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IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~

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number-24 conference

 
前書き
会談。


この場合は、夜神鳥麗矢。ナターシャ・ファイルス。

 

 


臨海学校も終わりを迎える。
福音の件があり、この臨海学校本来の目的をほとんど果たすことはなかった。
生徒たちにとってみれば、一日目の自由時間で海で遊んだことしか頭にないことだろう。


麗矢は福音の件で一番の重傷だったのにもうぴんぴんしている。
いち早くバスに乗り込み、窓側の座席に座って外の景色に目を向ける。


生徒全員が乗り込み、後は先生だけとなったときに一組のバスに誰かが乗り込んできた。
麗矢だけは目を向けることはなかったが、麗矢を除く生徒全員がその人に目を向けた。


「ここに白い騎士さんと黒い不死鳥さんはいないかしら?」


白い騎士はおそらく織斑一夏のことだろう。
では黒い不死鳥は……?
麗矢にはそれが気になってしょうがなかった。
動こうとしない景色から目を離して声の主の方を見る。


声の主――――どこかで見たことがある女性。
あの人は福音に乗っていたテストパイロットである《ナターシャ・ファイルス》だ。
何処にもけがが見られないことだから、福音が守ってくれたのだろう。


ナターシャは《白式》に乗っていた一夏と一言二言話し、あいさつ代わりに一夏の頬にキスをした。
それを見て面白くないのが箒、鈴、シャルロットの三人である。
そんな四人を横目にナターシャは麗矢のもとへと真っ直ぐに向かってくる。――――意識があったのだろうか。


「あなたが黒い不死鳥に乗っていた人ね。私はナターシャ・ファイルス、よろしくね。」
「……どうも、夜神鳥麗矢です。」


二人のテンションは対称的であった。
暗い麗矢にナターシャは首をかしげたが、気にしなかった。


「あなたのおかげであの子も私も助かったわ、ありがとう。」
「いや別に。自分がすべきことをやっただけなので。」


フレンドリーなナターシャと敬語を使って固い麗矢。
だが、ナターシャは何か思うところがあるのか含みを帯びた笑みを見せる。
麗矢は堅苦しい言葉遣いだが、表情は柔らかった。
似た者同士という奴なのだろう。


「じゃあ、また会いましょう。」


また会うことなんてないと麗矢が言おうとするが、言えなかった。
ナターシャは麗矢の唇に自分の唇を重ねた。
それを見て騒ぐ生徒。当然一夏たちも騒いでいる。
セシリア、ラウラは顔を真っ赤にしながら顔を逸らすが、ちらちらと二人を見ている。


ようやく離れたナターシャは笑顔でバスを降りていく。
麗矢は動じることもなく、さっさと自分の座席に戻っていく。
隣に座っていたラウラは麗矢の顔をまともに見れない。


「……あ。」


ここで麗矢は思い出す。
黒い不死鳥はどういう意味なのか、聞くのを忘れた。
まあいいかと嘆息する。


そんなこんなで最後まで騒がしかった臨海学校。
三日間という長いようで短い時間。
麗矢にとっては死を覚悟した三日間となった。


千冬がバスに乗り込み、バスが動き出す。
麗矢は遠くなっていく海を見ながら思う。


疲れた、と。


学園までの時間を寝て過ごす。車内はとても騒がしかった。
そんな車内の中を平然と眠った麗矢。
よく見ると耳栓をしていた。
道理でラウラが呼んでも起きなかったわけだ。


こんな感じで麗矢の慌しく、死を実感した三日間は終わった。
これから再び始まる。
あの窮屈で退屈な日々が。


「…………」


麗矢は寝たふりをしていた。
今更起きる気にもなれない。
隣で麗矢の名前を呼び続けても一向に起きない麗矢に切れそうになっているラウラ。
そのラウラから殺気が感じられる。
今起きるのは逆効果だ。


麗矢は薄らと明かりが見える視界の中思った。


――――俺に平穏という時間を下さい。


切実な願いだった。



 
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