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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百三十話 狂気の結末

               第百三十話 狂気の結末
「おのれ、おのれ!」
最早風間博士は半狂乱だった。
「何故だ、何故わしの作戦が失敗した!」
「ひ、ひいい!」
「お許しを!」
部下達は彼の振るう電気鞭から必死に逃れている。しかしそのうちの数人は運が悪く当たりそれにより黒焦げになって息絶える。
「そして逃げねばならんとはな!」
「ですが博士」
「それでもです」
彼等は何とか博士を宥めようと言ってきた。
「また援軍が来ました」
「今度は五千万です」
「五千万か」
「はい、五千万です」
「土星から援軍が送られてきました」
このことを彼に告げるのだった。
「これだけの兵力があれば流石に」
「今度こそロンド=ベルを」
「うむ、そうだな」
彼はその言葉を受けて次第に落ち着いてきていた。
「それだけあればな。いけるな」
「そうです。では集結を終えたら」
「反撃に移りましょう」
「よし、では作戦決定だ」
様々な問題があるが彼は決断力だけはあった。
「まずは五千万の兵と落ち合う」
「わかりました」
「それでは」
「そしてそのうえで反転し今度こそロンド=ベルを倒す」
彼は言うのだった。
「それでよいな」
「はい、それでは」
「そのように」
「五千万の戦力で完全に叩き潰す」
そしてその考えも進歩がなかった。
「いいな」
「了解です」
これで博士の機嫌は何とかなおった。ガガーン達もそれを聞いて言うのだった。
「これで大丈夫だな」
「うむ、五千万だ」
「今までとは数が違う」
ガガーンの言葉にダルトンとメサも頷く。
「それだけの数があればだ」
「必ず奴等を倒せる」
「必ず」
「それにだ。我等にとって最後の機会なのだ」
ガガーンはここで言葉を曇らせてきた。
「最後のな」
「というとやはり」
「シンクライン殿下が」
「そうだ。木星での度重なる敗戦に殿下は御立腹だ」
シンクラインの性格を考えればそれは当然のことであった。
「そうだな。それでは」
「次の戦いに敗れれば我等は」
「粛清だ」
彼等の辿り着く結論はこれしかなかった。
「わかるな。それは」
「うむ」
「確かに」
ガガーンだけでなくダルトンにメサも青い顔になっていた。
「では今度の戦いで勝たなければな」
「死ぬのは我等だ」
「処刑されて終わりだ」
「そうだ。だからこそだ」
ガガーンはまた言った。
「行くぞ、いいな」
「うむ、我等の為に」
「ロンド=ベルを倒す」
彼等にしても必死だった。今木星の衛星の一つの側で軍を集結させていた。しかしそれはロンド=ベルの察知するところであった。
「敵軍は五千万です」
「ですが我々に気付いてはいません」
サコンとピートが大文字に告げる。
「それでは博士」
「今から」
「うむ、攻撃開始だ」
大文字は二人のその言葉を聞いて頷いた。
「それでいいな」
「おうよ、左腕が鳴るぜ」
「やらせてもらう」
サンシローとリーが博士の言葉に頷く。
「思う存分な」
「敵が幾ら大軍だろうな」
「それにここで勝てば木星が人類の手に戻ります」
「だよな。大きいぜ、これってよ」
ブンタとヤマガタケも話す。
「ですからこの戦い何があっても勝ちましょう」
「派手に暴れてよ」
「その通りだ。では今より全軍で急襲を仕掛ける」
大文字の言葉は全軍に向けたものだった。
「では全軍」
「はい!」
「やってやりますよ!」
「まずは各艦に乗り込んだまま突き進む」
「はい、そして」
「それからですね」
「そうだ。そのうえで各艦で一斉攻撃を仕掛けそこから全機発進する」
これが彼等の作戦だった。一気に進みそのうえで倒すのだ。そのつもりだった。
「行くぞ。それではだ」
「進むぞ」
今ロンド=ベルは全艦で五千万の大軍に密かに接近する。そうしてそのうえでまずは各艦で一斉攻撃を浴びせるのだった。
「!?何だ!」
「何事だ!」
帝国軍は攻撃を受けてまずは声をあげた。
「何だこの攻撃は!」
「何者だ!」
「よし、まずは第一撃は成功だ!」
「次だ!」
まずは戦艦での一斉攻撃は成功した。しかしそれでは完全ではなかった。
次にマシンが一斉に出撃する。そのうえでまだ何の用意もしていない帝国軍に襲い掛かるのだった。
「よし、喰らえ!」
「くたばりやがれ!」
全機出せる限りの広範囲の攻撃で敵の数を減らしにかかる。それは成功しまずは多くの敵を減らした。これで先手を制したのであった。
「よし、やったぞ!」
「このままだ!」
皆これで勢いに乗り一斉に攻撃を続ける。波に乗り敵を次々に減らしていく。
「減らせ、潰せ!」
「とにかく撃墜するんだ!」
勢いに乗っているとはいえ五千万の相手だ。彼等も安心してはいない。そうして敵を倒していきそのうえで敵陣を切り刻んでいく。
「敵を寸断することはできない」
シナプスが言う。
「とてもな」
「数が足りませんか」
「そうだ」
バニングに対して答える。
「とてもな。だから我々は機動力を駆使して敵を翻弄する」
「それではこのまま」
「そうだ、動き回れ」
ジャクリーンに対してもこう返すのだった。
「いいな!」
「了解です!」
こうして彼等は五千万の大軍の中を派手に暴れ回る。機動力は彼等の方が遥かに上であり帝国軍はその大軍がかえって仇になっていた。
「おのれ、次はそっちか!」
「何と素早い!」
「こっちに来ました!」
メサの乗艦の前に来た。
「だ、駄目です!」
「逃げられません!」
「倒せ!」
メサは迫り来る彼等を見て恐怖の声をあげた。
「数では負けていない筈だ。防げ!」
「は、はい!」
「それでは!」
彼の配下の全軍で防ごうとする。しかしだった。
「邪魔なんだよ!」
「どけっ!」
デュオのデスサイズヘルカスタムとウーヒェイのアルトロンカスタムがそれぞれサイズとグレイブを動かしてそのうえで叩き切っていく。そしてカトルとトロワも仕掛ける。
「生憎だが御前達の質は悪過ぎる」
「これなら幾ら数が多くても!」
一斉射撃とマグアナック隊の総攻撃でさらに穴をあけると今度はゼクスが撃った。
「私もやらせてもらう」
「はい、ミリアルド様」
「護りは私達が」
彼の横をノインとヒルデが固める。二人に護られたミリアルドがそのままビームを放つ。そrねいよりまた敵に穴が空いた。大きな穴だった。
最後に出て来たのはヒイロだった。彼のウィングゼロカスタムが今羽ばたいた。
「ガンダムだ」
「またガンダムが来たのか」
「一つ言っておく」
ヒイロは残ったメサの軍勢の中に飛び込んだうえで告げてきた。
「ゼロの見せた未来に」
「未来に!?」
「どういうことだ?」
「御前達がいた」
こう言うのである。
「しかし今にはいない。今は御前達の時代ではない」
「な、何が言いたい!?」
「一体何を」
「俺が言うのはこのことだけだ」
既にウィングゼロカスタムは攻撃態勢に入っていた。両手のバスターライフルから光が放たれようとしていた。
「言うべきことは伝えた。後は」
「後は!?」
「な、何だ?」
「消えろ」
こう言うのだった。
「安心してな」
次にはローリングバスターライフルを放った。二条の光が残っているメサの軍勢を切り裂き。そして無数の光に変えてしまったのだった。
「ば、馬鹿な」
メサは炎に包まれていく乗艦の中で断末魔の声を出していた。
「数は我等の方が多い筈。それなのに」
「まずはこれでよしだ」
メサの乗艦の爆発を見届けてから言うヒイロだった。
「次に向かうぞ」
「ああ、わかってるぜ」
「では行くぞ」
デュオとウーヒェイがそれに応える。メサの軍を壊滅させたロンド=ベルはすぐに別の軍に向かうのだった。
「メサ将軍の軍が壊滅しました!」
「何だと!」
博士はそれを見いてまたしても喚いた。
「そんなことがあるものか!」
「いえ、本当です!」
「メサ将軍は戦死しました!」
「おのれ!」
それが真実と知りさらに叫ぶ博士だった。
「ロンド=ベル、許さんぞ!」
「では博士、どうされますか?」
「メサ将軍はいなくなりましたが」
「構わん、愚か者は死んで当然だ」
彼の死にも平然としていた。
「そんなことはどうでもいいのだ」
「そ、そうですか」
「構わないのですか」
「そうだ。それよりもロンド=ベルだ」
自身の派閥の者に対してもこんな有様であった。
「残るガガーン、ダルトン両将軍に伝えよ」
「何とですか?」
「それで」
「ロンド=ベルを取り囲みそのうえで殲滅せよとな」
戦術はそれしかなかった。
「よいな。一人残らず殺せ」
「ですが今の我が軍は」
「それは」
しかし参謀達の言葉が曇る。
「内部から断ち切られていて」
「とても満足に動くことが」
「馬鹿者が!」
「うわあっ!」
何と今度は電気鞭でなかった。銃を放ったのだ。
それで参謀の一人が胸を貫かれて事切れる。博士はそのうえでまた喚くのである。
「わしに逆らうことは許さん!」
その参謀の屍をさらに撃ちながら叫び続ける。
「いいな、作戦を続けよ!」
「わ、わかりました!」
こうして攻撃がさらに続けられる。しかし帝国軍はロンド=ベルの動きに翻弄されるだけで真っ当に戦えない。その数ばかりを減らしていく。
「何か動き回ってばかりだけれどな」
「けれどそれがいいんだよ」
ヒメが勇に言う。
「おかげで敵は追いつけないから」
「そうだな。各個撃破ができている」
そういうことだった。
「このままいけるな。どうやら」
「そうだよ。このまま行けるよ」
「今敵軍はどうなってるんだ?」
「三割ってところね」
カナンが彼に答えてきた。
「三割倒せたわよ」
「二時間でそれだけか」
既に戦闘がはじまって二時間であった。
「こんなものか?」
「こんなものだと思うよ」
ヒメはそれでいいというのだった。
「だって数が多いから」
「そうだな。やっぱり敵の数が多い」
勇もそれはわかっていた。
「だとしたらこれでも流れはいい方か」
「話をしているうちにまた行くぞ」
ジョナサンが勇に声をかけてきた。
「前だ。いいな」
「ああ、わかった」
こうして彼等はまた攻撃に入るのだった。敵軍を次々に倒していく。そして次はダルトンだった。彼の周りの軍が一番多かった。
「数は?」
「百万はいるわ」
クェスがギュネイに答える。
「直率では一番多いわね」
「それでどうするんだ?」
「決まってるわ。ファンネルよ」
クェスはそれを使うつもりだった。
「それで一気に。潰すわ」
「よし、やっぱりそれだな」
「行けっ、ファンネル達!」
「喰らえっ!」
二人は一斉にファンネルを放つ。それで穴が開いた。
「おい、今だ!」
「バルキリー、出番よ!」
「よし、行くぜ!」
バルキリー隊はフォッカーを先頭にして突き進む。そして翼にあるミサイルを放つ。
反応弾だった。それでまた敵をまとめて潰す。彼等はそのうえで敵の中に突入し全軍それに続く。
「中に入ればな!」
「どうってことないわね!」
全軍でその百万の大軍も内部から荒らしていく。敵を潰しそのうえで粉砕していく。ダルトンの乗艦もその中でロックオンされた。
「よし、あれだ!」
「あの戦艦を沈めろ!」
狙いを定めたのはグラヴィオンだった。
「行くよ!」
「ああ、やってやれ!」
エイジが斗牙に応える。
「このままだ。一気にな!」
「これで!」
腕を放つとそれが艦を貫いた。それは一撃であったが致命傷であった。
「沈みます!」
「ば、馬鹿な」
ダルトンは艦橋の中で呻いていた。
「百万の大軍が僅か数分で」
「退艦できません!」
「もう爆発がここまで!」
「ロンド=ベル。奴等は一体」
彼はその沈みゆく艦の中で呻き続けていた。
「何者なのだ」
「うわあああああああああああっ!!」
彼もまた乗艦を沈められ戦死した。これでまた一人だった。
「損害五十パーセントを超えました!」
「なおも敵を捕捉できません!」
「うろたえるな!」
ガガーンは部下達を叱咤していた。
「敵も疲れている筈だ!攻めろ!」
「攻めますか」
「まず正面の戦力でその足を止めるのだ」
彼はようやく戦術を使いだした。
「そしてだ」
「そして?」
「そのうえでですか」
「そうだ。左右と後方の戦力で囲む」
これが彼の作戦だった。
「いいな!」
「了解です!」
「それでは!」
やはり包囲戦術であったがそれでもロンド=ベルを囲もうとする。帝国軍もようやく真っ当な戦術をここで見せてきたのである。
しかしだった。ロンド=ベルはここで反転した。そのうえで後方から来ていた戦力に攻撃を浴びせるのだった。
「甘いんだよ!」
「動きが鈍いぜ!」
こう言いながら一気に攻める。後方から来ていた敵はこれで倒されていく。
後方の敵を一蹴するとそのまま右に動き左から来ていた敵軍の後方に回り込む。そしてその敵も一瞬のうちに壊滅させてしまったのである。
「これなら!」
全軍で攻めるのだった。
「やれる!」
「後ろかがら空きよ!」
「これで」
ウッソはその中翼を広げた。それで突撃しそのうえで敵をまとめて破壊していく。
彼はそのまま突き抜け右手から来ていた軍にも突入する。そして彼等も一蹴してしまった。
だが帝国軍の数は多い。撃破された三つの軍も残存戦力が多かった。彼等は正面の戦力と合流し反撃に移ろうとするがそれでもだった。
「まだだ!」
ガガーンがまた叫ぶ。
「これだけの戦力がある!正面から攻めるぞ!」
「は、はい!」
「それでは!」
しかしだった。全軍で向かう。正面からロンド=ベルを攻める。
一気に攻めるがロンド=ベルはその帝国軍もまたその広範囲の攻撃を潰してしまった。
「死ねっ!」
シンのインパルスデスティニーは得意の接近攻撃だけでなくドラグーンも放ち縦横無尽に敵を潰していく。彼はまさに水を得た魚であった。
「幾ら数がいてもな。ただ撃墜数を増やすだけだぜ!」
「それはわかるがシン」
ハイネが彼に言ってきた。
「周りを見るのも忘れるな」
「わかってるさ。だからドラグーンだってな」
使えるというのである。
「安心してくれ。周りはちゃんと見えてるさ」
「そうか」
「こいつ等数は多いがそれだけだしな」
それは彼も把握していた。
「敵じゃねえんだよ。消えろ!」
「シン、後ろだ!」
ミゲルがここで叫ぶ。
「来たぞ!」
「わかってるぜ!」
すぐにドラグーンが彼の後ろに来てその敵を倒す。やはり彼はわかっていた。
「見えてるって言ったろ」
「本当に見えてるのね」
フレイもこれには驚いていた。
「っていうか真後ろもわかってるの」
「おい、フレイ!」
シンはここでまた叫んだ。
「そっちにも来てるぜ!」
「えっ!?」
「下だ!」
彼はフレイにも叫ぶ。
「下から来るぞ。ドラグーンだ!」
「わかったわ!」
フレイもそれを受けてすぐにドラグーンを放つ。それで彼女の下から来るその敵を退けた。
「見えてたの」
「感じるんだよ」
シンの目が赤くなっていた。
「はっきりな」
「あんた、何か戦う度に凄くなってるわね」
「シンのパイロットとしての能力はザフトがはじまって以来だ」
アスランがここで言ってきた。
「まさに天才だ」
「そうね。それはね」
流石のフレイもこれは認めた。
「最近ちょっとだけ性格もましになってきたしね」
「ましかよ」
「っていうかあんた何でもかんでもつっかかるじゃない」
「いや、それはフレイも」
「全然言えないような」
皆今のフレイの言葉にはかなり言いたかった。
「まあフレイも最近変わったかな?」
「ちょっとだけな」
「それがちょっとだけましになったんじゃないの?」
「俺だって変わるんだよ」
シンは自分でもそれがわかっているようだった。
「周りに誰かいるとな。頼りになるしな」
「仲間意識ができたってこと?」
「かもな。御前みたいな怪力女でも仲間だしな」
「私の何処が怪力なのよ」
フレイもこんなことを言われたのははじめてである。
「取り消しなさいよ、それ」
「じゃあ御前握力幾らだ?」
「この前計ったら百だったわよ」
「百・・・・・・」
「充分過ぎるよな」
「ねえ」
「パイロットになって鍛えてたらなったのよ」
自分ではこう言うのだった。
「それでね」
「御前コーディネーターじゃないよな」
「それは違うってわかってんでしょ」
それははっきりと否定した。
「ってあんたもそれ知ってるじゃない」
「じゃあニュータイプか?」
「ニュータイプは力は強くないけれど」6
シーブックが話に入ってきた。
「別に。そんなことはない筈だけれどな」
「じゃああれか」
シンはシーブックの言葉も聞いたうえで言った。
「ゴリラかオランウータンの遺伝子を移植したんだな」
「ちょっと待ちなさいよ!」
やはり今の言葉には速攻で怒るフレイだった。
「何よそのゴリラとかオランウータンっていうのは!」
「力強いからよ」
だからだというのである。
「まあチンパンジーかマントヒヒかも知れないけれどな」
「だから何でそうなるのよ」
「ゴリラとかオランウータンって大人しいからよ」
「それは知ってるわ」
「けれどチンパンジーとかマントヒヒって凶暴なんだよ」
「つまり私が凶暴って言いたいのね」
「その通り」
これまた言わなくていいことを言うシンだった。
「本当にそうじゃねえのか?で、誰に移植されたんだよ」
「あんたの脳味噌に鉛の弾を移植したいんだけれど」
「おい、何でそうなるんだよ」
「一回死ぬ?本当に」
言葉は完全に本気であった。
「容赦しないけれど」
「へっ、受けて立ってやるよ」
そして引くことのないシンだった。
「今度こそ決着つけてやるぜ」
「望むところよ。宇宙空間に蹴り出してあげるわ」
「だから二人共戦闘中だぞ」
アスランが呆れた顔で二人の間に入った。
「言い争いはそれからにしろ」
「ああ、わかってるさ」
「それはね」
「だったら戦闘は・・・・・・してるか」
それは忘れていない二人だった。相変わらず派手に敵を吹き飛ばしている。
「おらっ、死ね!」
「邪魔よっ!」
二人はドラグーンを自由に操りそのうえで敵を薙ぎ倒していく。コンビネーションさえ見せる。
「フレイ、そっちだ!」
「わかってるわ!」
フレイはシンの言葉を受けて左斜め後ろ上にいる敵をそのドラグーンで倒した。
「そこにいるのはね!」
「よし!」
「とりあえず戦いはどんなに言い争ってもできるんだな」
「シンはいつもそうだな」
シーブックがアスランに述べる。
「闘争心は桁外れだしな」
「だからあいつはザフトのトップガンになれた」
だからだというのである。
「パイロット能力ではあいつより上の人間はいかなかった」
「アカデミーでもか」
「ああ。俺よりも遥かにな」
「だからアカデミーでも席次トップだったのよ」
ルナマリアも話に加わってきた。
「もうね。パイロットにしろ実技が桁外れで」
「そんなに凄かったのか」
「座学はそれ程じゃなかったけれどね」
それは大したことがないというのだった。
「その分を補うだけ凄かったのよ」
「だから戦うことは忘れない」
アスランもまた言う。
「確かにそれでいつもいつもフレイやカガリと衝突するけれどな」
「そうだな。それは困るな、いつも」
シーブックも苦笑いにはなる。
「けれどシンもいるから」
「このまま行ける」
また言うアスランだった。
「次の相手も」
「よし、俺も!」
シーブックのF91もそのヴェスパーを放ち敵軍に大きな穴を開ける。
「このヴェスパーで!」
「今だ!」
アスランはその穴に自機を飛び込まさせた。
他のマシンもそれに続く。敵軍をまた倒していく。
そして今度はガガーンの本陣に迫る。敵の戦艦をまとめて薙ぎ倒しているのはゴーショーグンだった。
「あまり集まっていてもね」
「かえって損だったりケースがあるのよね」
「それが今だってことだな」
真吾にレミー、キリーはそのまとめて撃沈される戦艦達を見て言う。
「しかしそれにしてもゴーフラッシャーは」
「何かどんどん強くなっていってるわね」
「こりゃもう戦略兵器だな」
「使いこなすのは難しいが」
真吾の顔が真面目なものになる。
「使いこなせれば大きいな」
「そういうことね。これは有り難いわ」
「それじゃあまあその難しいけれど有り難い力で」
三人はあっさりとやり取りしてまたゴーフラッシャーの発射に入る。
「そっちの旗艦も」
「どーーーーーんとね」
「真吾、やってくれよ」
「よし、これでな」
ゴーフラッシャーを放ち言う真吾だった。
「ゴーフラッシャーーーーーーッ!」
それがガガーンの乗艦を襲う。そうして一気に沈めてしまう。ガガーンは沈む船の中で半死半生になりながらも脱出しようとしていた。
「脱出艇をだ!」
「だ、駄目です!」
「何故だ!」
「全て今の攻撃で破壊されました!」
部下がこう彼に返すのだった。
「全て。ですから」
「このまま沈むというのか」
「はい・・・・・・」
「我々はこれで」
「馬鹿な、こんなことがある筈がない」
彼は己の運命が決まったところで唸った。
「こんな場所で死ぬとは。数では我が軍が圧倒しているというのに」
「う、うわああああっ!!」
「火が、火が!」
「何故我等が敗れるというのだ」
これがガガーンの最後の言葉だった。彼もまた炎の中に消えた。帝国軍は最早組織的な反撃を行えなくなっていた。そして最後は博士の軍だった。
「今どうなっておる!」
「ガガーン将軍が戦死されました!」
「最後の陣が突破されました!」
「くっ、今どれだけ残っておるか!」
博士は報告する部下達にさらに問うた。
「今どれだけだ!」
「一千万機です」
「それだけですが」
「ならばその一千万を集めよ」
呻くようにして言うのだった。
「一千万をだ。これで奴等を潰せ!」
「ですが司令」
「それが」
「何だというのだ!」
「各地で寸断され動きもままなりません」
「それでもですか?集結を」
「当然だ!」
博士は躊躇う彼等に対してここでも叫んだ。
「そうでなくてどうする!躊躇する余裕はない!」
「では今から」
「全軍に対して」
「あらゆる手段で集結を命じよ!」
博士は言った。
「よいな、それで今度こそ倒すのだ!」
「了解しました」
「それでは」
皆それに頷くしかなかった。逆らえばすぐに博士自身の手によって殺されるからだ。こうして各地に寸断され彷徨ってさえいた残存戦力が急遽集められた。
「博士の場所にか」
「今すぐに」
全軍何とか博士のいる本陣に集まろうとする。だがその集結の際にかけられた通信はロンド=ベルにも傍受されていた。これにより本陣の位置もわかったのだった。
「馬鹿か、あいつ等」
作戦も本陣の位置もわかったので忍が思わず言った。
「自分で陣地も作戦も言うのかよ」
「そうだね。相当とち狂ってるみたいだね」
「みたいだね。けれどどうするの?」
「どうする?」
沙羅と雅人、亮がそれぞれ話す。
「ここは各個に潰すかい?また」
「集まってくるところをだね」
「そうだ。それでいくか」
「そうだな。それがいい」
アランも亮の言葉に頷くのだった。
「それで敵をさらに倒すことができる」
「よし、それなら」
「一気に」
「やるか」
「よし、じゃあすぐに叩き潰してやるぜ!」
忍もここで叫ぶ。
「最後の仕上げだ!容赦はしねえぜ!」
「いいか、皆」
大文字はすかさず彼等の言葉をそのまま全軍のものとし命じた。
「このまま機動戦を仕掛け集まってくる敵軍を各個に倒していく」
「このままですね」
「そうだ、このままだ」
大文字は一太郎に対して答える。
「それでいいな」
「そうだな。それがいい」
兵左衛門も言う。
「残り一千万。それで倒していく」
「ええ、わかりました」
一太郎は祖父の言葉に頷く。そうしてそのうえでキングビアルを動かし目の前から来る敵にその主砲を向ける。
隣にはザンボットに乗る勝平がいる。弟に声をかける。
「いいか、勝平」
「ああ、兄ちゃん」
「動きを合わせろ」
こう言うのである。
「一気に消すぞ」
「ああ、まとめて撃墜するんだな」
「そうだ、イオン砲でな」
「イオン砲の一斉射撃でなんだな」
「そうだな、一太郎さんの言う通りだ」
「イオン砲ならやれるわ」
宇宙太と恵子が言ってきた。
「あれだけの数の敵でもよ」
「撃って、勝平」
「よっし、じゃあ派手にやってやらあ!」
勝平は今イオン砲を構えた。そのうえでキングビアルと動きを合わせる。
「爺ちゃん!父ちゃん!一兄ちゃん!」
「うむ!」
「撃て勝平!」
「合わせるぞ!」
「わかってるぜ、キチガイ博士の思う通りにはさせねえ!」
叫びながら今そのイオン砲にエネルギーを込めていく。そして。
「いっけええええええええーーーーーーーーーーーーっ!!」
「発射!!」
兄弟で同時に叫び敵を吹き飛ばす。そして残った敵はダンクーガが断空砲で潰す。
「いっけえええええ、断空砲だ!!」
この軍は遠距離射撃と続く切り込みで一掃した。そのうえでまた機動力を活かし別の軍に向かい殲滅する。そして遂に残るは博士の本陣だけだった。
「風間博士!」
闘志也はその本陣の敵を右に左に倒しながら博士を探していた。
「何処だ、何処にいやがる!」
「焦ることはないぞ、闘志也」
ジュリイがここで彼に言ってきた。
「博士は絶対にここにいる」
「ここにか」
「もう逃げ場はない」
その言葉が鋭いものになっていた。
「ここで逃げてももう粛清されるのがオチだしな」
「そうだな」
謙作は彼の言葉に頷いた。
「木星ごと俺達を倒す作戦も失敗した」
「それでこれで敗れたらだ」
ジュリイはまた言う。
「粛清される。それならここから逃げる筈がない」
「だからか」
「そうだ。絶対にここにいる」
彼は断言さえしていた。
「絶対にな」
「よし、じゃあよ!」
闘志也の言葉に力がこもった。
「探し出してやるぜ。絶対にな!」
「そうだな。博士、覚悟しろ!」
謙作も彼も続く。
「絶対に探し出すからな!」
ゴッドシグマは敵を倒しながら探す。そうして遂に。博士の旗艦の前に辿り着いたのだった。
「あれは!?」
「間違いないな」
ジュリイは謙作に対して言う。
「あの戦艦だ、あれに博士がいる」
「そうか、じゃあやってやらあ!」
闘志也はゴッドシグマを前に出してきた。
「ここでな。潰してやるぜ!」
「貴様等か!」
博士もまた彼等に気付いていた。
「このわしを倒すつもりか!」
「ああ、そうだ!」
「その通りだ!」
闘志也と謙作が彼に答える。
「よくも人類を裏切ってくれたな!」
「そして貴様の悪事はもうわかっている」
彼等はそれぞれ言う。
「これでな。覚悟しやがれ!」
「貴様もこれで終わりだ」
「ふん、戯言を」
彼等はそれぞれ睨み合いながら言葉を交えさせる。
「わしはここでは死なん」
「俺達を倒してか」
「貴様等ごときに倒されるわしではないわ!」
また言う博士だった。
「何があろうともだ。わしは勝つ」
「!?まさか」
「ああ、間違いない」
闘志也とジュリイが気付いたのだった。
「博士はよ、遂にな」
「完全におかしくなっている」
「そうか。だからか」
謙作も言う。
「今までのあの杜撰な戦術は」
「思えば最初から妙なところがあったさ」
闘志也は博士とのことを思い出していた。
「それが遂にこうなっちまったか」
「闘志也、同情はしないな」
「ああ、勿論だ」
とは言っても苦い顔はしていた。
「博士に引導を渡すのはだ。俺の役目だ」
「よし、仕掛けるぞ」
謙作も急かす。
「これが最後だ」
「博士、覚悟しやがれ!」
ゴッドシグマが今動いた。
「これで決めてやる!」
「させるものか!撃て!」
「は、はい!」
「わかりました!」
博士の乗艦も攻撃を浴びせる。しかしその攻撃は当たらない。
ゴッドシグマは複雑な動きをしながら博士の戦艦に向かう。そうして遂に。射程内に入ったと見て闘志也は二人に対して言ってきた。
「ここでな」
「やるんだな、闘志也」
「あれを」
「ああ、あれだ!」
ジュリイと謙作に対して告げた。
「あの技で決める。いいな!」
「ああ、やれ!」
「ここはこれしかない!」
「よし。行くぜ!
ゴッドシグマがここで翼を煌かせた。そうして。
「トリニティウィング!」
「機体はもたせてみせる!」
「気迫の勝負だ!」
ゴッドシグマが七色に輝きそのうえで全身を炎に包ませ博士の戦艦に突撃した。
「喰らえ博士!」
「な、何だあの攻撃は!」
「わからん!」
博士の周りがそれを見て騒ぐ。
「見たこともない攻撃だ」
「そんなことはどうでもいいわ!」
博士はこの期に及んでも正気ではなかった。
「撃ち落とせ!それで済む!」
「だ、駄目です!」
「攻撃が当たりません!」
しかし戦艦からの攻撃は当たらなかった。
「このまま。我等は」
「これで・・・・・・」
「五月蝿いわ!どけ!」
「うわっ!」
博士はここで照準を担当している部下を電気鞭で叩き飛ばした。そのうえで自分が照準にあたり攻撃を放つ。しかしそれでも当たらない。
「おのれ、何故当たらん!」
「終わりだ博士!」
今まさにゴッドシグマが体当たりをせんとしていた。
「これでな。遂にだ!」
「き、来た!」
「も、もう!」
艦橋の将校達が絶望の声をあげる。そうして遂にゴッドシグマは博士の戦艦を貫いた。
戦艦は真っ二つになった。そして忽ちのうちに炎の中に消えていく。
だが博士はまだ艦橋にいた。そしてそこから闘志也達に対して叫ぶ。
「何故だ、何故貴様等にだ!」
「敗れたっていうのかよ!」
「このわしが。何故貴様等に」
「あんたは間違ったんだよ」
闘志也が彼の問いに答える。
「だから敗れたんだ」
「何だとっ!?」
「狂ったんだ、そして許されないことをして地球を裏切った」
彼が言うのはこのことだった。
「だから今ここで死ぬんだよ」
「わしは死なん!」
しかし博士はそれを認めない。
「必ず。必ずロンド=ベルを!」
「う、うわああああーーーーーーーっ!」
「爆発がここまで!」
しかしそれが最後の言葉だった。艦橋もまた爆発しそこにいる者達の断末魔の声が響く。博士もその中に消え。残ったのは何もなかった。
「死んだな」
「ああ、今な」
ジュリイが闘志也の問いに答える。
「博士は今死んだ」
「最初は立派な人だと思っていたさ」
「その筈だったな」
謙作も言う。
「けれどな。狂ってしまったな」
「ああ。まさかこんなふうになるなんて思いもしなかったぜ」
闘志也はまた言った。
「何か。嫌な感じだな」
「気にするな、闘志也」
ジュリイはそんな彼に対して告げた。
「博士は自業自得だ。こうなるべくしてなった」
「破滅したってことかよ」
「そうだ。博士は破滅するべくして破滅したんだ」
このことを彼に言うのだった。
「だからだ。気にすることはない」
「そうか」
「そうだ。それにこれで木星は俺達の手に戻った」
既に戦闘は終わっていた。帝国軍は姿を消していた。
「そして多くの敵を倒すことができた。これは大きいぞ」
「そうだな。木星は俺達の手に戻った」
謙作も言った。
「次は土星だな」
「ああ、そうだ」
木星での戦いは博士の死と共に終わった。五千万を数えた大軍は百万足らずまで減り戦場を離脱した。彼等はクロッペン、テラルの軍に保護され土星に向かった。
「派手にやられたものだな」
「全くだ」
そのテラルとクロッペンがモニターを通じて話をしていた。
「木星は陥落し多くの戦力を失った」
「どうしたものか」
言葉を交えさせるその顔も暗いものだった。
「五千万の戦力がここまで減らされるとはな」
「この損失は大きい」
「殿下は何と言っておられる?」
テラルはクロッペンにこのことを問うた。
「既に報告はしたのだな」
「うむ、それは既にな」
クロッペンもこのことに対して頷くのだった。
「殿下に対して報告した」
「それで何と」
「我が軍は各宇宙より戦力を集めるとこのことだ」
まず言うのはこのことだった。
「そしてそのうえで。ロンド=ベルと土星で決戦を挑むとのことだ」
「そうか。土星でか」
「全ての戦力を集めてな」
「それは危険ではないのか?」
テラルはそれを聞いて危惧の言葉をあげた。
「地球に全ての戦力を集めると抑えが聞かなくなるぞ」
「それは私も危惧している」
クロッペンもそうなのだった。
「私もだ。それは危険だと思っている」
「では殿下を何としても」
「話を聞かれるような方だと思うか?」
しかしここでクロッペンは言うのだった。
「諫言を」
「むっ、確かに」
「そういうことだ。既に殿下もかなり焦っておられる」
クロッペンはまた言った。
「今の我が軍の状況もな」
「それでか」
「そうだ。どちらにしろ殿下は土星での戦いに全てを賭けておられる」
クロッペンの言葉が鋭いものになった。
「勝利の為にな」
「わかった。ならばだ」
テラルは苦い顔だったがそれでも頷いた。
「我等も。土星で」
「ロンド=ベルと最後の戦いだ」
やはりこれしかなかった。
「それでいいな」
「うむ」
「だが」
しかしここでテラルは言うのだった。
「いや、いい」
「どうした?」
「何でもない。だが多くの戦力を失った」
このことに強引に話をやるのだった。
「そうして戦力を集めているが」
「そのうえで決戦だな」
「そういうことだ。では土星にな」
「わかっている。向かおう」
彼等は土星にと落ちていった。今はそうするしかなかった。そして木星を奪還したロンド=ベルもまた。次の戦いに心を向けていた。
「さて、次だが」
「土星ですよね」
「そうだ。いよいよな」
大文字が皆に告げていた。
「これが帝国との最後の決戦になる」
「はい」
「いよいよ」
「間違いなく激しい戦いにもなる」
彼はこのことも一同に告げた。
「おそらく数もこの木星の時以上だ」
「っていうか奴等数ばっかりだよな」
「なあ」
これは既に言うまでもないことではあった。
「何か数で押してばかりっていうかな」
「それ以外ないよな」
「敵がその数で来れば裏をかくだけだ」
隼人はクールにこう述べた。
「裏をな。そうして攻めるだけだ」
「この木星の時みたいにだな」
「奴等は数を意識するだけで戦術をおろそかにしている」
竜馬にもこのことを言う。
「なら俺達はそこを攻めればいい。それだけだ」
「そうだな。確かにその通りだ」
弁慶も彼の言葉に頷く。
「奴等が数に驕ってるんならよ」
「しかし隼人よ」
ここで武蔵が言うのだった。
「そろそろ敵はシンクラインが出て来るよな」
「ああ、間違いなくな」
隼人は武蔵の言葉にも頷くのだった。
「あいつが出て来る、確実にな」
「だったら危ないじゃないか」
「なあ」
皆それを聞いて話す。
「あいつのことだ。卑劣な手段ばかりするぜ」
「そう考えるのは自然だよな」
「それはわかっている」
隼人もそれは読んでいた。
「あいつは絶対にな」
「だよな、やっぱり」
「じゃあ何で大丈夫だって言えるんだ?」
「大丈夫も何もそんな奴とよ」
また言い合う一同だった。
「戦うんなら用心に越したことはないんじゃないのか?」
「何があってもよ」
「それだ。あいつ等もそれは意識している」
隼人はそれも指摘した。
「特にシンクライン皇太子はか」
「そうですね」
ファーラもここで言った。
「あの皇太子は間違いなく仕掛けてきます」
「そうだ、絶対にな」
「それでどうするんだ?」
「仕掛けてるのがわかってるんならよ」
「どうやってかわすかだよな」
「いや、あえてかかる」
だが彼は言うのだった。
「その罠にな」
「おい、マジかよ」
黄金がそれを聞いて眉を顰めさせてきた。
「罠にかかるってよ。それじゃあまずいだろ」
「そうですよね」
錫石も言う。
「そんなことしたら余計に」
「私もそう思います」
これはファーラも同じ意見だった。
「それは」
「一体どういうことなんだ?」
竜馬が怪訝な顔で彼に問うた。
「あえて罠にかかるなんてことは」
「敵の策にかかってかかるんだよな」
弁慶も首を捻っていた。
「一体どういうことなんだよ」
「まずはその罠を見破ることだ」
隼人は冷静に告げた。
「見破りそれにかかる」
「ああ」
「それでか」
黒銅と青銅も言う。
「それからだな」
「どうするんだ?」
「罠にかかればそこで間違いなく攻めてくる」
隼人の言葉が続く。
「俺達はそこを攻めて反撃に転じる。これだ」
「そうか。それか」
「そこを攻めてか」
「そうだ。あえて罠にかかりそこで反撃だ」
これが彼の考えであった。
「それでどうだ」
「そうだな。それも面白いな」
「罠によるけれどな」
「シンラクイン皇太子のことです」
ファーラは顔を曇らせながらも言う。
「おそらく複数の罠を仕掛けているでしょう」
「だよな、あいつはな」
「絶対にそうしてるよな」
「その中にはあえて乗り易いものもある筈です」
ファーラは一同に応えまた述べた。
「それに乗れば必ずです」
「やれるな」
「はい、そうです」
一同の言葉に頷くファーラだった。
「ですからここは乗りましょう」
「了解。それじゃあな」
「それで仕掛けるか」
「それではだ」
大文字はここであらためて一同に声をかけた。
「土星に行く。そして」
「罠にかかりましょう」
「是非共」
「そうだ。だが考えられる罠は想定しておこう」
このことも考えておくのだった。
「しっかりとな」
「まずエネルギーや弾薬を減らしたり」
「他は機雷に」
皆すぐに考えだした。
「後はあれか?動きを止める」
「そういうところか」
「動きを止めるのが一番いいんじゃないのか?」
武蔵がここで言った。
「奴等のことだからそこを攻めてくるだろ」
「だよな。奴等のことだから」
「絶対にな」
「やってくるよな」
「機雷なら自分達も巻き込まれる恐れがある」
京四郎はそこを指摘した。
「そしてエネルギーや弾薬を減らすのも同じだ」
「巻き込まれるってわけね」
「そうだ」
ナナにも述べる京四郎だった。
「じゃあやっぱり動いてくるのは動きを止めるのだな」
「もうここぞとばかりに来るから」
「それを逆手に取ってか」
「それでいい」
京四郎はまた言った。
「では行くか」
「了解、それじゃあ」
「いざ土星へ」
こうしてロンド=ベルは土星に向かうのだった。あえて帝国軍の策に乗ることを決意して。土星でも激しい戦いがはじまろうとしていた。

第百三十話完

2009・5・21 
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