| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百六十一話 己の信じるものの為に

            第百六十一話 己の信じるものの為に

闇の中だった。彼等はそこで話をしていた。
「今の鍵で門を開くことは困難」
アルフィミィだった。彼女が何者かに話しかけていた。
「やはり扉とその鍵を使うしかありませんの」
「我の依り代・・・・・・」
「素材は地上で手に入れましたの」
また言うアルフィミィだった。
「私達の構成物質と似た特性を持ち」
彼女はまた言う。
「向こう側の物質との融合を促進させる素材」
「我が器」
「選別は終わりましたの」
そこまで言ってだった。
「間も無くですの」
こう話してだった。何かがまた動こうとしていた。
そうしてだった。ロンド=ベルでもまた。アインストの動きに首を捻るばかりだった。
彼等はイギリスに位置したまま。そのうえで話をしていた。
「いや、イギリスってのはな」
「全くよね」
「料理がまずい」
このことを話すのだった。
「ここまでまずいと何か」
「芸術ってやつね」
「食えたものじゃないよ」
こう言ってロンド=ベルの面々が食べるものを口にしていた。
「本当にね」
「おかげでこうして皆で作るものが美味しくて」
「かえって太るかな」
「太らないように注意はしてるけれど」
ここで言ったのはゼオラだった。彼女はハムサンドを食べている。
「それでも」
「ゼオラって何か胸ばかり」
「成長してない?」
「確かに」
皆ここで彼女の胸を見て話をする。
「背はそんなに大きくなってないけれど」
「胸はね」
「自然と大きくなっていってる?」
「聞こえてるわよ」
その皆に対して言うゼオラだった。
「確かに胸が大きくなっていって」
「そうなんだ、やっぱり」
「胸ばかり」
また言うのであった。自分から。
「もうこれ以上大きくなくてもいいのに」
「それは贅沢な悩みじゃ?」
「だよなあ」
これを聞いて男組は言い合う。
「世の中胸がなくて困ってる人も多いのに」
「そうだよな」
「けれどあれだよな」
ここで言ったのはアラドだった。大盛りのカツ丼をがつがつ食べてもう四杯目である。
「うちの部隊って胸大きい人ばかりだよな」
「確かに」
「巨乳が主流よね」
「そういえば」
言われてみればだった。ロンド=ベルには確かに巨乳が多かった。
その巨乳を確かめてだ。あらためて言い合う彼等だった。
「それもいいよな」
「貧乳もいいけれど」
「胸が大きい娘ってやっぱりな」
「全く男って」
ゼオラはそんな彼等の如何にもスケベそうな顔を見て口を尖らせていた。
「何なのよ。嫌らしいんだから」
「私だってね」
ファがここで彼女に言ってきた。
「最初タイツはいてなかったじゃない」
「あっ、そうでしたね」
「その時は結構視線とかが気になってたけれど」
「どうしてもですね」
「気のせいだったけれどね」
自分から意識するのだった。
「ちょっとね」
「足はタイツやズボンで隠せますよね」
「ええ」
ゼオラのその言葉に頷くファだった。
「けれど。胸がそこまで大きいと」
「困ってます」
その大きな胸をどうしても意識せずにいられなかった。
「まだ十七なのに」
「この部隊ってとにかく胸が大きい人多いからね」
ファもそれはよくわかっていた。
「ほら、例えばアクアさん」
「あっ、凄いですよね」
アクアの胸もよく知られていた。
「もう訓練中なんか凄い勢いで」
「張りも凄いわよね」
「そうですよね」
二人の話は弾む。
「私も揺れるの気になります」
「痛くない結構」
「いえ、それないですけれど」
実に具体的な話になっていた。
「ブラでしっかり固定してますから」
「それでなのね」
「はい、パイロットスーツでも揺れますし」
彼女の悩みは尽きなかった。
「困ってます」
「あら、それがいいんじゃない」
セレーナはそれがいいというのだった。
「もうね。どんどん揺れるのがね」
「正直羨ましいわ」
「本当に」
アイビスとツグミは本音から言っていた。
「胸が揺れるなんて」
「私も。胸は全然ないから」
「そんなに困るのか」
それを聞いてクォヴレーは目をしばたかせていた。164
「胸がないと」
「何か凄い残念なのよ」
「クォヴレー君にはわからないかしら」
「わからない」
実にはっきりとした返答だった。
「それはな」
「っておい」
「率直過ぎるだろうが今のは」
皆そんな彼に慌てて突っ込みを入れた。
「幾ら何でもな」
「しかも相手を選べよ」
「全く」
しかしこうした言葉は彼の耳には届いていなかった。
「そういうものか」
やはりわかっていなかった。
「胸があるのとないのとでだ」
「そうだけれど」
「何か。今の話は」
二人は明らかにさらに気落ちしていた。
「胸大きくできる方法はあるけれどな」
「それを使うのもちょっと」
「胸は自然が一番です」
今言ったのはルリだった。
「大きくても小さくてもそれぞれのよさがあります」
「その通りね」
エマは彼女の言葉をよしとした。
「それが大きくても小さくてもそれぞれのよさがあるわ」
「そうだな。エマ大尉は」
今言ったのはヘンケンだった。
「全体のスタイルがな」
「いいんですね」
「そうさ。顔だけじゃない」
こんなことを言う彼に皆が突っ込みを入れた。
「けれど艦長」
「何でそんなこと御存知なんですか?」
「まさかと思いますけれど」
「そんなことは服の上からでもわかるものだ」
だが彼はこう返したのだった。
「充分にな」
「そうなんですか」
「それで」
「その通りだ。しかし」
ここで話を変えてきた。
「エクセレン中尉が復帰してから敵の動きはないな」
「そうですね」
「それは確かに」
皆もその言葉に頷いた。
「もう一週間経ちますけれど」
「何の動きも」
「そろそろじゃねえのか?」
エイジがここでこう言った。
「こっちの世界も結構敵が尽きねえみたいだしよ」
「ああ、その通りさ」
その彼に言ってきたのは勝平だった。
「毎度毎度派手に出て来るもんだからな」
「そうだな。一週間」
「そろそろね」
宇宙太と恵子も言う。
「出て来るな」
「もうすぐにでも」
「言ってる側から来たぞ」
一太郎がここで彼等に告げてきた。
「敵だ」
「来た!?」
「アインストが!?」
「いや、シャドウミラーだ」
彼等だというのだった。
「シャドウミラーがベルリンに出て来た」
「ベルリンに」
「あそこにですか」
「それに」
しかもであった。
「バルト海にインスペクターも出て来た」
「えっ、インスペクターも?」
「連中もなの」
それを聞いてまた驚く彼等であった。
「それじゃあ今度は」
「三つ巴の」
「派手でいいじゃねえかよ」
エイジはそれを聞いて楽しそうに笑うだけだった。
「つまりどいつもこいつも叩き潰せばいいんだな」
「答えとしてはそうだ」
まさにそうだと答えるサンドマンだった。
「この世界ではかなりの数の勢力がせめぎ合っている」
「ですからここは」
「そうするのですね」
「そうだ。ここは双方を叩く」
サンドマンはまた言った。
「両方だ」
「よし、それじゃあ」
「シャドウミラーもインスペクターも」
「全軍ベルリンへだ」
今言ったのはグローバルだった。
「いいな、それではだ」
「はい、それじゃあ」
「いざっ!」
こうして全軍でベルリンに向かう彼等だった。ベルリンに着くと東にはシャドウミラーの大軍がいて北にはインスペクターの軍勢が展開していた。
「ロンド=ベルか」
「出て来たのか」
まずはシャドウミラーの軍にいるアクセルとレモンが言った。
「予想はしていたが」
「来たのね」
「ラミア、貴女は」
エキドナもいた。彼女はラミアを見ていた。
「私達とも」
「戦うわ」
ラミアもまた彼等を見ていた。
「私は今ここで」
「ラミア、気にするな」
キョウスケが彼女に声をかけてきた。
「心に何かあればそれで敗れる」
「わかっている」
毅然とした声で答えるラミアだった。
「それはもう」
「それならいい」
キョウスケが言うのはこれだけだった。
「それならだ」
「全軍まずはこのまま迎え撃つ」
グローバルは指示を出した。
「おそらく両軍はこのまま来る」
「そうですね、このまま」
「ベルリンに向かって」
「そこで双方共衝突する」
実は彼はそれを狙っていたのだ。シャドウミラーとインスペクター両軍の衝突をだ。
その時に討つつもりだったのだ。ここでだ。
そしてインスペクターもまた。敵を見据えていた。
「さてと、シャドウミラーもロンド=ベルもいるな」
「そうだな」
ヴィガジがメキボスの言葉に応える。四天王は全員揃っていた。
「それならそれで都合がいい」
「じゃああれかい?」
アギーハがそのヴィガジに対して問うた。
「両方共潰すんだね」
「そうだ」
まさにそれだと答えるヴィガジだった。
「数は我が軍はシャドウミラーの軍とほぼ同等だな」
「その通りだ」
メキボスが彼に答えた。
「数はだ」
「双方五万ってとこだね」
アギーハは双方の数を見て述べた。
「それ位だね」
「ロンド=ベルは数は大したことはない」
「それでどうするんだ?」
メキボスがまたヴィガジに問うてきた。
「あの連中は」
「まずはあの者達をシャドウミラーにぶつける」
それがヴィガジの考えだった。
「若し連中が行かなければだ」
「その場合はどうするんだい?」
「シャドウミラーを攻める」
そうするというのだ。
「我等四天王が中心になってだ。いいな」
「よしっ」
「それじゃあな」
「行くわよ」
インスペクターが動きだした。その頃にはシャドウミラーも動きだしている。しかしであった。シャドウミラーはここで向かうのだった。
「何っ!?」
「こっちに来たよ」
「そう来たか」
「・・・・・・・・・」
四天王達はシャドウミラーの軍勢が攻めて来たのを見てまずは目を見張った。
「我々を先にか」
「そう来るってわけだね」
「それでどうするんだ?」
「こうなっては一つしかない」
ヴィガジは他の三人に述べた。
「シャドウミラーだ」
「よし、わかった」
「行くよ。シカログ」
「・・・・・・・・・」
四人が先頭になり進んだ。一直線にシャドウミラーに進む。それはアクセル達も見ていた。
「まずはあの連中だ!」
「そうね」
レモンがアクセルの言葉に頷く。
「この連中を一気にだ」
「進めよう」
「いいね」
「ロンド=ベルはいいのね」
エキドナが二人に問うた。
「今は」
「ああ、今はな」
「それでいい」
アクセルが言った。
「今はな」
「わかったわ」
アクセルの今の言葉に頷くエキドナだった。
「これで」
「インスペクターを叩く!」
アクセルは言い切った。
「いいな!」
彼等はそのまま向かう。そうして両軍が激突した。
「このまま叩け!」
「それからロンド=ベルだ!」
「いいな!」
双方こう言い合いながら向かって行く。その動きはロンド=ベルも見ていた。
「艦長、シャドウミラーとインスペクターが戦闘をはじめました」
未沙がグローバルに問う。
「ベルリンの前で」
「うむ」
「我等に目を向けてはいません」
クローディアも言う。
「どうされますか?」
「それで」
「全軍進撃開始する」
グローバルはこう言うのだった。
「いいな」
「わかりました」
「それでは」
二人は彼の言葉に頷いた。こうしてロンド=ベルは双方の軍に向かった。
「よっし!行くぜ!」
エイジがまず叫んだ。
「こっちの世界であのアインスト以外のはじめての敵だな」
「ああ、そういえばそうね」
ルナが今の彼の言葉に頷く。
「確かにね」
「何か愉しみだぜ」
エイジはまた笑っていた。
「さて、どんな相手なんだ?」
「それはいいけれどエイジ」
「どうした?斗牙」
「何か敵がこっちに来ないね」
「予想通りだ」
レイヴンがそれに答える。
「敵はまずはお互いに向かった」
「私達よりまずは、ですね」
「そうだ。その戦っている時を狙う」
彼は言うのだった。
「そして双方を同時に叩くのだ」
「わかりました」
エイナはレイヴンの今の言葉に頷いた。
「それじゃあ」
「攻撃はまずはインスペクターに対してだ」
サンドマンは彼等を狙うと言った。
「いいな、それでだ」
「はい」
「それじゃあまずは」
「いいか」
ここで言ったのはマサキだった。
「連中の中でとりわけ派手な格好のマシンがあるだろ」
「ああ、あれか」
「何か先頭で派手に暴れてるな」
剣人と闘志也がその四機のマシンを見て言った。
「あの四機だな」
「奴等のことだよな」
「ああ、連中には注意しなよ」
マサキはこう彼等に教えた。
「とにかく強いからな」
「それ程なのか」
「そうなのよ」
ミオがマリンの問いに答える。
「尋常じゃないから。注意してね」
「その様だな」
宗介は先頭を進みながら言った。
「あの四機。とりわけ」
「とりわけ?」
「今雷を放ったのだ」
こう小鳥に答える。それはメキボスの乗るグレイターキンだった。
「あのマシンは」
「あれね。何か中心になって暴れてるって感じね」
「あのマシンが最も手強いな」
彼はそう見ていた。
「どうなのだ、それは」
「一概に言えないんです、これが」
プレシアが彼の問いに答える。もう少しで攻撃射程だった。
「実際のところは」
「そうなのか」
「はい」
こう答えるのだった。
「どのマシンも手強くて」
「どれもか」
「だから注意してね」
セニアも言ってきた。
「下手したら本当に怪我じゃ済まないから」
「それではです」
それを聞いたテッサが言った。
「全軍このまま敵軍の側面に総攻撃を仕掛けます」
「よし、それなら!」
「このまま一気にやってやるわよ!」
全軍彼女の言葉に応えて一斉に動いた。そうしてだった。
インスペクターの右側面に広範囲に攻撃を浴びせた。それでその数を大きく減らさせた。
そうしてだった。そこから突っ込む。これでインスペクターの軍勢は総崩れになった。
「このままやってやれ!」
「まずはインスペクターよ!」
彼等は勢いに乗ってさらに攻撃を仕掛ける。インスペクターにそれを止めることは最早不可能だった。
「ヴィガジ」
「わかっている」
ヴィガジはメキボスの言葉に応えた。
「ロンド=ベルだな」
「こんなことを言っている間に今率いている軍の三割を失ったぞ」
「今四割いったわよ」
アギーハが言ってきた。
「このままじゃ五割もすぐよ」
「くっ、どうするかだな」
「・・・・・・・・・」
ここでシカログが無言で出て来た。
「シカログが行くってさ」
「そうか、行ってくれるか」
ヴィガジはアギーハの代弁を聞いて頷いた。
「では頼むぞ」
「あたしも言っていいかい?」
アギーハはここで自分も名乗りを挙げた。
「ロンド=ベルの奴等の相手にね」
「おい、それはまずいぜ」
だがそれはメキボスが止めたのだった。
「前線は俺達が頑張ってるから何とかなってるな」
「ええ」
「正直シカログに行かれるだけで辛いんだよ」
彼等にしろ苦しい戦いなのである。シャドウミラーと戦うだけでも手が一杯だったのである。
「それで御前まで行ったらな」
「それじゃあずっとここで動くなってことかい?」
「そこまでは言わないがな」
メキボスはそこまで強制する人間ではなかった。
「それでもだ。二人抜けると前線はもたんぞ」
「ちっ、そうかい」
「そうだ。ここは自重しろ」
こうアギーハに告げるのだった。
「わかったな」
「わかったよ。しかし」
「どうした?」
「やっぱりロンド=ベルを先に叩くべきだったかね」
アギーハはこう忌々しげに言った。既にシカログがロンド=ベルに向かっている。
「そうするべきだったかね」
「いや、それでも同じだな」
しかしメキボスはこう言う。
「結局はあの連中にやられる」
「つまり奴等が最大の敵ってわけかい?」
「そうかもな」
彼はその可能性を否定しなかった。
「少なくとも手強くはあるぞ」
「そういうことだね」
「まずいな」
今度はヴィガジが言ってきた。
「損害が五割を超えた」
「遂にか」
「ロンド=ベルの勢いが止まらない」
その損害の殆どが彼等によるものなのだ。
「このままでは七割にも達するぞ」
「ちっ、下がるべきか?」
メキボスはここでこの選択肢を述べた。
「ここは」
「そうだね。それもいいんじゃないかい?」
アギーハもそれに同意した。
「一分ごとに一割やられてるんじゃ話にならないよ」
「シカログ」
「・・・・・・・・・」
そのシカログがグレイターキンのモニターに出て来た。
「後詰を頼めるか?」
「・・・・・・・・・」
無言で頷くだけだった。
「そうか、済まないな」
「メキボス、後詰ならいいね」
アギーハはまた言ってきた。その間にも正面から来るシャドウミラーの大軍を相手にしている。
「あたしも行くよ」
「ああ、俺も行く」
彼もだというのだ。
「撤退するからにはな」
「そうだね。後詰こそが大事だよ」
「損害は六割を超えたぞ」
ヴィガジがまた言ってきた。
「俺も後詰に回ろう」
「北に向かって逃げるぞ」
メキボスは退路も提案した。
「それでいいな」
「うむ、わかった」
「それでいいよ」
「・・・・・・・・・」
四天王の他の三人はそれぞれ応えた。そうして軍を北に向けて撤退させたのだった。
「むっ、インスペクターが」
「退いた!?」
ロンド=ベルもシャドウミラーもそれを見逃さなかった。
「それならだ」
「追え!」
両軍彼等の追撃にかかった。
「このまま追撃にかかるぞ!」
「ここでダメージをさらに与えておく!」
こう判断して追撃にかかる。とりわけロンド=ベルの攻撃が激しく四天王以外の後詰の戦力はほぼ完全に消滅してしまった。
「駄目だ、メキボス」
「このままではあたし達もやられてしまうよ」
必死にそのロンド=ベルを食い止めるヴィガジとアギーハが言ってきた。
シカログは話さないだけである。彼も戦っていた。
損害は七割を超えた。そこで今度は。
「異常重力帯!?」
「これは」
レモンとエキドナが言った。
「まさかこれは」
「アインストか」
アクセルはすぐに彼等を察した。
「まさかここで出て来るとは」
「そうね」
レモンも彼の言葉に頷く。
「重力だから。ただ」
「ただ。何だ?」
「今までになかったケースね」
彼女が指摘するのはこのことだった。
「何だか嫌な予感がするわ」
「そうね」
エキドナもレモンの今の言葉に頷く。
「ここは警戒が必要だと思うわ」
「わかった。それならだ」
アクセルはそれを聞いて決断を下した。
「インスペクターの追撃を止める」
「わかったわ」
「それじゃあ」
レモンもエキドナも彼の言葉に頷いた。
「そうしてそのうえで」
「アインストの相手を」
「ロンド=ベルは後でいい」
今はいいとしたのだった。
「それよりもアインストだ。いいな」
「了解」
「それなら」
反転してアインストに向かう。そしてロンド=ベルも同じ動きをしたのだった。
「アインストが出て来たなら」
「聞きたいことが山程あるわよん」
キョウスケとエクセレンが言う。
「シャドウミラーはその後でいい」
「それよりもまずはね」
「インスペクター、全軍戦場より離脱しました」
ミーナがマクロスクウォーターのブリッジから言う。
「損害八割を超えています」
「随分やっつけたわね」
ボビーはそれを聞いて呟いた。
「派手に」
「とりあえず暫くは大人しいですかね」
ラムは少し楽観的に述べた。
「あれだけ叩いたら」
「そうね。まあ他の勢力が出て来るでしょうけれど」
「今のところはですね」
「それではだ」
ジェフリーがここで言う。
「今度はアインストだ。いいな」
「はい、わかってます」
「それじゃあ」
こうして両軍は今度はアインストに向かった。
しかしその中でもだった。アクセルはキョウスケを睨み据えていた。その中で彼に言うのだった。
「貴様のことは忘れん」
「貴様も生きていたか」
「そうだ。いずれ貴様を倒し」
その憎悪に燃える目での言葉だ。
「我々は本来の作戦に移る」
「本来の作戦!?」
「どういうこと!?」
キョウスケだけでなくエクセレンもその言葉に問うた。
「それは一体」
「何なのよ」
「予測位出来るのではないのか?」
アクセルは今は答えようとしなかった。
「ラミア、御前ならばな」
「この世界の制圧を」
「その通りだ。この世界を我々の世界にする」
これがその本来の作戦だというのだ。
「全ての戦力を次元転移で送り込んで来てな」
「何っ!?」
「というとだ」
ここで誰もがあることに気付いた。
「今のシャドウミラーの戦力はまだ」
「全てではないと」
「そうだ。見てみるのだな」
アクセルは自信に満ちた声で告げた。
「その時をな」
「アクセル=アルマー」
キョウスケはここでアクセルに対して言ってきた。
「俺達の世界を荒らしておいてただで帰れると思うな」
「無論駄賃は頂いていく」
アクセルも負けてはいない。
「向こう側の貴様を倒す為にもな」
「こちら側の俺に戦いを挑んだのはその予行練習ぁ」
「そうだ」
そうだというのだった。
「その為に俺は」
「いえ、それだけではないわ」
しかしここでラミアが彼に言ってきた。
「アクセル、貴方がそれだけが理由ではないわ」
「W17・・・・・・いやラミア」
こう言い換えたアクセルだった。
「不完全だが読みは的確だな」
「あらゆる世界にシャドウミラーの戦力を送り込み制圧する。そうするのね」
「その通りだ。貴様等の戦力を併呑すればそれが可能だ」
こう言うのである。
「この世界を全てだ」
「随分と虫のいい話だな」
キョウスケはそこまで聞いて述べた。
「御前達にとってな」
「量産機動兵器レベルで安定した転移能力を持つ軍隊」
アクセルは彼の言葉に構わず言ってきた。
「異星人共をも凌駕する最強の軍隊の存在だ」
「そして様々な世界に戦争の火種をおいて回るのか」
「そうだ。兵士が兵士である為の世界」
彼はそれを言う。
「俺達の存在理由が確立される世界を創るのだ」
「それは何にもならないわ」
だがここでラミアが言った。
「アクセル、貴方もそれはわかっている筈よ」
「何っ!?」
「私はわかった。そんな世界には何もない」
こう言うのだった。
「そして」
「何だというのだ?」
「貴方も私と同じ考えを持っている」
こうも言ってみせるのであった。
「間違いなく」
「何故そう言える」
「それなら何故まずアインストを狙うのか」
彼女が指摘するのはそこであった。
「それよ。貴方は私達をまず攻めなかった」
「ふん、作戦のうえだ」
「私達を狙わずに。それこそが何よりの証拠」
「作戦だと言っている」
「それなら私をまず倒し破壊する筈」
「・・・・・・くっ」
アクセルの言葉が止まった。
「違うかしら。それこそが何よりの証拠よ」
「何を以ってそう言う」
「今ナンブ大尉と私がここにいる」
彼女とキョウスケがというのだ。
「その私達を真っ先に倒さずに後に回すのはその考えに躊躇があるからよ」
「・・・・・・後だ」
そう言われても今は向かおうとしないアクセルだった。
「貴様は後で倒す」
「やはりそうするのね」
「キョウスケ=ナンブ、ラミア=ラヴレス」
彼等の今の名前で呼んだ。
「後で決着を着ける」
「今はアインストを!」
「ええ!」
「わかってます!」
早速そのアインストと戦闘に入った。
「それなら・・・・・・!」
「やらせてもらう!」
「全軍シャドウミラーはまず無視しろ!」
ダイテツが指示を出す。
「いいな」
「言われなくともだが」
リーが彼の言葉に応える。
「しかしだな」
「しかしって艦長さんよ」
「まさか」
それと聞いたアラドとゼオラが彼に問うた。
「連中とやりたいのか?」
「今ですか?」
「本音はそうしたいと思っている」
それは隠さないリーだった。
「しかし。今はその時ではない」
「三つ巴は避けるってことかよ」
「そういうことですね」
「その通りだ。シュバイツァー少尉」
「私ですか?」
「そうだ。君はドイツ系だったな」
名前からすぐにわかることを問う結果になっていた。
「今はベルリンだが」
「はい」
「後で観光案内をしてもらいたい」
こう言うのであった。
「いいか、それは」
「あの、艦長申し訳ないですけれど」
「どうした?」
「私ベルリンのことあまり知らないんですよ」
こう彼に告白したのだった。
「すいません」
「何っ、ドイツ人だというのにか」
「確かにドイツ人です」
それは彼女も認めるところだった。
「けれど孤児でスクールに入ってましたから」
「ではドイツのことは」
「はい、知りません」
そういうことだった。
「ベルリンだけじゃなくて」
「実は前のベルリンでの戦いの時も」
あのシンがステラを助け出した時の話である。
「観光案内受けて回ってましたし、戦いの後の観光は」
「そうだったのか」
アラドの言葉を受けてさらに驚くリーだった。
「そういえば君達はスクールだったな。いらぬことを聞いてしまったな」
「いえ、それはいいですけれど」
「艦長って観光お好きだったんですか」
「嫌いではない」
このことも否定しないリーだった。
「妹が特に好きでな」
「妹!?」
「そんなのいたのかよ!」
「嘘だろ嘘!」
皆今のリーの言葉に一斉に騒ぎだした。
「自然発生に生まれたんじゃないのか!?リー艦長ってよ」
「クローンでしょ」
「サイボーグだろ、実は」
「そんなことがあるものか。私にも両親はいる」
いささか憮然として彼等に言葉を返す。
「そして妹もだ。見るのだ」
「げっ、本当にいた」
「しかも」
「結構可愛い・・・・・・」
「今も北京に住んでいる」
モニターにわざと妹の立体写真を見せての言葉である。
「両親と一緒にな」
「ああ、艦長って北京出身でしたね」
「そういえば」
「だからだ。その妹がだ」
「観光旅行お好きなんですか」
「ですから」
「戦いが終わったならば休暇を取って妹を案内したいのだ」
その為だというのである。
「これでわかったな」
「ベルリンかあ」
「確かにいい街ですしね」
「じゃあその妹さんの為にも」
一同の気合がさらに高まった。
「勝つか!」
「そうね!」
全員でアインスト達に向かう。こうして激しい戦いが再開された。
そこにはアルフィミィもいた。エクセレンが彼女の姿を認めて言う。
「やっぱりいたわね、お嬢ちゃん」
「アルフィミィ、今度こそだ」
キョウスケも彼女に対して言う。
「全て喋ってもらうぞ」
「キョウスケ、エクセレン」
アルフィミィはまたあの抑揚のない声で二人を呼んできた。
そうしてであった。
「そして」
「!?」
「な、何だ!?」
「頭の中に声が」
皆彼女の言葉を頭の中に聞いた。
「聞こえる」
「どういうこと!?これって」
「これは」
その中でアヤが言った。
「強力な思念波!?」
「はい」
彼女に対してそうだと答えるアルフィミィだった。
「だいぶ・・・・・・安定してきましたので」
「安定って!?」
「まだ貴女にはなれませんが」
こうエクセレンにも返した。
「まだ」
「何!?」
「私に!?」
キョウスケもエクセレンもまたわからない言葉を聞いた。
「それはまた」
「どういうことなの!?」
「訳のわからないことばかり言って」
「そうよ!」
その彼女にリオとカーラが抗議めいた言葉をかける。
「貴女の本当の目的は何なの!?」
「ここではっきりさせてもらうわよ!」
「・・・・・・・・・」
だが二人の質問には答えないアルフィミィであった。沈黙に入った。
「地球を滅ぼす!?」
「俺達を」
リョウトとユウキはそれではないかと問う。
「それなの!?」
「どうなのだ」
「貴方達には理解できない」
しかしまたこう言うアルフィミィだった。
「そう思いますの」
「またそんなこと言って!」
「聞いてみなきゃわからねえだろ!」
今度はエレナとタスクだった。
「何なのよ、だから!」
「言ってみろつってんだよ!」
「聞いてもどうにもならないですね」
だが返答は相変わらずである。
「貴方達には」
「俺達には!?」
「まだ言うのね」
「四霊の操者に」
そして。
「かの者達の血も関わっているとはいえ」
「かの者達!?」
「それは一体」
「何なの!?」
誰にもわからないことであった。しかしだ。
「一つ聞こう」
「何ですの?」
ブリットが問うたのだった。
「守護者。それと何か関係があるのか?」
「それは」
「答えないっていうのかよ!」
カチーナはもうそれを察していた。
「またかよ、おい!」
「一つだけ教えろ」
キョウスケが問う。
「鍵とは何だ」
「失われた古の記憶」
アルフィミィは言う。
「それへ通じる門、今は閉ざされた」
「!?」
「また変なことを」
「門!?」
「あらゆる力が鍵になる」
これが今度の彼女の言葉であった。
「それこそが」
「何が何なのか」
「一体」
「門が開けば素材を集めずとも」
「まさか」
何となく話が読めてきたエクセレンだった。
「素材って私?」
「違いますの」
「あら、そうなの」
「貴女は私ですの」
そしてまたこう言うのである。
「けれど」
「けれど!?」
「何だっていうのよ、今度は」
「もう時間切れですね」
今度の言葉はこうしたものだった。
「私もはじまりの地の者達も」
「時間切れ!?」
「やっぱり訳がわからないわね」
「決断は下されましたの。後は」
また言葉を続ける。
「扉を開くだけ」
「扉!?」
リュウセイがそこに反応する。
「さっき言ってた門とは違うのかよ!?」
「そうですの」
「扉を開く」
ギリアムは考える顔になった。
「御前達の目的の一つか」
「そこには私達の望むものが比較的揃っていますの」
言葉を出すのであった。
「力、鍵、そして新たな器」
「もう全然わかんねね」
「何、一体」
「わかる人いる?いないよな」
誰一人としてアルフィミィの言っていることが理解できなかった。
「何が言いたいんだよ」
「それで何?何一つとしてわからないけれど」
「わかるように言う気ねえだろ」
「っていうか何なのよ、本当に」
「話にならんな」
キョウスケはもう話を打ち切ることにした。
「御前はそもそも何だ?」
「キョウスケ」
今度はまだわかる言葉であった。
「私は私です」
「いや」
だが彼は今の彼女を否定した。
「そうは思わん」
「そう・・・・・・ですの」
「それでだけれど」
今度はエクセレンが彼女に問うた。
「私の何なの?本当の望みは何?」
「貴女こそが」
「私が?」
「私の・・・・・・」
「やっぱりさっぱりわからないわ」
彼女もアルフィミィの言っている意味がわからなかった。
「だから何なの?貴女の言ってること誰も理解できないし」
「もういいだろう」
キョウスケは彼女も止めた。
「行くぞエクセレン」
「行くって?」
「アルフィミィを倒さなければその向こうにいる奴は見えん」
「そうね」
彼の言うことははっきりとわかるのだった。
「本当にそうね」
「だからだ」
「うう・・・・・・」
「終わりだ」
「多分逃げられないわ」
流石に今はエクセレンも真剣だった。
「御免ね、お嬢ちゃん」
「新しい宇宙」
だがアルフィミィの意味不明の言葉は続く。
「もうすぐ・・・・・・」
「このまま突破する!」
「ええ!」
「全軍叩き潰すぞ!」
シャドウミラーも並んで攻撃を仕掛ける。戦い自体は勢いのまま押せた。
瞬く間にアルフィミィに迫る。そうしてであった。
「キョウスケ」
「ああ」
今二人は言葉を合わせていた。
「あれね」
「そうだ、やるぞ」
こう言うとだった。キョウスケは。
「懐に飛び込む」
「いつもの通りね」
「ええ、それじゃあ」
キョウスケの言葉を受けてだった。何時になく真剣に身構えそうして。
「弾幕いくわ!」
「よし!」
ヴァイスリッターでありったけの攻撃を放つ。それでアルフィミィを止めて。
「今よ!」
「わかった!」
そのまま一直線に飛び込むキョウスケは。アルフィミィから激しい攻撃を受けながらもそのまま突き進む。一気にその角で貫いたのだった。
「これでどうだ!」
「うっ・・・・・・」
「俺達の攻撃をまともに受けた」
「そうそう無事では済まない筈よ」
二人は勝利を確信していた。
「死んだか!?それとも」
「どうなった!?」
「・・・・・・・・・」
しかしであった。アルフィミィは姿を消したのだった。まるで霧の様にその姿を消した。後に残ったものは何一つとして存在しなかった。
「やったっていうのか!?」
「どうかしらね」
カチーナとエクセレンはそれぞれ言った。
「あまり実感はないわね」
「ってことはまさか」
カチーナは今のエクセレンの言葉を受けてその二色の目を顰めさせた。
「まだか」
「そうかも知れん」
ここでキョウスケが言った。
「それにだ」
「それに!?」
「まさか」
「まだ何かがいる」
彼はそれを察していたのである。
「まだ終わりではなさそうだ」
「そうね」
エクセレンも彼の今の言葉に頷いた。
「見てるわね」
「やはり油断はできないか」
「さて、これで終わりだ!」
ここでアクセルが叫んできた。
「ベーオウルフ!そしてラミア!」
「そうだったな」
「貴方がまだ」
「そうだ」
憎しみに燃える目で彼等を見据えての言葉であった。
「行くぞ!これで邪魔者は消えた!」
「全軍左に向かって下さい!」
レフィーナがすぐに指示を出した。
「次の相手はシャドウミラーです!」
「ここでの最後の戦いですな」50
ショーンが冷静に述べた。
「間違いなく」
「そうだな」
キョウスケは彼の今の言葉に頷いた。
「これで。そして」
「そして。そうね」
「この男との因果も終わらせることができるかも知れない」
「そうだ、終わらせる」
アクセルからも言って来たのだった。
「貴様を倒してだ!」
「来い」
今度は一言であった。
「倒す。何があろうともな」
「言ったな。その言葉忘れん」
アクセルの目がさらに光った。そうしてだった。
「行くぞ!」
「了解!」
「それでは!」
シャドウミラーも右に向いた。そのまま両軍は戦いに入った。
最早ベルリンは問題ではなかった。どちらが勝利を収めるかだった。彼等はそうした戦いに入ったのだ。
「行くわよ!」
エクセレンがそのライフルを構えてから派手に放つ。
それで数機まとめて撃墜する。しかしその側からまた来るのだった。
「多いわね、本当に」
「ハローーーーー!」
彼女の前にハッターが来た。そうしてその新たな敵を己の帽子で斬ったのだった。
またしても数機爆発する。戦いはかなり激しかった。
「まだ出て来る!けれどそれがベリーグッド!」
「何でなの?ハッちゃん」
「ハッちゃんではない!」
エクセレンにも同じ返しであった。
「アーム=ド=ハッター軍曹だ!」
「そうなの」
「そうだ、軍曹でもいい」
「じゃあ軍ちゃん」
「それも止めてくれ」
また訂正を要求することになったハッターであった。
しかし彼はくじけることを知らない男だ。すぐに言ってきた。
「軍曹だ」
「わかったわよ軍曹、それだけれど」
「うむ。何だ?」
「ありがとね」
彼女が言ったのは御礼であった。
「助けてもらってね」
「ノープロブレム!仲間を助けるのは当然のことだ!」
こう明るく返すハッターであった。
「気にすることはない」
「そうなの」
「それよりもだ。中尉」
階級はあまり意味がなくなっていた。
「敵が来るぞ」
「そうね、またね」
そうなのだった。次々と来ていた。
ロンド=ベルはここでも無数の敵を相手にしていた。しかし次第に本陣に近付いていく。
「よし!」
「見えてきたわよ!」
「あと少しだ!」
アクセル達を見据えて言う。
「大尉!ラミア!」
「今よ!」
「わかった」
「今こそ!」
その二人が本陣に向かう。キョウスケの前にアクセルが早速出て来た。
「来たか、やはり」
「ベーオウルフ、今度こそだ!」
彼はすぐに突進してきた。忽ち両者は激突した。
そのうえで激しい戦いに入る。何百合と打ち合う。しかしだった。
「むっ!?」
「今だ」
アクセルがバランスを崩したのを見逃さなかった。そこで一閃したのだ。
「うっ!」
「それならばどうさ」
「機体の修復が!」
それが間に合わないまでのダメージだった。キョウスケはそれを見てさらにであった。
「その隙、逃がさん!」
「くっ!」
彼は再度攻撃に出た。今のアクセルにそれをかわすことはできなかった。
「ベーオウルフ!来るか!」
「取った!」
二人はここで決着が着いたかに思われた。しかしだった。
「アクセル=アルマー!」
キョウスケはここで叫ぶ。
「貴様との戦いもこれで終わる・・・・・・!」
「おのれ!」
「隊長!」
しかしであった。ここでエキドナが出て来た。咄嗟にアクセルの前に出たのだ。
「むっ!?」
「何だと!?」
キョウスケとアクセルが気付いた時はもう遅かった。キョウスケのマシンの剣が貫く。エキドナはそれをまともに受けてしまったのだ。
忽ち彼女のマシンから火花が飛び散る。そうしてであった。
「これが私の・・・・・・」
こう言い残して爆発に包まれる。
「馬鹿な、W16!」
ラミアはその彼女を見て思わず叫んだ。
「何故そんなことを」
「あいつは」
「アクセルを庇った!?」
「損傷率・・・・・・」
まだ生きていた。その中で血塗れになりながら呟いていた。
「九六パーセント・・・・・・」
「W16!」
そのエキドナに対してアクセルが問う。自身の楯になった彼女に対して。
「貴様何の為だ!」
「私の役目は」
絶え絶えの息の中での言葉だった。
「貴方を生還させることですから」
「レモンの命令か」
「・・・・・・はい」
そうだと答えるのだった。
「その通りです」
「己を犠牲にしてもか」
次にはこう問うたアクセルだった。
「それで俺を守れと言ったのか、あいつは」
「いえ」
だが今は首を横に振るエキドナだった。
「そうは言いませんでした」
「何っ!?」
それに驚いたのはラミアだった。
「まさか貴女も」
「ですが」
エキドナの言葉は続く。
「与えられた指令を確実に遂行する為に」
「楯になったのか」
「そうです」
まさにそうだというのだ。
「自分の判断で行動しました」
「W16・・・・・・」
レモンもその言葉は聞いた。そうして敵にいるラミアを一瞥してから呟いたのだった。
「まさか御前も」
「隊長、すぐに後退して下さい」
次にアクセルにこう告げたのだった。
「我々の作戦を成功させる為にも」
「余計なことを」
今はこう言うことしかできないアクセルだった。
「人形が・・・・・・」
「エキドナ」
ラミアは確かに彼女をこう呼んだのだった。
「未練はないのか?」
「未練だというのか」
エキドナは絶え絶えになりながらも彼女に言葉を返した。
「W17、御前は一体どうしてしまったのだ」
「私は・・・・・・」
「私の、いや我々の代わりは幾らでもいつ」
「そうだ」
ラミアもそれは認めた。
「しかしだ」
「しかし?」
「エキドナ=イーサッキはここで消滅する」
彼女が言うのはこんことだった。
「御前はそれで構わないのか」
「無論だ」
異論はないというのだった。
「我々に自我なぞ不要だ」
「そうなのか」
「そうだ。任務を果たす・・・・・・」
こうエリスに放す。
「人形・・・・・・兵器であればいい」
「私もそう考えてはいた」
「Wシリーズはその為に作られた」
元はそうだったというのである。
「任務を遂行出来ない御前は・・・・・・」
「私は・・・・・・」
「壊れて・・・・・・いる」
「エキドナ!」
「私はW16だ」
しかしあくまで己の中には否定するのだった。
「エキドナ・・・・・・イーサッキでは・・・・・・ない・・・・・・」
最後の爆発が起こった。これで彼女は死んだのだった。
「エキドナ・・・・・・」
ラミアは彼女の最後を見届けて呟いた。
「結局は御前もレモン様の命令に背いたのだ」
彼女はそれがわかっていたのだ。
「自分の意志で、アクセルを守る為に」
わかっていた。そうしてだった。
「そして、それは紛れもなく」
わかっていた。しかしだった。彼女は死んだ。しかしだった。
「くっ」
アクセルはまだいた。そうして言うのだった。
「この俺が人形に助けられるとは。しかしだ」
「アクセル」
しかしだった。ここはレモンが言ってきたのだった。
「駄目だ、もう」
「何っ!?」
「戦力がもうない」
「ないというのか」
「戦力の八割を失った」
「馬鹿な、何時の間に」
それを聞いてアクセルも思わず声をあげた。
「それだけの数が」
「だから」
「・・・・・・わかった」
アクセルもそれだけの損害を聞いては頷くしかなかった。
「では下がろう」
「それじゃあ」
こうして彼らは撤退した。ロンド=ベルは結果としてベルリンを守りきった。
しかしだった。謎は謎のままであった。このことに眉を顰めさせてもいたのだ。
「勝利は収めた」
「はい」
ソーマがセルゲイの言葉に頷く。
「見事な戦略的勝利だ」
「その通りです」
「しかしだ」
だがセルゲイの顔は晴れない。それには理由があった。
「全く何一つとして解決していない」
「アインストのことが」
「シャドウミラーもだな」
カティも言ってきたのだった。
「彼等のことも全くだ」
「ここであの二人も倒しておくべきでしたね」
ビリーはアクセルとレモンのことを言った。
「ですが」
「敵は消えてしまった」
また言うセルゲイだった。
「こうなってはどうしようもない」
「はい、全くです」
「だが」
しかしだ。ここでキョウスケが言ってきた。
「アルフィミィ、あいつはおそらく」
「そうね」
エクセレンも真剣な顔である。
「間違いないわね」
「あの子から感じるもの」
「感じるんだな」
「いえ」
しかしだった。ここで言葉を訂正させたエクセレンだった。
「あの機体からと言った方がいいかしらね」
「それではだ」
カティがそのエクセレンに問うた。
「奴等。アインストが貴官を拉致した理由はだ」
「はい」
「その結果が出るのは近いのだな」
「間違いありません」
こうカティに答えるエクセレンだった。
「それは」
「そうか」
それを聞いて静かに頷くカティだった。
「謎は残されたままだが間も無くか」
「まああれですね」
今度はパトリックが言ってきた。
「正念場は続いてるってわけですね」
「新しい命」
エクセレンは今度はこの言葉を出した。
「キョウスケ、それはキーワードよ」
「何っ!?」
彼女の今の言葉に顔を向けるキョウスケだった。
「御前は何処まで知っているんだ?」
「それは」
「さらわれた時に何をされた」
「御免なさい」
しかしだった。ここでこう言うしかなかったのだった。
「断片的にしかわからないわ」
「そうか」
「だけれど」
それでもだった。
「あの事故の時に私達が助かったのは」
「何となくわかっている」
それは彼もなのだった。
「だが確実じゃない」
「それでだけれど」
またエクセレンが言ってきた。
「何だ?」
「あのね。推測よ」
「ああ」
キョウスケは今の彼女の言葉に頷いて応えた。
「それでもいい。話してくれ」
「あのシャトルの事故で」
話はそこまでさかのぼるのだった。
「キョウスケが私を庇ってくれた時」
「やはりあの時か」
「私は破片を浴びてもう駄目だったことはわかってるわ」
「気付いていたのか」
「ええ」
彼の問いにこくりと頷いてみせた。
「それはね」
「その通りだ」
「そうなの。やっぱり」
「だが」
しかし、という。そのうえでさらに言葉を続ける。
「御前には傷一つなく」
「傷も」
「俺も無事だった」
このことも話すのだった。
「じゃあ私達を助けたのは」
「まさか」
「それじゃあ」
「ええ、そのまさかよ」
こう皆にも告げるエクセレンだった。
「アインストよ」
「そうだな」
キョウスケもそうだと頷いた。
「ほぼ間違いない筈だ」
「そうね」
「しかし」
それでも疑問を残してさらに話すのだった。
「その理由が御前を連れ去る為だとしたらだ」
「じゃあ何でキョウスケは」
「わからん」
それはまだわからないという。
「しかし御前は返された」
「ええ」
これは事実だった。その通りである。
「それは奴等の目的がタせられたからだよ考えられないか」
「・・・・・・・・・」
「そしてアルフィミィ」
またしてもこの少女の名前が出て来た。
「奴の力は」
「以前より強くなっているわ」
エクセレンはさらに言ってきた。
「それだけれど」
「何だ?」
「あの娘は。いえ」
ここでこう言い換えたのであった。
「あのロボットは分身なのよね」
「ロボット!?」
「それに分身!?」
皆今のエクセレンの言葉にまた声をあげた。
「ロボットって」
「それに分身って」
「よくわからないけれど」
だが語るエクセレンの顔は怪訝なままであった。
「アインストシリーズって大元は一つみたいなのよ」
「大元は一つ」
「そうみたいなの」
こう話すエクセレンだった。
「それじゃあ」
「今まで出て来たのは」
「蜂みたいなものなのよね」
エクセレンはそう考えていた。
「女王蜂がいて」
「女王が」
「それじゃあ他は」
「そうよ」
皆の言葉にまさにそれだと述べたのだった。
「それが他のアインストを動かしてるのよ」
「女王蜂か」
その存在を聞いて目を鋭くさせるキョウスケだった。
「それが黒幕か」
「どうやらね」
「そいつを倒さなければ」
さらに言っていくキョウスケだった。
「アインストは際限なく生まれてくるな」
「確かかどうかはわからないけれど」
そしてまた言うエクセレンだった。
「私達を滅ぼそうとしているわ」
「何故それがわかる」
「だから」
ここでまた言うエクセレンだった。
「私もその蜂の一匹だったから」
「ああ、そうか」
「それは確かに」
皆今のエクセレンの言葉にはすぐに納得した。
「向こうに洗脳されていましたからね」
「ですから」
「そういうことなのよ」
まさにその通りだと答えるエクセレンだった。
「だからね」
「アインストの力が強まっている」
また言うキョウスケだった。
「女王蜂は力を蓄えれば子供も、ということか」
「さて、それでだけれど」
ここでマリューが言ってきた。
「彼等が今度何処に現われるかわからないけれど」
「はい」
「それで今は」
「ベルリンに留まるわ」
そうするというのである。
「艦艇や機体はケーニヒスベルグで整備補給を受けてね」
「はい、それじゃあ」
それで」
「さて、それでだけれど」
ここまで話してマリューは少し明るい顔になって一同に述べた。
「敵が出て来るまで。この街でゆっくりしましょう」
「はい」
皆その言葉に頷く。とりあえずベルリンの戦いが終わったのは間違いなかった。そして謎にも近付いていた。

第百六十三話完

2009・10・29


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧