| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

16.途絶えた道

.........何処で何を間違えたのだろう
.........俺たちの道は何処で途絶えたのだろう
.........これも俺が背負った罪の一つだというのか




「ツグミ、集の様子はどうだ」

「どんどんエスカレートしてきてるよ」

「........そうか」

変わることがない天井を見上げ、俺と集の道が途絶えた......あの時を思い出す。


あの出来事の始まりは祭の死だった。
あの日......あの言葉を最後に俺の知ってる、集は消え去った。

「.........僕は王になる」

この発言の次の日から集は"ヴォイド"という権力を振りかざし生徒たちを支配した。
最初の方は反逆する生徒もいたがレッドラインが迫る恐怖......アポカリプス発症の恐怖......暴力や略奪......そんな中、"ヴォイド"は絶対的に明確な力。
そんな力を持つ集に逆らうことは......この閉鎖された小さな世界では死を意味するようなもの。

俺とシオン、綾瀬を含めた少数の生徒は反乱を起こすが......集の勢力は生徒......アンチボディーズとはわけが違う。
俺は生徒を傷つけることが出来ず、集に捕らわれ、今は牢屋に閉じ込められている。

ヴォイドを使おうにも腕が拘束され、包帯で縛られてるため、使用することも出来ずにココにいる。

この牢屋で外の情報を得るのはツグミのふゅーねるだけだ。

「今日はやけに騒がしいけど何かあったのか?」

『アルゴが学校を現れたよ』

「アルゴがっ?」

アルゴの奴、生きてたのか.......良かった。

「で、今は何処にいるんだ?」

『カイと一緒。.......今、捕まってる』

「........そうか」

アルゴが来たなら行けるはずだ。

「ツグミ、頼みがある」

『なに?』

「アルゴのことだ、脱走するのは時間の問題だろ。アルゴに俺を助けにくるように言ってくれないか」

『あれ?カイにしては弱気だね。てっきり「あいつの手助けなんていらねぇ」とか言うと思ったのに』

「お前の中で俺はどんなキャラだよ。とりあえず、頼んだ。あと.......シオンの位置を教えてくれ」

『アイアイ、了解したよ』

この作戦がうまく行けば、集を止めることが出来る。

ーー待ってろよ、集!!
ーーテメェの目を覚まさせてやるよ!!






外が騒がしくなってきたな。
いよいよか!!

ガシャン!!
扉が開く音。

「やっときたか........アルゴ」

「助けに来てもらってその口とは随分偉くなったもんだな.....カイ」

俺の腕の拘束をアルゴに解いてもらう。

親衛隊から俺とアルゴは逃げる。

「で、アルゴはどうするんだこれから」

「俺は供奉院を探しに行く。お前は」

「俺はシオンを探しに行く」

前方から親衛隊が......後方からも親衛隊が。

「それじゃあ、後で!!」

「死ぬなよ、アルゴ!!」

「テメェもな、カイ!!」

俺とアルゴは左右別々に別れる。

「ツグミ、シオン位置は」

通信機でツグミに確認する。

『生徒会室にいるよ。多分、カイの行動は読まれてるから誰かいてもおかしくないから気をつけて!!』

「了解!!」

俺はキツく縛られた包帯を外す。

ーー待ってろよ、シオン!!!

「目標、茨カイ、発見!!」

前方に二人の女生徒が鎌のヴォイドと銃のヴォイド持ち、俺の前に立ちふさがる。

「邪魔だ!!」

マントのヴォイドを取り出し、そのまま前方にいる二人に突っ込む。

「あのヴォイドはガードしか出来ない。行くよ」

「集に吹き込まれたならその情報は嘘だ!!これがこのヴォイド.......聖骸布の真の力だ!!ケガすんなよ!!」

聖骸布.....マントの真の力!!
聖骸布から鮮血と言わんばかりの血が噴き出す。その血は雨のようにその場を包み込む。

次の瞬間、雨のように降り注ぐ血が落ちた廊下に無数の亀裂が現れる。いや.....現れたのではない、俺が作り出したのだ。

聖骸布の真の能力は......伸縮自在の布が所有者を守りながら布から噴き出る血で相手を切り裂くヴォイド。

雨のように降り注ぐ血を女生徒2人が完全に避けられるわけもなく彼女らの体からはナイフで切られたように血が噴き出る。

「「キャァァァ!!!」」

「ゴメンな、悪く思わないでくれ」

二人の女生徒を抜けた先の生徒会室に俺は飛び込むように入る。

そこには十字架に縛られるシオンの姿が。

「シオン.....助けに来たよ」

「うっ.....う.....お、王様」

シオンの目からは大粒の涙がポツポツとこぼれでる。

「行くよ、シオン......集を止めに」

「うん!!」

ーー待ってろよ、集!!
ーーお前を一発、ぶん殴らねぇと気がすまねぇ!!

『カイ!!大変よ!!アルゴがっ!!』

「どうした、ツグミ!?」

『アルゴと連絡が取れないの!!最後にアルゴがいたのは、体育館でそこにはシュウが!!』

「集の奴!!わかった、体育館に向かって見る。ツグミも気をつけろよ」

『うん!!カイも気をつけて!!』

ツグミとの通信を切り、俺が走り出そうとすると......「待って、王様!!」とシオンが止める。

「どうしたんだよ、シオン?早く行かねぇと、アルゴが!!」

「それなら......私を使って、王様!!」

シオンはそう言いながら俺の右手を掴み、胸の前まで持ってきて俺と目を合わせる。

その瞬間、シオンの胸が光る。

「王様が思う......この状況で必要なヴォイドを思い浮かべて」

この状況で必要なヴォイド.......

「それじゃあ、使うよ......君の心!!!」

シオンの胸に手を突っ込む。

そこから出てきたヴォイドは........銀色の二輪車......バイクが現れた。

「それじゃあ、行こっか、王様!!」

「おう!!飛ばされないようにしっかり掴まってろよ、シオン!!」

俺とシオンはバイクにまたがり体育館へ向かい全速でバイクを走らせた。





体育館の壁を破壊して体育館に侵入するとそこには......体育館の二階席に集と八尋......そして階段に倒れこむアルゴ。

「集!!お前自分がなにしてるのかわかってんのか!?」

「君たちこそ自分たちがなにをやってるのかわかってるの?僕に逆らえばどうなるか.....」

「だから何だってんだよ!!俺はお前をぶん殴りに来ただけだ!!とっとと降りこいよ、集!!」

「.......八尋」

集は八尋のヴォイド......ハサミを取り出し二階から飛び降りてくる。
普通なら骨折してもおかしくない距離だが、ヴォイドを取り出した者の身体能力は飛躍的に上昇する。

「それじゃあ、決着をつけようか、壊」

「俺はお前を殴りに来ただけだ。決着なんてつける気なんてねぇよ」

右腕が光る。
光が出る時はいつも決まって新たなるヴォイドの出現の時だ。
新たに現れたヴォイドは.......巨大なチェンソー。銀色ベースに紫色に光るチェンソー。刃は両側についており見た目からして切れ味は良さそうだ。

集がこちらに向かい走り、ハサミの刃を俺に突き刺すように出す。
八尋のヴォイドは命を断つヴォイド。

ハサミをチェンソーで防いだのち、薙ぎ払う。
集は後ろ飛び避ける。

「僕がここで死ねば東京から出ることは不可能になる。それでも僕に逆らうの」

「知ったこっちゃねぇよ。第一、俺とお前のヴォイドを合わせればあの程度のゴースト部隊倒せないわけないだろ」

「それも出来たかも知れないけど、でも........祭は死んだんだ!!!」

集が叫ぶ!!

「それなら、何で、祭が死んだ時、僕たちの前に来てくれなかったんだ!!!なんで、勝手に壊も出て行ったんだよ!!!結果として颯太たちが来たから壊のせいにはならなかっただけで、颯太たちが来なかったら君が祭を殺してたんじゃないか!!!」

集の叫びに俺は言い返す言葉がない。
そうだ、颯太たちが来なければ俺が祭を殺してたかもしれない。

「王様!!」

体育館の入口付近にいたシオンが親衛隊に捕われている。

「これで終わりだね、壊」

集はハサミをこちらに向け、迫ってくる。

「そのヴォイドを地面に置くんだ」

集の言われるがままに俺はチェンソーを床に置く。

「あと、もう一つのヴォイドを取り出して床に置くんだ」

言われるがまま、処刑剣を取り出して床に置く。

「これで君はヴォイドを使えない」

集はハサミを開き俺の首を挟む。

「君は生かしておけば脅威になりかねないし、ここまでの反逆を起こして生かしておけばみんなに示しがつかない。........ゴメンね.......壊」

.........これで俺も終わりか

「王様!!」

シオンが叫び親衛隊をはねのけこちらに迫ってくる。

「.......シオン」

まだ死ねない!!

後ろに下がり、ハサミを首から外し床の処刑剣を手に取り、ハサミとぶつかる。

「やっぱ、まだ死ねねぇや」

集は後ろに飛び、下がる。

「シオン!!」

「王様!!」

シオンが俺に飛び込んでくる。

「状況が元に戻っただけのこと......やれ!!親衛隊!!」

体育館の中央にいる俺たちが親衛隊が囲む。

「これは逃げた方がいいな、シオン」

「そうだね、王様」

右腕が光る。
さらなるヴォイドの出現だ。

光の中から現れたヴォイドは..........金色の杯

親衛隊はヴォイドを警戒したが出てきたヴォイドが杯だったため、再びこちらに向かってくる。

この杯が俺たちのピンチを救うヴォイドなら力をかせよ!!!

すると杯から何かが飛び出してきた。
それは銀色に輝く虫だ。
バッタのような姿の虫が大量に杯から飛び出てくる。

どうやらこのヴォイドは杯から虫を出現させるヴォイドのようだ。
大量に飛び出した虫はあっという間に俺たちを包み込み姿をくらませる。

「これなら行ける!!」

シオンと体育館から出ようすると後ろから誰かの気配を感じた。
それは俺ではなく、シオンを狙っている。

「シオン!!」

「えっ?」

大量の虫の中から現れたのは鎌。
その鎌は完全にシオンに向かっている。

間に合え!!!

グシャ!!

謎の音とともに血が噴き出した。
それは聖骸布を使った時のように地面に鮮血が飛び散る。
それとともに何かが地面に落ちる。

それは細くて棒の様なものだ。
それは真っ赤に染まっている。

「あぁっぁぁ!!!」

次の瞬間、俺の左腕に激痛が走る。
それは今までに体験したことのないくらいの激痛が走る。

「うっっっ!!いっ、行く.....ぞ。し、シオ....ン」

「でも.....王様!!.......腕が!!」

そう、さっきの鎌の餌食になったのは俺の左腕。
今の左腕は肘から下が存在せず、肘からは大量の血が流れ出る。

その状態でシオンのヴォイドを取り出す。
さっきのバイクだ。

「早く乗れ!!逃げるぞ」

「う、うん」

俺たちはそのバイクに乗り、学校から抜け出した。




「王様、ゴメンね」

バイクを戻し、どこかわからない建物に避難する。

「ゴメンね、私のせいで、ゴメンね」

シオンは俺の前で泣き崩れている。

「気にするなよ。シオンの無事なら腕の一本安いもんだ。幸い切られたのは左腕だ。右腕じゃない」

俺の腕を切ったのは多分、集だ。
王の力を持たずにあそこまでの力は出ない。

これで俺と集の道は完全に途絶えた。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧