| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

好き勝手に生きる!

作者:月下美人
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十五話「年間の自殺者って三万人らしいよ?」



 ミラと呼ばれた女の子が棍を、俺は拳を構えお互いに駆け出そうとした時だった。


 ――ゾクッ。


 背筋を強烈な悪寒が駆け抜けると同時に、今までに感じたことのないほどの強い殺気を叩きつけられた。あまりの殺気の強さにグレイフィアさんも含め、この部室にいる人たち全員が金縛りにあったかのように動けないでいた。


「…………うにゅぅ……」


 のそりとソファーで寝ていたレイが身体を起こす。まだ眠いのか目は半開きであり、手の甲でクシクシと擦っていた。


「むー……うるさいなぁ。だぁれぇ? 僕の眠りを邪魔するのはぁ」


 周囲を見回したレイはライザーに目を向ける。


「そこの君、なに火なんか出してるの? 暑いから帰って」


 ライザーのこめかみに青筋が浮かんだ。


「リアス、こいつ誰だ?」


「……彼は姫咲レイ。私の協力者よ」


「協力者? この人間が? 下等な人間風情に大した働きは出来んと思うが」


 怪訝な顔でレイを見下ろすライザー。


「うるさいなぁ。というか香水臭いし、さっさと帰ってよ。邪魔、あっち行け、シッシッ」


 野良犬を追い払うような扱いにライザーの形相が憤怒に変わった。


「貴様ぁ……下等な人間風情が図に乗るなっ! 地獄の業火でもって燃え尽きろ!」


 ライザーの手から吹き出した炎がレイへと向かう。


 しかし、レイに届く寸前で炎は急に掻き消えた。


「なに?」


 自慢の炎が消えて驚くライザー。


「んー、結局なんなのコイツ? もうウザったいから殺しちゃってもいいよね」


 レイから発せられる殺気がさらに高まる。ライザーの眷属の中には殺気に当てられ呼吸困難に陥っている人もいるくらいだ。


 過去に一度だけ経験したことがある俺はまだマシな方だろう。それでも身体の底から生じる震えは止まらないし、冷や汗が滴り落ちる。見れば他のみんなも似たような反応だった。


「というか、僕の安眠を邪魔したんだから死ぬべきだよね」


 いつもの無邪気なレイからは想像もできないような冷たい声。そして、レイの掲げた掌に黒い球体が出現した。


『……相棒、あれはヤバイぞ』


 ドライグが話しかけてくる。久しぶりだな。というか、そんなに危険なのか?


『ああ、強い気配に叩き起こされてな。それにしても、恐ろしいまでの魔力が凝縮されている。しかも何らかの概念まで付加されているようだ。いかに不死を司るフェニックスといえど、アレを食らえば一溜りもないぞ』


 ――マジでか!? ってことは、レイの奴本気かよ!


 だけど、俺もレイの殺気に当てられ身体が動かない。これって、マジでやばいんじゃないか!?


 顔色を変えたグレイフィアさんが慌てて前に出ようとする、その時だった。


「やり過ぎですわ、レイくん!」


 朱乃さんがレイを後ろから抱きしめた。


「気を静めて下さい。今のレイくんは見ていて悲しいですわ」


 朱乃さんの言葉に掌に浮かんでいた球体も消え、殺気が霧散する。


 いつもの調子に戻ったレイは頬を膨らませた。


「むー……お姉ちゃんがそう言うなら我慢する」


「ええ。良い子ですわね、レイくんは」


 優しく微笑んだ朱乃さんがレイの頭を撫でる。撫でられている本人は気持ちよさそうに目を細めていた。


「一時はどうなるかと思ったわ……」


 殺気から解放された部長が安堵の吐息を零した。俺もどうなるかと思いましたよ……。


「な、なんなんだリアス、この人間は!?」


 冷や汗をかいたライザーが部長に詰め寄る。


「レイはただの人間じゃないわ。私も詳しいことは分からないけど、その力は強大よ」


「運がよかったね。お姉ちゃんに感謝してよー」


 もう完全にいつもの状態に戻ったレイは朱乃さんの膝の上でチュッパチャップスを食べている。何が嬉しいのかニコニコ顔だ。


「それで、レーティングゲームの日取りはどうするの?」


「――ゲームは十日後だ。今すぐやってもいいが、それでは面白くない。俺の眷属に対抗できるのは『雷の巫女』とどうやらそこの人間だけのようだしな」


「……いいわ、それでいきましょう」


 ライザーの言葉に顎に手を当てて何かを考えていた部長はやがて頷いた。


「では十日後に。楽しみにしているぞ。それと、そこの赤龍帝の小僧。今のお前ではその力は宝の持ち腐れだ」


 そう言い残し、ライザーは下僕とともに魔方陣の光の中へと消えていった。ライザーの帰り際の一言がやけに胸に響いた。


 一人だけ事情を把握できていないレイが朱乃さんの裾を引っ張る。


「ねえお姉ちゃん、レーティングゲームするの?」


「ええ。十日後にライザーさまと私たちで戦うんですよ」


 一通りの話を聞くと、何を思ったのかグレイフィアさんに声を掛けた。


「今回のゲーム、僕も参加するから」


「は?」


 突然の宣言にグレイフィアさんのみならず部長たちも目を丸くした。


「残念ですが、お嬢様の眷属ではない姫咲さまが出場することは出来ません」


「ということは、眷属になれば参加できるんだね?」


 レイの言葉を聞いた部長が目を輝かせた。


「眷属になってくれるの!?」


「ううん、正式な眷属にはならないよ? だけど、今回のゲームの間だけならなってあげる」


 え? そんなことできるのか?


「確か、グレイフィアちゃんの主人ってゼッくんだよね? なら電話しとこっと」


 一同呆気にとらわれているとレイは懐から携帯を取り出し、どこかに電話をしはじめた。


「――あ、ゼッくん? うん僕だよ、久しぶり~。あのね、今度リアスちゃんたちがレーシングゲームするんだけど――え? ああ、うん、そうみたい。……うん、それでね、今回僕も出ることにしたからよろしくね。うん……うんうん、はーい」


 電話を切ったレイは呆然としている部長に向き直った。


「リアスちゃん、使っていない駒ってある?」


「え、ええ、〈戦車〉の駒でいいかしら……」


「じゃあ、ちょっとそれ貸して?」


 レイは部長から〈戦車〉の駒を借りると駒に指を這わせる。今度は何をする気だ?


「……んー、ここがこうなってるから、ここをこうして……あ、ここもだね……それと、ここもこうして、っと。――うん、できたー!」


「何をされたのですか?」


 グレイフィアさんが興味深そうに聞く。それに対してレイは満面の笑みで応えた。


「ちょちょっと駒を弄って今回のゲーム中だけ参加できるように改良したんだ。駒一個だと転生できないから『変異の駒』みたいのにしてみましたー」


 ――え?


「「「「「ええええええええええええ!?」」」」」


 ちょ、どういうことそれ!? そんなことできんのかよ!? グレイフィアさんも声には出してないけど呆気にとらわれて口開けてるぞ!


 血相を変えた部長がレイに詰め寄った。


「あ、あなた! 一体なにしたの!?」


「だから、ちょっと駒を弄っただけだよ? あ、ゼッくんの許可は貰ったから安心してね」


「どれだけ規格外なのよ……」


 同感です部長。というか、ゼッくんって、さっきレイが電話していた相手だよな……。


「そのゼッくんって誰なんですか?」


「うん? サーゼクスくんだよ?」


 朱乃さんの質問に対する答えに俺たちは再び仰天した。


 こいつの交友関係はどうなってるんだ……。





   †                    †                    †





 何故か知らないけど、あれからみんなに怒られました。リアスちゃんが少しだけ怖かったです。でも、僕は泣きません。だって男の子だもん!


 ちなみに、小猫ちゃんは一人「先輩とお揃い……」とか言っていて嬉しそうだった。最近の僕らは非常に仲がいいです! こういうのをマブダチっていうんだっけ?


 みんなにゼッくんとの関係がどうだとか、どうやって駒を改造したんだとか色々聞かれたけど、適当にはぐらかしといた。だって説明するの面倒だし。


 ゼッくんの許可を得て、グレイフィアちゃんのオッケーサインも貰ったので、今回だけリアスちゃんの〈戦車〉となり、リアス一味の仲間入りをした。


 リアスちゃんたちの呆れたような顔が少しだけ気になったけど、みんな快く迎えてくれたのが嬉しかったです。特に朱乃お姉ちゃんの喜びようが半端じゃなく、頬をスリスリするくらい上機嫌になりました。


 グレイフィアちゃんはリアスちゃんと一言二言、言葉を交わすと僕たちに一礼して帰っていった。帰り際にグレイフィアちゃんって名前が言いにくいので、略して『フィア』ちゃんと呼んだときの顔が印象的だった。顔、引き攣ってたなー……。


 その後、リアスちゃんの提案で明日から下僕強化キャンペーンを実施することになり、みんなでお山に行くことに。


 そのため、現在お山を登っている最中だ。キャンプなんて初めてだから今から楽しみです。


「ひーひー……」


 イッセーがひーひー言いながら山を登る。その背中には一抱え以上ある大きな荷物を背負っているため、その足取りはひどく遅い。


 荷物は各人が必要だと思ったものを用意してきて、それを男子メンバーと小猫ちゃんで手分けして運んでいる。なぜ女の子の小猫ちゃんも運んでいるかというと、眷属内では一番の力持ちだからだそうだ。まあ、僕と同じ〈戦車〉だからね。


 ちなみに僕の荷物もイッセーと同じくらいだ。自分の身長を超えるほどの荷物を持つのってある意味シュールだよね。いや、全然苦じゃないけれど。


「あっ、こんなところで行者ニンニクが。これを焼いて食べると美味しいんだよ」


「……楽しみです」


 木場くんと小猫ちゃんが周囲を散策しながらスイスイと登って行く。木場君の背中にもイッセーと同じサイズのリュックを背負っているけど、その足取りはしっかりとしたものだ。小猫ちゃんは言わずもがな。


「お先ー」


 僕たちはイッセーを置いてどんどん先に進んでいく。後ろからなにやら声が聞こえてきたが、そんなの無視無視。というか、イッセーの持ってる荷物の半分以上がエッチな本でしょ? そういうのを自業自得というのです! この前の国語の試験で出たから覚えた。


 それから、歩くこと三十分。着いた場所は木造で出来た別荘だった。聞くところによるとリアスちゃんのお家が所有している物らしい。


 中に入り女子と男子に分かれて服を着替える。木場くんも青色のジャージ姿を持って一階の浴室に向かった。


「覗かないでね?」


「イッセー、犯罪はイケナイと思うんだー」


 木場くんの冗談に僕も乗ってみると、イッセーは殺気のこもった眼を向けてきた。


「うっせぇ! 誰が覗くかよ! っていうか、レイの場合洒落にならんわ!」


 うにゅ? なんだかよく分からないことを口走っているけど、なんのことだろう?


 手早く着替えた僕たちは先にリビングに向かい、女子たちを待つ。程なくして赤いジャージを着たリアスちゃんたちがやって来た。


「さあ、修業開始よ」


 リアスちゃんの笑顔が輝いてます。

 
 

 
後書き
感想および評価切実に募集中! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧