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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百三十一話 見抜いた罠

           第百三十一話 見抜いた罠
       「よいか!」
「はい!」
参謀達がシンクラインの言葉に応えていた。
「このトラップであの者達を倒す」
「まずは罠でですか」
「そうだ。既に土星までの道に数多くの罠を仕掛けたな」
「はい、それは」
「もう既に」
皆すぐに彼の言葉に頷いてみせる。
「機雷も置きましたし」
「エネルギーや弾薬を吸収する装置も」
「そしてあれも」
「よし、ならばいい」
彼は参謀達の言葉を聞いて満足そうに笑った。
「後はあの者達が罠にかかるのを待つだけだ」
「そうですね。それだけです」
「そして罠にかかった時にだ」
「一斉に攻めよ」
まさに隼人の読みそのままであった。
「罠にかかったその時にな」
「わかっております。それは」
「既に備えています」
「そしてだ」
彼はここでまた部下達に対して問うのだった。
「全宇宙から集めている軍はどうなっているか」
「はい、三億です」
「それだけ集まりました」
「三億だと!?」
シンクラインは三億と聞いて顔を顰めさせた。
「少ないな。何故だ?」
「近頃各区域で反乱が頻発しています」
「それへの抑えとして」
「くっ、奴隷共がか」
彼はそれを聞いてすぐにその原因を察した。
「愚かにも反乱を起こしているのか」
「そうです、ですから」
「本来は全軍、十億を集められるのですが」
「反乱にはいつも通りにせよ」
シンクラインはこう命じた。
「殲滅だ。一人も生かすな」
「はい、わかりました」
「それは」
参謀達も彼の言葉に頷き返礼する。
「いつも通りします」
「そのように」
「そうだ。そしてだ」
彼はまた言うのだった。
「その三億でロンド=ベルを討つぞ」
「はい」
「それでは」
「まずは一億だ」
これだけ出すというのだった。
「罠にかかったところを一億の軍で攻めよ」
「それで殲滅しましょう」
「必ずや」
「クロッペンとテラルに伝えよ」
彼は二人の名前も出すのだった。
「指揮は御前達が執れとな」
「はっ、それでは」
「御二方にも」
「そしてアフロディアもいたな」
彼女のことも思い出したように言う。
「あの女も前線に復帰させよ」
「アフロディア司令もですか」
「そうだ。そして三人に伝えよ」
「何とですか?」
「これが最後だとな」
その紫の顔が邪に歪んだ。
「失敗すれば命はないとな。よいな」
「わかりました」
「ではそのように」
「これでロンド=ベルは終わりだ」
そう言ってまた邪に笑う。
「遂にな」
「では殿下、すぐに」
「あの者達に伝え」
「そして一億だ」
とにかくその一億という戦力が言われるのだった。
「一億向けよ。よいな」
「はい、それでは」
「その一億の大軍もまた」
「所詮戦争は数だ」
彼はまだ全くわかっていなかった。
「一億ならば。勝てる!」
「はい!」
「その数で!」
彼等もまだわかっていなかった。そして何もわからないままで軍を向けた。そしてその頃ロンド=ベルは。順調に土星に向かっていた。
「敵はまだだな」
「ええ、まだ出て来ません」
エゼリアがヘンケンに述べる。
「それも全く」
「どうやら待っているな」
ヘンケンにもそれがよくわかった。
「我々が罠にかかるのをな」
「じゃあそろそろ罠にかかりますか?」
「いや、まだだ」
しかしそれはまだだと言うのだった。
「それはな」
「まだですか」
「そうだ、まだだ」
ヘンケンは今度はナタルに対して答えた。
「まだな」
「では何時に動かれるのですか?」
「そうだな。今のところ罠は見つけた」
それは既に見つけているのだった。ポイントもモニターに示されている。
「そこに行くぞ」
「そこにですか」
「ただしだ」
だがここで彼はまた言った。
「エネルギータンク等は全員に持っているな」
「はい、それは」
まずはこのことが確認される。
「既に全員に回しています」
「よし、何しろ数が多い」
ヘンケンが気をつけているのはそれだった。
「補給がなくては何にもならない」
「ですがそれだけでは駄目だと思います」
ナタルは冷静に述べてきた。
「それだけでは」
「そうだ。やはり数が多い」
またこのことが話される。
「数が多い。だが」
「だが?」
「何かあるのですか?」
エゼレアもそこで問うた。
「それで」
「敵のことも把握しておきたい」
彼が言うのはこちらだけではなかった。
「敵もだ。敵のこともな」
「敵ですか」
「そうだ、敵だ」
ヘンケンはまた言った。
「敵のこともわかっておかなくてな」
「ですが艦長」
ナタルはヘンケンの言葉に顔を曇らせる。
「敵は隠れています。そう簡単に把握はできません」
「そうです、隠れていることが彼等の作戦ですから」
ラーディッシュに乗っている八雲も話に加わってきた。
「それで見つけるというのは少し無理がありますが」
「勿論だ。それは今ではない」
ヘンケンはここでこうも言った。
「それに敵も姿を見せないのならこちらもそうしないか?」
「姿を見せない?」
「あの、艦長」
ナタルも八雲も余計に話が見えなくなっていた。
「それは無理があるかと」
「今回の作戦はあえて罠にかかってそのうえで姿を見せるのですから」
そこを誘い出すのである。
「それを姿を消しては」
「何にもなりませんが」
「だからだ。それは全軍ではない」
彼は面白そうに笑って述べるのだった。
「一部だ。あくまでな」
「一部ですか」
「そう、一部だ」
このことをくれぐれもといった感じで言ってきた。
「一部でしかない。それはな」
「一部?」
「といいますと」
「そうだな。戦艦は一隻だ」
ヘンケンは早速作戦の思考に入った。
「機動力のあるものがいいか」
「ではナデシコでしょうか」
「あれが一番いざという時間に」
「そしてそこに攻撃力と機動力のあるマシンを集め」
そしてそれもなのだった。
「そのうえで敵を襲う」
「敵を?」
「では別働隊として」
「ただの別働隊ではない」
彼はこうも言うのだった。
「まあそれはこれからのお楽しみということだな」
「ではそのお楽しみをお話してくれますか?」
キムは冷静に述べてきたのだった。
「ここで」
「おっと、やっぱりそう来たか」
ヘンケンはキムの今の突っ込みに思わず笑顔になった。
「しかし今話すのはな」
「私からも御願いします」
だがここでエマも言ってきたのだった。
「是非共」
「エマ君に言われると仕方がないな」
「やっぱり」
「こうなるのか」
八雲もナタルもヘンケンの顔が崩れたのを見て思わず言ってしまった。
「予想通りだけれど」
「何てわかり易い」
「要するに敵の後ろを衝く」
彼が言うのはそのことだった。
「しかも補給部隊をな」
「補給部隊をですか」
「こちらも補給を気にしているがそれは敵も同じだ」
補給なくして戦争はできない、そういうことだった。
「大軍なら余計に後方に大きな補給部隊が存在している」
「じゃあそこを狙って」
「その物資を奪って」
「そうしよう。それではな」
「はい、それでは」
「そのように」
こうして彼等は作戦に移るのだった。まず彼等の主力が罠に向かう。そうしてその動きを止めるネットにあえて嵌まるのであった。
「へえ、こいつは」
「そうですね」
「あれです」
その罠にかかったヤザンとラムサス、ダンケルがまず言った。
「俺達の使った蜘蛛の巣と同じだな」
「そうです、これは」
「電磁気を使っています」
こうそれぞれ言うのだった。
「だったらもうすぐに出ることはできるね」
「そうだな。何か思ったよりチャチな罠だな」
ライラとジェリドも言う。
「抜けるまで三分ってところかい?」
「二分もあれば充分だろ」
ジェリドはそう分析していた。
「こんなの」
「では二分の間はだ」
「本当に完全に動けないということね」
カクリコンとマウアーもその罠の中にいた。
「細かい動きはできるようだな」
「攻撃をかわす位はね」
「来ました」
彼等がそれぞれ分析している間にサラが言った。
「敵です」
「おい、全方向から来てんじゃねえかよ」
ケーンはレーダーを見て思わず叫んだ。
「しかも何だよこの数」
「おいおい、マジで帝国の全軍か?」
タップも呆れたように言う。
「この数はよ」
「一億だな」
ライトはマギーを確かめてから述べた。
「それだけだ」
「簡単に言ってくれるな、おい」
「一億って何だよ一億って」
「マギーちゃんは嘘つかないからな」
ライトは軽くケーンとタップに対して返す。
「なっ、マギーちゃん」
「そう、私は嘘つかない」
「しかも久し振りに声聞いたし」
「っていうかやけに冷静だな、マジで」
「だから慌てたって仕方がないさ」
また軽く言うライトだった。
「一億いても二億いてもそれ位はな」
「とりあえず一億か」
「洒落にならない数だけれど宇宙怪獣と同じだって思えばいいか」
「もっと来るぜ、奴等はよ」
オリファーがその彼等に告げてきた。
「だから注意しなよ」
「了解。っていうかオリファーさんあんた」
「別働隊には行かなかったんだな」
「ウッソも」
「はい、僕達はここに残りました」
そのウッソが三人に答える。
「向こうに行ったのはオーラバトラーやブレンです」
「そうか。それで残ってるのか」
「そうなんです。僕達は遠距離攻撃もできますから」
「じゃあ頼むぜ、その遠距離攻撃でよ」
「派手にな」
「派手にやらないと駄目みたいですね」
その一億の大軍が出て来たのだった。確かに物凄い数だ。
「この数は確かに」
「でもよ、見つけるものは見つけないとな」
ここで言ったのはオデロだった。
「敵の補給部隊な。それはわかったのかよ」
「ああ、今それもわかったぜ」
ライトがすぐに答えてきた。
「敵の後方にいるぜ。お決まりのパターンでな」
「よし、じゃあそっちに別働隊を向かわせるか」
「それでナデシコは?」
ナデシコについても話される。
「連絡はつくか?」
「何でしょうか」
秘密回線からルリが出て来た。
「連絡は私から御願いします」
「おお、ルリちゃん」
「それでそっちはどうなんだ?」
「安心して下さい、こちらは発見されていません」
ルリはこのことを彼等に話した。
「御安心下さい」
「よし、それならよ」
「そっちは任せたぜ」
「頼むぜ、ルリちゃん」
「お任せ下さい」
ルリはいつもの冷静さで彼等に言葉を返す。
「既に敵の補給部隊はこちらでも位置も数も把握しましたので」
「よし、じゃあ戦闘開始だな」
「来やがれ来やがれ」
彼等は今まさに大軍が来るのを待っていた。そうしてそのうえで。敵軍が姿を現わした。
「よし、攻めろ!」
「このまま押し潰せ!」
帝国軍は数を頼んで攻める。しかしであった。
「案ずることはありません」
「その通りです」
バルトフェルドがラクスの言葉に頷いていた。
「所詮は烏合の衆です」
「敵は大したことはない。落ち着いていけば問題はない」
「私達は焦らず敵を倒していけばいいのですから」
「ではラクス様、今回も」
「そうです。まずミーティアを発射して下さい」
今度はダコスタの言葉に応えるラクスだった。
「五つ全て」
「了解、ミーティア発射!」
みーティアは放つことができた。五つのミーティアがそれぞれのガンダムに向かう。そうしてそれが装着され。今五つのガンダムが一斉攻撃に入った。
「よっし!遠慮は最初からしねえぜ!」
「覚悟しろ!」
まずはディアッカとイザークが攻撃に入る。ミーティアのミサイルが派手に放たれそのうえで帝国軍を派手に火の玉に変えて消していく。
「やっぱりよ、俺にはフリーダムが一番合ってるな」
「ジャスティスでもバスターでもなくか?」
「いや、バスターはバスターで合ってるさ」
ディアッカはこうイザークに返しはする。
「要するにだよ。遠距離攻撃が合ってるんだよ」
「それか」
「そうさ。バスターも遠距離攻撃用だな」
「ああ、そうだな」
「そういうことさ。こうやってな!」
今度もまたミサイルを放って敵を叩き落していく。ミサイルがそれぞれ複雑な動きを見せ敵に迫りそのうえで次々と倒していくのだった。
「叩き落していってやるぜ!」
「そういえば俺もだ」
イザークもイザークでジャスティスを自在に操っていた。
「このジャスティスが肌に合ってるな」
「御前はバランスが取れたのが好きだからな」
「デュエルもそうだった」
やはりそれを出すのだった。
「ジャスティスもな。接近戦用の武器が確かに多いがな」
「しかし遠距離攻撃も可能だからな」
「そうだ。だから俺に合っている」
楽しそうに笑いながら彼もミーティアを使っている。
「一億だろうが二億だろうがやってやる!」
「おうよ、じゃあいつもの台詞だな!」
「あれですねディアッカ」
ニコルはデスティニーを操っている。彼もまたそのミラージュコロイドの機能をシンに匹敵する程に縦横無尽に使いこなしていた。
「あの言葉を」
「そうだ。グレイト!」
やはりこの言葉であった。
「派手に撃ち落としてやる。容赦はしねえぜ!」
「そうですね。じゃあ僕も」
デスティニーは罠にかかりながらも分身をしてみせる。そのうえで敵の攻撃をかわしそのうえで。とてつもない大きさのライフルで敵を薙ぎ倒すのだった。
「三人は大活躍ですね」
「はい」
バルトフェルトはまたラクスの言葉に応えていた。
「予想以上です」
「やはりあの三人があのガンダムに乗るべきでした」
ラクスも言う。
「その特性を考えれば」
「ストライクフリーダムにインフィ二ティジャスティスにインパルスデスティニー」
それぞれキラ、アスラン、シンが乗るガンダムだ。
「その三機が決まったならば残されたガンダムに乗るのは」
「そういうことですね。誰かに乗ってもらわないと」
「戦力が足りません」
こう言うのだった。
「ですから彼等に乗ってもらいました」
「そういうことですね。そしてあの三人なら」
「ガンダムの能力をキラ達に匹敵する程引き出してくれます」
ラクスはそれを読んで彼等に三機のガンダムを勧めたのである。
「そしてそれは」
「正解でした。おかげで一億いようともです」
「はい、充分に対抗できます」
実際に五機のミーティアの力は絶大でまさに戦略兵器であった。
「他にも多くの仲間達がいますから」
「いけますね」
「帝国軍はわかっていません」
ここでラクスの言葉が強くなった。その目は既にSEEDのものになっている。
「彼等は数のみを頼み人を見ていません」
「人を?」
「そうです。わかっていません」
今度はダコスタに対して述べた。
「戦いは兵器でする以上に人でするものです。そのことがです」
「それは確かにそうですね」
ジャックがラクスの今の言葉に応えてきた。
「帝国軍って無人機も凄く多いですし」
「正直言って動きは単調ですし」
「相手をするのは容易です」
フィリスとエルフィも言うのだった。
「この程度なら私達も」
「相手ができます」
「人を知らなければ戦争には勝てはしません」
ラクスは言い切る。
「そして」
「そして?」
「戦いを終わらせることもできません」
こうも言うのだった。
「そしてそこに光はありません」
「ということは」
「ガルラ帝国に未来はない」
「そういうことですか?」
「そうです」
ジャックとフィリス、エルフィに対して述べるのだった。
「間違いなく。それはありません」
「そうですね。帝国軍は」
シホもここで気付いた。
「人を奴隷として扱うだけですから。それでは」
「未来がある筈がありません。人は奴隷ではありません」
言いながら攻撃命令を出しその帝国軍を倒すのだった。
「奴隷は必ず立ち上がり。そして」
「圧政者を倒す」
「それだけだ」
ミゲルとハイネの言葉だ。
「所詮帝国の栄華なぞ徒花だ」
「崩れ落ちていくものだな」
「その通りです。帝国は所詮その程度です」
ミサイルが放たれ敵をまとめて撃墜していく。
「幾ら数が多くとも。何でもありません」
「ではラクス様、ここは」
「そうです。帝国軍を倒します」
バルトフェルドに応えながらさらに敵を倒していくのだった。
「そしてこの世界に真の平和をもたらします」
「了解、そろそろ動けるが動くな!」
バルトフェルトもわかっていた。
「敵を騙す。いいな!」
「了解!」
こうして彼等は敵を待ちそのうえで倒していく。帝国軍は攻めあぐねていた。ローザにもクロッペンにも、そしてテラルの間にも焦燥の色が見えてきていた。
「いかんな、これは」
「そうだな。一億で攻めようとも」
クロッペンはローザに対して険しい声を述べていた。
「攻めきれてはいない」
「むしろ押されている」
テラルも言うのだった。
「我が軍の方がな」
「どうする?」
ローザの声はさらに険しいものになっていた。
「ここは。より攻めるか」
「それしかない」
クロッペンも彼女と同じことを考えていた。
「ここはな。数で押し切る」
「ロンド=ベルがいる場所はあのポイントしかない」
テラルはこうとしか考えていなかった。
「それならば広範囲攻撃で一気にな」
「それはもうやっていますが」
「しかし」
カブトとプロザウルスがここで彼等に言ってきた。
「奴等は我等の攻撃を巧みにかわします」
「攻撃を寄せ付けません」
「ならば数多く放つのだ」
クロッペンの考えはこれしかなかった。それしか出せる状況ではなかった。
「よいな、それで」
「わかりました。それではやはり」
「数多く放ち」
「そうだ。それで倒せ」
また言うクロッペンだった。
「いいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
「では司令」
「それでですか」
ミズカとボイダーもクロッペンに述べてきた。
「補給部隊ですが」
「かなり後方に位置しています」
彼等が言うのは補給部隊についてであった。
「どうされますか?彼等は」
「やはり我等の方に」
「そうだな。寄せておけ」
クロッペンは補給部隊に対しても断を出すのだった。
「いざという時の為にだ」
「はい、それでは」
「そのように」
こうして彼等は補給部隊を動かそうとする。しかしその時だった。
「補給部隊動きました」
「はい」
ユリカがルリの言葉に頷いていた。
「それではナデシコも」
「このまま彼等を急追して捕らえます」
これが彼等の作戦だった。
「そのうえで補給物資を全て奪います」
「はい、それではこのまま」
「一斉に出撃です」
こうしてナデシコはすぐに出た。今まで隠れていたアステロイド帯から姿を現わしそのうえで一直線に敵の補給部隊に向かう。そこにいるのはバルキリーにエステバリス、それにオーラバトラー等から編成される機動力と攻撃力に秀でたマシンから構成される部隊であった。
「いいか」
「はい」
「何時でもです」
皆その先頭を行くフォッカーの言葉に応える。
「このまま行くぞ」
「そして敵の補給部隊をですね」
「撃墜しても撃沈してもいい」
それもいいと言うのだった。
「できれば優先的に捕獲していきたいがな」
「優先的ですか」
「そうだ。補給物資を手に入れれば後になって大きいからな」
それを自分達の為に使うというのだ。
「だからだ。いいな」
「わかりました」
アキトが彼の言葉に頷く。
「それじゃあこのまま」
「エステバリスはナデシコの近辺に展開しろ!」
これはエステバリスを考慮しての指示だ。
「そのままナデシコと共に突っ込め!」
「はい!」
「了解です!」
「バルキリーとオーラバトラーは俺に続け」
彼等に関してはこうであった。
「いいな、このまま突っ込むぞ」
「そして補給部隊を」
「奪うか沈めるんですね」
「これでこの戦いは俺達の勝ちだ」
フォッカーはこうまで断言するのだった。
「それでいいな」
「了解です」
「まずはだ。バルキリー全機に告ぐ!」
「はい!」
「じゃあまずは!」
「反応弾だ!」
それを使うというのだった。
「それで一気に数を減らすぞ。いいな!」
「わかりました!」
「じゃあそれで!」
「それで勢いを作ってだ」
フォッカーは冷静に戦局を見てきていた。
「一気に補給部隊を抑えるぞ。いいな!」
「ええ、それじゃあ!」
「やってやりますか!」
「撃て!」
全バルキリーが攻撃に入った。フォッカーの指示の下。
そしてそのうえで攻撃にかかる。反応弾が放たれる。反応弾がそれぞれ爆発を起こしそのうえで多くの敵を倒していく。そのうえで一気に敵の中に飛び込んだ。
「今だ!」
「突撃だ!」
オーラバトラーも来た。ショウはオーラソードを抜いていた。
「ショウ、こっちも一気にやるのね」
「数が多いのなら多いのでやり方がある!」
ショウはこうチャムに返すのだった。
「一気にだ。いいな!」
「それじゃあオーラ斬りで」
「やってやる!」
「いっけええええええええええ!!」
ビルバインがその剣を横に一閃させるとだった。それだけで多くの敵が撃墜されていく。そしてそのうえでビルバインも敵の中に飛び込む。そしてそれは彼だけではなかった。
「おいショウ!」
「トッド!」
「御前にだけいい格好させてたまるかよ!」
そのライネックを前に出させるのだった。
「俺だってな!」
「御前もか!」
「文句は言わせねえぜ」
トッドは焦ってはいなかった。ただライバル意識をいい方向に向けているだけだった。
「俺もな。聖戦士だからな!」
「で、どうするのよ」
「俺のオーラ斬り見て」
トッドもまた攻撃に入る。
「驚くんだな!」
こう言ってオーラ斬りを放つ。するとそれで彼もまた多くの敵を倒していく。トッドの実力もまたショウに匹敵していた。そして健在だった。
そしてそれは。彼等だけではなかった。
「今度は私が!」
「俺も行く!」
バーンとニーも出て来た。
「この程度の敵に遅れを取るようでは」
「どのみち平和を守ることはできない!」
彼等もまた攻撃を仕掛けるのだった。
「喰らえ、我がオーラ力!」
「存分にな!」
オーラバトラー達もその力を遺憾なく発揮させてきた。その後にナデシコとエステバリス隊が続く。ルリはその攻撃の中で言うのだった。
「これでこの戦いは決まりました」
「えっ、これでですか?」
「そうです、これでです」
こうハーリーにも述べるルリだった。
「これでこの戦いは決まりました」
「しかしそれでもですよ」
ハーリーは言うのだった。
「まだその数はかなり多いですけれど」
「確かに敵の数が多いです」
ルリがそれをわからない筈がなかった。
「ですがそれでもです」
「勝てるんですか」
「戦いは補給です」
ルリは常識を言った。
「補給がない軍がそれだけで終わりです」
「じゃあこのまま敵の補給部隊を押さえたら」
「終わりです」
また言うのだった。
「つまり今においてです」
「そうですか、それじゃあこのまま」
「そうです。補給部隊を奪い」
また言う。
「勝利を手に入れます。いいですね」
「わかりました。それじゃあ」
「このまま敵部隊に攻撃及び捕獲です」
ユリカも指示を出す。
「それでいいですね」
「はい」
ルリは今度は静かに彼女に答えるのだった。
「それで御願いします」
「わかりました。それでは」
「これでこのまま勝てたら」
ハーリーはここでまた言った。
「大きいですよ。一億に勝つんですよ」
「そうですよね」
彼の今の言葉にメグミが頷く。
「一億ですからね」
「一億。小さな戦力じゃないわよね」
ハルカは常識を言っただけだが事実だった。
「やっぱり」
「一億が小さい筈がありません」
ルリもそれを言うのだった。
「これで小さければです」
「一体どんな国なのか」
「そういうことになりますよね」
「確かにガルラ帝国は巨大です」
これまで何度も確かめられていることだ。実際に。
「ですがそれでもこれまで多くの戦力を失っています」
「地球で火星で月で木星で」
彼等とて無傷ではないのだ。
「そういうことですよね」
「はい、その通りです」
ルリは落ち着いた声でまたハーリーの問いに答えた。
「幾ら何でも尋常な数の減り方ではありません」
「じゃあやっぱりですよね」
ハーリーはルリの言葉を聞いてまた言う。
「今帝国はかなりダメージを受けていますよね」
「だからこそ戦力を集めてきているのです」
ルリはシンクラインの内心の焦りも察していた。
「余裕があればそこまでしません」
「ですよね、やっぱり」
「それは」
ハーリーもメグミもルリの今の言葉に頷く。
「焦っているからやっぱり」
「戦力を集めにかかりますよね」
「既にゴライオンとの戦闘や私達が来る前での戦闘でかなりの損害を被っているようです」
これは彼女達は実際には見てはいないのではっきりとは言えない。
「ですがそれでもです」
「ダメージを受けていたのは間違いない」
「そうですね」
「はい。無限の力はありません」
ルリはまた言った。
「このまま進めます。宜しいですね」
「ではこのまま」
「勝ちましょう」
「勝ちます」
ルリの今度の言葉は一言だった。
「攻めます。いいですね」
「わかりました」
こうして彼等は敵の補給部隊を奪取した。これは確かに大きかった。帝国軍はそれを見て一気に憔悴の色を見せる。そうしてそのうえで言うのだった。
「何っ、補給部隊が!?」
「奪われただと!?」
「馬鹿な!」
それを見て狼狽しない筈がなかった。
「補給部隊を奪われては我等は!」
「いかん、勝てないぞ!」
「どうする!?」
一億いた筈の大軍が狼狽しだした。そしてその狼狽は一気に全軍に拡がった。だがそれにより彼等は。隙を生じさせてしまったのだった。
「今です」
「はい」
バルトフェルドはラクスの今の言葉に頷いた。
「攻勢に出ます」
「いよいよってわけですね」
「敵が狼狽した今こそその時です」
今ここでラクスが席を立った。
「この戦いに絶対の勝利を収める時が来ました」
「では館長ここは」
「やるのねアンディ」
「その通りだ」
彼はダコスタ達の言葉にも頷くのだった。
「戦いに勝つのも時期が必要なんでね」
「そうです。そしてそれは何より」
やはりラクスの目はSEEDになっていた。その表情のない目はただ勝利だけを見ているのではなかった。その先にあるものを見ているのだ。
「平和を手に入れる為の戦いです」
「そう、その為に」
「勝たなければなりません」
ラクスの言葉が強くなる。
「戦わない、非戦、そうした言葉では平和は得られません」
彼女も立ってからわかったことだった。はっきりと。
「そしてそれを手に入れる為には」
「戦うしかないですからね」
「そうです。戦いを恐れず平和を愛するこの心がなければ」
ラクスの言葉は続く。
「平和を勝ち取ることはできません」
「ではエターナルはこのまま」
「突撃です!」
切り裂くような言葉になっていた。
「いざ勝利の為に」
「了解、行けーーーーーーーっ!」
二人の言葉と共に今エターナルは突撃する。そしてそのうえで戦うのだった。それは当然彼等だけではない。全軍が一斉に動きだしたのだった。
「何っ、ロンド=ベルが!?」
「動けるだと!?」
「馬鹿な!」
帝国軍は彼等が動きだしたことについても驚きの声をあげるのだった。
「何故だ、何故奴等が動ける!?」
「罠にかかったのではなかったのか!?」
「くっ、そういうことか」
しかしここでローザが歯噛みしつつ言うのだった。
「罠だ」
「罠!?」
「そうだ、罠だ」
彼女はこう部下達に対して話した。
「我等は罠にかかったのだ」
「どういうことですか、それは」
「罠をかけたのは我々では?」
「それが違ったのだ」
今それがわかったのだ。
「奴等はあえて罠にかかりそのうえで我等をおびき出したのだ」
「おのれ、何と狡猾な」
「そこまで考えていたというのか」
「恐ろしい者達だ」
ローザもこう言うしかなかった。
「罠にかけたつもりがな。逆にこうなるとはな」
「どうしましょう、これは」
「この事態は」
「すぐに態勢を立て直せ」
ローザは冷静に指示を出した。
「そしてそのうえでだ」
「そのうえでまたですね」
「また戦うと」
「その通りだ」
彼女の考えは既に決まっていた。
「再びロンド=ベルを討つぞ」
「ではまたすぐに」
「向かいましょう」
「クロッペン、テラル」
「うむ」
「わかっている」
二人もまたここで言うのだった。
「ここはそれしかない」
「このままでは総崩れになってしまうぞ」
「今既に二割が倒された」
つまり約二千万がだ。最早ロンド=ベルの強さは彼等の予想を遥かに超えるものになってしまっていた。
「このまま手をこまねいていればそれこそ」
「我が軍は手遅れになってしまうぞ」
「わかっている」
ローザもそれはよくわかっているのだった。
「だからこそだ。ここでだ」
「態勢を立て直し」
「再びロンド=ベルを討つ」
「そうだ。だからまずは退く」
ローザはこのまま一旦退こうとした。しかしその時だった。
「馬鹿者!」
「なっ、陛下!」
「何故ここに!?」
「私は常に監視していることを忘れるな!」
彼はローザだけでなくテラルとクロッペンに対しても言うのだった。
「貴様等のことはな。だからだ」
「では陛下、ここはすぐに」
「一旦退きそのうえで」
「そのようなことは許さん!」
こう言ってそれを許そうとはしない。
「このまま戦え!そしてだ」
「そして?」
「補給部隊を奪還せよ!」
こう命令するのだった。
「あれは我が軍の貴重な物資だ。敵の手に渡すな!」
「ですが殿下」
ここでクロッペンが彼に告げた。
「最早あれを奪還することは」
「不可能だというのか?」
「そうです」
彼はこう見ているのだった。
「ですからここは。諦めて」
「そうです、殿下」
テラルも言うのだった。
「それよりも今は態勢を立て直すべきです」
「そしてそのうえで」
「余の命令だ!」
だがシンクラインはあくまでこう叫ぶのだった。
「余の命令に聞けぬのなら死罪だぞ!」
「うっ・・・・・・」
「くっ・・・・・・」
彼等もこう言われては黙るしかなかった。まさに切り札であった。
「わかったな。ならばすぐに補給部隊を奪還せよ!」
「わかりました。それでは」
「そのように」
「よいな。そしてだ」
彼はまた言うのだった。
「失敗すれば。わかっていような」
「はい、それは」
「よく」
帝国軍の軍律はもう言うまでもなかった。
「わかっていればよい。それではだ」
「はい」
「それでは」
シンクラインはモニターから姿を消した。しかしそれで話は終わりではなかった。
「困ったな」
「これでは。敗れるぞ」
三人はそれぞれ暗い顔を見せていた。
「最早補給部隊の奪還は不可能だ」
「既に我が軍の狼狽はかなりのものだ」
実際に前線を預かっているからこそよくわかることだった。
「それなのにここでその作戦は」
「不可能だ」
「だが。殿下の御命令だ」
こう言うのはローザだった。
「それを聞かないわけにはいかない」
「それはその通りだ」
「聞かなければ我等だけに留まらない」
帝国は時として縁者や部下達にまで処罰を及ぼすのだった。
「だからだ。ここはな」
「その通りにするしかないのだな」
「そうだ。行くぞ」
ローザが二人を促す。
「このままな」
「わかった。ではな」
「補給部隊の奪還に向かおう」
こうして彼等は補給部隊の奪還に向かう。しかしそれで戦力を分散させしかも狼狽させたままであった。これがどれだけ危険なのかは言うまでもなかった。
「よし、今だ!」
大河がここで叫んだ。
「このまま一点集中攻撃を仕掛けるぞ!」
「集中攻撃。そうだな」
火麻もここで言うのだった。
「それで一気に補給部隊と合流しようぜ。それだな!」
「その通り。では諸君!」
大河はここでまた指示を出すのだった。
「まずは敵中を突破しそのうえで自軍と合流する。いいな!」
「了解!」
「潰してやるぜ!」
一気にそのまま敵中の突破にかかった。それはまさに帝国軍にとっては悪夢だった。
「へへへ、的には困らないぜ」
「おら、どけどけ!」
ケーンとタップがここぞとばかりに前にいる敵を蹴散らしていく。
「邪魔だ!俺の撃墜数になりやがれ!」
「慌てて動きが鈍くなってるぜ!」
「それは確かにな」
ライトも冷静に攻撃を放っていた。
「動きが丸見えだな。戦術も何もないんじゃないのか?今は」
「だからといって容赦はしないよ」
ミンはチェーンソーを如何にも楽しそうに振り回している。
「楽しいねえ。切りがいがあるよ」
「お、おでも」
当然ゴルも攻撃を加え敵を倒している。
「このまま倒す」
「もう帝国軍は敵ではない」
「少なくともこの戦いじゃな」
ジンとガナンも言う。
「このまま潰すだけだ」
「おらっ、釘じゃなくてこれを喰らうんだな!」
二人も攻撃を浴びせ次々と敵を倒していく。そしてグン=ジェムもだった。
「おい坊主」
「坊主って俺のことかよ」
「その通りだ」
彼はケーンに対して言っていた。
「御前以外に誰がいる?」
「って俺はもう坊主って言われる歳じゃねえぞ」
「ははは、わしから見ればまだまだ坊主だ」
しかしグン=ジェムの言葉は変わらない。
「ヒョッコよ、ヒョッコ」
「ヒョッコかよ、俺は」
「わかったらさっさと敵をもっと倒せ」
彼は言うのだ。
「だからだ。いいな」
「邪魔だ、倒せ!」
言いながら実際に敵を倒すのだった。
「もっとだ。もっと叩き潰せ!」
「叩き潰せっておっさんよ」
ケーンは思わず彼に言い返す。
「相変わらず派手に暴れてるな、おい」
「派手に暴れ派手に食う!」
グン=ジェムは今度はこんなことを言う。
「いつも通りな!」
「だからかよ、今もそんなに楽しいのはよ」
「そうよ。わしが一番乗りだ!」
言いながら前にいる敵達を薙ぎ倒していくのだった。
「そら、覚悟しろ!」
「おい、抜け駆けなんてさせるかよ!」
しかしここでケーンも前に出るのだった。
「一番乗りは俺だぜ!」
「おい、俺だよ!」
「俺もたまにはそうさせてもらうか」
タップとライトも言って前に出て来た。
「たまには前線で派手に暴れてやるぜ!」
「実際はいつものような気もするけれどな」
「そうだよ、いつもじゃねえかよ」
ケーンも二人に対して突っ込みを入れた。
「わかったらさっさと行くぜ」
「おうよ、ドラグナーチームのお通りだぜ!」
「死にたくなかったら道を開けるんだな」
「待ちな、あたし達が先に行くよ!」
「お、おで達が一番乗り」
しかしここでミンとゴルも出て来たのだった。
「どけどけ、邪魔だよ!」
「おで達の邪魔をするな」
「その通り。正義のヒーローになる為に」
「邪魔するんじゃねえよ」
ジンとガナンも言いながら突撃する。何時の間にか三人とグン=ジェムのせり争いになっていた。当然そこにはグン=ジェムもいた。
そしてすぐにナデシコ隊と合流した。
「しまった!」
「合流されたぞ!」
帝国軍はそれを見てさらに狼狽する。最早その統率は全く取れなくなっていた。
「無理だ、このままじゃ!」
「勝てないぞ!」
「うろたえるな!」
しかしこの中でローザ達が叫んでいた。
「落ち着け、いいな!」
「は、はい!」
「わかりました!」
「すぐに軍の再編成にかかれ」
ローザはあらためてこの指示を出した。
「そしてすぐにロンド=ベルを倒すぞ」
「わかっていますが」
「ですが」
そうなのだった。最早士気は落ち統率は取れなくなっていた。何をしようにも手遅れになろうとしていたのである。最早そんな有様だった。
「今の我が軍は」
「連絡が取れない部隊も多く」
「勝手に突撃し全滅する部隊も」
「このままでは」
「どうされますか?」
「撤退は許されてはいない」
ローザは呻くようにして述べた。
「だからだ。ここはだ」
「まずは態勢を立て直しですか」
「そのうえで」
「そうだ。敵を倒す」
これしかなかった。
「よいな、全軍再編成にかかれ」
「了解です」
「では連絡が取れる部隊だけをまず」
「それからだ」
呻くようにしてまた言った。
「何をするのにもな」
「ローザ将軍」
ここでクロッペンがモニターに出て来て声をかけてきた。
「今の状況だが」
「うむ」
「お世辞にもいいとは言えない」
これはもう言うまでもなかった。
「既に全軍の半数以上が完全に破壊された」
「五割以上がか」
「そうだ。それだけの数を失った」
最早それだけの数を失っているのだった。
「この五時間の戦闘でな」
「まずいな」
ローザはそれを聞いてまた顔を曇らせた。
「このままでは。我が軍は」
「それだけではない」
今度はテラルが出て来た。
「ロンド=ベルに無闇に突撃し全滅する部隊が後を立たない」
「そうだな」
わかっているが最早手の打ちようがない状況なのだ。
「それもだな」
「また一部隊全滅した」
ここでであった。
「そして今もだ」
「指示を伝えることはできないのか?」
「一応伝えてはいる」
テラルの返答は暗い。
「だが。それでもだ」
「そうか」
「それではだ」
クロッペンの言葉も苦い。
「ここは我等の統率が及ぶ部隊だけでだ」
「そうだな。まずは再編成だ」
ローザは言った。
「それで行くか」6
「うむ、それではだ」
「今からな」
こうして彼等は戦いながらであったがそれでも再編成を進める。そしてそれが済んだ時だ。
「よし、全軍行くぞ!」
「ロンド=ベルに向かうぞ!」
彼等はそのまま向かう。しかし全軍は既にその損害が無視できないものになっていた。
「全軍の損害は?」
「遂に七割を超えました」
つなり七千万を倒されたのである。
「七千万が」
「そうか」
ローザはそれを聞いてまた苦い声を出した。
「残りは三千万足らずか」
「それでもかなりの数ですが」
「それはわかっている」
指揮官として怯んだものを見せるわけにはいかなかった。
「では。行くか」
「はい」
こうして彼等は攻撃に向かう。しかし彼等が統率できている部隊は僅かであり。
「うわあああっ!」
「だ、駄目だ!」
「沈みます!」
帝国軍の多くは何の統率もない攻撃を出し全滅するだけだった。損害だけが増える。
「第七艦隊壊滅!」
「第八艦隊連絡が取れません!」
「二個艦隊がまたか」
クロッペンは報告を仮面の下に聞いていた。
「艦隊単位で消えていっているとはな」
「はい」
「残念ですが」
「だが。我等は引くわけにはいかない」
帝国軍の鉄の規律はそこにあった。
「いいな。攻めろ」
「そうですね。それは」
「ここで退いたら」
粛清されるだけだ。それが帝国だ。
「では閣下、やはり」
「このまま戦うしかないのですね」
「そして勝利を収めるしかない」
まさにそれしかなかった。
「わかったな。それではだ」
「はっ、では」
「このまま指揮下にある戦力だけで」
「攻撃を仕掛けよ!」
彼等は全軍で向かう。そうして攻撃にかかる。
先陣はプロザウルスとカブトだった。だが彼等はすぐに。
「ザンボットムーーーーーーンアタァーーーーーーーーーーック!」
「烈風!正拳突きーーーーーーーーーーーっ!」
ザンボットとダイモスの攻撃でそれぞれ乗艦が致命的なダメージを受けた。
「う、うわああああああっ!」
「ク、クロッペン閣下!」
彼等は沈む乗艦の中からクロッペンに言ってきた。
「これでお別れです!」
「申し訳ありません!」
まずは二人が戦死してしまった。
「プロザウルス、カブト両将軍戦死です!」
「閣下、二人の仇はこのボイダーが」
今度はボイダーが名乗り出てきた。
「是非。お任せ下さい」
「頼むぞ」
クロッペンは彼に対して告げようとしていた。
「ここはな」
「はい、それでは」
今度はボイダーが攻撃に向かう。しかし彼も。
「そこかあっ!」
カミーユがメガランチャーを放つとそれが一直線に貫いた。ボイダーもまたその乗艦を沈められてしまったのだ。
「閣下、申し訳ありません」
「ボイダーよ、見事だった」
クロッペンはモニター越しに今まさに戦死せんとするボイダーに対して告げた。
「有り難き御言葉」
「うむ」
ボイダーもまた炎の中に消える。帝国軍の総攻撃も最早何の意味もなかった。
「損害、九割に達します」
「そうか」
ローザが部下の言葉を聞いていた。
「九割か」
「最早これ以上の戦闘は無意味かと」
「どうされますか?」
「責任は私が取る」
ローザは苦い声で述べた。
「だからだ。ここはだ」
「わかりました。それでは」
「すぐに全軍を集め」
撤退しようとする。しかしここでであった。
「ならんぞ!」
「何っ、まさか」
「この声は」
「そうだ、私だ!」
シンクラインだった。何と彼が戦場に姿を現わしたのだ。
しかも彼だけではない。その旗艦と直属の親衛隊も一緒だった。
「撤退は許さん!」
「で、ですが」
「最早!」
「黙れ!」
実際に旗艦の主砲が唸る。そうして彼等の戦艦を沈めるのだった。
「うわあっ!」
「ぐわあっ!」
「死にたくなければ戦うのだ!」
シンクラインはまた彼等に命じる。
「よいな!」
「わかりました」
ローザは苦い顔であるがそれでも頷いた。
「それでは。ここは」
「そうだ。攻めろ」
シンクラインはここぞとばかりに彼等に告げた。
「よいな、そして勝て」
「わかりました。それでは」
「すぐに」
こうしてローザ達は戦場に押したてられていく。シンクライン達はそれを見ているだけだ。だがやはり帝国軍は無駄に損害を増やしていくだけであった。
「ふん、やはり無理か」
「そうですな」
「所詮はクローンです」
「何っ!?」
シンクライン達の言葉にクロッペン達は顔を向けた。
「殿下、それは一体」
「どういう意味ですか?」
「クロッペンよ」
シンクラインはクロッペンに対して言う。
「貴様はクロッペンではない」
「何っ!?それは一体」
クロッペンは最初その言葉の意味がわからなかった。
「どういうことなのですか?」
「貴様はクローンなのだ」
こう彼に言うのだった。侮りの言葉と共に。
「捨て駒だ。所詮な」
「何と・・・・・・」
クロッペンはそれを聞いて唖然となった。
「私が。クローンだと」
「消耗品に過ぎん」
シンクラインの侮蔑しきった言葉は続く。
「クローンだからな」
「私が。クローンだと」
「消えろ。最早貴様に用はない」
言いながらクロッペンの乗艦に主砲を向ける。
「せめてこの私の手で始末してくれる」
「お待ち下さい殿下」
「それは」
ローザとテラルがシンクラインに言ってきた。
「まだ戦闘中です」
「そしてクロッペン将軍には多くの功績があります」
こう話していくのだった。
「ですからそれだけは」
「なりません」
「黙っておれ!」
だが二人の言葉を聞くシンクラインではなかった。
「貴様等も同じだ!ここで死んでもらう!」
「何と!」
「それは」
「そうだ。所詮貴様等も消耗品だ」
彼等に対しても同じであった。
「死んでもらうぞ。覚悟しろ!」
「!?何だあいつ等」
「同士討ちか?」
ロンド=ベルから見てそうとしか思えなかった。
「何考えてるんだ?一体」
「こんな時に」
「わからん。しかしだ」
ここで判断を下したのはグローバルだった。
「今は好機だ」
「その通りです」
未沙が彼の言葉に頷く。
「ここを衝き」
「この戦場での戦いを終わらせる」
こう言うのだった。
「よいな、それではだ」
「はい、それでは」
「全軍攻撃を仕掛けよ!」
帝国軍に向かえということだった。
「よいな、ここではだ!」
「了解です!」
「行くぜ!」
ロンド=ベルはその帝国軍に一気に向かう。そうして。
その攻撃はシンクラインの直属部隊にも向かっていた。これで彼等のクロッペン達への攻撃が止まった。
「殿下、ロンド=ベルが!」
「我等にも!」
「しゃらくさいわ!」
シンクラインは彼等の攻撃を受けて叫んだ。
「ここは奴等を撃て!」
「はい!」
「それでは!」
彼等は今度はロンド=ベルに攻撃を向けた。しかしそれによってクロッペン達への攻撃がおざなりになってしまったのであった。
「!?テラル様」
「今です」
リーツとジーラが彼等に言ってきた。
「ここはお退き下さい」
「どうか」
「しかしだ」
だがテラルはここで難しい顔を見せた。
「我々は」
「このままでは御命を落とすだけです」
「それも閣下だけでなく全ての将兵が」
「そうだ」
ローザもここで言った。
「ここは一旦退く方がいい」
「ここで退いたら脱走になるのだぞ」
「それでもだ」
ローザのテラルへの言葉は強かった。
「逆賊として死ぬかロンド=ベルを倒し雪辱を晴らしたうえで潔く粛清されるか」
「どちらかというのか」
「そうだ。どちらを選ぶのだ?」
その強い声でまたテラルに問うてきた。
「貴官は。どちらだ?」
「・・・・・・わかった」
こう言われては彼も言うしかなかった。
「ここはな」
「そうだ。撤退だ」
やはりこれしかなかった。
「よいな。それでは」
「・・・・・・・・・」
「クロッペン司令」
ローザは答えがないクロッペンに対して問うた。
「貴官はどうなのだ?」
「むっ!?」
「だからだ。貴官はどうなのだ」
「・・・・・・私か」
彼はまだ己を取り戻してはいなかった。返答が虚ろであった。
「私は」
「それでよいか」
「わかった」
やはり空虚だがそれでも撤退には応じる。こうして彼等は撤退に向かう。しかし重要な役割がまだ決まっていなかった。それが何かというと。
「!?後詰は」
「私が行きましょう」
ミズカが名乗り出て来た。
「是非共」
「だがそれは」
「いえ、お任せ下さい」
こうローザに言うのだった。
「ここは是非」
「よいのか?」
ローザはその整った眉を顰めさせて彼女に問うた。
「この後詰は」
「わかっています」
今の状況を考えれば今回の後詰がどういったものかは言うまでもないことであった。しかしそれでも彼女は自ら志願するのであった。
「ですが是非」
「そうか、わかった」
ローザも彼女のその心を受けることにした。
「では頼むぞ」
「お任せ下さい」
「では全軍このまま撤退する」
ローザはあらためて全軍に告げた。
「基地はだ。よいな」
「はい、あそこですか」
「あの基地に」
「そうだ、あの基地ならばだ」
ローザの腹心達がいる基地である。そこに向かうというのである。
「行くぞ、いいな」
「わかりました。それでは」
「すぐに」
こうして彼等は撤退に向かう。しかしシンクラインの追撃は執拗だった。
「逃がすな!」
「はい!」
シンクラインの指示の下攻撃を続ける。
「反逆者は一人も許すな」
「わかっています」
「それは」
全軍それに従い攻撃を仕掛ける。だがミズカが必死に守る。
「よいか、ここが死に場所と心得よ」
「はい、無論です」
「最初からそのつもりです」
彼女の直属の部下達もその言葉に頷く。
「何としても閣下にはお逃げ頂きます」
「クロッペン様には」
「その通りだ。その為にもだ」
彼女はクロッペンに対して最後の忠誠を捧げるつもりだったのだ。
「ここは守るぞ。いいな」
「ええ、それでは」
「防ぎます!」
彼女達は何としても戦おうとする。しかしシンクラインが直率する帝国軍の力はかなりだ。そしてそれにより何とか追撃を止めていた。だが。
「あの戦艦を狙え!」
「わかりました!」
シンクラインの指示の下彼等はミズカの戦艦に攻撃を集中させる。それで。
「ぐわっ!」
「うわっ!」
攻撃を次々に受け艦のあちこちから火を噴く。そして遂に炎に包まれたのだった。
「閣下、最早!」
「このままでは!」
「くっ、わかっている」
ミズカも歯噛みするしかなかった。
「このままでは。この艦はおろか」
「追手も防げません」
「最早」
「いや、それでもだ」
だがそれでもミズカは諦めてはいなかった。
「我々はそれでも。戦わなくては」
「それはわかっています」
「ですが」
彼等もその言葉を戸惑わせていた。既に艦橋の各部も火を噴いている。
「最早我が軍は」
「これでは」
「何としてもだ」
だがそれでもミズカは諦めていなかった。
「ここは防ぐ。よいな」
「・・・・・・わかりました」
「覚悟は決めています」
彼等は既に沈むことが決定的な艦でまだ戦おうとする。しかしそれでもだった。帝国軍の攻撃は激しい。それにより今まさに押し切られようとするその時だった。
「!?あれは」
「間違いありません」
ここで黄金とファーラが声をあげたのである。
「あの戦艦は」
「そうです、シンクライン皇太子のものです」
彼等はそのことに気付いたのである。
「あいつを倒せばこの戦いは終わる!」
「そうです、帝国の実質の最高権力者を倒せば!」
そして口々に仲間達に言うのだった。
「ここは何としてもあいつを!」
「倒しましょう!」
「そうです。やりましょう!」
錫石も言った。
「あいつを倒して!」
「そうだ、行くぞ!」
「皆、やるぞ!」
青銅と黒銅も言う。
「ゴライオンだけでも!」
「黄金!」
「わかっているぜ!」
黄金もまたここで応えてゴライオンを進ませる。ロンド=ベルの面々もそれを見て一気に続いた。
「よし、ゴライオンに続け!」
「シンクライン、覚悟しやがれ!」
一気に帝国軍に雪崩れ込む。それにより帝国軍の側面を衝いた。
これで帝国軍は総崩れになった。最早追撃どころではなかった。
「くっ、殿下!」
「ロンド=ベルが!」
「おのれ、ここぞという時に」
シンクラインもそれを見て歯噛みした。
「来たというのか」
「この艦に向かっています」
「どうされますか?」
「止むを得ん、撤退だ」
こう言って己の艦を退かせる。
「後詰は任せたぞ。よいな」
「は、はい」
「それでは」
他の艦長達が応える。彼等は戸惑いながらもそれに従うしかなかった。
シンクラインの戦線離脱が決定打になった。帝国軍はそのまま撤収した。ローザ達はこれにより何とか死地を逃れることができた。しかしであった。
「私の役目は果たした」
ミズカは今まさに沈まんとする己の乗艦の中で言っていた。
「それでは」
「はい、これで我々の仕事は終わりました」
「これで。もう」
部下達も彼女の言葉に頷く。そうしてそのうえで艦と運命を共にする。彼女もまたこの戦いにおいて命を落としたのであった。
「ミズカもか」
「はい」
この話はクロッペンの下にも届いていた。彼はその話を沈みきったまま聞いていた。
「そうか。我々を逃がす為に」
「見事な最期だったとのことです」
「皆死んでしまった」
クロッペンは呟いた。
「カブトもプロザウルスもボイダーも」
「それは」
「そしてミズカもだ」
彼女の名前も出すのだった。
「私の為に死んだ」
「・・・・・・・・・」
今度は部下達が沈黙してしまった。クロッペンはその中で言葉を続ける。
「しかしだ。私はだ」
「閣下は」
「生きている。だが私は」
彼は言うのだった。
「クローンだ。クローンに過ぎない」
シンクラインに告げられたこの事実に打ちのめされ続けていた。
「所詮な。人形だ」
「ですが閣下」
「閣下はここにおられます」
だが部下達はこう彼に言うのだった。
「しっかりとここに」
「そして今まで戦ってこられました」
「今までか」
「そうです。そしてミズカ様達はその閣下の為に」
「御命を」
「私の為に」
ここでクロッペンの言葉の色が変わった。
「私の為にか」
「そうです、閣下の御為に」
「その御命を」
「そうだな」
クロッペンの声が高くなってきていた。
「私の為に。ならば」
「ならば?」
「どうされるのですか?」
「戦う」
声が毅然としたものに戻った。
「私もまた戦う」
「そうです。それでは」
「我々も」
残された部下達もそれに応えるのだった。
「最早我々は帝国軍に戻ることはできない」
「完全に謀反人です」
「捕まればそれで」
「ならばだ。進むべき道は一つだけだ」
言いながら彼が取った行動、それは。
「なっ、閣下」
「一体何を!?」
「最早このようなものは不要だ」
言いながらその仮面を外した。するとそこから髭を生やした顔を見せるのだった。
「私はこれから素顔で戦う」
「素顔でですか」
「ではこれからは」
「ガルラ帝国との戦いに入る」
彼はまた言った。
「それでよいな」
「そうだ、その通りだ」
「我々にはそれしかない」
ローザとテラルがここで彼に言ってきた。
「何があろうともな」
「いいな」
「うむ、私は決めた」
クロッペンは彼等に対しても頷いてみせるのだった。
「帝国と戦い生きる、それでいいな」
「無論だ、それしかない」
「我等に残された道はな」
二人もその考えは同じであった。
「そしてだ。何としても生きる」
「いいな」
「では。まずは基地に戻りだ」
クロッペンはまた言った。
「次の戦いに備えよう」
「その通りだ。では行くぞ」
こうしてクロッペンは意志を取り戻しあらためて戦いに向かうことを決意した。だがそれは辛い戦いであった。しかし帝国軍はこの時明らかに亀裂が生じはじめていた。

第百三十一話完

2009・5・27  
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