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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第八十六話 果てしない闘争

             第八十六話 果てしない闘争
 「それでは軍師殿」
「その通りだ」
ミザルはメイシスの言葉に応えていた。アルティス、マグナス、そしてアルコも同室している。
「フェルナンドもまた去った」
「まさかと思いましたが事実でしたか」42
「事実だからこそ話すのだ」
ミザルはこうメイシスに返した。
「今ここでな」
「左様ですか。それで」
「それでだ」
ミザルはここまで話したうえであらためて告げてきた。
「アルティス」
「はい」
最初は彼に声をかける。
「そしてメイシス」
「はっ」
「貴殿等に次の出撃を願いたいのだが」
「願ってもない御言葉」
アルティスが彼のその言葉に応える。
「それではすぐにでも」
「頼むぞ。わしは暫しやることがある」
「!?」
メイシスは今のミザルの言葉に不自然なものを感じ取った。
「軍師殿、次の戦いには」
「出ぬ」
このことをはっきりと告げたのだった。
「今も言った通りだ。他にやることがあるのでな」
「そうなのですか」
「その代わりだ」
マグナスがここで出て来た。
「俺も行こう」
「私めも」
アルコは薄気味悪い笑みと共に出て来た。
「御一緒させて頂きます」
「アルティス様」
メイシスは自分では答えずにアルティスに決断を問うてきた。
「いいだろう」
「左様ですか」
「マグナス将軍」
「おう」
「アルコ殿」
「はい」
二人はそれぞれアルティスの言葉に応える。
「申し訳ないが助力を頼む」
「任せておけ」
「及ばずながら」
「作戦は貴殿に一任する」
ミザルは今度はアルティスに言った。
「吉報を待っているぞ」
「お任せ下さい」
こうしてアルティスはミザルに応え戦場に向かう。玄室を出て赤と黒の廊下を進むがここで後ろに控えるメイシスが彼に問うてきた。
「将軍」
「どうした、メイシス」
「どう思われますか」
怪訝な顔で彼に問うていた。
「フェルナンドは一体」
「そうだな」
アルティスはここで応えて言う。
「おそらく弟はもう我々には戻ることはない」
「戻らないですか」
「そう下意味でフォルカやアリオンと同じになった」
「アリオンとも」
「しかし我等にとって味方ではなくなったがフォルカにとっては敵であり続けている」
「フォルカ=アルバークにとってですか」
「そうだ」
こう言うのだった。
「敵だ。相変わらずな」
「命を助けられたことをそれ程までに」
「修羅だからこそだ」
彼はそこに答えを求めていた。
「だからこそ。フォルカの敵であり続けるのだ」
「では将軍」
メイシスはここまで聞いたうえでまたアルティスに対して問うた。
「あの男が修羅でなくなった場合は」
「その場合はわからない」
アルティスはこの問いには答えることができなかった。
「私は修羅だ」
「はい」
「修羅のこと以外の世界は知らない」
「それは私もです」
「だからだ。修羅が修羅でなくなった場合のことは」
「ですがあの二人は」
フォルカとアリオンのことであるのは言うまでもない。
「最早修羅ではないようです」
「修羅であってもな」
「修羅であっても」
今のアルティスの言葉はメイシスにはわからないものであった。
「どういう意味ですか、それは」
「!?これは」
そして自分でもそれがわかりかねるアルティスだった。
「いや、私にもどうも」
「おわかりになられませんか」
「修羅は修羅だ」
絶対の前提であった。
「修羅でなくなったならばそれは」
「それは」
「やはり修羅なのか。しかし」
「しかし?」136
「・・・・・・わからん」
自分で自分の言葉がわからなくなっていた。
「しかしだ。次の戦いで」
「ええ」
「フェルナンドは必ず出て来る。そこで何かを見ることになるだろう」
「そうですね。あの男もまた出て来るかと」
「我々も行こう」
今度は矛盾していない言葉であった。
「戦場に」
「修羅のいるべき場所へ」
こう言葉を交えさせつつ戦場に向かう二人だった。そしてこの頃ロンド=ベルは戦いの前の休息に入っていた。皆それぞれ料理を口にしていた。
「ああ、酷い目に遭ったぜ」
「全くだ」
甲児と神宮寺がうんざりとした顔になっていた。
「久し振りだったな、ラクスの料理は」
「それだけじゃなかったしな」
「クスハのジュースもなあ」
「相変わらずの出来だった」
つまりまずいどころではなかったのだ。
「で、シンジとかはどうなったんだ?」
「駄目です」
麗が首を横に振って答える。
「暫くは絶対安静です」
「だろうな。幾ら何でもあのジュースを間違えて一気飲みなんてな」
「自殺するのと同じですよ、それは」
それをこう表現する猿丸だった。
「生きていることが奇跡です」
「そうよね。シンジ君も運がよかったわ」
「運がいいのか?」
甲児はあまりそうは思えなかった。
「あれに当たるのってよ」
「生きていればまだましよ」
マリがこう言う。
「それだけで後はどうにでもなるから」
「やれやれだぜ」
甲児はとりあえずシンジが助かったことにほっとしていた。
「あれ食っても平気なのは」
「いやあ、実に見事な味でした」
アズラエルは今もクスハの不気味な青と緑が上下に分かれたジュースを持っている。
「そしてこのジュースも。絶品です」
「あのおっさんと三馬鹿と」
「フォルカさんだけです」
ここで洸が言うのだった。
「あとアリオンさんもですけれど」
「修羅はどんな身体をしているんだ?」
戦う為だけに鍛えられた鉄也の言葉だ。
「あんなものを食べて平気というのは」
「身体の構造自体は普通の人間と変わらないよ」
大介はこう言う。
「しかし。それでも」
「丈夫ってわけだな」
「そういうことだ。それも考えられないレベルでだ」
「ガンダムファイターと同じってことですか?」
マリはこう大介に問うた。
「丈夫ってことは」
「そうだな。そう考えるとわかりやすい」
「そうですか、やっぱり」
「人間の能力は普段はその殆どが眠っている」
これはよく言われていることである。
「だが修羅はその身体能力を極限にまで引き出した存在なんだ」
「つまり闘う為だけに特化しているんですね」
「その通りだよ、鉄也君」
「しかし俺よりも」
その鉄也がまた言う。
「それは顕著だな。やはりガンダムファイターと似ている」
「それじゃあよ、鉄也さん」
甲児がその鉄也に問う。
「あの連中も素手でモビルスーツを叩き潰せるんだな」
「それも可能だ」
「化け物だな」
思わずこう言った甲児だった。
「けれどその力が大きく左右する」
「大きくか」
「そうだ。修羅の力」
大介は冷静に見ていた。
「それがこれからの戦いに大きく関わるのは間違いがないよ」
「そうですか、やはり」
鉄也は大介のその言葉に頷く。
「大きいですが同時に危険でもありますね」
「危険って何がだよ」
甲児はその辺りがよくわかっていなかった。
「何か諸刃の刃みてえな言い方だな」
「甲児君、その通りだ」
「修羅の力は諸刃の刃だ」
ここで二人は甲児に告げた。
「あまりにも強過ぎるが故に」
「下手をすればその主を破滅させてしまうものだ」
「何か感覚的にわかったぜ」
頭脳でわかる甲児ではない。
「そういうことなんだな」
「そうだ。例えばあのフェルナンドだが」
鉄也が今度言うのはフェルナンドについてだった。
「あのままいけば破滅だ」
「そうだな。今の彼は危険だ」
大介も鉄也のその言葉に頷く。
「他ならぬ彼自身にとって」
彼等はそうフェルナンドを見ていた。戦いは今はない。戦士達はその中で休息していた。
バサラがギターを奏でている。フォルカとアリオンがそれを静かに聴いている。
「いい曲だろ」
「うむ」
フォルカはアリオンの問いに頷く。
「確かにな。これが熱気バサラか」
「修羅にあるのは戦いの歌だけだった」
やはりそれしかないのだった。
「他のものなんてなかったからな」
「そうだったな。それは確かにな」
「それでだ」
アリオンはさらに言う。
「この曲が何の曲かわかるか?」
「いや」
アリオンの言葉に首を横に振る。
「何の曲だ。いい曲なのはわかるが」
「熱気バサラの曲自体に言えることだが」
「ああ」
「戦いを止める為の曲だ」
「戦いをか」
「そうだ。意外か?」
楽しそうに笑ってフォルカに問う。
「戦いを止める為の歌があるなんてな」
「ここに来てから碌に音楽を聴いてはいなかった」
フォルカは言う。
「一人で考えていた」
「ほう、一人でか」
「ずっとな」
こう答えた。
「考えていた。修羅についてな」
「それで答えは出たのかい?」
「いや」
首を横に振るだけだった。
「何もな。わからなかった」
「そうか。やっぱりな」
「わかるのか」
「一人で考えてもわかる筈がないさ」
楽しそうに笑って答えた。
「こんなことはな」
「わからないのか」
「少なくとも一人じゃ無理さ」
また言うアリオンだった。
「どうしてもな。無理なんだよ」
「では今の俺はどうなのだ?」
「少なくとも一人で考えるよりいいさ」
そうフォルカに教えるのだった。
「今ここにいる方がずっとな」
「そうか」
「それにだ」
アリオンはさらに言う。
「まだまだ話はあるぜ」
「何っ!?」
「答えを求めているのは御前だけではないということさ」
「!?どういうことだ」
「おい、御前等」
ここでバサラが声をあげた。
「いるんだろ・ここに来い」
「ここに来いって」
「まさか」
「わかっていたんですか?」
部屋の扉のところからデュミナスの子供達が出て来た。
「あんた、鋭いわね」
「気配を隠していたのに」
「それでもなんて」
「気配ってのは完全には消せねえんだよ」
バサラは三人に対してこう告げた。
「特に歌や音楽を聴きたいって気持ちはな」
「あんたは何なの?」
ティスはバサラに対して問うてきた。
「あんたは。戦ってるの?」
「戦ってるていえば戦ってるな」
「そうなの?」
「ああ。そう見えねえか?」
「見えるわけないでしょ」
顔を顰めさせてバサラに言った。
「あんたの何処か。戦ってるのよ」
「俺は歌で戦ってるんだよ」
バサラの主張ではこうである。
「戦いを止めさせる為にな」
「歌で?」
「俺の歌を聴かせる」
バサラは言う。
「それで戦いを止めさせるんだよ」
「不可能です」
ラリアーはその可能性を否定した。
「そんなことは。どうしても」
「無理だっていうのかよ」
「そうです。できる筈がありません」
彼は言った。
「そんなことはとても」
「不可能だっていうのかよ」
「当たり前です。歌で戦いは終わりません」
また断言するラリアーだった。
「絶対に。終わらないです」
「けれどな。終わるんだよ」
しかしバサラはまだ言う。
「俺の歌ならな。絶対にな」
「絶対にですか」
「ああ、そうさ」
大胆不敵なまでに自信に満ちた笑みであった。
「それを見せてやるさ。これから」
「歌で戦いを止める、ですか」
「そういえば」
デスピニスは彼の言葉からあることを思い出した。
「リン=ミンメイですか?あの歌姫」
「リン=ミンメイ」
フォルカがその言葉に顔を向けた。
「あちらの世界の人間の名前か」
「確か中国系だったな」
ここでもアリオンの方が詳しかった。
「バルマー戦役でのトップアイドルだな。今は銀河の彼方に旅立っている」
「銀河の彼方にか」
「そうさ。何なら曲を聴くかい?」
また笑顔でフォルカに言ってきた。
「CDなら持ってるぜ」
「そうだな」
フォルカはアリオンの言葉に応えた。
「一度聴いてみよう。是非な」
「そうしたらいいさ。さて」
アリオンは今度は三人の子供達に顔を向けて問うてきた。
「で、御前さん達はだ」
「何よ」
ティスが彼に返す。
「何か言いたいの?」
「言いたいから声をかけたんだよ」
アリオンも負けてはいない。
「違うか?それで御前さん達はな」
「ええ」
「何で熱気バサラの曲を聴いていたんだ?」
「何でって」
「何か感じるところがあったからだろ」
かなり直接的に三人に問うてきた。
「こいつの曲にな」
「別に」
一旦否定するティスだった。
「何もないわよ。そんなの」
「何もないっていうのかよ」
「そうよ」
少しムキになるティスだった。
「あるわけないでしょ。たまたま扉の前にいただけだし」
「俺も感じていたんだがね」
「えっ!?」
「御前さん達の気配をな。感じてたんだよ」
笑いながら三人に告げるのだった。
「ずっと扉の前にいただろ。はっきりわかったぜ」
「どうして」
デスピニスは戸惑いながら言った。
「気配は確かに消していたのに」
「俺も修羅の将軍だぜ」
笑ってこうデスピニスに返すアリオンだった。
「簡単にわかったぜ。っていうかばればれだったな」
「そんな・・・・・・」
「だからな。自分では自信たっぷりでもな」
また言うアリオンだった。
「傍から見ればそうじゃない場合が多いんだよ」
「・・・・・・・・・」
その言葉に沈黙してしまうデスピニスだった。そのかわりにラリアーが問うてきた。
「じゃあ貴方はどう思っているんですか?」
「何をだい?」
「僕達がです」
「ああ」
「どうしてこの人の曲を聴いているのか」
「それはもうわかってるさ」
アリオンは軽く三人に返した。
「とっくの昔にな」
「わかっている?」
「そうさ。あれだろ?」
そして言った。
「探してるんだろ。今見つけたいものをな」
「今見つけたいものを」
「御前さん達は今宙ぶらりんだよな」
「腹が立つけれどその通りよ」
ティスもそれを認めるしかなかった。
「デュミナスがいなくなったから」
「それだよ。それなんだよ」
「それ?」
「そうさ。御前さん達は探しているんだ」
三人に対して告げる。
「親が残した言葉の意味をな」
「デュミナスの言葉」
「あの言葉を僕達は」
「探しているの」
「意味をな。だから今曲を聴いていたんだよ」
「こいつの曲に何かがあるっていうの?」
いぶかしむ目でアリオンに問うた。バサラを見据えながら。
「その何かが」
「あるかもな」
今度のアリオンの返答は少し曖昧なものだった。
「そしてないかもな」
「ないかもって」
「そこまではわからないさ。ただ」
「ただ?」
「答えは絶対に見つかる」
断言だった。
「絶対にな」
「どうだか」
最初に疑問の言葉を出したのはやはりティスであった。
「そう簡単に見つかるとは思えないけれど?」
「俺が嘘を言ってるとでもいうのかい?」
「そういうのじゃなくてね」
それは否定してもまだ言う。
「見つかることが絶対なんてよく言えるわね」
「わかるから言えるんだよ」
「あんたにあたし達の何がわかるっていうのよ」
「わかるさ」
言葉は平然としていた。
「それもよくな」
「よくって」
「そんなことはありません」
ラリアーは今のアリオンの言葉を否定した。
「僕達は修羅とはまた違うんですから」
「私達はデュミナスの子供」
デスピニスも言う。
「そのデュミナスがいなくなったのに」
「皆大なり小なり同じなんだよ」
「そういうことなの!?」
「だから言ったままさ」
また三人に返してきた。
「ここにいる連中は皆同じなんだよ。自分がわかっちゃいなかった」
「わかっていないって」
「そしてどう生きるのかもわかっちゃいなかった」
次に言うのはこのことだった。
「それでもな。見つけてきたのさ」
「あたし達とは違って」
「そういうことさ。だから御前等も見つけることができる」
彼はこれを根拠としていた。
「絶対にな」
「信じろっていうのですか?」
「信じる信じないは御前等の勝手にすればいい」
ラリアーに一見突き放すように返した。
「けれどな。それでも俺は言ったぜ」
「そうですか」
「じゃあ私達はこれから」
「好きにすればいいさ」
また突き放すような言葉だった。
「音楽でも聴きながらな」
「ああ、好きなだけ聴かせてやるぜ!」
バサラの調子は相変わらずであった。
「俺の歌も曲も幾らでもな!」
「ティス、デスピニス」
ラリアーが二人に声をかけた。
「今はバサラさんの音楽を聴こう」
「この曲をなのね」
「うん。それに答えがあるというのならね」
「よくわからないけれどわかったことにしておくわ」
ティスにもいつもの歯切れはなかった。
「今はね」
「私も」
デスピニスは普段と変わりない。
「そうするわ」
「そうだね。それじゃあ」
「ええ」
「今は」
こうしてバサラの曲を聴く二人だった。そしてそれから暫くして。ロンド=ベル全軍に戦闘配置が伝えられた。
「総員戦闘配置」
アドレアが皆に通信で伝える。
「前方にレーダー反応、数は三千」
「三千か」
「はい」
ヘンケンに対して答える。
「三千です」
「では今回も将軍が出て来ているな」
「誰でしょうか」
ナタルは指揮官が誰なのかを考えた。
「あのアルティスでしょうか。それともマグナスでしょうか」
「あるいはその両方か」
「そうですね」
ヘンケンのこの指摘に頷きもする。
「その可能性もあります」
「艦長」
一緒にラーディッシュの艦橋にいたベンがヘンケンに声をかけてきた。
「敵は正面からです」
「そうだ」
「ではこちらは陣を張っておきましょう」
「敵の正面からの攻撃に備えてか」
「そうです。丁度いい具合に」
ここでモニターの前方をレーザーで指摘する。
「ここに森があります」
「そこに入って戦うというのだな」
「森の防御効果を利用しましょう」
彼はこう主張する。
「それでどうでしょうか」
「そうだな。ここはそうするか」
「それがいいかと」
ナタルもそれに頷く。
「では艦長。進撃を早めまして」
「うむ。前方の森林地帯に入る」
「はっ」
こうしてロンド=ベルは森林地帯に入りその中で敵を待ち構えることになった。敵はすぐに姿を現わしてきた。そして指揮官はヘンケンの予想した通りであった。
「はっはははは!」
まずはマグナスが笑い声をあげてきた。
「ロンド=ベル!また会ったな!」
「やっぱり出たか!」
「このブヨブヨ!」
エリスとベッキーがそれぞれそのマグナスに言う。
「今度こそ倒す!」
「覚悟しなさいよ!」
「倒すのはいいがな!」
マグナスも二人に対して言葉を返す。
「おいそこの赤い髪の女」
「あたしだね」
「そうだ、御前だ!」
やはりベッキーに言ってきていた。
「今何と言った、何と!」
「聞こえなかったのかい、ブヨブヨだよ!」
また言うベッキーであった。
「何なら何度でも言ってやるよ!」
「将軍に対するそれ以上の暴言は許さんぞ!」
流石に頭にきているようである。
「俺の身体を貫けるのは修羅王様だけだというのに!」
「じゃああたしも容赦はしないよ」
既に気力を充実させているベッキーであった。
「今回もね!かかって来な!」
「望むところだ!全軍進撃開始だ!」
「うむ」
彼の横にいるアルコがその言葉に頷く。
「それでは我々も」
「アルティス殿」
マグナスは今度はアルティスにも声をかけた。
「それで宜しいな」
「異論はない」
これがアルティスの返答だった。
「ではメイシス」
「はい」
「我々も行こう」
「わかりました。それでは」
アルティスの言葉に応え進撃命令を出すのだった。
「全軍進撃開始だ!」
「了解!」
こうして修羅は全軍で動きだした。その数はまずはロンド=ベルを圧倒するものだった。こうしてまたしてもロンド=ベルと修羅の戦いがはじまった。
「いいか」
ヘンケンが進撃する修羅の軍勢を見ながら全軍に声をかける。
「前に出ては駄目だ、まずはな」
「前にですか」
「そうだ。森から外に出るな」
具体的にはこういうことであった。
「護りに徹する。いいな」
「わかりました。それじゃあ」
「ここは」
「それからまた指示を出す」
臨機応変ということだった。
「それまではな」
「では艦長」
ナタルがここでヘンケンに対して問うてきた。
「我々もですね」
「そうだ。基本的にはここから動きはしない」
ナタルにもこう答える。
「我々もな」
「わかりました。それでは」
「では副長」
「はい」
副長という呼び名に応えた。
「主砲発射だ」
「了解、主砲照準合わせよ!」
早速副長としての仕事に入る。
「一斉射撃!てーーーーーーーーーーーーーっ!」
これが合図となり戦闘に入る。ロンド=ベルは森に陣取りそこから決して出ることなく迫り来る修羅の軍勢を迎え撃つのであった。
修羅の軍勢は次々とロンド=ベルの攻撃を受ける。しかし。
「ええい、何故だ!」
マグナスが忌まわしげに叫ぶ。
「何故こうもこちらの攻撃が当たらん!森にいるからか!」
「それが大きいな、やはり」
横からアルコが言ってきた。
「ここはな」
「おのれ・・・・・・」
「しかもそれだけではない」
そしてこうも言うのだった。
「奴等、ジャマーまで使っているな」
「ジャマー!?地上にあったあれか」
「そう、あれだ」
ジャマーは修羅の世界には存在しないものだ。
「それも使っている。だから攻撃が当たらぬのだ」
「くっ、小癪な」
「さて、どうする?」
アルコは冷静にマグナスに問うてきた。
「ここは。力攻めを続けるか」
「アルティス殿はどうしている?」
だがここでマグナスは即答せずにアルティスの指揮について問うてきた。
「アルティス殿は。どうしているか」
「見たところ一定の敵を集中攻撃しているな」
「そうか」
見ればその通りだった。アルティスは森に入ることができない戦闘機や戦艦を重点的に狙っていた。やはりその辺りの采配が見事であった。
「くっ、よけるだけでも精一杯だぜ!」
「京四郎さん、頑張ってよ!」
その中にはガルバーもいた。京四郎はナナの言葉に励まされ何とか攻撃をかわし続けていた。
「当たったら終わりだからね」
「わかってるさ、よくな」
他の戦闘機も同じだった。そして戦艦ではクサナギが集中的に攻撃を受けていた。
「ユウナ様、左舷居住区で火災!」
「今度はそっちなのか!」
キサカの報告に慌てた声を出すユウナだった。
「さっきは右で!」
「どうされますか?」
「至急応急班を!」
こう指示を出す。
「消火も急いでね!」
「わかりました」
「あの、ユウナ様」
「トダカ、今度はどうしたの!?」
慌ててトダカの方を振り向く。
「また被弾かい!?」
「いえ。そうではなくてですね」
「そうじゃなくて?」
「そうです。指揮権ですが」
「うん」
「艦長は私ですが」
彼が言うのはこのことだった。
「ユウナ様はあくまで司令官なのですが」
「そういえばそうだったね」
言われてそのことを思い出すのだった。
「僕は司令官だったんだ」
「ですから艦のことはお任せを」
彼が言いたいのはこのことだった。
「くれぐれも。宜しいですね」
「わかったよ。じゃあそちらは頼むよ」
「はい」
「それでユウナさん」
今度はアズラエルがユウナに声をかけてきた。
「一つお伺いしたいことがあるのですが」
「はい、何でしょうか」
「カガリさんですが」
彼が言うのはカガリについてだった。
「大丈夫なのですか?」
「といいますと」
「今にも森から出そうですが」
「あっ・・・・・・」
その言葉でカガリを見ればまさにその通りだった。今にもストライクルージュを森に出そうとしている。
「これ以上閉じこもっていられるか!」
「駄目だよカガリ!」
慌ててそのカガリに声をかける。
「出たら駄目だって!作戦が!」
「んっ、ユウナか」
「ユウナかじゃないよ!アサギ!マユラ!ジュリ!」
必死に三人に声をかける。
「急いでカガリを止めて!早く!」
「は、はい!」
「わかりましたユウナ様!」
「カガリ様、前は!」
「駄目だというのか!」
「そうです!」
三人の声が完全に重なった。
「今は出たら駄目です!」
「ですからここで!」
「止まって下さい!」
「くっ、仕方ないか」
ここでカガリもやっと止まるのだった。
「ここはな」
「やれやれだ。それにしても最近」
「どうしました?」
「前よりも人の話を聞いてくれるようになってくれました」
ハンカチで額の汗を拭きつつアズラエルに答える。
「前はもっと凄かったじゃないですか」
「まあ確かにそうですね」
「ここで出たら間違いなく死んでいました」
ユウナは言う。
「全く。首相も楽じゃないです」
「では首相」
ユウナに応えて彼をこう呼ぶアズラエルだった。
「一つお伺いしたいことがあるのですが」
「何ですか?」
「あれです」
そしてここで言った。
「フォルカ君と因縁のある彼ですが」
「ああ、彼ですね」
「そろそろですかね」
考える目で述べた言葉であった。
「出て来るとすれば」
「まあそういうことはわかりませんが」
戦局はともかく気配やオーラを読むことはユウナの専門外である。
「出て来るならそろそろですかね」
「そうですね、そろそろ」
「タイミング的には」
彼がそう言ったこの時だった。
「むっ!?」
「このオーラは」
シーラとエレが同時に声をあげたのだった。
「彼です、間違いありません」
「来ます」
そして言うのだった。
「この激しい闘気は」
「今ここに」
「どうやらそうみたいですね」
二人の言葉を聞いてアズラエルがユウナに告げた。
「来ましたよ」
「いよいよですか」
「来たか」
そしてフォルカも口を開いた。
「フェルナンド、ここに」
「やはり出て来たか」
フォルカとアルティスが同時に声をあげた。
「また俺と闘うか」
「修羅を抜けて再び私の前に」
「アルティス様」
ここでメイシスが彼に声をかけてきた。
「ここは前に出られることは」
「様子を見ろというのだな」
「そうです」
こうアルティスに述べた。
「迂闊な動きは」
「わかった。では様子を見よう」
「是非。あの者達の動きも気になります」
メイシスはマグナスとアルコにも目を向けた。剣呑な目であった。
「迂闊に動けば」
「そうだな。そうしよう」
「是非」
こう言い合い二人は動かなかった。その間にフェルナンドは一直線にフォルカの前にやって来た。他の修羅達には目もくれずに。
「くっ、やってしまえ!」
マグナスがたまりかねたように叫ぶ。
「あの裏切り者を!殺せ!」
「いや、待て」
だがアルコがそれを制止する。
「今はな。待つべきだ」
「!?何故だ」
「ここは下手にあの男を討つべきではない」
鋭い目で言うのだった。
「フォルカ=アルバークと闘わせるべきだ」
「当初の予定通りか」
「そういうことだ」
こう告げるアルコだった。
「わかったな。動くのはその後でいい」
「ううむ、そうか」
「ミザル様もそう考えておられる」
「ミザル様もか」
「そうだ」
ミザルという言葉を聞くとマグナスの態度が変わった。
「今はな」
「わかった。そうしよう」
こうして彼等も動きを止めた。その間にフォルカとフェルナンドは睨み合いに入った。両者は対峙したまま静かに語りはじめた。
「何故俺がここに来たのかわかっているな」
「無論だ」
フォルカは静かにフェルナンドに返した。
「わかっていた。御前がここに来ることは」
「ならば!」
フォルカのその言葉を受けて構えに入るフェルナンドだった。
「ここで!貴様を倒す!」
「来い!」
そしてフォルカも構えに入った。
「言った筈だ!何度でも貴様を倒すと!」
「何度もか!」
「そうだ!」
その全身に激しい闘志をみなぎらせたうえでの言葉だった。
「ここでな!死ね!」
「来た・・・・・・!」
「フォルカさん!」
それを見たロンド=ベルの面々が声をあげる。
「安心しな」
アリオンはその彼等に対して安心した顔で告げた。
「あいつならやるさ」
「やりますか」
「ああ、何があってもな」
顔は笑っていたが目は鋭くフォルカとフェルナンドを見据えていた。
「あいつは倒れたりしねえさ」
「じゃあここはやっぱり」
「フォルカさんを」
「信じるんだな」
ロンド=ベルの面々に念押しをした。
「それでいいな」
「わかりました。それじゃあ」
「フォルカさん・・・・・・」
皆フォルカを見守ることにした。そしてそのフォルカは。激しい咆哮と共に跳び上がった。フェルナンドの動きもそれに重なった。
「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「はあああああああああああああっ!!」
「受けろ、フェルナンド!」
先に仕掛けたのはフォルカだった。
「俺のこの拳!!」
「むっ!」
「何度でもな!」
そう叫んで拳をフェルナンドにぶつけた。それを受けたビレフォールは吹き飛び地面に田t着付けられた。激しい衝撃が彼を襲う。だがそれでも。
「まだだ!」
「おいおい、あれで立つかよ!」
「しかもあんなに早く!」
ロンド=ベルの面々も驚くフェルナンドの生命力だった。
「何て野郎だ・・・・・・」
「ダメージを受けていないっていうの!?」
「いえ」
ここでシュウが言った。
「そういうわけではありませんよ」
「ではダメージは」
「はい、受けています」
一同に対して述べる。
「ですがそれでもです」
「ダメージを受けていてもあれだけ」
「恐ろしい男だ・・・・・・」
「何て執念なの・・・・・・」
「やはりこの程度では諦めないか」
「当然だ!」
宙に浮かぶヤルダバオトを見据えてまた叫ぶ。
「来い!まだだ!」
「ならば次は!」
今度はあの二匹の紅蓮の龍を出して来た。
「これで!受けろ!」
「やらせるか!はあああああああああああっ!!」
フェルナンドは青い二匹の龍を出す。両者の龍が激しくぶつかり合う。そしてその果てに。吹き飛ばされたのはやはりフェルナンドだった。
「くっ・・・・・・」
「やっぱりな」
「それでも立つのね」
やはりフェルナンドは立つ。そうしてフォルカを見据えていた。
「何度でも」
「それが修羅っていうの!?」
「確かに彼は修羅です」
それはシュウも認めた。
「ですがそれ以上に彼自身の闘志がそうさせています」
「その通りだ」
彼の言葉にアリオンが頷いた。
「あいつは。今フォルカだけを見ているわけじゃない」
「というと?」
「あいつ自身も見ているのさ」
これがアリオンのフェルナンドへの見方だった。
「だからあそこまでな。向かうんだよ」
「そうだったんですか」
「それで」
「見な」
また吹き飛ばされるフェルナンドだった。
「またやられたな」
「はい」
「うわ・・・・・・もう駄目なんじゃないの?」
満身創痍になってビレフォールを見て言う。
「あれだけのダメージを受けたら」
「動けないんじゃ」
「おおおおおおおおおおおっ!」
だがその予想は裏切られた。
「フォルカ!」
「まだかよ!」
「何てしぶとさ!」
また向かうフェルナンドに一同絶句する。
「あれで動けるのかよ・・・・・・」
「しかもあの速さ・・・・・・」
「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
絶叫さえする。
「この程度で!俺は!」
「また来たぞ!」
「フォルカさん!」
「来るのはわかっていた」
だがフォルカだけは至って冷静であった。
「貴様がな。ならば!」
「!!また!」
「あの技を!」
「行くぞ」
両腕をゆっくりと旋回させつつフェルナンドに言う。
「再びこの技で!これで最後だ!」
「望むところだ!」
フェルナンドは突き進みながら技に入る。
「真覇猛撃烈波!」
「真覇機神轟撃拳!」
両者の奥義が炸裂する。戦場を凄まじいまでの衝撃が包み嵐とさえなる。しかしそれが終わってから立っているのは。やはり彼であった。
「勝ったな」
「ううう・・・・・・」
だがそれでもフェルナンドは生きていた。
「俺の負けか。またしても」
「そうだ。俺は勝った」
このことは厳然と告げるフォルカだった。
「だが俺は貴様を」
「それはもう聞き飽きた」
それ以上は言わせなかった。
「既にな」
「ではどうするのだ。また来るのか」
「いや」
しかしここでフェルナンドの言葉が変わった。
「最早それはない」
「ない!?」
「何よ」
皆今のフェルナンドの言葉に顔を向ける。
「あれだけ向かっていたのに」
「これでないなんて」
「俺の負けだ」
遂にとう感じで認めていた。
「俺のな。完全に負けだ」
「おいおい、負けを認めたぜ」
「嘘でしょ」
皆には予想していなかったことだった。
「ここで認めるなんてよ」
「あいつが」
「フォルカ、俺は貴様には完全に勝てない」
「そうだ」
「それには理由がある筈だ」
こう考えるのだった。
「それを見極めることにしたい」
「どういうことだよ」
「また変なこと言い出したわね」
「だからだ。ここはだ」
「ここは。何だ?」
「俺も貴様と共に行こう」
ロンド=ベルの面々にとっては最も驚くべき言葉だった。
「何っ!?」
「何ですって!?」
「どういうことだよこれ!」
「私に聞いてもわからないわよ!」
「貴様と共にな。それに修羅の生き方が本当に正しいのかとも思いだした」
「だからさ」
「そうだ」
驚く周りをよそにフォルカに述べた。
「それでいいか。御前さえよければ」
「俺は構わない」
そしてそれを受け入れるフォルカだった。
「何度も言った筈だ。俺達は兄弟だと」
「ああ」
「そして友だ」
このことも言った。
「俺は絆を断ち切らない。断ち切るものはない」
「ただ勝利を拳で手に入れるだけか」
「そうだ。そうした意味で俺は修羅を捨てる」
これがフォルカの考えであった。
「そういうことだ」
「ではそれを見せてもらおう」
フェルナンドはそう言いつつフォルカの横に来た。
「貴様の側でな」
「・・・・・・うむ」
「まさかな」
アルティスはフェルナンドがロンド=ベルに入ったのを見て呟いた。
「あの男まで入るとは」
「全くの予想外でした」
「そうだ」
メイシスにも答える。
「こうなるとは」
「そしてアルティス様」
メイシスは彼に問うてきた。
「どうされますか」
「どうされますかとは」
「今後のことです」
彼女が言うのはこのことだった。
「今後のこの戦場ですが」
「知れたことだ。戦う」
彼は言った。
「ここでな。全軍にあらためて指示を出せ」
「はっ」
「攻撃再開だ。いいな」
「わかりました」
こうして再び修羅達の攻撃がはじまった。その中にはマグナスの姿もあった。彼は今しがたロンド=ベルに入ったフェルナンドに対して攻撃を仕掛けていた。
「この裏切り者が!」
「俺が裏切り者だと!」
「それ以外の何だ!」
フェルナンドを見据えて言う。
「修羅を裏切り敵軍につくとはな!」
「確かに今まではそう思っていた」
フェルナンドはマグナスのその言葉に応えて述べる。
「しかし今は違う」
「戯言を!」
「戯言ではない!」
叫びそれは否定する。
「俺は修羅!しかしあらたな修羅となる!」
「何っ!?」
「修羅もまた闘いによってのみ生きるのではない!」
言いつつ両手を旋回させてきた。
「それを見出す為に!今!」
「ぬうっ!」
「マグナス!貴様を倒す!行くぞ」
「将軍になれぬ貴様がこの俺を倒すというのか!」
「そうだ!」
断言だった。
「ここで!覚悟しろ!」
「小癪な!容赦せんぞ!」
「喰らえ!機神轟撃拳!」
技の名前を叫びつつそれを放った。
「これをな!」
「ふははははははは!馬鹿が!」
マグナスはフェルナンドが攻撃を放ったのを見て彼を嘲笑った。
「俺様を貫けるのは修羅王様のみ!それで!」
「なら受けよ!」
それを言われても冷静なフェルナンドだった。
「その俺の拳をな!」
「では・・・・・・ぬっ!?」
「何っ・・・・・・マグナス!」
吹き飛ばされるマグナス。それを見てアルコが叫んだ。
「ぐおおおおおおおおおっ!」
「馬鹿な、あのマグナスが吹き飛ばされただと!?」
「これが今の俺の拳だ!」
構えに戻りつつ言うフェルナンドだった。
「これが!見たか!」
「おのれ・・・・・・」
マグナスのアンドラスは確かに大きく吹き飛ばされた。しかし彼はまだ健在だった。
「この俺を。ここまで」
「死にたければ来い」
激しい闘志に燃える目でマグナスに告げた。
「今度こそ!貴様を倒す!」
「ならば!」
「待て、マグナス!」
しかしここでアルコが彼を制止した。
「ここは下がれ」
「何故だアルコ!」
「貴様だけではない。軍全体がダメージを受け過ぎた」
「何っ!?」
「だからだ。ここは下がるべきだ」
「撤退ということか」
「そうだ」
言い切るアルコだった。
「ここはな。わかった」
「・・・・・・ぬう」
「アルコ殿の言う通りだ」
ここでメイシスもマグナスに言ってきた。
「マグナス将軍、全軍撤退だな」
「貴殿もアルコと同じ考えだというのか」
「そうだ。だからこそだ」
「アルティス将軍、貴殿は」
「私もまた同じだ」
彼の声は二人のものよりも落ち着いていた。
「ここは下がるべきだ。いいか」
「・・・・・・わかった」
アルティスまで同意なのを見て遂に彼も頷いた。
「撤退しよう。ならばな」
「では将軍」
メイシスがアルティスに対して言ってきた。
「後詰は私が」
「頼むぞ」
「はい」
こうして修羅達は撤退に入った。戦いはまたしてもロンド=ベルの勝利に終わった。だがこの戦いはただの勝利以上のものも持っていた。
「まさかとは思ったけれどね」
「そうね」
リツコがミサトの言葉に頷く。
「これで二人が元通りかしら」
「男の友情の復活ってやつね」
こう言って微笑むミサトであった。
「いい感じね」
「そうね。それにしても」
「何?」
「ミサトって案外こういう熱血も好きなのね」
「否定はしないわ」
くすりと笑ってそれを認めた。
「ああいうのってね。見ているだけでね」
「そういうことなの」
「そうよ。リツコはどうなの?」
「私もね」
見ればリツコも微笑んでいた。
「最近は変わってきたわ」
「一矢君とか見ていたら」
「やっぱり彼は大きいわ」
「そうよね。何があっても諦めない」
だからこそ彼はバーム星人との和解を達成したのだ。
「あの一途さと勇気は見ていてね」
「惚れる?」
「駄目よ、一矢君にはエリカちゃんがいるから」
こうは言っても顔は微笑んでいる。
「それはね」
「あらあら、節度をわきまえてるのね」
「人のものは取らない主義よ」
そういうところはしっかりしているようである。
「けれど一人だったらね。惚れてたわ」
「惚れてたの」
「あれだけ一途になれるって素晴らしいことじゃない」
ミサトが言うのはこのことだった。
「純粋にね」
「確かにね。それが一矢君のいいところよ」
「そして彼もね」
今度は話を変えてきた。
「フォルカ君も」
「彼もなの」
「ええ。彼もきっと」
顔を見上げたうえでの言葉だった。
「やるわ。その目指すものをね」
「手に入れられるのね」
「できるわ、絶対に」
語るその言葉は微笑んでさえいた。
「きっと」
「じゃあ私は」
ミサトもそれを聞いて言った。
「できる方に賭けるわ」
「私はそっちなんだけれど」
「ふふふ、そうだったわね」
「そうよ。それでもいいわよね」
「ええ、勿論よ」
笑顔で言い合う二人だった。今度はフェルナンドが加わった。ロンド=ベルの戦いは続きその度に何かを手に入れていくのであった。

第八十六話完

2008・10・18 
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