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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百六話 ブルーフレンド

              第百六話 ブルーフレンド
ロンド=ベルが東京ジュピターに向かっている頃。日本では騒ぎが起こっていた。
「消えた!?」
「はい」
一色に対して金が報告していた。
「失踪しました」
「馬鹿な、沖縄にいたのではなかったのか」44
「それがある日急に」
金は深刻な顔で一色にさらに報告する。
「正確に言えば昨日」
「脱走したというのか」
「どうされますか?」
「彼は必要だ」
一色はその白い、蛇を思わせる顔を忌々しげに歪ませて述べた。
「ラーゼフォンと共にな」
「それではやはり」
「そうだ。探せ」
答えは一つだった。
「いいな、すぐにだ」
「わかりました。それでは」
「諜報部は何と言っている?」
一色はこう金に問うた。
「彼等からは連絡はないか」
「今のところは」
「そうか」
「今諜報部も人材を他に割かなくてはならない状況ですので」
「わかっている」
またしても忌々しげな顔になっていた。
「また出て来たのだな」
「はい」
「あの三機のガンダムが」
「マイスター達とは別に」
「やはり生きていたのか」
一色の言葉はうんざりとしたような感じになっていた。
「あの戦いで死んでいてくれればと思っていたが」
「残念ですが」
「早乙女博士がいなくなっただけでもよかったか」
彼はとりあえずはこう考えることにした。
「ゲッターも戻ったことだしな」
「そうですね。とりあえずは」
「とにかくだ。諜報部は人は割けないか」
「残念ですが」
この事実は動かすことができなかった。
「今のところは」
「わかった。だが可能な限り人を割け」
「彼を見つけ出す為に」
「日本からは出ていない筈だ」
これはすぐに察しがつくことだった。
「だからだ。すぐにな」
「了解しました」
「もうすぐ再び東京ジュピターに侵攻する」
一色の声は焦った感じになっていた。
「ロンド=ベルだけでは駄目だ。ラーゼフォンも必要だ」
「それは我々TERRAも同じ考えです」
「ならば余計にだ。頼むぞ」
彼等も彼等で騒ぎの中にあった。そしてTERRAの中でも話があった。
「そうですか。彼等が」
「そうだ」
功刀が八雲に対して話をしていた。場所はTERRAの司令室である。
「話を持って来ている」
「それはいいのですが」
「何だ?」
「近頃気になっていることがあるんです」
八雲は微笑をたたえながらも声は深刻なものにさせていた。
「少しですけれど」
「何がだ?」
「バーベム財団のことです」
「彼等か」
「はい。僕達に援助はしてくれますが」
「うむ」
「ですが」
それでもというのだった。
「あのバーベム家の方々は」
「バーベム卿か」
「あまりにも謎に包まれていますね」
「確かにな」
それは功刀も否定しないところだった。
「エルンスト=フォン=バーベム卿にしろな」
「お話を聞いていますとまるで何百年も生きておられるような」
「そうだな。それに」
「それに?」
「近いものを感じる」
功刀の目が静かに光っていた。
「彼等にな」
「彼等にといいますと」
「MUだ」
ここで彼は意外な単語を出した。
「彼等にな」
「まさか」
「私の考え過ぎであればいいが」
「財団とMUは敵対しています」
八雲はそこを力説した。
「それでどうして」
「普通に考えればそうだが」
「普通じゃないと」
「気のせいであればいいがな」
だがそれでも疑念は消せないのだった。
「確かに謎に包まれているが故にな」
「そうですね。本当に」
「思えば謎が多い」
功刀はまた言った。
「この世界にはな」
「そういえばサンドマン氏にしろです」
「あの彼か」
「今は僕達に協力してくれていますが何者なのでしょうか」
「わからん」
八雲の言葉に首を横に振るだけだった。
「何者かはな」
「わかりませんか」
「氏素性があまりにも不明瞭だ。しかも」
「しかも?」
「どうやらあの博士ともつながりがある」
「シュウ=シラカワ博士ですか」
「彼との関係は良好のようだが」
それはまずはいいとしたのだった。
「だが」
「だが?」
「バーベム財団とは微妙なようだ」
功刀の目がまた光った。
「どうやらな」
「財団との関係はよくありませんか」
「これも確かな証拠はない」
これについてもであった。
「しかしだ」
「何となくはわかると」
「対立する立場にあるのかもな」
サンドマンと財団がであった。
「若しかしてな」
「だとすれば僕達の立場は微妙なものになりますね」
八雲の顔がここでまた曇った。
「若しそうだとすると」
「どうやら。敵はガルラ帝国やMU、天使達だけではない」
「他にもいますか」
「当然味方にもな。そう」
「彼ですか?」
「手懸かりは掴めたか」
不意に八雲に尋ねてきた。
「彼のことは」
「いえ」
功刀の問いに首を横に振って答えるしかできなかった。
「まだ何も」
「だが日本にいるのだな?」
「それは間違いありません」
この問いには答えることができた。
「ですが何処かまでは」
「だが遠くにはいってはいない」
「まだ九州にいますか」
「おそらくな。しかもだ」
「しかも?」
「鹿児島辺りだな」
こう予想を立てる功刀だった。
「まだな」
「では鹿児島に人をやりましょう」
「さらにだ。だが」
「だが?」
「ロンド=ベルの東京ジュピター侵攻に間に合えばいいがな」
「それですか」
「そこは微妙か」
「まだロンド=ベルはフィリピンの辺りですが」
「一日だな」
功刀の目が動いた。
「時間は」
「はい、その一日の間に」
「彼を見つけ出そう」
「そして東京ジュピターに」
彼等も探していた。その頃その渦中の人物はある少女と出会っていた。その少女は。
「朝比奈?」
「綾人君?」
TERRAにいるのが嫌になり脱走して鹿児島に辿り着いたその場で偶然にであった。彼は浩子と出会ったのだった。
「どうしてここに?」
「ちょっとね」
苦笑いを浮かべて綾人に答えはする。
「用事でここに来たんだけれど」
「用事って。そんな筈は」
「おい」
ここで聞き慣れた声を聞いた。
「朝比奈、そこにいたのか?」
「鳥飼!?」
「ひっ」
何故か怯えた声を出す浩子だった。
「もうここまで」
「どうして鳥飼まで」
綾人にはこれもわからないことだった。
「鹿児島にいるんだよ」
「それはいいから神名君」
「あっ、うん」
浩子の言葉に応える。
「行こう」
「行こうって?」
「神名君もどうしてここにいるのよ」
「どうしてって言われたら」
やはり真相を言うわけにはいかなかった。
「まあそれは」
「多分。私と一緒よね」
浩子はそれは察したのだった。
「そうよね?」
「・・・・・・・・・」
答えられなかった。だがそれが答えになってしまった。
「じゃあ」
「何処に行くの?」
「ここじゃなければ何処でもいいわ」
こう答える浩子だった。
「だから。何処かに」
「わかったよ。それじゃあ」
綾人はそれを受けて遂に浩子の言葉に頷いた。そうして二人でその場から姿を消したのだった。
そうして鹿児島のあるホテルに隠れた。まずはそこだった。
「シティホテル?」
「ここでいいよね」
二人でホテルの部屋に入りつつ話をするのだった。
「お金はあまり」
「私も」
実はお互い持ち合わせはなかったのだ。
「御免なさい、迷惑かけて」
「いいよ。お金はどうにかなるから」
「どうにかって?」
「日雇いのバイトあるから」
少し微笑んで浩子に述べたのだった。
「だからね」
「そうなの。それでなのね」
「うん。朝比奈が心配することはないよ」
また言う綾人だった。
「それじゃあ僕はね」
「行くの」
「ゆっくりしているといいよ」
浩子に顔を向けて微笑む。
「それじゃあね」
「ええ」
綾人は部屋を後にし浩子は一旦浴衣に着替えた。しかし暫くして歯を磨くとそこで暗い、絶望しきった顔になるのだった。その歯ブラシを見て。
綾人は港で名を偽ってアルバイトをはじめた。今は誰にも知られていなかった。
だがロンド=ベルでは。綾人の失踪のことが話題になっていた。
「ここでか?」
「あいつ何考えてるんだよ」
皆露骨に顔を顰めさせていた。
「今どんな時かわかってるのかよ」
「それなのに失踪なんて」
「大丈夫ですかね」
その中で洸は綾人を気遣っていた。
「神名さん」
「ちょっと洸」
マリは綾人を気遣う彼の言葉を聞いて驚きの声をあげた。
「心配してるの?」
「駄目かな」
「あっきれた」
洸の言葉を聞いてあらためて呆れるのだった。
「逃げたのに」
「辛かったと思うよ」
洸は言った。
「神名さんも。急に戦うことになって」
「それでなのね」
「気持ちはわかるよ」
綾人のことを察していたのだった。
「それはね」
「洸、あんた・・・・・・」
「けれどきっと戻って来るよ」
洸はこうも言った。
「神名さんはね」
「どうしてなの?」
「ラーゼフォンが呼ぶから」
こう答えるのだった。
「だからね」
「そうなの。それじゃあ」
「うん。俺達はこのまま東京ジュピターを目指そう」
これが洸の考えだった。
「予定通りね」
「そうね。それはね」
マリは洸のその言葉に頷いた。
「行かないとね」
「うん。じゃあ」
「行くか」
ここで神宮寺も言った。
「東京ジュピターにな」
「そうですね。確かにラーゼフォンがいないのは残念ですが」
麗も神宮寺の言葉に頷く。
「それよりも今は作戦を優先させましょう」
「それが妥当ですね」
猿丸も賛成するのだった。
「それじゃあ。僕達もブルーガーで」
「ああ。出撃するぞ」
「流石にもう戦いにも慣れましたし」
そういう意味で猿丸も成長しているのだった。戦いがまたはじまろうとしていた。しかしその彼等にここでも急に知らせが入ったのだった。
「ドーレムが!?」
「また!?」
「ええ、そうよ」
エルフィが彼等に述べていた。
「鹿児島に出て来たわ」
「鹿児島に!?」
「まさかここで」
「どうやら相手も場所を選んでいないみたいね」
遥が言った。
「けれど。出て来たのは仕方ないから」
「戦うんですか」
「それ以外ないわよ」
カミーユに対して言葉を返す遥だった。
「まさか無視するわけにはいかないでしょ」
「そうですね。それは」
これはカミーユもよくわかっていた。
「それじゃあ鹿児島ですか」
「確かにスケジュールには影響が出るけれど」
遥はそれも考えていた。
「けれどそれはまだ何とかなるから」
「やるんですか」
「ええ。行きましょう」
こうしてロンド=ベルは鹿児島に向かうことになった。夜の鹿児島では早速ドーレム達が展開していた。それは綾人にも見えた。
「ドーレム!?まさか」
だが事実だった。ドーレム達は街に展開していたのだった。その中でとりわけ目立つのが白いドーレムだった。
「あのドーレムは一体」
そのドーレムを見て顔を顰めさせる。丁度アルバイトの帰りでホテルに帰ろうとしているところだった。
「まさか」
ドーレムはホテルに向かっていた。浩子のいるホテルに。
綾人はそれを見て危惧を感じた。危ないと、それは自分のことではなかった。
「朝比奈!」
浩子の名を叫んだ。
「今行く!」
こう言って走り出しそのままホテルに駆け込む。そうして部屋に飛び込んだのだった。
「朝比奈!」
「神名君!?」
「この部屋から下がるんだ」
まずは浩子にこう告げた。
「早く。いいね」
「下がるって?」
「僕が食い止めるから」
「食い止める?」
これは浩子にとってはわからない言葉だった。
「どうしたの?急に」
「僕は・・・・・・戦う」
浩子に対して述べた言葉はこうだった。
「そう、君を護る為に!」
叫びつつ窓に駆け寄る。その途中であの名を呼んだ。
「ラーゼフォン!」
その名を。そしてラーゼフォンと一つになり夜の鹿児島の街に飛び出した。その白いドーレムの前に立ちはだかってであった。
「神名君・・・・・・」
「朝比奈」
顔は向けていなくとも声は伝わっていた。
「何度も言うけれど君は僕が護る!だから!」
ドーレムに対して突き進む。今戦いがはじまったほだった。
ラーゼフォンはホテルの前に立ちはだかりそのうえでドーレムと戦う。拳を撃ちつけた。
「ああっ!」
だがそれと共に。何故か浩子が声をあげたのだった。
「うう・・・・・・」
「朝比奈に近付くな!」
その間にも綾人は攻撃を続けていた。
「そして。この街から立ち去れ!」
叫びながら攻撃を続けていく。そしてその街に今ロンド=ベルも姿を現わしたのだった。
「あれは・・・・・・」
「ラーゼフォン!?」
「間違いないわ」
遥がラーゼフォンを見て言った。
「あの姿は。絶対に」
「どうしてここに?」
エルフィは顔を顰めさせていた。
「まさかここに」
「そうみたいね」
遥はエルフィの言葉を受けて述べた。
「この街に来ていたみたいね」
「そうだったの」
「居場所はわかったわ」
まずはそれはよしとした。
「けれどね」
「ええ、わかってるわ」
ここから先はもう言うまでもなかった。
「出撃ね」
「準備はできてるわよね」
「何時でも」
遥に対して右目をウィンクさせて答える。
「a小隊だけじゃなくて皆ね」
「そう。じゃあ御願いするわ」
「ええ。それじゃあ」
「全機出撃!」
遥はあらためて指示を出した。
「ドーレムを倒して鹿児島を護って御願いね」
「了解!」
「よし!」
こうしてロンド=ベルは出撃しドーレム達との戦いに入った。その間にもラーゼフォンはその白いドーレムとの戦闘を続けていたのだった。
「まだ倒れないのか」
綾人はあくまで浩子を護るつもりだった。
「まだ。朝比奈の前から消えろ!」
また拳をぶつける。
「うぐっ!」
「さもなければ消えろ!」
「ああっ!」
「朝比奈は何があっても護る!」
彼は必死に戦っていた。しかし何故かその度に浩子は傷付いていく。ここでラーゼフォンを援護する為にブルーガーがホテルのすぐ側を飛んだ。そこでだった。
「んっ!?」
「どうした麗」
「あの部屋です」
神宮寺に応えあの部屋を指差したのだった。
「あの部屋に」
「どうしたんだ?」
「女の子がいます」
「あれか」
神宮寺にも浩子の姿が見えた。
「あの娘か」
「んっ!?」
ここで猿丸があることに気付いた。
「おかしいですよ」
「おかしい?」
「ほら、あの娘」
浩子を指差して神宮寺達に述べる。
「青いものが一杯ついてますよね」
「そうだな」
「確かに」
神宮寺と麗もそのことに気付いた。
「血か!?」
「血・・・・・・」
麗は今度は神宮寺の言葉に考える顔になった。
「だとしたら彼女は」
「ムーリアンか」
「そうなりますね」
このことはすぐに察しがついたのだった。
「ですがどうして」
「あっ、見て」
ここでラーゼフォンがまた白いドーレムに攻撃を浴びせる。すると。
「うぐうっ!」
浩子が苦しみだした。そして腕から血を流した。あの青い血を。
「うう・・・・・・」
「傷!?」
「あのドーレムがラーゼフォンの攻撃を受けたら」
「それじゃあ」
「若しかして」
ここで猿丸が気付いた。
「ドーレムはムーリアンとシンクロしていて」
「コントロールされている?」
マリもこう考えだした。
「そしてドーレムが攻撃を受ければ」
「ムーリアンもダメージを受ける」
「確か」
麗はここで己の記憶を辿った。
「あの女の子は確か」
「どうしたんですか?麗さん」
「綾人君のお友達だった筈です」
彼についてのデータを思い出しているのだった。
「東京ジュピターでの」
「東京ジュピターから出てか」
神宮寺は麗の話を聞いて推察した。
「どうやって出たのかはまだ疑問だがな」
「ですが彼女は確かに」
「どうする?」
ここで神宮司は皆に問うた。
「あの娘。助けるか?」
「そうしてくれるかしら」
話に入って来たのは遥だった。
「遥さん!?」
「ムーリアンについてのデータも知りたいし」
まずは戦略的な目的によってだった。
「それに」
「それに?」
「彼女は。綾人君の友達だから」
だというのだった。
「それに。私の」
「私の!?」
「紫東大尉、何か?」
「あっ、いえ」
今の言葉は打ち消す遥だった。
「何でもないわ」
「何でもない?」
「そうですか」
ブルーガーの面々はまずはそれは聞くことはなかった。
「けれどそれでも」
「ええ、御願い」
あらためて彼等に言う遥だった。
「あの娘を助けてあげて」
「ですが」
しかしここで猿丸が言うのだった。
「このブルーガーではとてもラーゼフォンを止めることは」
「できないな」
神宮寺も冷静に述べた。
「それはな」
「どうしようかしら」
マリも暗い顔になる。
「このままじゃ。本当にあの娘」
「じゃあ俺が行くよ」
しかしここで声をあげる者がいた。
「丁度近いしな」
「洸君!?」
それは洸だった。
「いいの!?本当に」
「はい、任せて下さい」
遥に対しても答える。
「ラーゼフォンを止めます」
「それでその間にあの娘は俺達が助け出す」
今度は神宮寺が言う。
「それでいいな」
「ええ、御願いするわ」
遥はまた彼等に告げた。
「あの娘を。助けてあげて」
「わかりました。それじゃあ」
ライディーンがすぐに動いた。
そしてすぐにラーゼフォンの正面に立ち。その腕を握って止めたのだった。
「えっ!?ライディーン!?」
「綾人さん、駄目です」
洸はラーゼフォンの動きを止めたうえで彼に言う。
「この人を攻撃しては」
「この人!?」
「そうです」
ドーレムとラーゼフォンの間に完全に入っていた。
「ですから。ここは」
「一体何を言ってるんだ」
戦いの興奮から幾分醒めた綾人は言う。
「この人って」
「洸」
今度はマリが通信を入れてきた。
「救出したわ、無事にね」
「ああ、そうか」
「救出!?誰を」
「朝比奈さんよ」
遥が綾人に対して言う。
「彼女をね」
「朝比奈!?どういうことなんだ?」
「話は後よ。とりあえず戦いは中止よ」
「何がどうなって」
「ドーレムはどうなったの?」
「動きを完全に止めました」
洸は遥に対して継げた。
「彼女は」
「無事!?」
「かなりの傷を負っていますが命に別状はありません」
猿丸が遥に報告する。
「すぐに怪我の手当てにかかりますので」
「そう、よかったわ」
まずは安堵した顔になる遥だった。
「助かるのね」
「朝比奈が。どうして」
「他のドーレムは全て倒したわ」
今度はエルフィから通信が入った。
「とりあえずは。作戦は終了ね」
「そうね」
遥も彼女の言葉に頷く。
「それじゃあ東京ジュピターに向かいつつ」
「撤収ね」
「じゃあ綾人君」
「はい」
「一旦合流して」
綾人に対して言う。
「話はそれからよ」
「わかりました」
こうして彼はまずはロンド=ベルに合流した。そうして浩子に対して詳しい話を聞く。話を聞いた彼は驚愕せざるを得なかった。
「そんな、朝比奈が・・・・・・」
「間違いない」
サコンが驚く彼に対して言う。
「血は青い」
「青い血・・・・・・」
「これでわかるな」
「ええ」
頷くことしかできなかった。
「それは。もう」
「彼女もまたムーリアンだったのよ」
遥もまた綾人に対して語る。
「そして。ドーレムを」
「ドーレムを操っていたんだ」
「それで貴方は」
「その朝比奈を」
ここで自分の手を見るのだった。
「僕は。あともう少しで」
「気にすることはない」
サンドマンが彼に言ってきた。
「そのことはな」
「ですが」
「君のせいではない」
サンドマンはまた彼に告げる。
「全てはある男の思惑によるものなのだから」
「ある男!?」
「間も無くわかる」
今は語ろうとしないサンドマンだった。
「間も無くな」
「間も無くですか」
「東京ジュピターでの戦い」
サンドマンは言うのだった。
「そこで謎の一つが解明されることになる」
「謎の一つが」
「だからこそだ」
サンドマンの目は遠くを見ていた。
「向かうとしよう。東京ジュピターに」
「はい」
「そして一つ言っておこう」
サンドマンは言葉を続けてきた。
「この世界とロンド=ベルの諸君の元の世界は同じだ」
「同じ!?」
「そう、そして」
言葉は続く。
「シャドウミラーの世界も修羅の世界も」
「同じというのですか?」
「全ては同じだ」
彼はさらに言う。
「同じなのだ」
「一体何を言ってんだ?」
エイジはサンドマンの言葉を聞いても首を傾げるだけだった。
「同じとか何とかってよ」
「さあ」
これは斗牙にもわからないことだった。
「僕にも何が何なのか」
「けれど重要なことを言ってるのはわかるな」
「まあね」
二人もそれはわかるのだった。
「けれど。それが何かまではね」
「わからねえよな」
「本当に何なんだろ」
斗牙も首を傾げるばかりだった。
「サンドマンは」
「とにかくだ」
今度言ったのはレイヴンだった。
「東京ジュピターに向かうことだ」
「東京ジュピターに」
「一つの戦いが終わる」
彼は言う。
「そして一つの謎もな」
「謎もまた」
「激しい戦いになる」
彼はこうも言った。
「だが」
「だが?」
「戦いと謎は終わる」
あくまでこう言うのであった。
「これでまた」
「じゃあその為にも」
「行くか」
「東京ジュピターに」
皆それぞれの口で言った。
「では諸君」
「はい!」
そしてグローバルの言葉にも応える。
「進撃を再開する」
「わかりました」
「東京ジュピターに向けて」
これは変わらなかった。
「行くとしよう」
「了解!」
こうして彼等は再び東京ジュピターに向かった。だがこの時彼等は知らなかった。これが新たな謎と戦いの出会いにもなるということに。

第百六話完

2009・1・29
 
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