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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百四十九話 アニュー=リターン

             第百四十九話 アニュー=リターン
  「忌々しい人間達だ」
リボンズがその広い巨大な部屋の中で言っていた。後ろには二つの螺旋階段がある。
「神の裁きを二度も退けるなんてね」
「じゃ三度目を出すだけね」
「そうだな」
他のイノベイター達も同じ顔だがここでこう言うのだった。
「三度目はどうするのかしら」
「メメントメリはまだ動かせないが」
「いや、やれるよ」
ヒリングとリヴァイブにこう返すのだった。
「充分にね」
「充分に?」
「じゃあ一体何を」
「今度は機雷を使うよ」
それを使うというのである。
「それで今度はやってみるよ」
「そう。そうするの」
「今度は」
ブリングとデヴァインは彼のその言葉に応えた。
「それじゃあそれで行こう」
「それで」
「ただし」
他のイノベイター達はそれで同意した。そしてここでリジェネが言うのだった。
「それはアニューからの情報が入ってからにするべきね」
「わかっているさ。それに」
「それに?」
「二人僕達に近寄ろうとしているね」
ここでこんなことも言うリボンズだった。
「僕達の方にね」
「二人?」
「それは誰のことなんだい。リボンズ」
「一人はあのルイスという女の子」
まずは彼女だというのだ。
「そしてもう一人は」
「もう一人?」
「それは一体」
「ふふふ、すぐにわかるよ」
もう一人については今はあえて言わないリボンズだった。
「それじゃあ仕掛けるとしよう」
「機雷をね」
「アニューからはまだだったね」
リジェネに対して問うてきていた。
「彼女からはまだだったね」
「ええ、まだよ」
こう答えるリジェネだった。
「それはね。まだよ」
「それからでも遅くはない。彼等は必ず出て来るから」
こうも言うリボンズだった。
「さて、今はとにかく用意をしておこうか」
「わかったよ」
「じゃあね」
彼等はこう話した上で今は機雷の用意をするのだった。また戦いになろうとしていた。金星での戦いは続くのだった。
ロンド=ベルは全軍集まっていた。そのうえで今作戦を決定しようとしていた。
「まずは何よりもです」
「メメントメリ」
「それですよね」
「はい、そうです」
皆に語るテッサは彼等のその言葉に応えた。
「あれを破壊しなくては私達に勝利はありません」
「もう一つあるなんてね」
「全く。厄介なことだぜ」
「ですがまだ完成されてはいません」
このことも話すテッサであった。
「ですから」
「よし、じゃあ決まりだな」
「すぐにメメントメリに向かう」
彼等は口々に言うのであった。
「一気に攻めようぜ」
「それしかないだろ」
「そうです。それしかありません」
彼等のその言葉に頷いてみせるテッサであった。
「ですから。明日出撃です」
「明日か」
「そしてメメントメリに向かうんですね」
「そのうえでメメントメリを破壊します」
作戦はまさにそれが目的であった。
「ここから一直線に向かいます」
「質問です」
ここで手をあげたのはダバだった。
「その間に敵や障害があった場合はどうしますか」
「いつもの通りです」
ダバの質問にこう答えるテッサだった。
「倒す、若しくは除去します」
「わかりました」
テッサのその返答を満足した声で受けるダバだった。
「それじゃあそれで」
「おそらく敵の護りは固いです」
「だろうな」
「それはね」
皆そのことはわかっているのだった。
「敵にとっての切り札だしな」
「あれがなくなったら終わりだしね」
「だからです。おそらく決戦になります」
こうも言うテッサであった。
「総員健闘を祈ります」
「了解です」
「じゃあ明日行くぜ」
こうして彼等の作戦は決定した。そのうえで次の日出撃するのだった。だが出撃した彼等の前に無数の障害物が姿を現わしたのであった。
「これは」
「機雷!?」
「間違いないわ」
皆それが何かすぐに察した。
「機雷を撒いてきたのね」
「それで僕達の動きを止めるつもりか」
「随分しみったれたことしてくれやがるな」
皆こう言ってまずは忌々しげな顔になる。
「けれど」
だがここでスメラギが言うのだった。
「あまりにもタイミングがいいわね」
「タイミングがいいっていうのかよ」
「ええ。考えてみて」
ギュネイの言葉に応えるのだった。
「私達が出撃して巡航速度に入ってからよ」
「そういえばそうだな」
スメラギに言われて頷くギュネイだった。
「こんなにいいタイミングなんてな」
「あまりにも都合が良過ぎるわ」
スメラギはこうも言った。
「まるで」
「まるで?」
今度はクェスが彼女に問うた。
「私達の中にスパイがいるみたいにね」
「スパイ!?」
「ロンド=ベルの中に」
「まさかと思うけれど」
ここでスメラギの表情が微妙に歪んだ。
「有り得ないけれどね」
「いや、それはどうか」
だがここで刹那が言うのだった。
「イノベイターが俺達の中にいることは有り得ないか」
「そうじゃないっていうのかしら」
「先入観でそう判断するのは危険だ」
彼はまた言った。
「そう判断することはな」
「イノベイターには何か独特のものがあるよね」
ここで言ったのはカツだった。
「何ていうかさ。作り物?みたいな」
「ああ、そういえばそうね」
エマが今のカツの言葉に頷いた。
「何か。感情や表情が乏しい気がするし」
「それに何かを見透かしたみたいな」
ケーラも言う。
「そうした感じよね」
「そんな奴がロンド=ベルにいてもすぐにわかると思うがな」
カムジンはそう考えていた。
「どうだよ。その辺りは」
「そいつがよっぽど頭がよかったらな」
今度言ったのはイサムだった。
「ちょっとわからねえかもな」
「そうだな。イノベイターの外見は俺達と同じだ」
こう言ったのはガルドだった。
「黙っていればだ」
「そういうことだな」
「ああ」
二人はこう言葉を交えさせた。しかしここでイノベイターの軍勢も姿を現わしたのであった。
「どうやら考える時間はくれないみたいだな」
「そうね」
皆その彼等を見て言い合う。
「まあ予想はしていたけれどな」
「それじゃあここは」
「全機出撃です」
テッサが指示を出した。
「機雷はその時に攻撃して適時破壊していって下さい」
「了解」
「まあそうしないと進めないしね」
こう言い合いながら出撃する彼等だった。彼等はまず出撃しそのうえで敵軍及び機雷達に向かった。敵は二つだったがそれでも怖れは見せていなかった。
「いいか、このままだ」
「はい」
「何なら機雷も敵もまとめてですね」
マックスと柿崎が輝の言葉に応える。
「反応弾で」
「一気にですか」
「それが一番いい」
輝もまた言った。
「ここで吹き飛ばす。いいな」
「了解」
「それじゃあ!」
三機のバルキリーが動きその反応弾をミサイルから放つ。すると無数の機雷と敵機を巻き込み一気に殲滅するのであった。
機雷が次々に誘爆を引き起こしその中で敵も爆発していく。無数の爆発が起き敵の数は一気に減った。
「よし、あれだ!」
「やるわよレトラーデ」
「ええ、ミスティさん」
それを見た霧生、ミスティ、レトラーデも続く。彼等もそれぞれ反応弾を放った。
それにより敵はまた機雷に巻き込まれ次々と大爆発を引き起こしていく。他のバルキリー達も続き機雷も敵も次々と消し去っていくのだった。
そしてこの攻撃は。ロンド=ベルに一つのヒントを与えたのだった。
「そうか。これだな」
ブライトもそれを見て言った。
「ミサイルだ!ミサイルを放て!」
「ミサイルをですか」
「そうだ。ミサイルを持っている機体は次々に撃て!」
こうトーレスにも答える。
「そして機雷ごと敵機を粉砕しろ。いいな!」
「了解です!」
最初に応えたのはマークツーに乗っているエマだった。
「これなら!」
「エマさん!」
そのエマにファが問う。
「マークツーのミサイルは」
「そうよ、これでいいのよ」
ミサイルを一斉に放ちながらファに言葉を返すエマだった。
「こうして機雷をまとめて粉砕して」
「ええ、それです」
フォウはそれでいいというのだった。
「機雷の爆発に誘われて敵機も粉砕できます」
「それを狙ってですか」
「そうよ」
またファに答えるエマだった。
「これなら!」
こう叫んでミサイルを繰り出す。すると敵は確かに機雷の爆発に巻き込まれ彼等も消えていくのであった。
この攻撃はかなり効果があった。敵は次々と機雷の爆発に巻き込まれていく。戦局は忽ちのうちにロンド=ベルに傾いていった。
「ミケル!」
「どうしたの、サンダース」
サンダースも対艦ミサイルを派手に放って機雷を爆発させ敵機をその中に消していた。そうしながらミケルに声をかけてきたのだ。
「メッサーラの拡散ビームを使え!」
「それで機雷を撃てっていうの?」
「そうだ」
まさにそれだというのだ。
「それでも誘爆を誘える筈だ」
「そう。だったら」
「ただし間合いには気をつけろ」
こう言い加えることも忘れなかった。
「御前自身が巻き込まれるな」
「わかったよ。それじゃあ!」
ミケルはメッサーラを駆り前に出た。そうして言われた通り拡散ビームを放つと。
それを受けた機雷達が次々に爆発して行く。周りにいる敵機もだ。それによって敵機を大幅に減らすことに彼等も成功したのである。
「凄い、これでもできるんだ」
「何か機雷がこっちの役に立ってきたわね」
カレンもまた同じようにして海蛇を放ちそれで機雷を敵機ごと爆発させていた。
「向こうにしちゃ予想外だろうけれど」
「生半可な戦術じゃかえって自分達の首を絞める」
ここでシローが言った。
「そういうことだな」
「そうね」
彼の言葉にアイナが応える。彼女のドーベンウルフも大型ミサイルを放っている。
「機雷で私達を倒すつもりだったんでしょうけれど」
「それがかえって仇になりました」
ノリスはドライカッターで嫌いを攻撃していた。それもかなりの効果があった。
「機雷は敵だけでなく味方も狙いますから」
「このまま機雷への攻撃を続けろ」
シナプスも言った。
「それが我々を助けてくれる」
「そうですね」
セラーナは普通に敵機を倒していた。彼女はいつものゼータである。
「まさか機雷をこうして使うなんて」
「けれどこれで簡単にやれるわ」
セニアは純粋にそれを歓迎していた。
「もう戦局は私達に有利になっているし」
「このまま攻撃を続けるぞ」
大文字も大空魔竜のミサイルを放たたせていた。
「もうすぐで勝てる」
「はい。今回は思ったより楽でした」
サコンも今の状況は予想外だった。
「それではこのまま」
「うむ、行こう」
戦いはロンド=ベルの戦術勝ちだった。忽ちのうちに機雷も敵も倒してしまった。しかし戦いはこれで終わりではなかったのだった。
勝利を収めたことを確認する彼等にここで異変が起こったのだ。
プトレマイオスのブリッジで。まず気付いたのはミレイナだった。
「あれっ、アニューさんは?」
「そういえば」
次にそれに気付いたのは留美だった。
「いませんわね」
「今先程までおられましたが」
ここで紅龍が言った。
「一体何処に」
「とりあえず探しましょう」
スメラギも今度ばかりはそれ程警戒してはいなかった。
「まだ敵が出て来るかも知れないし」
「んっ、どうしたんだ?」
丁度プトレマイオスに弾薬補給の為に帰還していたロックオンがモニターに出た。
「何かあったのかよ」
「アニューがいなくなったのよ」
フェルトが彼に答えた。
「まだ戦闘があるかも知れないのに」
「アニューがか?」
「トイレじゃないのか?」
ラッセはこう考えた。
「それだと普通に」
「けれどそれですとちゃんと連絡しますわ」
留美はこう彼に言った。
「何も言わないのは」
「私が探してきます」
ミレイナが言うのだった。
「それじゃあ」
「よし、それじゃあ俺も探す」
ロックオンはここで申し出たのだった。
「ケルディムの補給に時間がかかりそうだしな」
「御願いできるかしら」
スメラギはロックオンに対して声をかけた。
「悪いけれど艦橋も今忙しくてそんなに人は」
「わかってるさ。だから俺が行くさ」
こう答えるのだった。
「だから今からな」
「ええ。それじゃあ」
こうしてミレイナとロックオンがアニューの捜索にあたった。すぐに艦内を探す。するとミレイナがそのアニューをプトレマイオスの廊下で見つけたのだった。
「あっ、アニューさん」
ミレイナは彼女の姿を認めてすぐに駆け寄った。
「探してたんですよ。どうしたんですか?」
「連絡を取っていたの」
こう彼女に答えるアニューだった。
「少しね」
「連絡?」
「同志達に連絡していたの」
「あれっ、何言ってるんですか」
何も知らないミレイナは今の言葉に明るく返した。
「同志っていったら仲間ですよね」
「そうよ」
「それだったら私達じゃないですか」
朗らかに笑っての言葉だった。
「ですからそれは」
「いえ、それは違うわ」
だが彼女はここでこう言った。
「私の仲間は」
「私の仲間は?」
「イノベイターよ」
この言葉と共に目が金色に光った。そして。
「きゃあああああああっ!」
「何だ?」
丁度近くに来ていたロックオンがその悲鳴を聞いた。
「この悲鳴はミレイナか?」
その悲鳴が聞こえた方に向かう。そこには確かに彼女がいた。そして。
「アニュー!」
「動かないで」
そのアニューがミレイナを左手で自分の方に抱き寄せその頭に銃を当てていた。ミレイナはその両手で必死に逃れようとするが彼女の力はあまりに強かった。
「動けばこの娘の命はないわ」
「何を言ってるんだ?」
ロックオンは最初彼女の言葉の意味がわからなかった。
「御前はプトレマイオスの。それに俺達は」
「私はイノベイターよ」
だがここでアニューは言った。
「だから貴方とは」
「馬鹿を言え」
ロックオンはまずは彼女の言葉を信じなかった。
「俺達はあの時確かに」
「言った筈よ」
しかしアニューの言葉は頑なだった。
「私はイノベイターよ。人間ではないわ」
「イノベイターだっているのかよ」
「そうよ」
また言うアニューだった。
「私はね」
「馬鹿な、そんなことが」
「この娘を死なせたくなかったらわかるわね」
「プトレマイオスを出るつもりか」
「そうよ」
こう答えるのであった。
「そうしたらこの娘は解放してあげるわ」
「くっ」
ロックオンは半ば無意識のうちに腰の銃を抜いた。それでアニューを狙った。
「そう来たらな。俺だってな」
「貴方に私が撃てるの?」
しかしアニューはそのロックオンに対して問うのだった。
「この私が」
「何っ!?」
「撃てるのなら撃つといいわ」
また言うアニューであった。
「私をね」
「じゃあ俺も聞こうか」
ロックオンはどうしても引き金を引けなかった。しかしここで彼もまたアニューに問うのだった。
「御前が俺が撃てるのか?」
「何ですって?」
「御前に俺が撃てるのか?」
こうアニューに問うのだった。
「俺がな」
「撃てると言えば?」
「じゃあ撃ってみろ」
アニューを見据えての言葉だった。
「本当にな」
「わかったわ」
クールな言葉でロックオンにその銃を向けた。そのうえで撃とうとする。
しかしだった。引き金にあてた指が動かなかった。どうしてもだ。
「くっ・・・・・・」
「撃てないな」
ロックオンは苦い顔になった亜ニューに対して言った。
「御前も俺を撃てない。俺が御前を撃てないようにな」
「それは」
「戻って来るんだ、アニュー」
ここでロックオンはまた言った。
「ロンド=ベルに。俺達のところにな」
「馬鹿なことを言うわね」
アニューは今のロックオンの言葉を否定しようとした。
「私はイノベイターよ」
「それがどうしたっていうんだ?」
「イノベイターは神よ。神が人間のところに戻れですって?」
「いや、御前は人間だ」
しかし彼はまた言った。
「御前はイノベイターだ。だが人間なんだ」
「人間?私が」
「だから御前は俺を愛したし俺も御前を愛した」
こうも言うのだった。
「だからなんだ。御前も人間なんだ」
「うう・・・・・・」
「さあ、戻って来るんだ」
また言うのであった。
「俺のところに」
「戻ることなんてできないわ」
だがアニューは彼の言葉を拒んだ。
「私には。それは」
「じゃあどうするつもりだ?」
「貴方は私を撃てない」
またこのことをここで言った。
「だから今は」
「行くのか」
「この娘は返してあげるわ」
こう言って実際にミレイナは解放した。彼女はすぐにロックオンの方に駆け寄ったのだった。
「危なかったな」
「怖かったですよ」
ロックオンの後ろにすぐに隠れての言葉だった。
「本当に」
「わかる。しかしだ」
ロックオンは半分は彼女に、もう半分は彼女に告げた。
「御前は最初から殺す気はなかったな」
「私に言っているのね」
「ああ、そうだ」
アニューに対する言葉だった。その半分は。
「御前は最初からミレイナを殺すつもりはなかった。そうだな」
「道具だからね」
こう返すアニューだった。
「道具を壊す予定はなかったから」
「違うな。ミレイナを知っていたからだ」
こう返すのだった。
「だから御前はミレイナを殺さなかった。いや、殺せなかった」
「殺せなかった、私を」
「そうだ。違うか」
あらためてアニューに告げた。
「違うというのなら否定してみるんだな」
「否定はしないわ」
アニューはあえて感情を消して言葉を返した。
「それじゃあ」
「行くんだな」
「そうよ」
わざと素っ気無く返した今の言葉だった。
「イノベイター達のところに帰るわ」
「御前の仲間達のところにか」
「・・・・・・ええ」
一応頷きはしてみせた。
「そうよ」
「それが御前の仲間ならいいんだがな」
ロックオンはここでこう言った。
「御前の仲間は」
「仲間じゃないわ」
ロックオンのそれからの言葉はこれで打ち消した。
「貴方は。何でもないわ」
「そうかよ。じゃあ行くんだな」
最後にこう告げて別れる。アニューはそのままプトレマイオスの格納庫に向かう。そしてモビルスーツの一機を奪取してそのままプトレマイオスを出るのだった。
「けれど」
プトレマイオスを離れながらも振り向いて。言うのであった。
「・・・・・・好きだから」
こう言って離れている。その彼女の前に四機のガンダムがいた。
「よし、来たな」
「少し遅れていたね」
「少しね」
ヨハン達がそこで話していた。
「少しじゃないわよ。随分遅かったじゃない」
「まあ落ち着けよ」
不平を言うネーナを宥めるミハエルだった。
「これがここでの僕達の仕事なんだからな」
「仕事ね。こんな仕事やりたくないわよ」
忌々しげに言うのだった。
「ただの迎えなんて」
「そう言うな。僕達の雇い主だ」
今度はヨハンが彼女に言った。
「雇い主の命令には従わなくてはならない」
「そういうことだな」
共にいたアリーもここで話に入って来た。
「俺達はクライアントに従わないとな」
「あたしはあたしよ」
だがネーナはこう返すのだった。
「あたしはね。好きなように戦いたいのよ」
「好きなようにか」
アリーは彼女の言葉を聞いてシニカルな笑みを浮かべた。
「俺もそういうのは嫌いじゃないけれどな」
「嫌いじゃないが、だな」
「そうさ。従う命令には従うさ」
こうヨハンに返すのだった。
「そういうことだよ」
「納得できないけれどね」
まだこう言うネーナだった。
「まあいいわ。あいつを迎えるだけでいいから」
「そんなことを言っているうちに来たよ」
ミハエルがネーナに告げた。
「それじゃあ」
「よし、合流する」
ヨハンがアリーを含めた三人に告げた。
「それでいいな」
「ああ、いいせ」
アリーが賛成の言葉を出す。そして今。アニューと合流した。しかしここで。
「!?」
「レーダーに反応だぜ」
ミハエルとアリーが最初に気付いた。
「どうする?」
「五機いるぜ」
「五機か」
ヨハンはそれを聞いて考える目になった。それからすぐだった。
「よし、アニューを先に向かわせる」
「その間僕達で戦うんだね」
「それが仕事だからな」
こう割り切った声でミハエルに返した。
「だからだ」
「わかったよ。それじゃあ」
「やってやるわよ」
戦いとなると急に目の色が変わるネーナだった。
「誰であろうとね。潰してやるわよ!」
そうして一気に突っ込む。その彼女の前に出て来たのは。
「いたわね、そこに!」
「!?あんたは」
「パパとママの固き!」
ルイスだった。レグナントを駆りネーナに一直線に向かって来たのだ。
そしてビームサーベルを繰り出す。しかしそれは受けられてしまった。
「この程度でやられないわよ!」
「うっ!」
「パパとママの仇ですって!?」
憎悪に燃えたような言葉だった。
「それがどうしたっていうのよ!」
「えっ!?」
「戦争やってんのよ!」
ネーナは言うのだった。
「それで殺されて文句言わないでよ!」
「あの時私は普通にパーティーにいたわ」
ルイスは両親を亡くした時のことを思い出していた。
「けれど私は。急に出て来たガンダムの攻撃で」
「はぁ!?何馬鹿言ってんのよ」
ネーナはルイスの今の言葉を一笑に伏した。
「金持ちが鬱陶しかっただけよ」
「鬱陶しかった」
「そうよ。あたし達が戦争やってるのに自分達だけ平和にパーティーなんかしてね」
こう言うのであった。
「それが鬱陶しかったから攻撃してあげただけよ」
「それだけでパパとママを」
ネーナの手前勝手な言葉はまずはルイスを唖然とさせた。しかしであった。
次の瞬間彼女の怒りが爆発した。遂にであった。
「許さない!」
言葉が荒くなっていた。
「許さない!そんな理由でパパとママを!」
「あんたもそうしてやるわよ!」
ネーナはその牙をルイスにも向けようとしていた。
「さあ、ここで死になさいよ!」
「死ぬのはあんたよ!」
間合いを離しビームを放つ。しかしルイスはそれを左右にかわした。
そのうえでルイスも反撃を加える。だがこちらもかわすだけだった。
「こんなの当たるわけないでしょ」
「くっ・・・・・・」
「さあ、あんたも死になさい」
血に餓えた目になっていた。
「そのパパとママの一緒のところにね!」
二人の戦いの側ではグラハムがマスラオを駆っていた。彼が闘う相手はヨハンのフローネアインであった。彼等も闘っていた。
「貴様だな」
グラハムは両手に持つ剣で攻撃を仕掛けながらヨハンに問うた。
「四年前地球連邦北米司令部を攻撃したのは」
「そうだと言えばどうする?」
「斬る」
返答は一言だった。
「我が恩人の仇、今ここで」
「あの時連邦軍は色々とあった」
こう言うヨハンだった。
「氾濫勢力に雇われていた。だからだ」
「攻撃したというのか」
「それだけだ」
実に素っ気無い言葉であった。
「わかったな、これで」
「事情はわかった」
こう返すグラハムだった。
「しかし」
「しかし。何だ」
「貴様を許すことはできない」
これがグラハムの言葉だった。
「だから貴様はここで倒す。いいな」
「では倒してみせるんだね」
ヨハンの返す言葉は動いたものではなかった。
「僕をね」
「参る・・・・・・」
その刃と刃が交差する。そしてミハエルはパトリックと戦っていた。
「俺もいるからな!」
「貴方も確か連邦軍の」
「そうさ。不死身のパトリックだ」
自分で言うのであった。
「覚えておくんだな」
「一応覚えておくよ」
彼もまたあまり感情のない返しだった。
「それはね」
「ここで一機倒せばそれで」
ここで言うパトリックだった。
「大佐の覚えが目出度くなるからな」
「大佐?」
「俺の女神さ」
こんなことも言うのであった。
「我が女神の為に安心して倒されるんだな!」
「訳がわからないけれどそういうわけにはいかない」
冷静に返すミハエルだった。
「僕もね」
「どっちにしろ倒してやるぜ!」
パトリックだけテンションが高い状況だった。
「そして大佐の前に勝利報告だ!」
「いい加減にしろ」
通信を入れたのはカティだった。
「戦闘中に何を言っている」
「あれっ、大佐」
「声は筒抜けだったぞ」
今度はこう言うのであった。
「全てな。何を考えている」
「何をって。ですから」
「真面目に戦争をしろ」
きつい言葉であった。
「わかったな。真面目にだ」
「ですから俺は真面目に」
「私は女神でも何でもない」
やはりこのことを言うのであった。
「わかったら真面目にしろ。いいな」
「わかりましたよ。素直じゃないんだから」
「馬鹿を言え!」
今度は荒い言葉であった。
「誰が素直ではないだ!私は貴様なぞな!」
「わかってますって。それじゃあ」
「・・・・・・死ぬな」
これもカティの言葉である。
「いいな。死ぬな」
「わかってますよ。俺は不死身なんでね」
「その言葉だけは信頼させてもらう」
こんなことも言うカティだった。
「だが私をあまり心配させるなよ」
「わかってますって。それじゃあ」
こうしたやり取りの後でミハエルにまた向かうのだった。そして刹那はアリー、そしてロックオンの二機を相手にしていた。
「ここは通るわけにはいかないんでな」
「どけ」
刹那は彼に一言で告げた。
「邪魔だ」
「そうさ、俺は邪魔をする為にいるんだよ」
全く悪びれない言葉であった。
「御前等をな。だから通すつもりはねえぜ」
「刹那。どうするんだい?」
共にいる沙慈がここで刹那に問うた。
「このままじゃイノベイターに」
「わかっている」
彼にも一言で返す刹那だった。
「それも」
「じゃあここは」
「ロックオン」
刹那はロックオンに声をかけてきた。
「御前は先に行け」
「いいのか?」
「追え」
こう彼に言うのである。
「彼女をだ。行きたいのだな」
「いや、俺は」
「隠すことはない」
こうも彼に言ったのであった。
「顔に書いてある」
「おい、隠しても何も」
「いいから行け」
これ以上は言わせないといった態度であった。
「いいな。行け」
「・・・・・・わかった」
刹那の言いたいことはわかっていた。ならばであった。
「悪いが言葉に甘えさせてもらうぜ」
「一人一機だから当然のことだ」
一応そういうことにする刹那であった。
「だからだ。行け」
「ああ、わかったぜ」
ロックオンは刹那の言葉を受けて向かおうとする。しかしその前にアリーが立ちはだかろうとする。そしてそのうえで言うのであった。
「生憎だが行かせるわけにはいかなくてな」
「それは安心しろ」
しかし彼の正面に刹那が来たのであった。
「御前の相手は俺だ」
「手前だけで俺の相手をするっていうのか?」
「それも違う」
ここでも彼の言葉を否定するのであった。
「今の俺は一人ではない」
「どっからどう見たって一人なんだがな」
「こいつがいる」
ここでこうも言うのであった。
「今は沙慈が俺と共にいてくれている」
「刹那・・・・・・」
沙慈も今彼の心の言葉を聞いたのであった。思わず呆然となってしまった。
「僕のことを」
「行くぞ」
今度は一言であった。
「そして倒す」
「うん。それじゃあ」
「少なくともロックオンのところには行かせない」
それは絶対なのであった。
「いいな」
「わかったよ。ロックオンの為にも」
「一人の心を適えられなくて人類の平和を守ることはできない」
彼は言った。
「人類の平和もだ」
「そうだね。ロックオンを行かせられなくてはね」
「行くぞ」
二人でアリーに向かう。その右手に巨大なビームサーベルを出して。
彼等はアリーと戦いその動きを止めた。そしてロックオンは遂に彼女に辿り着いたのであった。
「待てよ」
「くっ、来たというのね」
「何処に行くつもりなんだ?」
こう彼女に問うのであった。
「一体何処に行くつもりなんだ」
「言った筈よ。帰るべき場所よ」
ここでもこう言うアニューだった。
「私の帰る場所にね」
「それならそこじゃない」
しかしここでロックオンは言った。
「御前の帰るべき場所はそこじゃない」
「変なことを言うわね。私はイノベイターよ」
この話がまた為されることになった。
「それでどうしてそんな戯言を言うのかしら」
「戯言だと思っているのか?」
ロックオンはその言葉を否定してみせた。
「御前はそんなふうに」
「当然よ。私はイノベイターよ」
まだこう言うのであった。
「人間じゃないわ。どうしてそれで」
「いや、御前は人間だ」
だがまだこう言うロックオンだった。
「御前は人間なんだ。俺と同じ人間なんだ」
「まだそんなことを言うの」
「帰ってくるんだ」
彼は言うのだった。
「イノベイターのところが御前の帰る場所じゃないんだ」
「まだそんなことを言うの?」
「何度でも言ってやるさ」
実際にそのつもりだった。
「御前の帰る場所はロンド=ベルだ。そして」
「そして?」
「俺のところにだ」
言い切った。
「俺のところにだ。来るんだ」
「貴方のところに」
「ああ、ここだ」
そして何とここで。そのコクピットを空けたのだった。ロックオンの姿が丸見えだった。
「来い、アニュー」
また言った。
「俺のところにな。帰ってくるんだ」
「何でまだそんなことを言えるの?」
アニューの声が震えていた。
「それで何で。そんなことができるの?」
「決まってるだろう」
言わずもがな、といった返答だった。
「俺は御前が好きだ。だからだ」
「だから」
「早く帰って来い」
ロックオンの言葉も態度も変わらない。
「俺のところにな」
「いいのかしら」
精一杯の強がりの言葉だった。
「コクピットをそんなに空けて」
「コクピットをか」
「そうよ。撃つわよ」
その強がりの中でまた言うのであった。
「貴方をここで撃てば貴方は確実に私の手で」
「いや、御前は撃てない」
このやり取りも繰り返されることになった。
「御前は。俺を撃てない」
「どうかしら。それは」
「俺も御前を撃てない」
実際に構える動作はなかった。何一つとしてだ。
「絶対にな。御前と同じだ」
「ううう・・・・・・」
「それに俺は」
「俺は?」
「御前になら撃たれてもいい」
こうまで言うのだった。
「御前にならな。だから来るんだ」
「私は・・・・・・私は」
「いや、イノベイターでも人間だ」
これがロックオンの言葉だった。
「わかってるだろう?イノベイターだろうが何でもな。人間なんだ」
「人間・・・・・・」
「イノベイターとかそういうのは関係ないんだよ」
ロックオンはこのことが確かにわかっていた。
「ロンド=ベルを見ろ。色々な奴がいるな」
「ええ」
これはロンド=ベルにいればすぐにわかることだった。
「御前もそういった連中と同じなんだよ。人間なんだよ」
「私が。人間・・・・・・」
「心さえ人間ならそれで人間なんだ」
はっきりと言い切ったのだった。
「だから御前は人間なんだ。俺と同じなんだ」
「私も貴方と・・・・・・」
「だから来い」
また言った。
「俺と一緒に帰って来い。一緒にロンド=ベルに帰るんだ」
「・・・・・・・・・」
「そんなコクピット空けろ。そして来るんだ」
「私は・・・・・・私は」
「来い!」
言葉が強くなった。
「俺のところにだ。来るんだ」
「行けない」
しかしだった。アニューは首を横に振った。
「私は。行けないから」
「御前が行けないのなら」
何とここで。ロックオンは動いた。コクピットから離れたのだった。
そしてアニューのコクピットを空けたのだった。そうして中にいる彼女を出して。自分の腕の中に抱いてみせたのであった。
「えっ・・・・・・」
「御前が行けなかったら俺が引っ張ってやる!」
そして言うのだった。
「俺がだ!こうして引っ張ってやる!」
「ロックオン・・・・・・」
「だから帰って来い!俺の中に!」
その言葉は変わらなかった。
「それが嫌なら今すぐに俺の腕を振り解け!いいな!」
「そんなこと・・・・・・」
振り解こうとだった。しなかった。できなかった。
「できたら。私だって・・・・・・」
「できないのか?」
「貴方が嫌いだったらできたわ」
それだったらである。
「けれど。今の私は」
「できないのかよ」
「できないわ。だから」
「なら来い」
彼は言った。
「俺のところに。ずっと一緒だ」
「ロックオン・・・・・・」
最早拒めなかった。今の彼女は。
ただそっと彼のその胸に寄り添うだけだった。今出来るのはそれだけだった。
ロックオンはそのまま刹那達のところに戻る。彼等はまだ戦闘を行っていた。
その中で、であった。刹那が彼に問うたのだった。
「どうだった」
「何もできなけりゃ帰ってたさ」
こう返すロックオンだった。
「それでわかるな」
「わかった。では帰るぞ」
「ああ、それじゃあな」
「恋ってのはな。実るものなんだよ」
ここでこう言ったのはパトリックだった。
「それじゃあな」
「ああ、帰るか」
ロックオンがそれに応えた。こうして彼等は帰るのだった。帰り際に追いすがろうとするアリー達を刹那がその巨大な剣を振るって退ける。その隙に撤退した。
「それで王子様は目出度くお姫様をってわけね」
「ええ、そうよ」
マリューがスメラギに応えていた。
「目出度くね」
「そう。ハッピーエンドだったの」
二人はこう話をしながら微笑んでいた。
「それは何よりよ」
「よかったわ。一時はどうなることかって思ったけれど」
「あら、私は安心してたわよ」
だがここでミサトはこう言うのであった。彼女達はそれぞれビールを飲みながら話している。
「ああいう恋はね。絶対に実るのよ」
「ふふふ、そういえばそうね」
マリューもミサトのその言葉を受けて微笑んだ。
「シン君とステラちゃんもそうだったしね」
「あの二人もそうだったらしいわね」
それを聞いて微笑むスメラギだった。
「何か色々と大変だったらしいけれど」
「シン君はね。凄く一途だったのよ」
ミサトはその時のことを思い出して笑顔になっていた。
「ステラちゃんを何とか助けようって必死になって」
「何か化け物みたいに巨大なガンダムに一機で突っ込んでだったのよね」
「そうそう。それで間一髪ステラちゃんを助け出して」
自然に言葉がうわずっているミサトであった。
「危ういところをね」
「シン君が一途なのはわかるわ」
それはよくわかるスメラギだった。
「けれどそれと同じことがここでも起こるなんてね」
「奇跡はね。幾らでも起こるものなのよ」
一緒にいるリツコの言葉だ。
「それを起こすのは人間だからね」
「そう。人間だからね」
「だからできたのよ」
また言うリツコだった。
「ロックオン君もね」
「それでどうするの?」
ミサトはスメラギにあらためて問うてきた。
「彼女のことは」
「アニューちゃんのことね」
「どうするの?それで」
また問うのであった。
「彼女は」
「どうするのかって?」
「だから。脱走したってことになるけれど」
今のところアニューはそうした扱いなのであった。
「一応はだけれど」
「実情はもっと複雑ね」
マリューが述べた。
「ちょっちどころじゃなくね」
「まあスパイでもあるし」
それはスメラギもよくわかっていることだった。
「イノベイターのね」
「裁判にかけることもできるけれど」
また言い加えてきたミサトだった。その顔は微妙に笑っていた。
「どうするのかしら。それは」
「そうね。それも悪くないけれど」
スメラギも微妙に笑ってみせてきた。
「それはしないわ」
「しないの」
「アニューはロックオンに説得されて戻って来た」
こう言うのである。
「それで終わりよ」
「じゃあ処分は?」
「どうするの?」
マリューとリツコがそれに問うた。
「死刑はないみたいだけれど」
「それでも処分はしないといけないわよ」
「暫く謹慎してもらうわ」
ここでも微笑んで述べたスメラギだった。
「暫くね」
「そう。それで終わりなのね」
「ええ。話はそれで終わりよ」
本当にそれで終わらせるというのであった。
「それじゃあ」
「ええ、話も終わったし」
「後はいつも通り」
「飲みましょう」
四人はあらためてビールを飲みはじめるのであった。
そしてその中で。それぞれ真っ赤な顔でつまみも食べながら話すのだった。
「それでどうなのよ」
「どうなのって?」
「だから。あんたとビリー君のことよ」
ミサトはその口からスルメの足を出しながらスメラギに問うてきていた。その右手にあるのは缶ビールである。当然それは開けてある。
「どうなのよ。一体」
「どうなのって」
「マネキン大佐とコーラサワー少佐みたいにいってるわけでもなさそうね」
「ああ、あの二人も」
マリューはそのカップルについて言及した。
「あの二人も結構以上に熱いわよね」
「そうよね。それもかなりね」
「少佐が一方的にね」
「けれどすぐにわかるのよね」
ミサトはかなり楽しそうに笑っていた。
「大佐もまんざらじゃないってね」
「それは当然でしょう?」
マリューはすぐに彼の言葉に突っ込みを入れた。
「あれだけ熱烈なアプローチを受けたらね」
「あれで転ばない人はいないわ」
リツコもそう言うのだった。
「もうね。流石にいないわ」
「少佐って性格はあれだけれど」
ミサトは少し酷いことを言いもした。
「顔はいいし嘘はつかないしひねくれたところもないし」
「少しあれなだけね」
マリューがここでまた言った。
「性格っていうか頭が」
「優れたパイロットなのにね」
リツコもそんなパトリックが案外嫌いではないようである。その言葉も表情も極めて好意的なものであった。その顔を見せていたのだ。
「本当に不死身だし」
「まあうちの部隊ってねえ」
ミサトは腕を組んで微妙な苦笑いになっていた。
「結構以上にタフな子が多いしね」
「キラ君だって凄いしね」
リツコはキラの名前を出した。
「撃墜されそうになってもそこからが」
「そういえばケーニヒ少尉も」
マリューはアークエンジェルでもう長い付き合いになっている彼のことを思い出したのだった。
「一回あれで完全に死んだって思ったわよ」
「ニコル君もね」
その時に死に掛けたのは彼だけではなかったのだ。
「よくあれで生きていたわよね」
「不死身なのはいいことだけれど」
こうリツコの言葉に返しはするミサトだった。
「パイロットがそれだけ増えてくれるし」
「不条理なまでに不死身な人もいるし」
「そうそう、あのおじさん」
マリューがここで名前を出した人物とは。
「マスターアジア。あの人なんかもう特に」
「あっ、あの人だけれど」
スメラギもマスターアジアに対して三人に問うた。
「確かこちらの世界に自分の力で来たのよね」
「ええ、そうよ」
実にはっきりと答えたリツコであった。
「あの人ならそれができるし」
「殆ど化け物ね」
「殆どじゃなくて完全にそうなのよ」
これまた身も蓋もないリツコの言葉だった。
「あの人は」
「ううん、そっちの世界も常識外れな人が多いわね」
「まああの人は特別だから」
一応こう言いはするミサトだった。
「あのドイツの人もね」
「シュバルツ=ブルーダーね」
「とにかくあの人達は特別だって考えて」
またスメラギに告げるミサトだった。
「そうね」
「わかったわ。じゃあそう考えさせてもらうわ」
「それでだけれど」
ミサトはここまで話してから話を元に戻すのだった。
「あんたはどうなのよ」
「だから私が?」
「そう、ビリー君とね」
「実な何もないの」
こう返したスメラギだった。
「私達何もないわよ」
「あら、面白くないわね」
「面白くなくても本当よ」
また話すのだった。
「私達は何もないわよ」
「あんたって結構奥手なのかしら」
「別にそのつもりはないけれど」
自分ではこう考えているスメラギだった。
「私自身はね」
「じゃあその話は気長に待たせてもらうわ」
ミサトはこう言ってまた楽しそうに笑った。
「じっくりとね」
「それじゃあまずは」
「ええ、今は」
「楽しくね」
こう話しながらまたビールを口に入れるのだった。
「そうしていざ次の戦いに」
「英気を」
そう理由をつけて飲むのであった。彼女達も何だかんだで仲良くやっているのであった。

第百四十九話完

2009・9・13
 
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