| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百十七話 風間博士の狂気

               第百十七話 風間博士の狂気
      風間博士がロンド=ベルに合流した。まず喜んでいるのは闘志也達だった。
「さあ、これで勝ったようなもんだぜ」
「博士が来てくれたからね」
「後は安心してくれていいぜ」
ジュリイと謙作も言っていた。彼等は上機嫌になっていた。
そんな彼等の言葉を聞いて他の面々は。とりあえず彼について話をするのだった。
「そんなにすげえ人なのかよ」
「らしいね」
沙羅が忍に対して応えていた。
「どうやらね。こっちの世界じゃね」
「何か俺達の世界でいったら早乙女博士とか兜博士みたいなものかな?」
「そうだな」
亮は雅人の言葉に頷いていた。
「聞いた限りではな」
「そうなんだ。早乙女博士と」
「そうみたいだね」
沙羅は亮に対しても応えていた。
「どうやらね。それで忍」
「何だよ」
「あの連中の言うことだけれどね」
刹那達に関する言葉である。
「あんたはどう思うんだい?」
「へっ」
忍はまずはこの言葉で返したのだった。
「どうだろうな、あれはよ」
「杞憂だっていうんだね」
「いや」
しかしここで忍はその目を鋭くさせた。
「どうかな。あの博士ちょっと見たけれどな」
「どうだった?」
「何かやべえな」
忍はこう言うのだった。
「雰囲気がな。やべえぜ」
「あんたはそう見るんだね」
「ああ」
これが忍の考えであった。
「俺も直感だけれどな」
「そうなんだね。あの博士はやばいって見るんだね」
「何かよ、狂ったものを感じるんだよ」
忍の目は奇くも刹那達と同じものを見ていた。
「真っ当に済めばいいけれどな」
「そういくかな」
「わからないな」
亮はまた雅人の言葉に応えた。
「だが。あの博士が来ることによって」
「何かが起こる」
「それは間違いない」
亮もまた感じているのだった。
「何かがな」
「まあ何が起こってもね」
沙羅も言った。
「いいようにしておくか」
「そうしておくか」
アランが応えた。
「しかもだ」
「しかも?」
「あの博士にはやはり危険な空気がある」
彼もまた感じ取っていたのだった。
「少しでも目を離せば何があるかわからない」
「おかしいってのかよ」
「簡単に言えばな」
忍にも剣呑な顔で述べた。6
「何があるかわからない。注視しておこう」
「そうだね。とりあえずはね」
沙羅が最後に言った。彼等は風間博士を明らかに警戒していた。
皆博士に対してはそれぞれだった。しかし実際に捕虜は彼に手渡され預けられることになったのだった。このことに対してナタルがマリューと話をしていた。
「捕虜は確かに引き渡しましたが」
「ええ」
「大丈夫でしょうか」
ナタルは不安げな顔で言うのだった。
「果たして」
「こちらの世界の人達は大丈夫って言うけれどね」
「はい」
ナタルの言葉に対して頷く。
「それは」
「けれどね」
しかしナタルの言葉は何かが奥歯に挟まったかのようだった。
「私はね。どうもね」
「艦長もですか」
「あの人、危ない人よ」
奇しくも忍達と同じ見方だった。
「目でわかるわ」
「目ですか」
「サングラスをしてるからわかりにくいけれど」
まずこう言う。
「それでも。その奥にある目はね」
「危険ですか」
「研究の為なら何でもするような目ね」
「そこまで」
「はい、その通りです」
今のマリューの言葉に応えたのはウェンディだった。
「私もそう思います」
「ウェンディさんもですか」
「バジルールさんも御聞きだとは思いますが」
珍しく張り詰めた雰囲気のウェンディだった。
「ゼツですが」
「確かラングランの」
「はい。人を犠牲にして研究を行っていた錬金術師です」
あの彼のことを話すのだった。
「彼と同じ目をしています」
「あの剣聖シュメルの頭脳を魔装機に移植したという」
「ロザリーの大切な人をそうやって殺した彼ね」
「その目と同じです」
こう二人に話すのだった。
「ですから。目を離せば」
「そうね。何をするかわからないわね」
また言うマリューだった。
「警戒が必要ね」
「ですが艦長」
ここでナタルは暗い顔になった。
「風間博士はこちらの世界の要人でもありますし」
「ええ」
「我々からは何の手出しもできません」
「そうなのよね。何もできないのよね」
マリューもこのことが歯がゆくして仕方がなかった。
「何をしてもね」
「少なくとも我々の世界の早乙女博士や大塚長官とは違います」
ナタルはまた言う。
「むしろ」
「三輪長官ね」
「はい、あの人です」
その連邦軍きっての問題人物だった彼である。
「あの人と同じです。このままでは」
「何かあってからじゃ遅いけれど」
マリューは達観したようにして述べた。
「何かがないとわからないものね」
「何かが、ですか」
「そうよ。何かがね」
マリューはまた言った。
「人間自体がそうだから」
「では艦長は」
「今は何もないことを祈るしかないわ」
こう言うのだった。
「今はね。それよりも」
「それよりも」
「これからのことだけれど」
とりあえず風間博士のことはこれで打ち切るのだった。打ち切るしかなかった。
「ガルラ帝国は遂に本気を出してきたわ」
「はい」
やはり話はこのことだった。
「かなりの数を投入してきたけれど」
「先の戦いでは百万を超えていました」
「物凄い戦いだったわね」
マリューも当然ながら前線にいて指揮を執っていた。アークエンジェルも何度も攻撃を受けエネルギーや弾薬の補給を必死に続けていたのだ。
「けれどああした戦いがね」
「今後もですか」
「そう思っておいたほうがいいわね」
こう言うのだった。
「とりあえず補給はこちらの連邦軍がしてくれるけれど」
「それは充分にあります」
ナタルは元の彼女らしいきびきびとした声に戻っていた。
「今私達がいるこの日本に次々と運び込んでくれています」
「だから戦う分にはね」
「問題はありません」
「後は敵の数に押し切られないだけね」
残る問題はこれだけだった。
「それだけね。それじゃあ」
「戦術を変えますか」
「その必要もないわ」
それはいいというのだった。
「どうせ相手も新潟の時と同じでしょうし」
「ただの物量作戦ですか」
「敵の戦術自体は単純ね」
マリューはもう見抜いているのだった。
「ただ数で押し潰そうとするだけよ」
「それでは我々は」
「ええ。それを迎え撃つだけ」
こう言った。
「それだけよ。前の戦いはそれで何とかなったし」
「はい」
「今後も。補給さえ満足なら勝てるわ」
「それではそのように」
「さて、と」
ここまで話して立ち上がるマリューだった。
「ナタル、貴女もそろそろラーディッシュに戻るといいわ」
「ラーディッシュにですか」
「私もアークエンジェルの艦橋に入るわ」
ナタルに対して告げた。
「何時相手が来てもいいようにね」
「攻撃を選ぶ権利は向こうにあります」
ナタルは冷静に述べた。
「だからですか」
「そうよ。癪だけれど攻めるのは向こうよ」
少し面白くなさそうにいうマリューだった。
「こっちは今は受け手だから」
「そうですね。攻められそれに迎撃するしかありません」
「だからよ。何時来てもいいようにね」
「それでは私も」
ウェンディも席を立った。
「グラン=ガランに戻ります」
「そうするのね。じゃあまたね」
「はい、また」
「お話しましょう」
こうそれぞれ言って別れる。マリューがアークエンジェルの艦橋に入るともうその瞬間だった。敵襲を知らせる警報が鳴ったのだった。
「幾ら何でもタイミングがよ過ぎるんじゃなくて?」
「そうですよね」
既に艦橋にいたサイが彼女の言葉に応える。
「僕も今さっきまでレーダーとかのチェックをしていましたけれど」
「あら、御苦労様」
「何かがあってからじゃ遅いですから」
こうマリューに述べてきた。
「ですから」
「そうね。何かあってからじゃね」
先程のナタル達との話を思い出した。
「遅いのよね」
「!?艦長」
サイは今のマリューの顔を見て声を出した。
「どうかしたのですか?急に」
「あっ、何でもないわ」
顔に出ているのに気付いてすぐに元に戻した。
「気にしないで」
「そうですか」
「それよりも今ここにいるのは貴方だけなの?」
サイに対して問い返した。
「後のメンバーはまだなのかしら」
「あっ、来ました」
言っている側からだった。
「艦長、遅れてすいません」
「間に合いました?」
「じゃあ今から」
ミリアリア、トール、カズイが慌てて入って来た。ノイマンもである。
彼等はそれぞれ配置につく。マリューはそれから彼等に言った。
「いえ、グッドタイミングよ」
「そうなんですか」
「私はたまたまここに入ったからだったから」
真相はあえて隠していた。
「だからね。いいタイミングよ」
「だったらいいですけれど」
「それじゃあケーニヒ少尉」
あえて操縦席のトールをこう呼ぶ。
「アークエンジェル発進用意」
「わかりました」
「さて、今度は何処かしらね」
「仙台だ」
モニターに大河が出て来て述べた。
「仙台にガルラ帝国軍が現われた」
「仙台ですか」
「そうだ。すぐにそこに向かう」
こうマリューに述べた。
「全軍でな。今回もかなりの数のようだ」
「どれ位ですか?」
「今いるのだけで六十万だ」
大河はミリアリアの問いに答えた。
「だからだ。すぐに向かうぞ」
「わかりました」
カズイが彼の言葉に応える。
「それじゃあすぐに」
「アークエンジェル発進」
マリューは艦長の席に座り指示を出した。
「すぐに仙台に向かうわ。いいわね」
「はい、わかりました」
「了解です」
皆その言葉に応える。こうしてロンド=ベルは今度は仙台に向かったのだった。
「よっし!また派手に暴れてやるぜ!」
「あら、はっちゃん」
今回も威勢のいいハッターにフェイが声をかける。
「上機嫌っていうかハイテンションじゃない。AIの故障?」
「誰のAIが故障だ!誰の!」
仙台に向かいながらもいつもの調子であった。
「この俺の!何処がおかしい!」
「もう全体が」
フェイもいつもの調子である。
「本当に連戦でポンコツになってるんじゃないの?修理しても無駄なんじゃないの?」
「おのれ!何という口の減らない女だ!」
「何でうちにはこんなのしかいねえんだ?」
エイジはそんなフェイを見て言った。
「アスカと海とかよ。あんなのばかりじゃねえかよ」
「あら、言うわね」
その海がエイジの前に出て来た。
「私みたいな奇麗な娘捕まえてあんなのはないでしょ、あんなのは」
「だって御前もやかましいだろ」
エイジも負けてはいない。
「しっかりよ」
「私の何処がやかましいのよ」
「事実やかましいじゃねえか」
やはり言い争いになる。
「アスカといい御前といいよ。どうにかならねえのかよ」
「言ったわね!」
「言って悪いかよ!」
「もう許さないわよ!」
早速ヒートアップする海だった。
「この赤髪のオタンコナス!」
「オタンコナスってどういう意味だ!」
「馬鹿って意味よこの馬鹿!」
「何ィ!?手前似た声が多いからって威張るんじゃねえぞ!」
「悪い!?それだけ人気があるってことよ!」
話が変な方向に向かっていた。
「そういうあんたは二人だけじゃない、シンと!」
「主役だからいいんだよ!」
「他には紫のドラゴンも似てるわよね!」
「羨ましいだろ!」
言い争いが妙な方向に向かっていた。皆その言い争いを遠巻きに見ていた。その中で光はぽつりと風に言うのだった。
「なあ風ちゃん」
「何ですの?」
「私も似た声の人欲しいな」
「そうですわね」
これは風も同じ意見だった。
「私も。そうした方がおられなくて」
「その点海ちゃんが羨ましいな」
「モコナさんもそうですわ」
「ぷう、ぷう」
ここで楽しそうに声をあげて跳ねるモコナだった。何気に声が似ている人間が多いというのがロンド=ベルでは話題にもなっているのだった。
何はともあれ仙台に到着した。仙台に今まさに上陸せんとしているガルラ帝国の大軍が既に展開し事態は一刻を争う状況であった。
「すぐに突撃だ」
「突撃ですか」
「このままでは市街に入られる」
ダイテツはこうテツヤに述べた。
「それだけは防がねばならん」
「だからですか」
「敵に突撃をかけその進撃を止める」
まずはこれであった。
「そのうえでだ。さらなる上陸を止めるのだ」
「それでは今から」
「そうだ、全軍突撃」
命令は簡潔だった。
「すぐに行くぞ。いいな」
「わかりました」
「全軍突撃!」
ダイテツの指示が下る。こうしてロンド=ベルはそのまま帝国の大軍に突入した。今回はいきなり派手な接近戦からはじまった。
「おらおらおら!」
ヂボデーが派手に拳を繰り出し帝国のマシンを叩き潰していく。
「御前等がどれだけいようが敵じゃねえんだよ!」
「その通りさ!」
サイシーは飛翔した。そして。
「おいら達だって強くなってるからね!」
言いながら蹴りを繰り出す。接近戦ならば彼等のものだった。
当然アルゴとジョルジュもいる。彼等も派手に闘っている。
ボルトガンダムのハンマーが唸る。一撃一撃で敵を潰していく。
「相変わらずお見事です」
「そちらもね」
こうジョルジュに応えるアルゴだった。
「見事だ。そのビット」
「何、慣れです」
気品のある声で返すジョルジュだった。
「これもまた」
「慣れか」
「大軍との接近戦も何度もありましたから」
だからだというのである。
「この程度は」
「確かにな。しかしだ」
「はい」
ここで二人は周りを見る。
「敵は周りに幾らでもいる」
「しかも次々に上陸してこようとしています」
戦局は必ずしも楽観視できるものではないのだった。
「ここは。何としても」
「退けなければならない」
こう言い合い闘う彼等だった。アレンビーもフラフープとリボンを手に縦横無尽に暴れる。その横にはレインとドモンが共にいる。
「いい、アレンビー」
「ええ、わかってるわ」
アレンビーはレインの言葉に応える。
「無謀な戦闘は駄目ってことよね」
「数が多いわ」
レインが言うのもやはりこのことだった。
「だからね。ここは」
「わかってるわ」
アレンビーもこのことは充分わかっているのだった。
「迂闊に動かずね」
「そういうことよ」
「しかしだ!」
だがここでドモンが叫ぶ。
「目の前にいるなら!誰であろうとだ!」
「左様、ドモン殿!」
キメルも来た。
「ただ倒しましょうぞ!」
「誰であろうが俺の前に立つなら!」
ドモンが拳で戦艦を一撃で撃沈させた。派手な大爆発が空中で起こる。
「倒す!それだけだ!」
「拙僧とて!」
キメルはマンダラガンダムの杖を振り回す。それで敵を次々と叩き潰す。
「この通り!幾らいようともだ!」
「この世界を脅かそうとするなら!」
「拙僧達がお相手つかまつる!」
彼等は無謀ではあったがそれでもそれだけの強さがあり闘っていた。ロンド=ベルはまずは上陸しようとする軍を完全に粉砕した。そしてそのうえで海や空にいる敵に向かって攻撃を仕掛けてきたのだった。
勢いは瞬く間にロンド=ベルのものになった。しかしそれでもガルラ帝国軍は攻撃の手を緩めない。後方の本陣も落ち着いたものであった。
「ゼオ=ガットラー閣下」
「うむ」
大柄な男が美女の言葉に応えていた。
「戦闘開始から十分で十万機を失いました」
「十万を十分でか」
「はい」
美女はこう彼に述べた。
「先の新潟では四十分でしたがそれは」
「攻撃を受けたのは我々だ」
ガットラーと呼ばれた男は言った。
「ならばこれも当然だ」
「当然ですか」
「動じることはない」
彼は言った。
「このまま攻撃を続けよ。そしてだ」
「そして?」
「いつもの通りだ」
今度はこう言うのだった。
「撤退は死刑だ」
「はっ」
美女は彼のこの言葉に対して敬礼で応えた。
「それではそれもまた」
「伝えておけ。そして」
ガットラーの言葉は続く。
「前線のネグロス将軍とガロ将軍に伝えよ」
「何とですか?」
「万難を排し仙台を占領せよ」
彼が言うのはこの指示だった。
「わかったな。何があろうともだ」
「わかりました。それでは」
「そしてローザよ」
今度はこの美女ローザ=アフロディアに声をかけてきた。
「御前も必要ならば前線に向かえ」
「私もですか」
「そうだ。その時は私が指示を出す」
重厚な声での言葉だった。
「わかったな」
「はっ、それでは」
ここでも敬礼で応えるローザだった。
「そのように」
「このまま攻撃を続ける」
彼は言う。
「そして仙台を占領し我等の最初の基地とするのだ」
彼はこう考えていた。そのうえで攻撃を続ける。損害はさらに増えていく。しかしそれでもその攻撃の手を緩めることはなかった。
三十分経った。帝国軍の損害は三十万に達した。しかしそれでも彼等は攻撃を続け仙台に上陸を敢行しようと躍起になっていた。
それはロンド=ベルにもわかった。彼等は仙台の時と同じように守りに入った。そのうえで彼等を迎え撃ちその数を減らそうとしていた。
「撃て!」
トダカが主砲の発射を命じていた。
「前だ、このまま撃て!」
「はい!」
それに従いクサナギの主砲が吠える。それにより敵の小隊を消し去る。しかしそこにまた敵が来て攻撃を仕掛けて来るのだった。
攻撃を受け巨艦が揺らぐ。咄嗟にトダカが叫ぶ。
「損害状況は!?」
「後部居住区付近に被弾です!」
報告がすぐにあがった。
「火災はなし!外部に攻撃を受けただけです!」
「よし」
それを聞いてまずは安心するトダカだった。
「運がよかったな」
「そうですねえ」
艦橋にいるアズラエルはこのことに安堵していた。
「全く。新潟といい仙台といい」
「敵の数が多過ぎます」
キサカが述べた。
「この戦い。あまりにも」
「これでも前よりは少ないですからね」
アズラエルはやけに冷静に敵の戦力を見ていた。
「しかし。指揮は随分積極的ですね」
「おかげでクサナギのダメージも洒落にならないし」
ユウナはこのことで泣きそうな顔になっていた。
「この前は中破寸前だったけれど今回はまさか」
「大丈夫です、ユウナ様」
トダカが弱気になりそうな彼に対して言ってきた。
「クサナギは沈みません」
「沈まないのか」
「そうです。何があろうとも」
こう言って彼を励ますのだった。
「大体クサナギが沈んでユウナ様に何かあれば」
「僕に何かあれば?」
「誰がカガリ様のお守りをするのですか」
よりによって言うことはこれだった。
「ですからユウナ様は死ぬことはないのです。それができるのはこの世でユウナ様お一人なのですから」
「また随分と強引な論理ですね」
アズラエルも今のトダカの言葉には少し以上に驚いていた。
「というか辻褄が合っていないような」
「そんなことはどうでもいいのです」
トダカも実に強引だ。
「ユウナ様しかおられませんから」
「ううん、僕もできるのなら代役が欲しいんだけれどね」
これがユウナの本音だった。
「報酬は弾むから誰かいないかな」
「さて」
アズラエルはユウナの今の言葉に首を捻った。
「それでも来る人がいますかねえ」
「参ってるんだよね、本当に」
「戦闘よりもですか」
「実はそうなんだよね」
これまたユウナの本音だった。
「まあ僕はオーブの首相で財務省で内相で外相で首席補佐官で国防相で参謀総長で統合作戦本部長だから仕方ないんだけれどね」
「役職また増えてませんか?」
キサカが今のユウナの言葉に突っ込みを入れた。
「何か」
「人手不足でねえ」
オーブもオーブで大変であるのだ。
「何かとね。それでこうやって僕がね」
「やはり人口が少ないせいですね」
アズラエルはその原因をこれが根拠だと見ていた。
「仕方ないことだと思いますが」
「ううん、誰かスカウトするべきかな」
ユウナは彼の言葉を受けて腕を組んで思索に入った。
「とはいってもねえ。カガリのお兄さんは生粋のパイロットだし」
「他のことを任せるにはまだ若過ぎます」
キサカが答える。
「ですから。今は」
「いないんだよね。本当に」
結局はそうなのだった。
「人がねえ。育ててはいるけれど」
「ですが今は」
「結局僕が受け持つしかないんだよね」
それしかないのだった。
「困ったことにね。とにかくだよ」
「はい」
「その今現在は」
「生き残らないとね」
このこともしっかりとわかっているユウナだった。
「さてと、今また敵が来ているし」
「どうされますか?」
「前方の敵に主砲一斉発射」
またこれであった。
「それで数を減らしながら」
「近寄って来る敵に対しては」
「弾幕張って」
こうトダカに述べた。
「それで敵を防いでいって。いいね」
「わかりました。それでは」
「あとキサカは」
「はい、私は」
「救護班や応急班の指揮を頼むよ」
「わかりました」
「敵の数。多いからねえ」
「決して多くないとは仰らないのですね」
「はっきり言って多いですから」
アズラエルの突込みにも何なく返す。
「ですから。それは言えないです」
「そうですね。それでは」
「とにかく。敵の数減らして」
ユウナの指示はとてもわかりやすいものだった。
「話ははそれだけだからね」
「ではユウナ様」
「そのように」
「クサナギは沈めさせないよ」
ここまで話したうえで目を真剣なものにさせた。
「何があってもね。僕も死にたくはないし」
「ですからユウナ様には死神がスポンサーに」
「カガリ様のお世話の為にも」
「いいのか悪いのかわからないよ、それって」
ユウナはまた二人の言葉に対して述べた。
「とにかく。それでも戦うしかないからね」
「その通りです」
最後にアズラエルが彼の言葉に頷いた。戦いはまだ続いていた。
そこにはゴッドシグマも当然いる。彼等は接近してくる帝国軍のマシンを次々に破壊していた。
「ちっ、まだ来るのかよ!」
「援軍がまた来たぞ!」
謙作が闘志也に告げる。
「ここでまたな」
「また随分と来たな」
ジュリイはその敵の援軍を見てサングラスの奥の目を鋭くさせていた。
「二十万程か」
「よくもまあこんなに来るもんだぜ」
闘志也はその大軍を見て憎らしそうに呻いた。
「この前新潟にあれだけ戦力投入してきたってのによ」
「仮にも宇宙を征服している国家だからな」
しかしジュリイの言葉は冷静なものだった。
「これも当然といえば当然かな」
「それもそうだな」
謙作は彼の言葉に頷いた。
「しかし。まずは」
「ああ、それしかねえな」
闘志也はその前にいる敵に顔を戻す。
「この連中をぶっ潰していくぜ」
「それにしてもこの連中」
バルディオスからマリンが言ってきた。
「今回は特に退かないな」
「そうね」
ジェミーが彼の言葉に頷く。
「何か洗脳されているみたいよ」
「いや、これは洗脳じゃない」
だがジャックはこう見ていた。
「これは」
「これは?」
「規律だな」
「規律!?」
「そうだ、規律に基く動きだ」
こう分析するのだった。
「これはな」
「そうか、規律か」
雷太は彼の言葉を聞いて述べた。
「この動きはそうなんだ」
「軍隊特有の規律による動きだ」
ジャックはまた述べた。
「それだけに。手堅いものがある」
「じゃあ今回もまた」
マリンは戦いながら彼の言葉に応えた。
「敵がとことんまで減るまで終わらないんだな」
「そうなる」
ジャックは冷静に彼に述べた。
「覚悟していくぞ」
「ああ、わかった」
彼等の戦いはさらに続く。その二十万の援軍との戦闘にも入り気付けばもう三時間は戦っていた。敵は総数で八十万は倒した。敵の数も遂に十万を切った。その時だった。
「レーダーに反応」
トーレスが言ってきた。
「これは」
「また帝国の援軍か」
「いえ、これは違います」
こうブライトに答える。
「これは天使です」
「彼等が来たのか」
「はい」
またブライトに答える。
「彼等が出て来ました」
「ここで天使達もか」
ブライトは天使達が戦場に姿を見せたのを見て顔をさらに曇らせた。
「厄介な時に厄介な連中は」
「艦長、その天使達ですが」
今度はサエグサが彼に言ってきた。
「我々に向かって来ないようです」
「では帝国軍にか」
「はい、彼等に向かっています」
見ればその通りだった。彼等は今はロンド=ベルを狙わずに帝国軍に向かっているのだった。忽ち双方の間で激しい戦闘が起こる。
「閣下!」
「残った兵を全てあの者達に向けよ!」
ガットラーの指示は的確だった。
「さもなければ上陸どころではない。いいな」
「了解です!」
ローザが彼に応える。そのうえで天使達に全戦力を向ける。これはロンド=ベルにとっては絶好の機会であった。
「よし、今だ」
リーは彼等の戦いを見て勝利を確信した笑みを浮かべた。
「今より我々は双方に総攻撃を仕掛ける」
「双方にですか」
「そうだ。互いに争い合っている」
彼はこうイワンに答える。
「その間に倒す。いいな」
「何かこすずるいな、おい」
カチーナは彼の言葉を聞いて言った。
「正々堂々とぶっ潰すってわけにはいかねえのかよ」
「では正々堂々と向かって死ぬのだな」
リーの彼女への言葉は実に冷淡なものであった。
「彼等の目がこちらに向く前に双方を殲滅するのがここでは正しいのだ」
「そうですね」
ラッセルは冷静に彼の言葉に頷いていた。
「ここはやはり」
「その通りだ」
カティもそれに賛同する。
「今は我々に攻撃を仕掛けていないうちにだ。一気に双方を叩く」
「では行くとしよう」
カイはもう動いていた。
「双方を倒しここでの戦いを終わらせるぞ」
「よし、それではだ」
「どっちも潰すわよ」
ユウキとカーラがカイに続く。
「戦いを終わらせる好機だ」
「それならね」
彼等はそのまま帝国軍と天使達に攻撃を仕掛ける。リーの言葉通りお互いに攻撃を仕掛けていた彼等にこれを防ぐことはなく両軍とも撤退した。これによりロンド=ベルは仙台への敵軍の上陸を防いだのだった。
戦いは終わった。今回も捕虜を得て彼等の幾人かが風間博士に引き渡されることになった。ここでロンド=ベルの中のかなりの割合が顔を曇らせるのだった。
「大丈夫かな」
「あの博士のことよね」
「うん」
リョウトはリオの言葉に応えていた。彼等は今ブリーフィングルームに集まっていた。
「皆も言うけれど」
「そうね。何か怪しいのよね」
「引き渡される捕虜はどうなるんだ?」
タスクもこのことが気になっていた。
「それ考えたらよ」
「チェックする必要があるわね」
レオナは口に右手を当てて考える過去になった。
「やっぱりね」
「貴方達もそう思うのね」
パットは彼等の言葉を聞いて述べてきた。
「そういうふうに」
「じゃああんたもなの」
「ええ」
パットは今度はミーナに応えた。
「放ってはおけないかも」
「まさかとは思うが」
ジェスはその顔を深刻なものにさせていた。
「捕虜に対して」
「虐待かよ」
ヘクトールはそのことを口に出した。
「まさかよ。それってよ」
「この世界でも重大な国際法違反だ」
アーウィンが言った。
「それをしていればな」
「やはり調べる必要があるな」
「そうだな」
エルリッヒがアークライトの言葉に頷く。
「では行ってみる?」
「博士のところにか」
「ええ」
セレインはリッシュの問いに答えた。
「すぐにでもね。ここは」
「よし、じゃあ」
「行くか」
最初に二人に続いたのはカーツとブラッドだった。
「博士の場所はわかってるしな」
「だったらな」
「ええ、こっそりとね」
「行きましょう」
マナミとアイシャも言う。こうして彼等は総出で博士の研究室に向かった。その一人が使うにしてはあまりに広い研究室に向かうと。
「!?」
「何だこれ」
まずはヘクトールとタスクがあるものを見つけた。それは。
「鞭だよな」
「ああ」
まず見つけたのはそれだった。
「しかも電気鞭だぜ」
「研究室にこんなのがあるのかよ」
「おかしいな」
ユウキがその鞭を見て言った。
「研究室にあるものじゃない」
「絶対にな」
「そうね」
リオもその鞭を見て顔を曇らせていた。
「それこそね。碌でもない」
「っていうとよ」
カーラも何時になく曇った顔になっていた。
「博士、まさか」
「待って」
しかしここでキョウトが皆に言ってきた。
「あそこに」
「あそこ!?」
「誰かいるよ」
こう言って研究室の奥にある部屋を指差したのだった。
「あそこに。あれ誰かな」
「誰って!?」
「ほら、あの人」
その部屋の扉は開いていた。そこから見える人影を指差しての言葉だった。
「あの人。誰だと思う?」
「!?あれは」
ジェスはその人影を見て目を鋭くさせた。
「間違いないな、あれは」
「そうね」
グリースが彼の言葉に頷く。
「風間博士ね」
「ああ」
「っていうとだ」
ヘクトールもその顔をいよいよ暗いものにさせた。
「まさかとは思うけれどよ」
「とりあえずよ」
パットが皆に言う。
「博士に気付かれないようにしてよ」
「ああ」
「中に入りましょう」
こう言って皆に研究室に入るように言うのだった。
「見つからないようにしてね」
「それだけれどよ」
しかしここでリッシュが言ってきた。
「この人数でそれは難しいだろ」
「そうよね」
セレインが彼の言葉に頷く。
「これだけ大勢いたらね。やっぱりね」
「何人かで潜り込む?」
マナミはこう提案してきた。
「ここは」
「じゃあ一体誰が行くの?」
アイシャはそのことをマナミに問うた。
「誰かが行くのはいいとして」
「じゃあ俺がよ」
最初に名乗り出たのはタスクだった。
「さっさっと行って見て来るからよ」
「タスクは駄目よ」
しかしそれにはレオナが反対したのだった。
「見つかるに決まってるじゃない」
「ちぇっ、確信かよ」
「じゃあ見つからないって絶対の自信があるの?」
「いいや」
実は彼にもそれはないのだった。
「やっぱりよ。それはよ」
「そうでしょ?見つかったら駄目なのよ」
「そうだな。見つかったら終わりだ」
ブラッドがレオナの今の言葉に頷く。
「それだけでな」
「俺達が処罰を受けるようになってしまう」
カーツは現実を述べた。
「そうなってしまっては本末転倒だ」
「行くとしたら二人か」
アークライトは冷静に述べた。
「その二人だが」
「誰がいいか」
エルリッヒも言う。
「冷静な者がいいと思うが」
「それなら私達ですぅ」
ここで名乗りを挙げたのはグリースだった。
「私とアーウィンさんが行きますね」
「えっ、あんたが!?」
リオはグリースを見て意外といった声をあげた。
「あんたが行くの!?」
「はい」
グリースはいつもの呑気な声でそのリオに答える。
「そのつもりですけれどお」
「アーウィンはいいとして」
彼女もアーウィンにはいロンガなかった。
「けれど。あんたはねえ」
「いや、いい」
しかしここでそのアーウィンが言うのだった。
「俺達で行こう」
「いいの?」
「こいつは頼りになる」
そのミーナを指差しての言葉だった。
「だからだ。一緒に行く」
「有り難うございますう」
ミーナの返答は相変わらず呑気そうなものであった。
「それじゃあ一緒に」
「ああ」
こうして二人が向かう。皆不安な顔でその二人を見送るのだった。
「大丈夫かね」
まずタスクが言った。
「あの二人で」
「そうね」
パットも不安そうである。
「ウィンはともかくミーナはねえ」
「けれどミーナあれで結構頭の回転早いし」
ミーナが言った。
「大丈夫でしょ」
「そうなの」
「多分ね」
ミーナの言葉は随分とアバウトなものだった。
「それはね」
「とにかくよ。賽は投げられたってわけだ」
ヘクトールは言った。
「ここは腹を据えて見ようぜ」
「そうだよね」
リョウトが彼の言葉に頷いた。
「このままね。それに」
「それに?」
「あの博士のこと、やっぱりね」
その博士のことを言うのだった。
「おかしいし」
そのことも言う。そうしてアーウィンとグリースが部屋を偵察する。そこで見たものは。
「・・・・・・まさかとは思いましたけれど」
彼等から報告を聞いたレフィーナは深刻な顔になって応えていた。
「本当だったとは」
「はい」
アーウィンが彼女に応えていた。
「ですが写真にある通りです」
「そうですね。これは紛れもない証拠です」
レフィーナもそれはわかった。
「そしてこの写真は」
「勿合成でも捏造でもありません」
リオがはっきりと答えた。
「そのままです。検証して下さってもいいです」
「はい。後でチェックはさせてもらいます」
それはしておかねばならないことだった。
「ですが」
「そうです、間違いありません」
リョウトが暗い声で述べてきた。
「博士は捕虜に対して」
「拷問だけではなかったのですか」
レフィーナもまた暗い顔になった。
「虐殺まで」
「そこまでとんでもない奴だとは思ってなかったですよ」
タスクは今博士を奴とまで呼んだ。
「まさかね」
「そうですね。これは」
「それで艦長」
レオナがレフィーナに問うてきた。
「どうされますか?」
「どうとは」
「博士の処遇です」
やはり問うのはこのことだった。
「これから。どうされますか?」
「このことは他の方々にもお話します」
まずこう答えたレフィーナだった。
「ブライト艦長や大河長官にも」
「そうですか」
「ですが。限られた方だけです」
しかしレフィーナはここでこう言った。
「ロンド=ベルの中でも」
「あまり話されないのですか?」
「今のところは」
こう彼等に述べた。
「そうさせて頂きます」
「それはどうしてですか?」
ジャスが怪訝な顔で彼等に問うた。
「どうして今は」
「風間博士はこの世界では絶対の信頼を受けている方です」
まずこのことを話したのだった。
「直属の戦力まで持っている程の」
「直属のですか」
「ですから。迂闊なことはできません」
レフィーナはまた言った。
「どうしても。ですから」
「ですから?」
「今は公にはできません」
さらに言葉を続ける。
「貴方達も。今は」
「黙っていろってことですか」
ヘクトールがわざと場を軽くさせる為にも明るく言ってきた。
「そういうことですね」
「申し訳ありませんが」
「それで仕方ないですよね」
グリースは俯きながら述べた。
「こんなことは」
「ええ、今はね」
あくまで今はというレフィーナだった。
「そうしておきましょう」
「わかりました。それじゃあ」
「今は」
彼等は皆レフィーナの言葉に頷いた。
「しかし艦長」
「我々が沈黙していても」
アークライトとエルリッヒが言ってきた。
「どうやらガンダムマイスターはこのことを」
「まず間違いなく」
「気付いているな」
リッシュが彼等に答えた。
「間違いなくな」
「そうね。どう見ても」
セレインも言ってきた。
「だから来たっていうし」
「どうするよ、奴等」
ブラッドが皆に問う。
「下手なことしたらよ」
「いや、それはない」
しかしカーツがそれを否定する。
「あいつ等はな」
「それはないかしら」
マナミはそれを聞いても半信半疑の顔だった。
「本当に」
「秘密を公にする人達じゃないわ」
アイシャがそのマナミに話した。
「だからね」
「私もそう思います」
レフィーナも彼等に対してはそう見ていた。
「だから彼等に関しては」
「放置でいいか」
タスクは軽く言った。
「あの連中もあれで付き合ったら面白そうだしな」
「ああ、そうかもな」
ヘクトールが明るく述べてきた。
「あれでな。まあ仲良くやっていくか」
「まずは何があってもです」
レフィーナは念を押してきた。
「このことは」
「わかりました。それじゃあ」
「そうします」
彼等でそれぞれ話を交えさせた。
「戦いは終わりました」
レフィーナは今度はそこに話をやってきた。
「それでです」
「関東に戻るんですね」
「いえ、今から呉に向かいます」
しかしレフィーナはこう彼等に告げた。
「今は」
「呉に!?」
「この世界の呉にですか」
「今度は北海道で敵の姿が確認されました」
だからだというのだ。
「ですから今から」
「やれやれだな」
ジェスはそれを聞いて述べた。
「ここで四国とはな」
「この世界でも日本は敵の集中攻撃受けてんなあ」
タスクはたまりかねたように言った。
「まっ、それならそれでな」
「それを言っても仕方ないしね」
「今はね」
「じゃあ行きましょう」
皆で行こうというのだった。
「その呉にね」
「今から」
こう言い合って今度は呉に向かう一同だった。真実は明らかになったがそれはまだ語られてはいない、しかし胎動は続けているのだった。

第百十七話完

2009・4・3  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧