、調整しようとして集中するのを邪魔してきたというのもある。

まあ、月村達の用事は何てことは無い。高町の持っているお守りという名の呪いの装備が何なのかを聞いてきただけだった。実際、半信半疑だったのだろう。10分もすれば腕を解放してくれた。
……まあ、月村とバニングスは少々念入りだった気がしたが。
月村はいつも俺の手袋の中身を見ようとする目。
バニングスは俺の弱点は何か無いか探ろうとしている目だった。

……解せぬ。

―――解せぬ―――

どうしてここまでバニングスに警戒されるようになったのか。
俺は一応学力テストで全て90台。100点も80台も出さないように努めているため、科目ごとの点数は変化こそすれど、合計点数はほとんど変化しない。
だから全てのテストで大抵2,3位なのだが、それを見たバニングスが「どちらが上か勝負しなさい!」っとバニングスが誰か―――恐らく執事だと思われる―――に作らせた問題を俺に差し出し、どちらが速く、正しく解けるかという勝負を申し込んできたわけだ。
そこで俺は思った。
ここで俺が勝ち続ければ、もしバニングスが負けず嫌いだった場合、更に勉強をして小学三年生とは思えない学力を身に着けるのではないか、と。
所謂、魔改造というものだ。

それからは俺の目論見通りにバニングスは順調に学力を伸ばしていき、数学だけなら小学六年生の問題でも解けるようになっている。
だが、そこからいくらなんでも可笑しいとでも思ったのだろうか。少し俺に対して苦手意識を持ち始めたような気がする。


まあ、そんなことはさておき、どこでこの手袋を手に入れたのか聞かれたが、勿論俺は嘘を言う。ここで「あ、それ俺が作ったんだー。凄いだろ? な? な? な?」とか言ってみろ。俺のウザキャラが確立するぞ。


さすがに上靴に画鋲を入れられたくはない。すぐに治せるけど痛いんだよな。あれ。
それに、教材も隠されたくは無い。一年の頃のガキ共にはしっかりと説教してやったため、それなりに善悪の区別がついているような気がしなくもないが、やはり子供。周りに流されてやってしまうということも多々あるようだ。
まあ、物を隠す程度で終わるならまだマシと言えるのだろう。

というわけで、月村達だけに用事を済ませるのはしゃくなため、高町の呪いの装備の呪いを強化することにした。
前にも思ったことだが高町は主人公ゆえの宿命か、過労死しても可笑しくない程の心労が溜まっているのではないかと思う。
普通よりも運動神経の無い小学三年生の少女が魔法の世界に巻き込まれ、魔法のまの字も知らないのに直感で魔法を使い、世界をも破壊しかねないアイテムを集めているのだから精神的ストレスも溜まるんじゃないだろうか。


この世界はアニメが元であってもアニメみたいに全てが上手くいくことなんて有り得ない。


ジュエルシードが偶々主要人物の近くで発動することもあるにはあるが、二、三個同時に別々の場所で発動するなんてこともあるかもしれない。


いや、実際にあった。


一方は家でまったりしていた俺、もう一方は恐らくどこかにいるであろう別の転生者―――後で偶然姿を見たアリシアの言葉によると隠であった―――が封印したから特に周囲に被害が出ることも無く平和に済んだから良かったものの、魔導士の数が少なければすぐにでも海鳴市は甚大な被害を被っていただろう。


故に現在俺の手元にはジュエルシードが三つあるわけだが、そろそろ蒼也曰く、時空管理局が登場する頃らしい。
だからなのか、津神と佛坂、縁はそわそわし始め、秋山も若干殺気立っていた。

……まさか、男だからってクロノに襲い掛かるわけじゃないだろうな?


そして、時空管理局が出てくるのはジュエルシードの暴走体が木の化け物の時だという情報を蒼也から得たため、それが出た頃にでも時空管理局員とコンタクトを取ろうと思う。
さっさとジュエルシードを引き渡して、後は勝手に持ち帰ってもらえばいい。
既に呪いのための実験は終了した。どの程度の物が必要になるかは分かったのだが、魔力は然程必要では無かった。俺の魔力だけでも十分に足りる程のものだった。
だから後は依代と代償さえ払えば大丈夫。


……ついでに管理局に就かせてもらえないだろうかと思ったり。
俺は見た目子供だが親無しなため、毎月十万円の仕送りを神から貰っている。
これは俺が稼げるようになれば無くなるらしいが、残念ながら地球で職に就くのは少々難しいことも理解している。この体だ。社会人として人目を気にせず職に就くのは厳しいだろう。

だから、一通り学問を修めた後、ミッドチルダに移住して局員になろうと思う。
まあ、蒼也が言うには学業と並行でも働くことは可能だということなので局員にお願いすれば今からでも局員になることに対して問題は無いはず。
俺も中卒や高卒なんてものは嫌なため、ちょっと見栄を張って大学にも行ってみようかと考えていたりする。前世の頃は高校生の時に死んだから、俺の中で大学生は一種の憧れのような存在になっているのだ。


ということで、木の化け物が出てくるところには絶対に行こうと決意したわけなのだが。



「それじゃあ……お手柔らかにお願いします」

現在いるのはどこかのマンションの一室。
夕飯を食べようか、としている時に電話が鳴り出して箸に向かう手が止められる。
俺の食事を邪魔したのは誰かと思い、出てみると、アルフだった。



茶菓子を出した一件で良いやつとでも認識されたのか、友達に頼むかのようにお願いされたのだが、内容はフェイトの怪我の痕を治してくれということらしい。
なんでも時の庭園という場所で怪我をして、そこの電話番号の人に治してもらうようにお願いしなさい。と、時の庭園に残ったリニスに言われた、と。
とりあえず、家までよくきたな。みたいな事を言いながら家にある羊羹を渡すと、案の定喜んだ。



……まあ、別に良いけど、ねえ。


「あの……別にそこまでしなくて良いですから」

「まあ、そんな事言わずに……」

「でも……恥ずかしいし、こんな恰好なんて……」

「いいからいいから。大丈夫だって。怖くない怖くない」

「でも……んっ」

「……随分とテスタロッサさんは感度が良いね」

「言わないで下さい……。うぅ……」


何でただ傷を治してるだけなのにこんな事態になっているのか気になるんだけど。

―――……ゴクリ…………!!―――

お前もそんなに目を血走らせるな。鼻から血が出てるぞ。

―――おっといけねえ。幽霊なのに鼻血を出しちまったぜ―――

そんな事をのたまうアリシアは放っておき、現在治癒中の箇所を見る。

今は裂傷が走り、所々に火傷のような痕がある手の治療をしているのだが、


「んっ。っや……あぁぁ……」



何故、治療されていない方の手で口を押えて、声を出さないようにしているのか。

何故、声を出さなければいけないような状況になっているのか。

何故、アリシアはもだえ苦しんでいるのか。

甚だ疑問に残るが今は気にしないでおこう。

ただ、俺は魔法で治療しているだけなのだが。勿論、俺が異世界で何度もお世話になった回復魔法で、だ。
この世界の回復魔法であるフィジカルフィーリングでも良いのだが、そこまで使い慣れていないし、今俺のリンカーコアの方の魔力はがつがつリニスに吸われているから効果も期待出来ないだろう。どうやら今リニスは大技を使おうと魔力を溜めているらしい。

―――多分……母さんと戦っているんだと思うよ―――

そうか。……お前は行かなくていいのか?

―――私が気づかないうちに出て行っちゃったから憑く暇が無かったんだよー……―――

……へえ。

まあ、そんな理由からリンカーコアからではなく、魔力を吸い取られていない魔臓の魔力を使って、俺の腕が抉られても、大火傷を負おうとも、胴体切断されようともこの回復魔法のお陰で生き残ることが出来た回復魔法を使っている。

急に治せばすぐに動かした時、怪我した所が痛むためゆっくりと、丁寧に、治している。



なのに何でやたら艶っぽい声を出している。お前本当に九歳か?
実は未来のフェイト・テスタロッサが逆行しましたー! とかそういうオチは……ないな。
……うん。無いはず。



なら……これは、もしかして…………天然……?


怖いわーまじ怖いわー。

―――私の妹は世界いちいいいいいいいいいいいい!!!―――

まあ、それはさておき。この少女の体は中々酷いことになっていると思う。


「次は手が終わったから……腕か? 腕出して」
「……ん」


顔を少し赤らめながら右腕を差し出し、その腕には鞭で叩かれた痕が多く残っている。
このような傷が両手両足に腹と背中にあるのだから大変だ。
勿論下着姿になってもらってどこに傷を負っているのかを確認した。
……精神コントロールはバッチリさ。


あの一人になった頃から精神統一を暇つぶしにしていたせいか、かなり精神コントロールが上手になったと思う。後、魔力を節約して、且つ節約前と同等の威力を出せるようになっている。これは親友に比べて圧倒的に少なく、肉体面でも頑丈さに於いて負けている俺が単騎で魔物の大群に戦うための唯一の方法だった。
魔物の大群には小手先の技じゃ追いつかない。殲滅魔法……しかも敵が丁度倒れる程度の魔力に調節して使わなければ俺には到底太刀打ち出来なかった。
なのに、親友の明なんかはただ、敵の群れの中にダッシュで飛び込むだけで敵は粉砕され、片腕を振るだけでほぼ触れた敵は粉となる。
他の親友も似たようなもので、何故ここまでの人外と同じ道を辿って俺だけが生き残ったのか未だに不思議でならない。
……俺も死ねば英霊になれるだろうか。

「いや……無理だな」
「? どうしたの?」
「いや、なんでもない」

顔を桜のようにうっすらと染めながらも、不思議そうな顔で聞いてくるフェイトを適当にあしらい、まらぼんやりと思考を続ける。そんな事はありえない。あいつらが元気にしていただけでもよしとするんだ。

……今では更に別方向の訓練もしていて、笑おうと思えば悲しくても本気で笑っているように見せれるし、悲しもうと思えば転げまわりたい程可笑しくても、真摯に悲しんでいるように見せることが出来るようになった。
これが何の役に立つのかは知らないが、なんとなく練習を続けてみようと思う。


「……これで両腕も終わり。ほら、次は足だから足出して」
「……っぁ。………んっ…………」


この変に艶っぽい声を聞きながら治療するというのも後少しなもので残りは背中のみ。


「それにしても……随分と大変な傷だね」
「それは仕方がないよ。私が母さんの期待にこたえることが出来なかったから……」
「まあ、家庭事情に関しては首を突っ込む気は無いから特に何の答えようもないわけだけど。……まあ、リニス、アルフ、テスタロッサさんとそのお母さんの四人でじっくり話し合ってみれば? まあ、そんなにプライベートに踏み込まない内容くらいなら、俺でも少しくらいは悩みは聞いてやれる」
「……うん」
「はい。これで治療は終わり。もしかしたらまた少し痛むことがあるかもしれないけど、その時はリニス辺りにでもお願いすればいいと思うよ」
「…………ありがとう」
「どういたしまして」


さて、俺はさっさと帰って管制人格用の呪いの実験をしないとな。






「久しぶり。管制人格」

「ああ、久しぶりだな。邦介。……それで、どうだ?」

「いや、すまん。まだ完成してない」

「そうか……」

「だ、大丈夫だって。一応呪いの形は見えてるから! 後は材料だけだから」

「……ふふ。期待して待ってるよ」

「ああ。それと、何か良いことでもあったか? 少し嬉しそうな顔をしているけど」

「分かるか? 実は今日のことなんだが……………」

無表情ながらも楽しそうに話す管制人格を見て思う。

……覚悟は決めないとな。


 
 

 
後書き
今回は主人公が悶々した回。 
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