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茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
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17.時の茨

「ーーヴォイドは七歳以下の子供からしかだせない」

まただ........またこの夢だ。

前と同じように俺の目の前に白衣のメガネをかけた学者のような人が現れる。

「レディーの歳を聞くなんてデリカシーにかけるぅ」

水色の髪のショートの女の子がいる。

「それ以外の人間はそもそもヴォイドを持っていないはずなんだ」

この夢に何の意味があるんだ.......こんな状況で......

「ーーヴォイドの破壊は所有者のの死を意味する」

な、何だって!?
ヴォイドの破壊が所有者の死を意味するだって!?

「ヴォイドとは心だ。心の形だ。他に代わりのない、たった一つの存在。所有者自身なんだよ」

ヴォイドは代わりのない、たった一つの存在......だと、なら.......シオンのヴォイドはいったい?




「王様、大丈夫?また、うなされてたよ」

俺の顔をシオンが覗き込むように見る。

「大丈夫だ。それより集たちの動きはどうだ」

「ツグミの話だと今日、東京脱出作戦を行うらしいよ。もう、東京タワーに向かってる頃じゃないかな?」

東京脱出作戦.......集たちはエクソダスと呼んでるようだ。東京タワーにあるゴースト部隊の制御装置を破壊する作戦のようだ。

「それじゃあ、もうそろそろ俺たちも出るぞ。準備しろ、シオン」

俺は少し大きめのコートに右腕を通しもう一方の腕を通すはずの部分に左腕を通さず.......いや、通せないと言った方が正解だな。
俺の左腕は学校から脱出する時に切り落とされた。

左肩コートを羽織る。

「本当にいいの、王様?」

シオンは最終確認するように真剣な表情で俺に問う。

「王様を裏切った集を、みんなを......助けに行くの?」

「........助けに行く。集は不器用なだけだ。しかも俺はまだあいつを殴ってないからな!」

シオンは真剣な表情からいつもの笑顔になる。

「そうだね、王様!!それじゃあ、行こっか」

俺とシオンは向き合い、目と目を合わせる。

「王様、私を使って」

「借りるよ、君の心!!!」




日は暮れ、辺りはすっかり真っ暗になる。

「ツグミ、状況は?」

『アイアイ、もうそろそろ作戦開始の時間だよ』

俺とシオンは東京タワーの近くのビルに身を潜める。

絶対に何かが起こるはずだ!!
ダァトとアンチボディーズが集たちの作戦を成功させるわけがない。
絶対に何かをしかけてくるはずだ。

遠くの方で大勢の人の叫ぶような声が聞こえる。

『作戦が開始されたよ!!』

「了解!!」

俺とシオンは辺りを見渡す。

作戦が開始された。あいつらが動くなら今しかない。

どこだ!!どこからあいつらは来る!!?

「王様!!上!!」

シオンのが指差す空を見ると、暗い夜空の中、何かが落下してくる。
落下ポイントは集たちが戦ってる場所の真上だ。

「シオン!!バイクの準備しといてくれ!!」

「うん!!」

シオンはバイクのある一階に駆け下りてく。

あれを撃ち落とすせばいける!!

右腕が光る。
新たなるヴォイドの出現!!
新たに出現したヴォイドは.........巨大なバリスタ.....弩砲のヴォイド。その大きさは俺の体と同じくらいの大きさだ。

弩砲の照準を落下物に合わせ、トリガーに手をかける。

「落ちろ!!!」

レールガン!!光の塊が落下物を完全に貫く。
遠くで落下物が爆発する。

「よっしゃ!!って、喜んでる暇なんてなかった。シオン!!準備できたか!?」

ビルの外でOKマークを出すシオン。
俺はビルから飛び降りシオンの元へ向かう。

マントのヴォイドを取り出し、ダメージを軽減。

「シオン!!行くぞ!!」

「うん!!」

バイクに乗り、集たちの元へと向かう。

「待ってろよ!!集!!」




だが、俺たちの計画を崩す絶望の音は刻一刻と俺たちに迫ってきていた。

突如、頭に激痛が走る。

「うっ!!!!!」

また、羽虫どもがざわめきやがる!!!

『.......ソぼ.....』

この声......この音......

「まずい!!シオン離れろ!!!」

『あソぼ!!!!!』

すでに遅かった。
後方には前に現れたエンドレイヴ........黒のシュタイナーが現れる。

黒のシュタイナーが俺たちの乗っているバイクを吹き飛ばそうとする。

その瞬間、あの夢を思い出す。


「ーーヴォイドの破壊は所有者のの死を意味する」


「そんなことさせねぇよ!!!」

俺はマントのヴォイドでバイクを包み込む。
黒のシュタイナーが俺たちごとバイクを吹き飛ばす。

その衝撃でバイクのヴォイドは空中でシオンの体にもどる。

「だ、大丈夫か.......シオン」

「う、うん......何とか」

マントのおかげでダメージは軽減されたが黒のシュタイナーは俺たちに向かって発砲してくる。

『あソぼ!!!アそぼ!!!あソボ!!!』

黒のシュタイナーは乱射が如く俺たちに発砲してくる。
マントのヴォイドで守り切っているがそれも時間の問題だ。ヴォイドと言っても、無限に守りきれるわけじゃない。

「このままじゃ、耐えきれない。俺が時間を稼ぐからシオンは何処かに隠れといてくれ」

「うん、わかった!!でも、カイ!!これだけは約束して........無茶しないでね」

「おう!!!」

新たにヴォイド取り出す。
処刑剣を取り出す。

『あレ?あれレ?タまぎレ?』

「今だ!!走れ!!!」

シオンは走って行く。

『たーゲッと!!ニがさナイ!!』

黒のシュタイナーは走るシオンの方に向かう。

「お前の相手は俺だ!!!」

処刑剣から斬撃を繰り出す。それは確実にヒットした......がキズがつくどころかまるで攻撃でも受けてないような感じだ。

『ジャま!!!!!』

黒のシュタイナーからミサイルが4発飛んでくる。
それをマントで防ぐが.......防ぎきれない。
ミサイルの爆風に巻き込まれ飛ばされる。

「王様!!!」

シオンの声が聞こえる。
でも、その声は掠れたような声だ。

ーーダメだ......力が入らない.......ヴォイドも取り出せない。

掠れる視界の中、黒のシュタイナーが迫ってくる。

ーーここで俺は死ぬのか?


「だらしないなぁ。それでも王なの?」

誰かの声がする。
その声は無邪気な子どものような声だ。

「おい、起きろ!!」

今度は低めの男の声だ。

その声を聞き、重い目を開けるとそこには、赤いコートにフードをかぶった長身の男と水色のショートでいのりが着ていた服の色違いを着ている少女が。

「あなたたちは?」

男の方が口を開く。

「死人だ」

「うわぁ、死人だって恥ずかしい、スクルージ」

水色のショートの少女が小馬鹿にした感じで言う。
というか、この少女はあの夢に出てきた少女。

「黙れ、キャロル!!」

「コワァい、スクルージが怒った」

何かコントを見てるような感じだ。

「死人ってことは俺は死んだんですね」

「お前はまだ死んでない」

「そうだよ、まだ君は死んでないよ」

「じゃあ、君たちは?」

「まぁ、クリスマスの亡霊ってとこだね」

意味がわからない。

「まぁ、プレゼントを届けにきたんだよ」

「プレゼント?」

「お前の右腕に入ってる最強のヴォイドをな」

「........最強のヴォイド?」

視界に映る、二人の姿が遠のく。

「その力で今度こそ守って見せろ。行くぞ、キャロル」

「待ってよ、スクルージ!!」

二人は姿を消し、再び視界に黒のシュタイナーが現れる。

『コれデ、オわリ!!!』

俺に向かいミサイルを発射してくる。

「王様!!!」

シオンはすぐ近くまで来ていた。
逃げろって言ったのに!!

力を振り絞り戦輪のヴォイドを取り出し、ミサイルを消滅させる。

『エっ!!!!!』

俺はシオンに向かい走る。

「王様!!!!」

「シオン!!!」

俺はシオンの手を取り逃げる。

「シオン.....俺から絶対に離れるなよ」

「うん!!!」

右腕が今だ発せられたことのないくらいの光を放つ。その輝きは俺たちを包み込んでいく。
そして新たなるヴォイド........最強のヴォイドが姿を現す。

俺の右腕から現れたヴォイドは........茨。
その茨はこの場全てを包み込んでいく。

「茨だね」

「王冠だ」

この会話どこかでしたような気がする。

「茨の王冠(ギルティクラウン)だ」

茨はとどまることを知らず、全てを飲み込んで行く。

『なニ!?ナに!?あぁぁぁぁぁっ!!!!』

茨は黒のシュタイナーを突き刺す。
それでも茨は止まることをしない。

「王様!!!このままじゃ、みんなの所に!!?」

「わかってる!!でも、制御出来ないんだ」

茨は俺のいうことを聞かない。
これが最強のヴォイド!!!
強すぎる!!!

「止まれ!!!止まれ!!!止まれよ!!!!」

それでもヴォイドは止まらない。
ーーこのままじゃみんなが.......

「クソッ!!!!!」

諦めかけた次の瞬間、俺の体を光が包み込む。
それは前に俺が綾瀬のヴォイドを取り出した時のように......

その光の正体は俺の胸が光っていた。
その光はヴォイドを取り出す時の光のように。

「これは......ヴォイドの光?」

「王様.........自分を使って」

シオンはいつもの笑顔で俺に言う。

「あぁ.......今こそ俺自身を解き放つ!!!!」

茨が出続ける右腕を力を全力で入れて光る俺の胸にブチ込む!!!

「うっ!!!あっ!!!」

胸から結晶が現れ、その結晶は俺の左腕全体を包み込む。
結晶が砕け、現れたのは.......左腕そのものだ。
だが、人間の腕とは言い難い腕だった。人間の腕の様に手も腕もちゃんとあるが色は真っ黒で緑色のラインが中央に一本入っている。

「これが.....俺のヴォイド」

ヴォイドはその人のトラウマや心を映し出す鏡。
つまり、俺のヴォイドの能力は.......

俺は自分の右腕を左手で掴む。

すると、左手が触れた瞬間、出現し続けていた茨が止まり、茨が右腕の中に戻って行く。

茨は完全に消え去った。

「これが王様のヴォイド.......」

「行くぞ、シオン。集を助けに!!」

「うん!!!行こ!!!」




「......何だよ、これ」

あり得ない光景.......いや、あり得てはいけない光景が俺たちの目の前にあった。

巨大なクレーターのような穴に落ち、右腕を抑え倒れこむ、集。集の右腕は消え去っている。
集の横で倒れこむ、いのり。
そしてそれを取り囲むエンドレイヴ。
そして........集の前に立つ白髪、長髪の男。その姿は髪の色は違ってもわかった。

それは........ガイだ。

「何だよ、これ!!!!!!」

















 
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