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茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
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21.決戦

俺たちを乗せたヘリは旧お台場.......24区が目と鼻の先にある港でガイとの決戦の準備をする。

「ここまで接近して撃ってこないということは......やはり」

「256機のルーカサイトというのはハッタリですよ。対光学観測のデコイとハッキングで作り出したマヤかしです」

「時間稼ぎか.......まんまとのせられて。我々も国連軍もこのギリギリのタイミングまで手をこまねいてしまうとは」

「でも、間に合いました」

「それがわずかな時間でも、俺たちにはチャンスがある。いのりとシオンを助け出し、ガイを止めるチャンスが」

「そうよ。彼女らを確保すれば、ガイの目的は潰え、日本人のみならず世界中からアポカリプスウイルスの駆逐する可能性もみえる。私たちには悲観すべき未来しか残されていないわけじゃないのよ」

「そうですね。世界の運命.....なんて真面目に言うことがあるとは思ってませんでしたが、これはそういう戦いのようです。勝ちましょう必ず!」

待ってろよ........シオン
絶対に助けてやるから!!


物資を運ぶ手伝いでトレーラーの中に入るとそこには綾瀬がエンドレイヴの操作ユニットに乗り込もうとしていた。

「あっ!.......手伝ってもらってもいい」

会ったばかりの時の綾瀬からは出てこない言葉だった。

「うん」

綾瀬をお姫様抱っこし、エンドレイヴの操作ユニットに乗せようとする。

「ねぇ、カイ」

「なに」

「もし、この戦いが終わって生きてたら伝えたいことがあるの」

「.......生きてたらじゃない......」

「えっ?」

「生きるんだよ。みんなで」

「そうだね。この戦いが終わったら伝えたいことがあるの」

綾瀬はいつもの笑顔でそう言う。

「待ってるよ.......綾瀬」

綾瀬をエンドレイヴの操作ユニットに乗り込ませる。

「........綾瀬は綺麗だよね」

「なっ!?いきなり何、言ってんのよ!?」

動揺し、頬を赤く染める綾瀬。

「汚れるのは俺の役目.......いや、俺と集の役目だ。綾瀬は綺麗なままでいてよ」

「あの時も言ったけど......あんたと集が失敗すれば、私たちの命もないのよ。だから.......一人で背負い込もうとしないで、カイ」




「国連軍には、もう少し頑張ってもらいたかったのですが」

「急ぎましょ」

国連軍......24区への攻撃
戦艦、エンドレイヴ、飛行機の半数以上が一瞬の内に壊滅。

俺たちも準備を整え、出撃する。

「行きます!!」

集の掛け声とともに俺たちは最後の闘い......世界の運命をかけた闘いが幕を開けた。




「コピーがやられた!!」

地上に送り込んだ、ツグミのハンドスキャナーで作り出したコピーがやられたようだ。

『想定済です。ツグミ、今のでセキュリティの構造解析が充分だったはずです。.......やれますか』

『誰に言ってるの!私の本気はちょっとすごいよ!あった!ハルカママのバックドア』

ツグミのハッキングで地上のゴースト部隊が沈黙。

「颯太!」

目の前に現れる、巨大な扉を颯太のヴォイドで集が開ける。




「それじゃ、みんなここでお別れね。いっぱい連中の邪魔をして、みんなを安全に誘導するからね」

ここでツグミと四分儀さんたちとはお別れ。

「おう!」

「頼むよ、ツグミ」

「ちゃんといのりんとシオっち助けなよ。それでみんなでハッピーエンドだからね」

「絶対助けてくる.......絶対に」




「あれは?」

国連軍の兵士がキャンサー化が進むゴーストに襲われている。

集はすかさず、綾瀬のヴォイドを使用し、向かってく。

「まったく、あいつは」

ゴーストから伸びる触手に囚われる兵士を集が触手を掴み隙を作る。

「綾瀬、壊!!」

『任せて!!』

「おう!!」

綾瀬のエンドレイヴがゴーストを貫き、俺の戦輪でゴーストを消滅させる。

集が半キャンサー化する国連軍の兵士の手を掴む。
そして、集は..........国連軍のキャンサーを吸収し始めた。

『シュウ!もうやめて!!』

「これ以上は、お前の体が!!」

「いいんだ、綾瀬、壊」

『バカぁぁ!!』






「ツグミ、チェックポイント到着。次は.......ツグミ、どうした!!」

「セキュリティが復活してる」

「システムを奪還されましたね」

「どこだ、いのり、シオン」

「このままじゃ........」

小さな声がする。
それはかすれるような声でほぼ聞こえない。が、確かに誰かの歌がする。

「この歌は........シオンといのり?」

「壊も聞こえるんだね。いのりとシオンの歌が」

「どうしたんですか、彼らは。歌なんて」

「こっちだついて来て!!」

「みんな行くぞ!!」

待ってろ、シオン!!
もうすぐで.......たどり着くからな。


歌が聞こえる方に進んで行くと青緑色の光がはいる鉄の柱が無数に存在し、奥地にはモニターのようなものがある。

「......ここは」

「中央作戦司令室よ。ここからなら直接最上階に......あっ!」

ハルカさんの声が止まり、見ている方を見てみるとそこには、第二次ロストクリスマスの時にいた男がエレベーターで上へと上っていた。

すると扉が閉まる。
...........閉じ込められた。

「ようこそ、桜満シュウ君、茨カイ君、ならびにその従者の皆様」

空中に浮かぶ少年........これで会うのは三度目だ。
あの......白衣の少年に出会うのは

「従者じゃねぇ!!仲間だ!!」

アルゴが白衣の少年に怒りで銃を連射する。

「ここ千年そういう概念が流行っていることは知っています」

白衣の少年は銃弾にあたるどころか......何らかの力でそれを止め、こちらに銃弾を飛ばしてくる。

倉地さんも撃つ......が、白衣の少年は消え去り、再び姿を現す。

「僕たちは3人で離さなければいけないことがあります」

俺と集が乗る床が上空へと上昇し始める。

「従者のみなさんとはここでお別れです」

『カイ!!シュウ!!』

「僕らは大丈夫!それよりみんなを守って」

「心配するな」

白衣の少年が空中から地上に降りてくる。

「ずいぶん立派な姿になりましたね。救世主というやつですか?」

「お前は一体なんなんだ」

「僕は......人類の意思を決定する機関ダァト。......その総意を象徴するものです。いわば.......僕こそがダァト。あなたは奪われた"王の力"を見事自ら回復してみせ。......我々は再度検討することにした。あなたとガイ......どちらがアダム.........次なる王に相応しいか。.......よって桜満シュウ。我々はこれを問わなければならない.......人類が次のステージに進むために全ての人類を滅ぼし、未来永劫.....マナと2人で生きることを......誓ってくださいますね」

「何を言っているの」

「答えはYESかNOで」

集は迷いなく答えた。

「NOです」

白衣の少年は集の横に瞬間移動する。

「それが普通です。しかし恙神ガイは、眉一つ動かさず、YESと言ってみせた。そこが彼とあなたの差です」

上昇する床が止まる。
止まった床の先には、大勢の人が。

「では、ダァトの名の下に君から継承者の資格を剥奪します!」

白衣の少年はそこにいた、人からヴォイドを取り出す。
ムチのヴォイドを二本取り出し、俺たちに近づいてくる。

「八尋......えっ!壊?」

集が八尋のヴォイドを取り出すが俺が集の前に立つ。

「先に行け、集。こいつは俺が食い止める」

白衣の少年がムチを操りこちらに向かってくる。
処刑剣を取り出し、ムチを切り裂く。

続けて、円盤のヴォイドを二つ投げてくる。
それを同時出現させた戦輪のヴォイドで弾き飛ばす。

「こんなだけのヴォイドを使ってくる相手に一人じゃ無茶だ、僕も.......」

「俺も複数のヴォイド使いってこと忘れてねぇか。お前にシオンを任せた。.......早く行け、集」

「.........わかった。任せたよ、壊。これが終わったらみんなで会おう」

「.......当たり前だ」

集が綾瀬のヴォイドを使い、ガイがいる部屋に向かって行く。

白衣の少年が集に二本の片手剣を持ち邪魔をしようとする。
それを穹砲で撃ち抜く。

「......お前の相手は俺だ。......絶対助けろよ、集」

「まぁ、いいでしょう。もう手遅れです。例え、桜満シュウが間に合ったとしても恙神ガイがマナがそれを拒む」

「だとしても、集は進む......例え、それがどんな茨の道だとしても」

「それはそうと我々が一番驚いているのは、あなたですよ.......茨カイ」

「俺だと?」

「そうです。偽りの王でありながら真の王の力を手に入れた。我々にとっての一番の想定外でした」

「真の王だと?」

「あなたのその力は偽りの王の力........スクルージの力だった」

スクルージってあのフードの男か。

「彼は良く働いてくれました。ヴォイドゲノムの開発、10年前の黙示録.......ロストクリスマス.....マナの暴走を止めた.....人類にとっては英雄の様な存在です。あなたの右腕に宿るヴォイド、それは全てスクルージがイェット・トゥー・カムから取り出したヴォイドです」

イェット・トゥー・カムってあの水色の髪の少女のことか。でも、フードの男はキャロルって呼んでたよな。

「ロストクリスマスを止める際に自らのヴォイドの力に耐えきれなかったスクルージは右腕のみを残し姿を消した。それの右腕に触れた少年.......それがあなただ。茨カイ」

そうだ.......俺はあの日、瓦礫に埋れていた"右腕"、その右腕に触れた途端、俺の右腕は結晶と化し......その時、俺の右腕に偽りの王の力が備わった。
だが、その代償に俺の右腕に触れたものはキャンサー化し、命を奪う能力を手にいれてしまった。

「話を戻しましょう。君は第二次ロストクリスマスの時に新たなる力を二つ手に入れた。一つ目は、スクルージの.......いえ、イェット・トゥー・カムのヴォイドを同時に二つ出現させる能力。二つ目は、王の力の覚醒」

「王の力の覚醒?」

「はい、あなたは第二次ロストクリスマスの時、偽りの王ではなく、真の王へと覚醒した。その証拠にあなたは篠宮綾瀬のヴォイドを取り出してみせた。あれは篠宮綾瀬が椎名シオンのように特別なわけではない、あなたが真の王の力を手に入れたからだ。それと同時にキャンサー化させる能力もなくなった」

「全てを見透かしたように言いやがって........シオンが特別だって、ふざけるな!!あいつは普通の女の子だ!!あいつは、苦しい時でも、周りを心配させないように無理やり笑顔を作ってた。そんなシオンが特別だって......あいつは普通の女の子だ!!」

「怒鳴ったところで変わることなどありません。彼女の正体は......ロストクリスマスの時に散りじりとなったマナの意識の半分が入り込んだヴォイドを持つもの」

「どういうことだ!?」

驚きを隠せない俺。

「つまり、椎名シオンのヴォイドこそがマナの意識の半分。彼女のヴォイドの形が複数存在するのもマナの意識とスクルージの偽りの王の力の共鳴反応の産物です」

「違う.......あれは......あれは、シオンのヴォイドだ!!!」

「さっきも言いましたが怒鳴ったところで変わることなどありません。受け入れなさい、茨カイ。これが真実で、これが事実です。........そろそろ時間のようですね」

途轍もない爆発音に似た音のあとに今までにないくらいに右腕がうずき、羽虫どもがざわめきだす。

「楪いのりと椎名シオンをかてに我らのイブ......マナが目覚めた。さぁ、再び黙示録の始まりです」

「んなことさせねぇよ。俺が、集が、みんなが......お前らの野望を打ち砕く!!」

「それでは、おしゃべりはここまでにして決着をつけましょうか、茨カイ」

「はなからそのつもりだ。こい!!」

待ってろよ、シオン
お前を取り戻してみせるからな!!!

 
 

 
後書き
次回ついに最終回 
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