| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十六話

 
前書き
うひー、お気に入り100件超えてまして宇宙の法則でも乱れたかと思いました!
ご覧いただいてる皆さまありがとうございます。 

 
 トラキア国王の"古傷"の苦しみをやわらげた俺はトラキア城や城下町に自由に出入りする権利を与えられた。
もちろん関係者以外お断りなどの場所は許されないしトラキア側で護衛と言う名の監視役を付けた上ですけれどね。
初めのうち護衛の人は日替わりで3人編成だったけれどそのうちとある一人に固定された。
その分なのか、おさんどんの人が一人増えてレンナートさんは楽になったようだ。
俺はあんまり危険では無いと思われたんだと思いたい。

北部も南部もトラキア人は髪の色が茶色や濃い茶色の人が多い。
俺を含め黒髪の人は少数派であるのは疑い無いがそこそこ存在する。
俺の監視に固定されたその人物は夜空のような黒髪をした、長身で、鋭い雰囲気を身にまとった女性であり、レイニーという名前だった。

「アタシの親は雨乞いでもしてたんじゃないかい?」

自分の名前について彼女はそう語っていた。
暇な時にはお互い身の上を語ったりもしたのだが、彼女はトラキア王家の分家の分家のさらに縁戚で、家族に聖痕持ちが一人出たけれど自分は出なかったということを教えてくれた。
西のミレトスやペルルークなどの自由都市へ傭兵として出稼ぎに行っていたが、たいした戦も無いので暇を出されて帰ってきたとのことだ。

「どっちにしろアタシの性に合うのはつるぎだからダインの血が出ようが出まいが関係ないさ」

そう言う彼女は長大な両手剣を軽々と扱う。
不意に俺が出かけたいと言いだした時の為に彼女は朝から暗くなるまで俺の暮らす東屋に滞在するのだが、俺の手が空いて暇な時には手合わせしてくれたりもする。
そういう時は王宮の練習場で練習用の武具を貸し出してくれた。

刀で槍と戦うには3倍の技量差が必要と言われる、ゲーム上でのこの世界ではそこまでの差はなく、むしろアイテムデータに守られて物理攻撃の面だが、剣は実質的に大きなペナルティが無く、しわよせが槍と斧に向かってはいるのだが……
話を戻して、レイニーと俺が手合わせすると割と話にならないくらい彼女のほうが強い。
俺が槍で彼女が剣という俺の有利な条件でさえそうなので、俺はいつか使うかも知れないと思い彼女に剣を習うことにした。
つるぎが性に合うなんて言うだけあって剣を教えるのも好きなようで、そして巧みだ。

「王子の槍の腕はそこそこいいけど、別の種類の武器との対戦経験が少ないみたいだねぇ。まぁ、自分で剣振ってみることで剣士の狙いとかがわかるようになるって面もあるし、いいと思うよ。それにあと5年もすりゃ体もガシッとするだろうし、このままみっちり修練積むといいさ。そしたらアタシもかなわないかもね」

確かに彼女の言う通りレンスターではほとんど槍同士での訓練だった。
かつてゆうしゃユーキとかやってたころは剣とか使ってたけど剣術みたいなのは習って使ったことは無かったしなぁ。圧倒的な身体能力で相手が反応出来る前に斬る、そんな感じだったし。
全身示源流?叩きつけて剣が割れることは多かったなとか、いまではだいぶうっすらとなった記憶が呼び起こされた。
今の俺はこの世界の普通の人と比べて規格外のような力なんて無いし、赤ちゃんからゆっくりやりなおしじゃなかったら昔の体の動きをしようとして体が追いつかず酷い有様だったろうなとか思っていた。




 「ふん。レンスターの小僧がこんなところでなにをしている。傷薬でも作ってろ」
レイニーさんと訓練をしていたら来ましたよ、いやなワカメもといトラバント。

「はい、殿下の仰る通りにします。失礼します」
面倒なので俺はさっさと退散しようとしたのだが

「あいかわらずイヤな男だねぇ、トラバント。ミュアハ王子、アンタも尻尾巻いて逃げないでタマにはアイツにガツンと言ってやんなよ」

レイニーさんはトラバントが嫌いなんだなっ……ってかメンチ切ってるよw
トラバントと喧嘩するのは損だがレイニーさんに軽く見られるのも嫌だしと悩んだが、あとでトラバントを油断させるためにもガマンガマン。

「わたしだって自分の家に余所の子供がやってきて好き勝手やっていたら気分が悪いです。レイニーさんのお気持ちは嬉しいですがここは殿下の言う通りに。」

お辞儀して俺はその場をあとにした。
その時、フン!と鼻を鳴らす音がしたけれど、これはトラバントと思わせて実は付き人ってパターンだろうと思い振り返りもしなかった。

クズ貴族だとこういう時に従者を殴って憂さを晴らすんだが、俺は絶対にそんなことをしない。
というわけでレンナートさんも連れてトラキアの城下街へと出かけました。
もちろんレイニーさんも一緒です。



「王子の故郷、レンスターだっけ?に比べたらシケた街なんだろうけどさ、アタシらにはこれで精いっぱいでねっ」
歩きながら両手を広げて伸びをするレイニーさんは欠伸を噛み殺していた。

「レンスターだと住んでる人の身分とかで差別とかあるけれど、ここはみんな仲良さそうでいいなって思いますよ」
街のいいことを言うとレイニーさんもまんざらじゃ無さそうな顔をしている。
何の気なしに露店を見てみると…ちょっとヤバイ、アレが売ってる!
硝石じゃん!あれはやばい…誰もアレの製法に気が付きませんように…
染料として売ってると露店の人が喋ったが俺は肥料として試してみたいなんて嘘を言ってレイニーさんに怪しまれないくらいの量を買った。
そういや南トラキアは結構乾燥しているからな……自然に結晶するところがあってもおかしくないな。

「オレはアレが無いのがいいすね、街に住める人に制限かかってるせいか頭上が安心だ」
レンナートさんの一言に俺が思わず笑ってしまうとレイニーさんが訝しげな様子だったのでアノ話をしたところ、そういやそうだねぇとか言って苦笑していた。


「まじで、王子はすげーよ!アタシなら、こう…ズガっとあのいけ好かないワカメ野郎をぶん殴ってやるってのにさぁ。我慢すんだもん。おうレンナート、お前も飲めや」
あずま屋に戻ってから城下町で買った蒸留酒をレイニーさんに取られて悪酔いされちゃったよ。
消毒用なんだが!
レイニーさんもレンナートさんも酔い潰れて寝ちゃったよ!
仕方ないから2人に毛布をかけて俺は敷き布団にくるまって寝ましたよ。



夜中に目が覚めて、なんか酒くさいとか思っていたらレイニーさんの抱き枕にされていました。

「……ミゼ、……アニー」

寝言で誰か人の名前らしきものをつぶやいていた。
抱き枕状態から抜け出ようとしたけれど、すごい力で抜け出せません、背中に当たった柔らかいものに
ドキドキしたせいかその後眠れるまでしばらく時間がかかったと思います。



「いつまで寝てんだい。はよ起きな」

寝ぐせの酷いレイニーさんに叩き起こされたが、ちょっと待ってほしい。
俺とておとこのこ、朝一番には第二の本体というかそっちが本体か?が元気なわけで、治まるのを待っていただきたい。
ぐずぐずしていると腕を掴まれ強く引かれた、あわてて空いてるほうの手で隠そうとしたのだが間に合わなくて涙目になりそうなんだが。

「あ、なんだ、その、王子だもんな。そうさね男だもんなすまないね。まぁ、これからでっかくなるさね」
背中をドンと叩かれてからにやっとされましたよっと。

「ところで、レイニーさんこそ黙って余所に泊ったんでしょう?よろしいのですか?」
すこし意地の悪い顔をして聞いてやりましたよ!

「そ、そりゃあ、アレさ!あやしい奴が王子を襲ったからアタシが寝ずの番をしたってね!」
「あずま屋の敷地のすぐ周りは兵隊さんがしっかり守ってるから賊なんて入ったら目撃者が居そうですけれど大丈夫です?それに兵隊さんたちにその報告をすぐしなかったのはなぜです?」

どんどん意地の悪い顔をして質問をしてあげると

「かーっ、アタシの負けだから堪忍してくれよぉ。かわいい顔してえげつないねぇ」
「ここはおあいこってことにしましょうか」

レイニーさんは俺の頭を撫でてくれた。



「へー、変わったことやってんだね。」

そのあと、俺とレンナートさんは顔を洗った後、指につけた塩で歯磨きしてから口をゆすぎミントのはっぱを噛んでいたんだが、その様子に彼女は興味を持ったようだ。
というか歯ブラシ発明したいよ……

「歯が真っ黄色で口の臭い男はイヤでしょう?」

俺の言葉にそりゃ違いないと彼女は同意して俺達を真似た。
トラキアでは食後はせいぜい水や茶のようなもので口をゆすぐくらいなもので、その水だってそこそこ貴重なものだから毎食必ず行わずに惜しむ人は多いらしい。
彼女の寝ぐせが気になったので道具箱の中からさらに小さな箱を出し、その中にしまっておいた櫛を取り出すと彼女に使うよう促した。

「王子って実は姫さまかい? こいつぁ綺麗なもんだ、使わせてもらうよ」

俺が渡した半月状の櫛を受け取ると、彼女はふんふん~♪と鼻歌を口ずさんで(くしけず)りはじめた。

「殿下、そりゃ王妃様の形見でしょう?いいんですかい?」
レンナートさんが珍しく俺のやることに意見した。

「差し上げた訳じゃ無いので、整ったら返していただきますよ。あの意味のつもりじゃないのですが
ご心配おかけしました」

国を出る時に父上から渡されたのが王妃の遺品たる今の櫛で、俺が娶りたいよき姫君が居たら渡してやれと言われていたからだ。
そのやりとりを聞いてレイニーさんはすぐに櫛を返してきたので、整い終わってない部分を俺は梳ってあげた。

この日以来、彼女は週に何度か俺たちのところに泊っていくようになった。
目的は風呂なんですよねー。
薬草畑の為ということで水の配給がいい俺達は2日ぶんとかの水をためてわかし、超大きなタライにお湯を入れて浸かる。
残り湯の半分を翌朝、植物に撒いてやる。
そんな生活をしているのを知ったようで、そのご相伴に預かろうというわけだ。


「なぁ、ここじゃ手狭すぎやしないかい? 収穫できそうなのなんて全然見あたりゃしないよ?」

レイニーさんは薬草畑の様子を見てそう口にした。

「そうは言っても、立場上引っ越すわけにも行きませんからね」
「引っ越す……、ねぇ。アタシに任せてもらおうか」

 
 

 
後書き
察しの良い方にはすぐにばれたでしょうけれど次かその次の話でレイニーはレイミアに改名します。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧